意見聴取の手続きの流れとは?【注意点や活用可能なツールについても解説します】

記事更新日:2025年10月30日 初回公開日:2025年10月27日

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「派遣社員の受け入れ期間を延長したいけど、意見聴取って具体的にどうすれば?」「手順を間違えて法令違反になったら...」このような疑問や不安があるかもしれません。派遣法の意見聴取は、特に初めての方や久しぶりの方には複雑に感じるでしょう。法令違反にならないよう抵触日が迫る前に正しい知識を身につけ、適切な延長手続きを行わなければなりません。この記事では、派遣期間延長に不可欠な意見聴取の基礎知識から、具体的な手続きの流れ、法令遵守のための重要注意点をまとめました。手続きを効率化するツールも紹介するので、ぜひ最後まで目を通してください。

意見聴取とは

派遣先が派遣可能期間を延長するための手続き

派遣先が派遣可能期間を延長するための手続きとして、法律で意見聴取が定められています。事業所単位での派遣受け入れが原則3年の期間制限を超える場合、意見聴取が必要です。抵触日が到来する1ヶ月以上前を目途に当該事業所の労働者の過半数で組織される労働組合、それがない場合は労働者の過半数代表者に、意見を求める必要があります。延長したい期間やその理由を明示した書面を事前に通知し、意見を聴取するという手順を踏まなければなりません。

派遣の3年ルールについて

派遣の3年ルールとは同一の派遣先事業所が派遣労働者を受け入れられる期間を、原則として最長3年間とする制度のことです。期間制限は「事業所単位の期間制限」と呼ばれます。しかし、3年という期間は絶対的な上限ではありません。派遣先企業が3年を超えて派遣社員の受け入れ継続を希望する場合、前述の意見聴取を法令に則って実施することが条件となります。抵触日より前に過半数労働組合等から意見聴取を行わなければ、期間の延長は認められません。

派遣と請け負いの違い

派遣契約と請け負いの違いは、業務に関する「指揮命令権」がどこにあるかという点です。派遣の場合は派遣先の企業担当者が派遣スタッフに対して、具体的な業務の指示や命令を直接行うことが可能です。一方で請負契約は仕事の完成を目的としており、発注元の企業が請負会社の労働者へ直接指揮命令を行うことは原則として認められていません。請け負いでありながら実態として指揮命令が行われていれば、偽装請負と判断され、法令違反となるリスクがあります。

意見聴取の手続きの流れ

労働組合か過半数労働者代表に意見聴取をする

意見聴取の手続きの流れにおける最初のステップは、労働組合か過半数労働者代表に意見聴取をすることです。派遣先の事業所に労働者の過半数が加入する労働組合が存在すれば、組合が意見聴取の対象となります。該当する労働組合がない場合は、労働者の中から過半数を代表する人物(過半数代表者)を公正な方法(例えば投票)で選出し、代表者から意見を求める必要があります。会社側が一方的に代表者を指名するなどの行為は法令上認められていません。延長したい期間や理由を明記した書面を事前に通知し、説明の機会を設けるといった対応が望ましいでしょう。

反対意見に対して再度説明する

意見聴取の手続きの流れを進める中で、反対意見に対して再度説明する姿勢が求められます。労働者派遣法が義務付けているのはあくまで意見の聴取であり、労働組合や過半数代表者からの「同意」を得ることではありません。異議が表明されたからといって、直ちに延長が不可能となるわけではありません。しかし、派遣先企業としては反対意見を真摯に受け止めて、延長の必要性や派遣労働者の雇用安定に向けた考え方を丁寧に説明するべきでしょう。

意見聴取の内容を記録し保存する

意見聴取の手続きの一環として、意見聴取の内容を記録し保存することもあげられます。意見聴取を実施した日時や場所、労働組合または過半数代表者の氏名、提出された意見の内容、意見に対する派遣先の対応などの事項を記録する必要があります。作成した記録は当該事業所での派遣受け入れが終了した日から数えて3年間、適切に保管しなければなりません。法令で定められた義務なので、記録の作成・保管漏れがないようにしましょう。

記録を労働者や派遣会社に連絡する

意見聴取の手続きの流れの締めくくりとして、記録を労働者や派遣会社に連絡することがあげられます。派遣先は意見聴取の結果(述べられた意見の内容やそれに対する会社の対応など)を、当該事業所の全ての労働者に周知する義務があります。周知の方法として事業所の見やすい場所への掲示、書面の配布、社内イントラネットへの掲載などが考えられます。実際に派遣社員を派遣している派遣会社に対しても、意見聴取の結果の通知が必要です。

意見聴取の注意点

派遣先の事業所ごとに意見聴取が必要になる

意見聴取の注意点として、派遣先の事業所ごとに意見聴取が必要になることがあげられます。意見聴取の単位は企業全体や法人全体ではなく、あくまで派遣労働者が就業する個別の事業所ごととなります。企業が複数の事業所で派遣社員を受け入れており、事業所単位で期間の延長を検討している場合は、面倒でも各事業所で個別に意見聴取を実施しなければなりません。本社でまとめて行うといった対応は認められないので、各事業所の対応が必要です。

過半数は管理監督者以外から選出する

意見聴取の注意点として過半数代表者を選ぶ場合、管理監督者以外から選出する必要があります。労働基準法上の管理監督者(部長、工場長など、経営者と一体的な立場にある者)は、労働者の代表として意見聴取の対象にはできません。選出にあたっては投票や挙手といった民主的な方法を用い、会社側が関与して特定の人物を指名するような行為は厳禁となります。適正な選出が前提であり、労働者の意見を公平に反映させるための規定です。

意見聴取なしに派遣契約期間の延長はできない

意見聴取の注意点として、意見聴取なしに派遣契約期間の延長はできないという点は認識すべきです。事業所単位の期間制限を超えて派遣を継続するためには、意見聴取は不可欠なプロセスです。手続きを経ずに期間延長を行った場合は、単なる労働者派遣法違反に留まらず、派遣先が直接労働契約を申し込んだと扱われる「みなし雇用申込み制度」の対象となる可能性があります。期間を延長する際には、必ず事前に意見聴取を実施しましょう。

抵触日に注意する

意見聴取の注意点として、抵触日に注意することがあげられるでしょう。抵触日とは、派遣受け入れの期間制限の上限を超える最初の日付を意味します。派遣の期間制限には「事業所単位」と「個人単位」の二種類が存在し、意見聴取が求められるのは主に「事業所単位」の期間制限を延長するケースです。事業所抵触日の一ヶ月前が意見聴取手続き完了の期限となり、期限までに意見聴取が完了しない、あるいは未実施のまま抵触日を過ぎてしまうと法令違反に該当します。派遣先としては派遣会社からの通知情報なども活用しつつ、抵触日を把握して意見聴取の実施計画を立てましょう。

意見聴取で活用できるツール

Interviews

意見聴取で活用できるツールとして、ビデオ面接ツールの「Interviews」があげられます。オンラインでの面談設定から実施、内容の記録までを一貫して行える点が特徴です。特に遠隔地の担当者との面談や日程調整が難しい場合に有効なツールとなるでしょう。面談内容を録画・記録する機能は、会議後に内容を確認したり、議事録作成の手間を省いたりするのに役立ちます。対面に近い形で意見を聴いたり、ヒアリングを行う人事担当者にとって、選択肢の一つとなるでしょう。ただし、録画する際には必ず事前に相手の同意を得る必要があります。

Googleフォーム

意見聴取で活用できるツールの中でも、手軽さとコスト効率で広く利用されているのが「Googleフォーム」です。Googleアカウントがあれば無料で利用できるオンラインアンケート作成ツールであり、意見聴取の手続きにも応用できるでしょう。過半数代表者への意見聴取をアンケート形式で実施する際に便利で、質問項目を自由に設定して回答は自動で集計されるため、事務的な負担を軽減できます。匿名での回答設定も容易なため、率直な意見を聴取しやすい環境を提供できるでしょう。集まった回答はデータとして記録され、法令で求められる意見聴取の記録にも使用できて、結果の周知にも役立ちます。

SurveyMonkey

意見聴取で活用できるツールとして、「SurveyMonkey」も有力な選択肢です。オンラインでのアンケート作成・配布・集計・分析機能を豊富に備えたツールであり、意見聴取にも活用できます。Googleフォームと同様、過半数代表者への意見聴取をアンケート形式で行えますが、より詳細な回答分析機能や多様な質問形式、デザインテンプレートが用意されている点が強みです。意見の傾向や具体的な理由などを深く分析したい場合に役立つでしょう。匿名性の確保や回答状況の管理も可能で記録としての活用、人事関連調査にも応用できる汎用性の高さも魅力といえるでしょう。

Typeform

意見聴取で活用できるツールとして、回答のしやすさやデザイン性を重視するなら「Typeform」が適しています。対話形式で質問が一つずつ表示される、洗練されたデザインのオンラインフォームを作成できるのが特徴です。意見聴取のアンケートを回答者にとって親しみやすく、負担感の少ない方法で実施したい場合に適しているでしょう。快適な回答体験は、丁寧で質の高い意見の聴取につながります。回答の集計やデータ管理といった基本的な機能も備えており、意見聴取の記録としても活用できます。企業イメージに合わせたフォームデザインも可能です。

Sellecttype

意見聴取で活用できるツールの一つとして、国産のフォーム作成ツール「Sellecttype」も選択肢に入るでしょう。予約フォームやイベント受付など、多様な用途向けのテンプレートが豊富に用意されている点が特徴です。汎用的なフォーム作成機能を使えば意見聴取の手続きにも応用可能です。意見を述べた人の氏名、実施した日時、述べられた意見の内容などをフォーム上に設定して回答を収集しましょう。集まったデータは管理画面で一覧でき、法令で求められる意見聴取の記録として保存・活用に適しています。国産ツールならではの日本語インターフェースやサポート体制は、人事担当者にとって安心材料となります。

formrun

意見聴取で活用できるツールとして、フォーム作成から管理までを一元化したい場合に「formrun」が役立つでしょう。フォームを容易に作成できるだけでなく、回答をカンバン方式のボードで視覚的に管理できる機能が特徴です。意見聴取の際にフォームで過半数代表者からの意見を聴取し、回答データをリストとして管理、記録として保管するという流れをスムーズに行えます。回答があった際に担当者にメール通知する機能もあり、迅速な対応を可能にするでしょう。セキュリティ対策にも力を入れているため、個人情報を含む可能性のある意見聴取のデータを扱う上でも安心できます。国産ツールであり、国内企業に適した運用が期待できるでしょう。

まとめ

意見聴取を理解した上で派遣期間の延長をしよう

意見聴取を理解した上で派遣期間の延長を行うことが、法令遵守と円滑な人材活用の鍵となります。派遣社員の受け入れ期間を事業所単位の期間制限(原則3年)を超えて延長する場合、労働者派遣法に基づく意見聴取は義務です。手続きの流れや注意点、記録の作成・保存義務などを正確に理解して、過半数労働組合または過半数代表者の意見を適切に聴取しましょう。受け入れ抵触日の管理を徹底し、必要な事務・対応を計画的に進めて、企業としての信頼を守り、適切な雇用管理を実践することが求められます。

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