記事更新日:2026年01月13日 | 初回公開日:2026年01月13日
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従業員支援プログラムとは、企業が従業員のメンタルケアを目的としたプログラムです。英語ではEmployee Assistance Programと表記され、頭文字をとってEAPと呼ばれています。プログラムは、精神の不調を訴える従業員の相談に乗るだけではありません。職場環境の改善や管理職へのアドバイス、復職支援を含む幅広い活動です。近年ではメンタルヘルスだけでなく、介護や育児、家計の悩みなど、従業員のパフォーマンス低下を招く様々な問題に対処する広義のEAPも増えてきました
従業員支援プログラムの起源は、1950年代のアメリカです。当時のアメリカ産業界では、従業員のアルコール依存症による生産性の低下や事故の発生が深刻な問題となっていました。事態に対処するため、企業は職務遂行能力の回復を目指した支援プログラムを開発し、導入を進めました。これがEAPの始まりとされています。当初はアルコール対策としてスタートしましたが、時代の変化とともにその役割は拡大していきました。1970年代以降になると、薬物乱用問題や家庭内のトラブル、職場の人間関係によるストレスなど、従業員が抱える多様な課題に対応するプログラムへと進化を遂げます。
日本においてEAPが広く普及し始めたのは、2000年代の過労死問題から盛んになったことがキッカケです。制度の導入自体は1980年代に一部で始まっていましたが、バブル崩壊後の不況や成果主義の導入で職場環境が変化し、メンタル不調が社会問題化したことで注目されました。特に2000年の電通事件最高裁判決で、過労自殺に対する企業の安全配慮義務違反が認定されたことが大きな転換点となります。これを機に、企業はリスク管理としてEAPを導入せざるを得なくなりました。
厚労省が定めるメンタルヘルス指針の4つのケアの一つに、セルフケアがあります。セルフケアとは、従業員自身が自分のストレスに気づき、予防や対処を行う取り組みです。従業員が自身の不調を早期に自覚するためには、ストレス要因に対する理解や、適切な対処法が欠かせません。企業としては、EAPを活用してセルフケア研修を実施したり、情報提供をする支援が求められます。ストレスチェックの結果を従業員自身が確認し、生活習慣の改善や休息の取得につなげることも重要です。セミナーなどを通じて、従業員が自らの心の健康に関心を持ち、自己管理をすることがメンタルヘルス対策の基本となります。
厚労省が定めるメンタルヘルス指針の4つのケアの一つに、ラインケアがあります。ラインケアとは、管理監督者が部下の心の健康状態を把握し、職場環境の改善や相談対応をする取り組みのことです。現場の管理職は、従業員と日常的に接しているため、不調のサインに気づきやすい立場といえるでしょう。遅刻や欠勤の増加、ミスや能率の低下などの変化を早期に察知し、声をかけることが重要です。EAPはラインケアを機能させるために、管理職向けの研修を提供したり、部下への接し方についてのアドバイスをします。職場全体のストレス要因を特定し、業務量の調整や配置転換などを通じて環境を改善することも管理監督者の役割です。
厚労省が定めるメンタルヘルス指針の4つのケアの一つに、事業場内産業保健スタッフによるケアがあります。社内の産業医や保健師、衛生管理者などが中心となって行う支援活動のことです。医学的な専門知識を持ちながら、企業の内部事情にも精通しているため、従業員と企業の双方にとってバランスの取れた対応が可能となります。役割としては高ストレス者への面接指導、休職者の復職支援プランの作成、長時間労働者への健康相談などがあげられるでしょう。
厚労省が定めるメンタルヘルス指針の4つのケアの一つに、事業場外資源によるケアがあります。会社外の専門機関やサービスを活用して行うメンタルヘルス対策のことです。社内の人間には相談しにくい悩みでも、利害関係のない外部の専門家であれば話しやすいと感じる従業員は少なくありません。外部機関を活用することで、高い専門性とプライバシー保護の両立が可能になります。EAP機関のほか、地域の保健所や医療機関、都道府県産業保健総合支援センターなども事業場外資源に含まれます。社内だけでは対応しきれない専門的なケースや、休日・夜間も相談対応など、柔軟なケア体制を実現できます。
従業員支援プログラムの目的の一つに、企業の生産性の向上があげられます。メンタルヘルス不調は、休職や離職などの目に見える損失だけでなく、「プレゼンティズム」と呼ばれる、出社していてもパフォーマンスが低下している状態を引き起こします。心身に不調や悩みを抱えたまま仕事を続けても、集中力が続かず、思わぬミスや判断の遅れにつながってしまいます。こうした状態は本人だけでなく、フォローに回る周囲のメンバーにも負担をかけ、チーム全体の効率を下げてしまうでしょう。EAPを活用して早めに悩みを解消できれば、従業員は本来の能力を発揮できるようになります。
従業員支援プログラムの導入メリットとして、離職率の低下があげられます。仕事の悩みや人間関係のストレスを一人で抱え込み、誰にも相談できないまま退職を決断してしまう従業員は数多く存在します。早期に相談できる窓口があることで、問題が深刻化する前に解決策を見出すことが可能になります。特に、退職理由の上位を占める人間関係のトラブルや業務過多によるストレスに対して、第三者の視点からアドバイスを得られることは大きな救いとなるでしょう。休職が必要な場合でも、EAPによる適切な復職支援があれば、スムーズな職場復帰が可能となり、退職を防ぐことができます。
従業員支援プログラムの導入メリットとして、社員のモチベーション向上があります。従業員は、職場の人間関係や家庭の事情、将来のキャリアに対する漠然とした不安を抱えながら業務にあたっています。EAPを通じて専門家に相談し、悩みを整理できれば、従業員は目の前の業務に集中できるようになります。メンタルヘルス対策だけでなく、キャリア開発やスキルアップの相談窓口としてEAPを活用することで、成長意欲の高い社員の背中を押すことも可能になるでしょう。会社が自分を支援してくれる実感は、組織への信頼を深め、自発的に貢献しようとする姿勢を生み出します。
従業員支援プログラムの導入メリットとして、社内の人間関係が好調になることがあげられます。職場でのトラブルの多くは、コミュニケーション不全や相互理解の不足から生じます。EAPによる管理職向けの研修やハラスメント防止の啓発活動を通じて、従業員がお互いを尊重し合う文化が醸成されます。ストレスを抱えた従業員がカウンセリングによって精神的な安定を取り戻せば、周囲への不必要な衝突や摩擦も減少するでしょう。第三者が間に入ることで、当事者同士では解決が難しい感情的な対立を客観的に整理し、修復へと導くこともできます。
従業員支援プログラムの導入メリットとして、企業イメージの向上があげられます。近年、「健康経営」への関心が高まっており、従業員の健康管理に取り組む企業は優良企業として認知されています。優秀な人材を採用する際のアピールポイントとして有効で、求職者は給与や待遇だけでなく、働きやすさやサポート体制の充実度を重視する傾向にあります。健康経営優良法人などの認定を取得すれば、投資家や取引先に対しても、持続可能な経営体制を持つ企業であることを証明できるでしょう。
従業員支援プログラムの導入方法として、内部EAPがあります。内部EAPとは、企業内に専属のカウンセラーやスタッフを配置し、相談室を設置する形態です。社内の事情や文化を熟知したスタッフが対応するため、問題の背景を理解しやすく、人事や現場との連携がスムーズにできる利点があります。しかし、導入を検討する際は「従業員が安心して利用できるか」を慎重に判断しましょう。社内リソースやノウハウが不足している段階で無理に導入しても、利用が進まず形骸化するリスクが高いため注意が必要です。
"従業員支援プログラムの導入方法として、外部EAPがあります。専門のサービス提供会社と契約し、社外に相談窓口を設ける形態で最大の強みは、高い匿名性と専門性にあります。従業員は会社に知られることなく相談できるため、利用への心理的ハードルが下がります。自社に産業医がいない小規模な事業場や、逆に拠点が多く社内の目が行き届かない企業にとって、現実的な選択肢といえるでしょう。職場の人間関係や家庭の事情など、社内の人には話しづらいデリケートな悩みにも対応できるのが強みです。専門家のノウハウを即座に導入でき、人事担当者の運用負担も最小限に抑えられるため、多くの企業で採用されている方式です。
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従業員支援プログラム導入の際の注意点として、個人情報の保護を徹底させることがあげられます。「相談内容は本人の同意なく会社や上司には伝わらない」という原則を明文化し、就業規則や社内イントラネットで繰り返し周知しましょう。導入初期の段階は、人事担当者が自らの言葉で守秘義務について語り、信頼を得ることが重要です。社内の内線ではなく直接つながる社外の専用ダイヤルや、会社のアカウント認証が不要なWeb予約窓口を案内します。上司や人事を一切介さずに、従業員が直接コンタクトを取れる仕組みであれば、相談のハードルを下げることができるでしょう。
従業員支援プログラム導入の際の注意点として、従業員の評価を適正に行うことがあげられます。人事担当者は、EAPの利用履歴と人事評価を切り離す運用ルールを策定し、管理職に対して教育を行う必要があります。評価者研修の中で「健康問題と能力評価の区別」を指導し、無意識のバイアスを排除するようにしましょう。相談の結果、残業の制限や業務量の削減が必要になっても、「能力不足」とは見なさず、「長く働き続けるための必要なサポート」として扱う姿勢を示すことが求められます。
従業員支援プログラムの内容を理解し導入を検討しましょう。従業員支援プログラム(EAP)は、従業員の健康を守るだけでなく、企業の生産性向上やリスクマネジメントに直結します。制度を成功させる鍵は、従業員が安心して利用できる体制の整備にあります。個人情報の保護を徹底し、評価への懸念を払拭する運用設計が重要です。自社の課題を整理し、現場にとって使いやすい仕組みとは何かを議論することから始めましょう。地道な環境作りが休職者を減らし、会社全体の利益を守ることにつながります。
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