記事更新日:2025年12月03日 | 初回公開日:2025年12月03日
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充足率とは、求人に対してどの程度の採用が見込めるかを数値化したものです。ハローワークなどが公表する「公的統計の充足率」と、各企業が使う「採用充足率」という主に2つの意味で用いられます。本記事では両者の違いを解説して、企業の担当者が実務で活用する後者の採用充足率を改善する方法を深掘りします。採用充足率は企業が計画した採用人数に対し、実際にどれだけ採用できたかを示す割合であり、採用活動の成否を測るための指標といえるでしょう。たとえば、採用計画で10名の募集に対し8名を採用した場合、企業の採用充足率は80%となります。
充足率は、企業側が人材採用に関わる実績を確認する際に参考となります。企業の採用充足率は、採用活動の結果を数値で可視化する際に役立ちます。人事担当者は経営層や事業部門に対して、採用活動の成果を客観的かつ定量的に報告できます。感覚的な報告ではなく、「目標達成率〇%」といったデータに基づいた説得力をもった説明が可能になるでしょう。採用チーム内でも、客観的数値を基に具体的な対策を検討しやすくなります。企業の採用力を測る、健康診断のような役割を果たす指標といえるでしょう。
近年の採用市場の動向を示す参考値として、2025年卒業・就職予定者の充足率は約70%という調査結果が報告されています。この数値はハローワークなどが公表する労働市場全体の数値ではなく、個々の企業の採用充足率です。多くの企業が採用計画通りの人員確保に苦戦している状況を示唆するものです。自社の充足率がこの平均値を大きく下回っている場合、採用戦略やプロセスに何らかの課題を抱えている可能性が高いといえるでしょう。逆に上回っていれば、自社の採用活動が市場において競争力を持っていると判断できる材料になります。
充足率と就職率の違いとして、就職率は一般的な就職実績である点があげられます。主に学生や求職者側からの視点で用いられる指標であり、就職を希望する人のうち、実際にどれだけの人が就職できたかの数値です。大学などが公表する「就職率98%」といったデータは、卒業生のうち就職を希望した学生が、実際に職を得られた割合を示しています。一方で、充足率は企業側の視点に立った指標であり、採用計画に対する達成度を示した数値といえるでしょう。
充足率と就職率の違いとして、就就職件数÷新規求職申し込み件数で求められます。就職率は新たに職を求めて登録した人のうち、どれだけの人が就職に至ったかを表し、求職者全体の就職のしやすさを示す指標です。充足率は、あくまで自社の採用目標に対する達成度合いを測るためのものです。したがって、就職率が高い状況でも、自社の充足率が低いという状況は起こりえるため、マクロな市場動向と自社の採用実績は切り分けて分析する必要があるでしょう。
充足率が高い状況は、人員を確保しやすい市場であるといえます。自社の求人が求職者にとって魅力的であり、採用市場において競争優位性を持っているといえるでしょう。企業の知名度やブランドイメージが高い、給与や福利厚生といった待遇面が優れている、独自の企業文化や働きがいが求職者に伝わっている、といった要因が考えられます。市場全体の求人倍率が低い時期には、全体的に充足率が高まる傾向があります。しかし、そのような状況下でも競合他社を上回る充足率を維持できている企業は、採用における優位性が高いと評価できます。
充足率が低い状況とは、企業が人員を確保しずらい市場であるといえます。採用市場全体の有効求人倍率が高く、人材獲得競争が激化しているといった要因が考えられます。しかし、より深刻なのは、自社の採用戦略や条件に何らかの問題がある場合です。提示している労働条件が市場の相場と見合っていない、企業の魅力が十分に伝わっていない、選考過程が冗長で候補者が離脱している、といったことが考えられるでしょう。充足率の低迷は企業の事業計画に影響を及ぼす可能性があり、原因を分析して早急に対策を講じる必要があります。
全国統計の場合の充足率は、就職件数÷新規求人数で求められます。厚生労働省が公表する「一般職業紹介状況」で用いられる計算式であり、マクロな視点での労働市場の需給バランスを示す指標です。ここでの「新規求人数」は、企業からハローワークなどに新たに出された求人の総数を指します。この数値は、特定の業界や地域全体の景況感や採用意欲を把握する上では参考になるでしょう。個々の企業が自社の採用活動を評価する際に、この計算式をそのまま用いることはありません。あくまで、日本全体の労働市場の大きな流れを理解するためのものです。
都道府県別計の場合の充足率は、充足数÷新規求人数で求められます。この場合の「充足数」とは、ハローワークを通じて採用に至った件数を指し、地域ごとの労働市場の実態を詳しく見るために用いられる数値です。全国統計と同様に、地域レベルでのマクロな雇用環境を示すものであり、特定のエリアでの採用活動の状況の参考になるでしょう。しかし、これも個別の企業が自社の採用成果を測るための計算式ではありません。企業の実務で問われるのは、あくまで自社が立てた「採用計画人数」に対して、どれだけの「採用決定人数」があったかです。
充足率の高い企業の特徴として、内定辞退率が低い傾向があげられます。採用計画通りに人員を確保できるのは、最終選考を通過した候補者が、高い確率で入社するからです。採用活動の入口から出口まで、一貫して候補者の入社意欲を高める工夫がされているといえるでしょう。たとえば、選考過程で候補者の疑問や不安を解消する丁寧なコミュニケーションや、社員との交流を通じて入社後の働くイメージを持たせる取り組みがあげられます。自社の充足率の低さに悩んでいるのであれば、まずは内定辞退率の分析から着手することをお勧めします。
充足率の高い企業の特徴として、採用活動への協力人数が多い点があげられます。たとえば、採用を人事部門だけの仕事と捉えず、社員が面接官を務めたり候補者からの質問に答えるなど職場の雰囲気がダイレクトに伝わるように協力します。経営層が自ら、企業のビジョンや将来性を語り、候補者の心を動かすような取り組みも有効です。多くの社員が「自社の仲間を探す」という当事者意識を持って採用に関わることで、組織全体の一体感が醸成され、魅力となって候補者に伝わるでしょう。
採用活動への協力事例として、OB・OG訪問があげられます。自社の社員が、同じ大学や学校の出身である候補者(学生)と面談し、企業のリアルな情報を伝える取り組みです。候補者と年齢やバックグラウンドの近い先輩社員が、人事担当者には聞きにくい給与や残業、キャリアパスといった質問に本音で答えてもらう良い機会になります。事前に候補者が何を知りたいのか、企業として何を伝えたいのかをすり合わせておくと候補者にいい印象を与えます。オンラインツールを活用すれば、地理的な制約なく多くのOB・OG訪問を実施可能です。
採用活動への協力事例の中でも、内定者フォローは重要です。内定を出してから入社までの期間、候補者の不安を解消し、入社への意欲を下げないコミュニケーションを行いましょう。たとえば、定期的なオンライン面談や内定者同士の交流会を企画して、同期のつながりを深める施策があげられます。配属予定部署の先輩社員との座談会を設け、入社後の業務内容やキャリアステップについて話す機会を作ることで働くイメージを明確にできます。フォロー活動に現場社員が協力することで、歓迎しているというメッセージが伝わるでしょう。
採用活動への協力事例として、選考補助活動があげられます。人事担当者では見極めきれない候補者の専門スキルや適性を、現場の視点から多角的に評価するためのプロセスです。たとえば、営業職の採用なら、営業成績が優秀な社員に同席してもらい「お客様からの難しいご要望にどう答えるか」といった、実践的な質問を投げかけてもらいましょう。技術職の採用では、配属予定のチームに実務に近い簡単なコーディング課題を作成・評価してもらうのも有効です。選考に関わった社員自らも、企業に求められる人材像を再認識する良い機会となるでしょう。
充足率が低い企業に共通する課題として、採用活動の長期化とコストの増加があげられます。計画通りに人員を確保できないため、求人広告や人材紹介会社への成功報酬など採用コストが膨らんでしまうでしょう。人事担当者が一人の候補者にかける時間も長くなり、既存の人件費も増加します。本来、入社後の教育研修や制度設計に充てるべきリソースが、採用活動に割かれてしまいます。充足率の低さは単なる採用の問題ではなく、経営全体に関わるコスト問題であると認識しましょう。
"充足率が低い企業に共通する課題は、必要な人員を確保できず現場が回らなくなることです。欠員が補充されない状態が続くと、既存の社員それぞれへの業務負担が重くなり、長時間労働が常態化し、心身の疲労から生産性の低下や休職者の発生リスクも高まるでしょう。業務負担が重くなると、既存社員の不満やエンゲージメントの低下につながり、最悪の場合離職者を生むという悪循環に陥りかねません。離職者の発生はサービス品質の低下や、納期遅延といった事業上の問題に直結します。
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充足率が低い企業に共通する課題として、ミスマッチ人材が増加するリスクがあります。採用計画の未達に焦って、本来の採用基準を下げて、スキルや経験が不十分な人材や企業文化に合わない人材を採用してしまいます。ミスマッチ採用は入社後の育成のコストの増加と、本人の早期離職などのリスクを増加させます。離職者が出れば、再び採用活動を行わなければならず、さらなるコストと労力がかかるでしょう。目先の充足率を追い求めるあまり、採用の質が低下してさらに問題を抱え込むことになります。
充足率を高めて求人の増える企業にしましょう。充足率を高めることは単に採用目標を達成するだけでなく、将来にわたって優秀な人材が集まる魅力的な企業になるために重要なステップです。本記事で解説した通り、充足率は企業の採用力を示す健康診断のような指標であり、数値を分析することで採用プロセスの課題が見えてきます。内定後のコミュニケーションや既存社員の協力体制の構築など、さまざまな施策で充足率を高められます。まずは自社の現状を正確に把握し、具体的な改善計画を立てることから始めましょう。
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