記事更新日:2020年05月25日 | 初回公開日:2020年05月24日
人事・労務お役立ち情報 用語集 グローバル経済健康経営とは、これまで別々のものと考えていた「経営」と「健康」を統合し、個人の健康増進を企業の業績向上に繋げる考え方です。これはアメリカの臨床心理学者のロバート・ローゼン博士により提唱された「ヘルシーカンパニー」という考えに基づいた経営方針になり、日本でも浸透してきました。とくに経済産業省が地域の健康課題や企業の健康増進の取組みをしている組織を「健康経営優良2020」に認定するなど、日本全体として取り組みもなされています。
健康管理を怠ると従業員の体調不良による労働力不足に限らず、モチベーションや集中力の低下にも繋がり、企業としての成長が大幅に低下する事態にもなりかねません。また、長時間労働や悪環境での業務は、離職率も高まり採用コストが増加してしまうことも考えられます。そういった観点からも、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康管理を戦略的に取り込む前向きな考え方に企業の関心が高まっています。
健康経営がこのようにクローズアップされている要因のひとつが、年々拡大する日本の国民医療費と介護保険給付になります。少子高齢化率が急速に高まることで、社会保障費の拡大や財政を圧迫する大きな要因となっています。老老介護や介護離職が問題になるように、ますます健康的に少しでも長く働ける人材の確保は急務になるでしょう。将来に向けた労働力の確保や活躍の重要性が日本には求められています。
少子高齢化社会により労働人口が減少し、日本全体で「人手不足」が嘆かれ、人材不足から廃業や閉店を余儀なくされる企業もあります。出生率が増加することが期待できない現状で、1人当たりの労働生産性を上げていかなければ、生産性が低くなり経営難に追い込まれる企業はますます増える一方でしょう。企業にとって資源・財産である「人財」を第一に考える健康経営は、これからの日本には無くてはならない考えです。
労働人口の減少に伴い、従業員1人当たりの仕事量が増加することで過酷な労働を強いる「ブラック企業」が問題となってきました。時間外労働(残業)の増加、ストレスフルな環境での業務により、うつ病や自殺などのメンタル疾患も顕在化され、 マスメディアなどでも大きく取り上げられました。これらの悪環境での労働が、従業員の深刻な健康被害を高めたいわれて、日本全体としても取り組みが始まっています。
従業員の心身が健康に保たれることで、業務スピードの上昇やケアレスミスの軽減によるパフォーマンスの向上が期待できます。働きやすい環境下での業務は、従業員の満足度の向上にもなり、離職率の低下にも繋がるでしょう。労働人口の減少が叫ばれる日本において、限られた労働力で企業の生産性を上げることが必要です。健康を重視した経営により、結果的に企業全体の生産性の向上を目指せます。
ストレスや業務過多による心身の不調は、体調不良による離職に限らず、自主退職の要因にもなります。このような状況での人員損失は、ほかの従業員のモチベーション低下にも少なからず影響を及ぼし、企業全体の離職率が上がってしまう原因にも。逆に従業員の健康指数が高く、長時間労働や過度な負担が少ない企業は従業員の離職率が低下する傾向にあります。健康経営は企業の労働力損失を防止するというリスク管理の面からも重要な取り組みになるでしょう。
日本の医療費は42兆円を超えており、2025年には約60兆円に達する見込みにあります。健康経営の導入により従業員が健康になると、疾病率が下がり企業が負担する医療費は軽減できます。拡大する医療費により、企業への負担はますます増えていくことが予想され、経営が覚束なくなる事態を招きかねません。従業員の健康を考え経営戦略的に実施することは、企業を存続させるための必要条件になってくるでしょう。
従業員が健康的に活躍できる企業になることは、企業のブランドイメージの向上にもなり、優秀な人材の確保にも繋がります。また、健康経営の取り組みの一定基準を満たすと、経済産業省より「健康経営優良法人」として認定されます。この認定を受けると、人材を大切にして企業成長を続ける企業と認められることになり、社会的な評価を受けることができ、企業を対外的にアピールする有効手段になります。
企業内での健康経営の取り組みは、当然ながら費用もかかるのでそれぞれの組織に合った制度の導入を検討するようにしましょう。責任者は、複数の部署と連携し、従業員の個人データを集計しければならないので手間も時間もかかります。多少の費用はかかりますが、外部委託などを活用し運用する方法もひとつの手段です。責任者が主体となり、従業員の健康維持ができる無理のない設定で実施しましょう。
健康経営を成功させるポイントは、健康経営の重要性を企業のトップが先頭に立ち従業員にしっかりと伝えることです。健康経営は、目に見える形で表れるには時間を必要とすることも多く、効果をすぐに実感できるとは限りません。健康経営は、企業にとって貴重な資源である従業員の健康を守ることです。効果がすぐに見えずとも、中長期的な目線で健康経営の必要性を伝えるようにしましょう。
健康経営は人事などの責任者が管理者となり動くことになりますが、実際に意識を高めて取り組むのは従業員です。ですので、皆が心身ともに健康な状態で働ける環境を作るためには、従業員一丸となって取り組まなければなりません。不健康経営を続けることは、人材不足や企業イメージの低下に加え、成長の抑制にも繋がり企業価値が下がってしまうことも。企業価値を高めるためにも、従業員の健康づくりにかかるコストを「将来への投資」と考えることがスタートラインです。
健康経営を実施することが決定したら、健康保持や増進に向けて組織体制を構築することが重要になってきます。健康経営を部署やチームなど小規模単位で改善していくことは小さな改善にはなりますが、本来目指すポジションまで辿り着くことは難しいでしょう。健康経営に取り組む専門部署を設置するなど、人事部のほかに既存の部署に専門資格を持つ専任職員を配置するのもひとつの方法です。
健康経営を実施するためには、企業内での課題を確認し、改善していくことが大切になってきます。課題を見つけ出すためには、まずは従業員の健康状態や勤務状況などを把握する必要があります。健康診断のデータや最近の勤怠状況は、保有しているデータベースから調べ、健康状態の傾向や問題点を導き出しましょう。まずは、無理のない範囲で効果検証を行うことが、持続的に取り組みにも繋がります。
スタート後は、進めている健康経営が企業の目的とする経営理念に基づいているか、実施することで業務に過度な不利益が出ていないかを確認することも重要です。業務に支障が出ている場合は、部署の上長と早急に議論し、取り組みを進めながら解消していく方法を模索しなければなりません。健康経営の取り組みが自社に合っていなければ、従業員が取り組みに対して疑問を抱き、効果が薄れることにもなるので必ず確認しましょう。
働き方改革によって働き方の見直しが行われ、ワークバランスの推進や残業時間のルールが設けられるようになりました。個人で月間の残業時間を破らないように管理することもできますが、ノー残業デーを作ることにより、仕事にメリハリができ、業務効率化にも期待ができます。定時退社時刻を過ぎたら、人事担当者が館内を巡視、各フロアごとにその時点での在館者を確認するなど徹底した取り組みも必要です。
健康経営は、オフィス環境(空間・設備)を整備することからはじめ、働き方の変化(行動)が起こり、メンタルヘルス不調などの予防・防止へと繋がります。最終目標は、従業員の健康改善による企業の永続的な成長や離職率の低下に伴うコスト削減などを揚げていても、まずは段階的な利用の促進が必要になります。健康経営の取り組みを始めたからすぐに効果が出るわけではなく、それで終わりではありません。働き方の変化が心身の健康状態や活力、仕事のパフォーマンスにどのように結びつくのかを分析し、できることから段階的に進めると良いでしょう。
経済産業省が企画をしている認定企業「ホワイト500」に選ばれている企業の中には、昼寝を積極的に導入しているところもあります。昼時間の15分~30分程度の睡眠は、疲労回復に効果が期待できるとのデータもあるほど、いま注目されています。午後の業務のパフォーマンスを上げるためにも、昼寝の導入も効果的でしょう。健康経営の取り組みとして昼寝推奨を打ち出すことで、従業員も昼寝を実施しやすくなります。
長時間のデスクワークや同じ作業は、肩こりや頭痛などの疾患の要因となり、健康被害にも繋がりかねません。休憩時間はもちろん、ちょっとした隙間時間に運動やストレッチなど軽度の運動を推奨することは、健康改善に期待できます。福利厚生の中に、ジムやヨガなどを取り入れることもひとつの方法でしょう。従業員が行動しやすい環境を整えることも、無理なく健康意識のモチベーションアップに繋がるポイントです。
経済産業省が企画をしている「健康経営優良法人2020」の認定企業の中で、健康経営度調査結果の上位500の法人は「ホワイト500」として認定されます。その「ホワイト500」に4年連続で認定されたのが伊藤忠テクノソリューションズ株式会社です。社員の業務体系や生活習慣に加え、健康診断やストレスチェック結果の分析結果を踏まえて、心身の健康に関するリスクを特定し、各種施策を実施。健康増進を図るための専門部署として、産業医や臨床心理士といった専門家が一体となり取り組んでいます。
ANAホールディングス株式会社では、責任者の執行役員をチーフウェルネスオフィサー(CWO)と命名し、グループ各社の実務担当者をウェルネスリーダー(WL)に任命することで推進体制を構築。また、がん予防への取り組みとして、日本人の死亡原因の上位にある大腸がん検査や乳腺エコー検査を健康診断の検査項目に追加。企業独自の検査項目を設定し、従業員の健康維持に取り組んでいます。
朝日生命保険相互会社では、生命保険事業を担う企業として、朝日生命健康保険組合と一体となり、従業員の健康管理に加え、過重労働防止対策に取り組んできました。また、心の健康増進に関する取組みとして、社内eラーニングによるメンタルヘルス教育やメンタルヘルスに関する検定試験の受験を推進。心のケアの重要性と意識向上に努めています。J.POSHのオフィシャルサポーターとして、乳がんの早期発見・早期治療のための受診啓蒙を行うなど、ピンクリボン運動を推進しています。
従業員の健康を経営的側面から戦略的に実施する健康経営は、人材不足や医療費が増え続ける日本において、ますます重要視されていくでしょう。また、ホワイト500に認定されることで、企業の健康経営に対する取り組みを広く認知でき、優良な人材採用や組織の活性化なども期待できます。企業利益の拡大という意味でも、大きなメリットになることは間違いありません。これから健康経営が当たり前になる社会になることが予想されるため、少しでも早く健康経営に着手するのが良いでしょう。
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