プロスペクト理論とは【ビジネスにおける例などをわかりやすく解説します】

記事更新日:2022年07月24日 初回公開日:2022年07月05日

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プロスペクト理論という言葉をご存知でしょうか。私たちは常に合理的に行動しているとは言えず、常日頃から考え方に歪みを持って生活をしています。例えば、スーパーで「タイムセール中につき全品半額」という広告を見かけると、その商品が欲しくなくてもつい買ってしまうことがあるでしょう。プロスペクト理論はこうした人間の偏った見方に関する理論のことです。特筆すべき点は、この理論はマーケティングや人材育成などビジネスに広く活用できる理論であるという点です。マーケティングに従事している企業の方や経営者の方は是非ご一読下さい。

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プロスペクト理論とは

確率を歪めて認知する意思決定モデル

プロスペクト理論とは、人の判断は不確実性のある判断のとき、状況や条件によって合理的な価値判断ができなくなる場合があるという理論です。行動経済学者のダニエル・カーネマンによって提唱されました。プロスペクトは英語で「見通し、予想」という意味を持ち、文字通り人間の予測能力に焦点が置かれています。後にも述べますが、この理論は恋愛やギャンブル、マーケティングや人材育成など日常における様々な面で応用されています。

プロスペクト理論の柱

価値関数

プロスペクト理論の柱となる概念、つまり人間の価値決定をゆがませる要因は大きく分けて2つあります。その1つが価値関数と呼ばれるものです。これは人間の価値の感じ方やゆがみを説明するもので、得をしたときの幸福感よりも損をしたときの損失感の方が大きいということを意味します。例えば、同じ金額なのにも関わらず5万円をもらったときの幸福感よりも5万円を失ったときの喪失感の方が大きく、その差は2.25倍であると示されています。

確率加重関数

確率加重関数は文字通り確率に関する理論であり、実際の確率と感覚上の確率の関係を表したグラフです。これは、高い確率を低く感じ、低い確率を高く感じるというものです。40%より上は実際より低く、40%未満は実際より高く見積もる傾向にあります。例えば、「1%の確率で100万円が当たるくじびき」と聞くともしかしたら当たるのではないかと数値以上に希望を持ちます。また、「手術の成功率は99%」と聞くと、もしかしたら失敗してしまうのではないかと数値を低く見積もります。このように、数値を数値として受け取らず感覚と実際に差が生まれることを確率加重関数は示します。

プロスペクト理論による心理作用

損失回避性

価値関数から生じる人間の心理作用が損失回避性と呼ばれるものです。先ほど価値関数は、損をした時の損失感が得したときよりも大きいということを示しました。つまり、人間は得をするために行動するよりも、損をしないために行動します。これが損失回避性というものです。例えば、「コインを投げて表がでたら10000円がもらえて、裏が出たら10000円を支払わなければならない」という選択肢。もしくは「無条件に5000円がもらえる」という選択肢。この2つのどちらかをすると、損失回避性から後者を選ぶ人が多いです。

参照点依存性

参照点依存性とは、人間は絶対的な価値基準を持っておらず、自分が設定した基準からの変化でものの価値を決める心理作用のことです。わかりにくいので例を用いますと「定価が100円のおにぎり」と「定価が120円で割引で20円差し引かれたおにぎり」。この2つは両方とも100円ですが、皆さんも実感するように後者の方を価値が高いと考えられます。これが参照点依存性であり、もともと高かったという価値を基準に値段を考えるのです。

感応度逓減性

感応度逓減性とは、同じ利益や損失でも、その母数が大きくなればなるほど感度が鈍くなる心理作用のことです。これも例を用いると、「1万円の商品手数料5000円」よりも「10万円の商品手数料5000円」の方が手数料が少ないと感じることです。逆に、「1万円の商品を買ったときに5000円の商品券がつく」。「10万円の商品を買ったときに5000円の商品券がつく」。この場合後者の方がお得感が薄れるでしょう。つまり、扱う金額が大きくなるほど、その際に生じた損失や利益を小さく見積もってしまいます。

プロスペクト理論の身近な例

返金保証

プロスペクト理論が見られる身近な例として返金保証が挙げられます。「はじめてのお客様でも安心の30日間保証」「ご満足頂けなければ全額返金致します」。こうした広告をよく目にしますが、これは損失回避性を利用した一例と考えられます。なるべく損失を抑えたい消費者にとって、商品が満足できないかつお金を払ってしまったことは最大の損失となり得ます。こうしたリスクを返金保証はやわらげることで、消費者の購買意欲を高めるという効用を生み出しています。

恋愛

恋愛においても実はプロスペクト理論が見られます。何度もデートを繰り返していくうちに、当初感じていたドキドキが徐々に薄れていく傾向はプロスぺクト理論によって説明ができます。恋愛におけるときめいた感情を価値とすると、その感応度は時間とともに逓減されていきます。また、お互いに既に恋愛感情が薄れつつあるのに関係維持しようとすることは、損失回避性から説明することができます。今の恋人がいることによる小さな価値よりも、恋人がいなくなるという損失の回避を重視する傾向が強いということです。

投資

投資においてもプロスペクト理論が見られます。例えば、最初は1000円儲かっただけで嬉しい気持ちになりますが、徐々に感覚が逓減されていくことで利益に満足しなくなっていきます。次第に投資する金額にレバレッジをかけるようになり、5万10万と目標額を増やしていきます。これは感応度逓減性の点でプロスペクト理論が見られる一例と言えます。ギャンブルがやめられなくなる理由も同様で利益を貪欲に追い求め続けた結果と言えるでしょう。

宝くじ

宝くじの一等の当選確率は一般的に1000万分の1と言われており、確率に直すと限りなくゼロに近い数字となります。しかし、宝くじを買う人は数多く存在します。この原因も同様にプロスペクト理論から説明することができます。購入する人はこの低い確率を高く見積もる、つまり確率加重関数に基づいたバイアスから分析可能です。結果的に彼らは当たる確率はゼロではなく必ず誰かが当たっていると考え、購入するという行動にでます。

プロスペクト理論のマーケティングにおける活用

価格決定への応用

プロスペクト理論は価格決定への応用が可能です。参照点依存性を応用すると、「商品の価格を設定する際にあえてその商品の定価を高くして値引き価格と共に表示すると効果的である」と言えるでしょう。消費者は定価と割引価格を比較して、その差分の損失を防げることに大きな価値を置くことで購入しやすくなります。また、割引価格では提示せずキャッシュバックキャンペーンという形で購入後に現金やポイントで消費者に価値を返還する応用も存在します。

商品価値の訴求への応用

マーケティングにおいて高い商品価値をもたらすこともプロスペクト理論の応用によって可能です。例えば「顧客満足度95%」という文言は、ほとんどの人がこの商品に満足しており安心であるという印象を与え、損失を生じさせないという損失回避性が働きます。これにより、消費者に対して損をさせないという価値を訴求することが可能となります。他にも、前述した返金保証や商品のアフターサポートも損失回避性をもたらし、価値の訴求につながります。

コピーライティングへの応用

宣伝に用いられるコピーライティングにもプロスペクト理論は応用可能です。例えば、フィアアピールという手法が挙げられます。これは文章に不安や恐怖をあおる内容を入れて損失回避を作用させて購買意欲をかき立てるものです。つまり、その商品を買ったときに生まれる効用よりも買わなかった時に起こりうるリスクを書く方が商品が売れやすいということです。ただし、あまりにも不安や恐怖をアピールしすぎるとそこから目を背けてしまうので程度には注意する必要があります。

プロスペクト理論の組織における活用

人材成長を容認できる環境作り

組織の形成においても、プロスペクト理論を活用することができます。その点から、人材成長を容認できる環境作りが重要だと言えます。何度も述べますように、人は損失の回避を利得の追求以上に意識して行動します。これは仕事においてもそうであり、従業員は常にリスクをできる限り減らして働くために、人材の能力が引き出しされていない可能性があります。会社が人材の成長を容認し、失敗を恐れずに挑戦できる組織の形成目指すことが重要となります。

挑戦を評価した昇進制度の採用

社内において挑戦を評価した昇進制度を採用することも重要です。従業員の意識をリスクマネジメントから挑戦に移行させることで社内の発展を目指すには、いかに従業員に挑戦に価値を見出させるかが肝心です。その一つの手段として挑戦を評価することが考えられます。昇進や昇給にはいくつか基準が存在しますが、そのうちの一つとしてリスクを気にせず前進的であるかを評価することもかなり重要といえます。これにより社内のイノベーションにつながる活気的な考えも生まれやすいでしょう。

労働者の不利や損失を補完する取組

従業員の不利や損失を補完する取り組みも重要と考えられます。上記で述べた挑戦することへの促進と同時に、失敗したときの損失やリスクを従業員に感じさせないことも必要です。具体的には、労災保険に加えて生命保険や医療保険のサポート、仕事上の損失を部分負担するような制度が挙げられます。また、制度とは別に失敗を恐れないという会社内の雰囲気を作っていくことも重要でしょう。常に会社全体がそれを意識できるように、経営理念に組み込むことも十分有効と考えられます。

まとめ

プロスペクト理論を活用してビジネスや人事に役立てましょう

プロスペクト理論の活用は様々な範囲に及んでおり、特にビジネスにおいて利用できる場面がたくさん存在します。マーケティング事業に携わっている方には、プロスペクト理論の説明する人間の性質や偏ったものの見方をよく理解しましょう。そして、商品の売上向上に是非役立てて下さい。人材育成に関わっている方も同様に、従業員の能力を存分に引き出し、社内のパフォーマンスの向上ができるようにプロスペクト理論を応用し、是非会社の発展につなげて下さい。

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