記事更新日:2023年10月03日 | 初回公開日:2023年10月03日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報ライフキャリアレインボーとは、キャリアを生まれてから死ぬまでの人生全般と捉えた役割の組み合わせとする理論のことです。樹木の年輪のように複数のキャリア層がロール状になり、虹のように見えることに由来しています。キャリアレインボーという概念は、アメリカの教育学者であったドナルド・E・スーパー氏が1950年代に考えたものです。キャリアを職業だけでなく、個人の成長や生活の変化などもキャリアとして捉え、それぞれのライフステージにおいて欲するものを実現すべきだという考えに基づいています。
一方、厚生労働省では「キャリア」について、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を示すものであると定義しています。これは平成14年7月に報告された労働市場政策研究会の報告によるものであり、職務経験などに限定された狭義の意味でのキャリアです。キャリアレインボーという概念での「キャリア」は、ライフステージでの役割などもキャリアとして捉えた広義の意味でのキャリアになります。意味に大きな違いがあるとともに人生全体をキャリアとも考える全く異なる発想です。
ライフキャリアレインボー提唱者であるドナルド・E・スーパー氏は、ライフステージのキャリアに注目しました。1950年頃までは一般的な人々は一つの職業を全うすることが普通であり、熟年になっても大きな変化がないまま一生を終えるのが普通でした。しかし、1950年代を境に職業に適応するように職業指導などが生活の中心になっていた時代から、生活の一部分を職業が占める時代へ変化します。充実した職業人生だけでは十分ではなく、ライフステージに合わせた多くの満足感獲得を考えるようになったのです。
キャリアプランに関する調査結果では、約半分の人が将来について考えていないと答えています。現状の狭義の意味で仕事中心を意味するキャリア形成などで多忙となり、将来へのことが考えられない若者も増加しているのが現状です。もしくは具体的にライフステージを考えることができず、そのときに自分の果たすべき役割を考えることも難しくなっています。本音で言ってしまえば将来よりも今が大事であり、いま充実していて楽しければ良いと考える人や、考えるのはまだ早いと思っもいる人も多いようです。
ライフキャリアレインボーが注目されるようになった大きな一因は、医学などの進歩により人の寿命が大きく伸びたことです。これから先は、人生100年時代が到来するとも言われています。職業に就く時間は人生の半分以下になるかもしれません。幼少期より学業に専念する青年期を経て職業に就きます。職業も転職が当たり前となった今日では一つの職場にとどまる方が珍しいことです。また仕事を辞めても人生の三分の一は残っており、ライフステージごとの役割を早期に考える時代に突入しています。
ライフキャリアレインボーが注目されるようになった理由に、女性の働き方や人生観が大きく変化したことが挙げられます。戦前の日本では男性が働き女性は家を守るという古典的な考え方が主流であり、異を唱えることさえ憚られる状況でした。時代の変化により女性の社会進出も増加し、有能な人材であれば男女問わず重用される時代になっています。他国に比べれば日本は遅れを感じ得ませんが、仕事と家庭を両立する女性が増えているのが現状です。女性の職業意識や地位や待遇の変化により、女性自身の将来設計も変化し、いまライフキャリアレインボーが注目されています。
昨今のテレワーク普及により、仕事とプライベートの境目が曖昧になったことも、ライフキャリアレインボーが注目されるようになった一因と言えます。逆に言えば仕事とプライベートの両立も可能となり、選べるライフスタイルの選択肢が増えたからです。以前のようにオフィスにこもって作業をするのが仕事ではなく、過ごしやすい環境の中で伸び伸びと仕事をすることも可能になりました。他にも副業禁止から、自由な時間を有効に使うために副業を奨励する企業も増えています。高齢になってからの転職者も増加し、生き生きと働くシニアおよびマスター世代も増加傾向です。
ライフキャリアレインボーの大きなメリットは、社員がこれまで歩んできた人生を知ることができることです。一度立ち止まり、いままでの自分の人生を振り返ることで、自分の人生を客観視することができます。多忙の中では感じられなかった疑問なども湧き出てくるでしょう。これからどんな人生を送るべきか、真剣に考える必要があることに気付くことができます。これまで歩んできた人生を振り返り、これから歩むべき人生を考えることで、より充実した将来のライフおよびキャリア形成を考えることができるでしょう。
個々にライフキャリアレインボーをイメージしてもらうことは、人材育成に活用できるメリットがあります。キャリアレインボーの図を作成することにより、自分が今まで何をしてきたかが鮮明に自覚できるでしょう。そして、これからの職業人生をどのように生きるかという目標を持つことができます。目標を持って仕事をすることは作業の効率化やモチベーションアップに繋がります。人材育成の第一段階としてライフキャリアレインボーの意識付けを行うことは、人材育成に大きな効果をもたらすはずです。
自分の将来像をイメージして可視化できるライフキャリアレインボーは、仕事においては特に重要です。数年の経験を積んでキャリアアップした自分が、これから何を目指していけばいいのか考える岐路になり得ます。漠然と作業を続けるだけでは個人としても企業としても大きな成長は見込めないでしょう。新しいことにチャレンジする他に、仕事以外のキャリアと組み合わせることなどでも、大きな成長に繋げることが可能です。一人の人間としての将来像を見つけることは、人生を変える転換期にもなるでしょう。
ライフキャリアレインボーのデメリットとされるのが、退職者を出す可能性があることです。前述のように自分の人生を振り返ることで、これからの人生設計を考え直すことも多くあります。仕事ばかりに没頭して、人生のステージを忘れていたことに気付く人もいるでしょう。転職も珍しくない昨今では、人生を変えるために退職を決意する人が現れたとしても不思議ではありません。しかし、会社が本当に社員のことを考えるならば、退職という決断さえも受け入れてあげることが重要だと言えます。
ライフキャリアレインボーは頭に思い浮かべるだけでなく、実際に人生のステージを幼少期から書き出してみるのが効果的です。年代別に重ねていくことで、いままでの人生が良く分かるようになります。そしてライフキャリアレインボーを書く時には、ワークシートを活用するのが良いでしょう。横軸を10年ごとに区切り、縦軸はライフステージの役割と言える「子供」「学習者」「余暇人」「労働者」「市民」「家庭人」「親」などで区切ります。こうしたワークシートに記入していくと、簡単にライフキャリアレインボーを書き出すことが可能です。
ワークシートには現在の状況を整理して書いていきます。現在の年代にあたる場所に、役割ごとの重みをパーセンテージで書き、現状も具体的に書いてみましょう。例えば社会人一年生であれば、労働者としての重みが最も大きく占めることになるかもしれません。また、親に対する子供の部分もあるのならば、その重みも書くことになります。自分が親になっていなければ重みは0%です。具体的なことも書く必要はありません。他の余暇人や家庭人としての重みや具体的内容も書いてみてください。
現状の次は過去を振り返ってワークシートの空欄を埋めていきます。現在よりも前のことですので、子供の頃から学生であった頃の自分を思い出して書いてみましょう。現状を書いたときのように、ステージごとの重みをパーセンテージで書き、具体的にどんなことがあったのかを書いておくと将来を考えるときにも役立ちます。10年ごとに区切って書いていくことで、自分の役割が徐々に変わっていったことが良く分かるはずです。自分のために書くライフキャリアレインボーですので、飾り立てずに正直に書きましょう。
最も難しいのが、将来について考えてワークシートに書き込むことです。ただし現在の自分が思い描く将来像なので、変化しても問題はありません。いま思う自分の未来を想像して書いていきます。もちろん「こうなりたい」という自分の理想形を書くのですが、これもステージごとに分けて書くことが重要です。現状と過去と同じように、各ステージの重みをパーセンテージで書き込みます。つまり最も大事にしたいステージに大きな数字が入ることになり、自分が最も重要と考えるステージです。そして、そのときにどうありたいかを具体的に書いてみましょう。
こうして将来像も10年ごとに書いてみることで、自分の将来像をはっきりと意識することができます。目標とする最終的な未来像を現実のものにするためにも、段階的な変化を記入することは大事です。年をとってからでも学習人として学びたいこともあるでしょう。また、子供としての自分も両親が健在であれば、何かしたいこともあるに違いありません。忘れているのであれば、この機会に良く考えてみましょう。重要なことはバランスよく役割をこなすことです。ただし、そのバランスは個々によって異なり、何を重要に考えるかも個人の自由であり、誰かに決められるものではありません。
ライフキャリアレインボーを書くことにより、過去の自分や現在の自分の状況を客観的に見る良い機会が得られます。そして、それまでに不足していた自分に気付き、その後にしたいことや役割なども気付かせてくれるでしょう。そうした機会を社員に与えることで、社員は人として大きく成長することができます。企業が本当に社員を大切に思うのであればこそ、社員に気付きの場を与えることは重要なことです。ぜひ、ライフキャリアレインボーを活用し、社員の双方が成長でき相互理解が深まるよう努めていきましょう。
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