ハードシップとは?【意味や活用事例を徹底解析します】

記事更新日:2021年04月26日 初回公開日:2021年04月23日

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「ハードシップ」とは、日本語に訳すと一般的には「苦難」や「困難」を指す言葉です。しかしビジネスにおいては、大きく異なる3つの意味合いを持っています。ここでは、「ハードシップ手当」「ハードシップ条項」「ハードシップ免責」の3つのビジネス用語について詳しく解説します。いずれも世界でグローバルに活躍する人材には知っておくべき言葉と言えるでしょう。企業で今後海外への赴任を考えている方や予定している方とその担当者、または外部との契約締結を担当されている方に、ぜひお役立ていただきたい内容となっています。

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ハードシップとは

苦難や困難という意味

ハードシップとは、日本語に訳すと「苦難」や「困難」のことを言います。世の中には、普段の生活の中だけでも多くの困難が待ち受けており、時にはそれらに立ち向かわなければなりません。しかし、ビジネスにおいての「ハードシップ」には、大きく分けて3つの意味があります。1つは、海外の衛生環境やライフラインが整わない場所へ赴任する際の「ハードシップ手当」、2つめは英文契約書の「ハードシップ条項」、最後は条件を満たすことで個人再生を免責される「ハードシップ免責」です。

英文契約書ではハードシップ条項のこと

最初に、ひとつ目に挙げたハードシップである、英文契約書においての「ハードシップ条項」について説明します。ハードシップ条項とは、契約を締結する時点では予想のできなかった環境変化や、顕著な経済の変動、また市場価格の高騰などが起きた場合の当事者間の取り決めです。そのような事態から契約履行が困難になり、どちらか一方が不当に不利益を被る場合など、当事者間で話し合いを持ち、契約条件を変更できると定めています。

ハードシップの使用例

ハードシップ手当

海外駐在員に支払われる手当てのこと

ハードシップ手当とは、海外駐在員に対して支払われる手当です。生活水準や様式、社会、気候風土の違いが原因となる、肉体的負担・精神的負担などを考慮して支給されます。日本よりも生活水準が低い開発途上国の駐在員に対して支給されることが一般的です。生活や仕事の不便さに手当をつけ、駐在員に納得してもらうことが目的の手当となっています。しかしハードシップ手当は、駐在員ごとの感覚が基準となるため、金額の設定が困難です。そこで一般的には「外部の専門機関による、海外の生活水準調査等に基づいて金額を設定」もしくは「現在、現地に駐在の従業員の意見を取り入れて金額を設定」するなどの方法で決定しています。

ハードシップ手当の算出方法

ハードシップ手当の算出方法については、マーサージャパンの指数が知られています。マーサジャパンは、世界の都市450か所の、生活環境査定のために必要な重要項目39種について評価を実施しています。調査項目は10のカテゴリーに分類され、「政治・社会環境」「経済環境」「社会文化環境」「健康・衛生」「学校と教育」「公共サービスと交通」「レクリエーション」「消費財」「住宅」「自然環境」の項目を2つの国の相対的な差異を比較することにより算出します。

国別のハードシップ手当の相場

ハードシップ手当には国別の相場があります。「労政時報」が、現地法人や海外支店、駐在員事務所を持つ企業を対象として2015年に行った調査をもとにして説明します。現在ハードシップ手当を支給しているのは全体の72%の企業で、金額はインドへの赴任者の平均が122,596円(最高262,500円/最低20,000円)、中国の平均が48,128円(最高150,000円/最低9,000円)、ブラジルの場合が平均67,900円(最高185,000円・最低10,000円)となっています。

ハードシップ手当を利用する際の注意点

ハードシップ手当は、開発途上国や危険地帯への赴任の負担を軽減しますが、情勢によって随時見直しが必要です。数年前までライフラインが整っていなかった地域でも、あっという間に発展を遂げ都市へと変貌する場合があります。そのように利便性が増すと、最初の設定では見合わないハードシップ手当を支給し続けることになります。また、見直しによって手当が減ると、駐在員によっては給与を減らされたように感じる場合もあるでしょう。このように、ハードシップ手当はあくまで地域情勢に応じて支払われる手当であり、海外赴任の手当ではないのです。

ハードシップ指数

世界環境指数のこと

ハードシップ指数とは、「世界環境指数」のことです。世界生活環境指数は、東京を100とした場合の、「政治環境」「経済環境」「社会文化環境」「生活物資調達環境」「自然環境」「遠隔性」「安全度」「快適度」「便利度」の項目別の指数、そして総合指数を指す言葉です。社員を海外に派遣する場合、企業は常に現地での生計費と併せて、生活の環境も把握しておかなければなりません。加えて、派遣した都市と日本での生活環境差となるハードシップを、状況に即した形で給与に反映させるのが望ましいと考えられています。 現地での生活環境や格差について、客観的・定量的に把握して格差を指数化すべく開発されたものを「世界生活環境レポート」と言います。

過去の指数も参考に今後の指数を考える

海外での安全度には、治安や衛生、ライフラインなど、生活上の困難さなど、様々な要因が関わっています。国・都市の情勢や環境、状況は絶え間なく変化し、流動的です。多国籍企業が従業員を海外派遣する際には、海外駐在員となる社員の身辺の安全を守ることは、企業にとって最重要と言ってよいでしょう。適切な手当を保つためにも、そのため、ハードシップ指数は現在の派遣先の一時的な状況だけで決めるのではなく、過去の指数も参考にする必要があります。

ハードシップ条項

契約締結時に予想されなかった自体が起きた時話し合いにより解決すること

一方「ハードシップ条項」とは、契約締結時に用いられる条項のことを言います。契約の締結の際に予想できなかった事態が後になって起きた際、契約の条件を変更するなど、当事者間で話し合って解決することです。契約書では「当事者による合理的な支配が及ばず、契約条件に該当しない事態が生じた時、一方の当事者に著しく不利となって契約履行が困難な場合、両当事者は妥当な合意が図れるよう、速やかに協議するものとする」などの表現で用いられます。

不可抗力条項との違い

ハードシップ条項は、契約不履行になる「不可抗力条項(Force Majeure)」とは異なります。ハードシップ条項の場合は、履行は可能であるものの、環境の変化によって困難である場合に適用されるものです。例えば自然災害が発生した場合、取引が履行できない、履行が送れる、取引の一部しか履行できないなどのトラブルが発生します。この場合、当事者同士の協議での解決は事実上不可能です。このような不測の事態のために不可抗力条項を定めておいて、不履行の責任を免除します。

ハードシップ条項で規定される内容

ハードシップ条項は、契約の締結時に予測できなかった不測の事態の発生した場合に発効します。どちらかの立場の当事者が著しく不利な状況に追い込まれるなどして契約履行が困難になった時に、当事者同士で契約内容の変更を誠実に協議する、という内容です。例えば、「あらゆる不測の事態に「備えることが実質的に困難であること」を前提とし、「当事者の合理的な支配ができない状態で、契約条件のいずれにも該当しない事態が生じ、一方の当事者にとって著しく不利となり、もう一方に多大な利益をもたらす場合には、お互いに受け入れ可能な合意を得るため誠意をもって協議する」などの文言を用いて規定します。

ハードシップ免責

残りの負債を免責できる可能性のこと

ハードシップの3つ目は「ハードシップ免責」です。個人再生が認可され、計画通りに順調な返済をしている場合でも、病気や事故による怪我、リストラなどのために返済ができなくなることがあります。「ハードシップ免責」とは、そのような予測不可能な事態が発生して再生計画が難しくなった場合、残った債務を免責できる可能性のある救済制度です。しかしハードシップ免責を認めてもらうためには厳しい条件があり、制度の利用者は極めて少なく、年間でも数件となっています。

コツコツと返済した人の救済目的がある

ハードシップ免責は、誰でもが利用できる制度ではありません。後から挙げる条件にもある通り、コツコツと誠実に返済を続けてきた人をいざという時に救済できるように作られているからです。返済も終盤となり、あと少しで完済となるにもかかわらず、突発的・偶発的な事情で自己破産するのはあまりに無常と言えるでしょう。ハードシップ免責の制度を利用できない場合は、自己破産が待っています。再生計画が実行されない場合、債権者が裁判所に再生計画の取り消しを求め、個人再生によって圧縮されていた借金が元に戻ってしまうからです。

ハードシップ免責は条件がある

ハードシップ免責には4つの条件があります。ひとつは「再生債務者の責めに帰すことができない事由」で、債務者が自分でどうこうできない事情で収入が断たれ返済が困難になったというう意味です。2つめは「再生計画の遂行が極めて困難な状態」、民事再生法の「再生計画の変更(延長)制度」利用で返済ができない場合です。3つめは「再生計画の返済金額のうち、すでに4分の3以上が返済済み」であること、そして4つめは「債権者の一般の利益に反していないこと」とし、自己破産で債権者に配当される財産よりも多い金額を返済していなければ、対象とはなりません。

ハードシップの活用事例

海外転勤が起きた時

会社から海外転勤を命じられた際は、勤務地次第で日本のように安全が保障されていない地域もあることに注意しましょう。ライフラインや衛生環境、治安など、日本と大きく異なる国も少なくありません。その際の「ハードシップ」は、その地域の危険度を金銭的な手当てによって補償を行おうとする「ハードシップ手当」です。勤務地が中近東やアフリカ、アジア、南米の場合に支払われています。ただし、勤務地が治安が良いとされるヨーロッパなどの先進国の場合は支給されてないことが多いようです。

契約者との取り決めを覆す時

また、「ハードシップ条項」は、契約締結の際には想定不可能だった何らかの重大な事柄の発生で、契約者間で話し合い、取り決めを覆す場合に利用する条項です。例えば、売買契約を締結した後で、原材料の価格が高騰し契約書の販売価格で販売できない場合があたります。この場合売主は、契約の内容通りの価格で販売できるので、債務の履行義務を負うことになります。ですが、売主が不当に不利、買主が有利な結果となります。このような事態に陥った場合に、ハードシップ条項で契約内容の再検討を定めておきます。

負債の救済

「ハードシップ免責」は、再生計画の返済があと少しで完済できるにもかかわらず、やむを得ない状況で返済ができなくなった場合の救済措置です。制度利用の一例を挙げると、小規模個人再生を行って借金を地道に支払ってきた人が、妻の大病のために返済が滞ってしまったとします。妻のパートの収入を返済計画の前提にしていたため、ここで返済は頓挫することになりました。しかし、前項で解説の4つの条件を満たしていることを証明することで、ハードシップ免責の制度を利用できます。

まとめ

いろいろな場面でのハードシップ を活用してみましょう

ハードシップには「ハードシップ手当」「ハードシップ条項」「ハードシップ免責」の3つの異なる意味があることを詳しく解説しました。同じ「ハードシップ」という言葉を用いていても、場面ごとに違った意味合いで使われていることがわかります。しかしいずれの場合も、窮地に立たされた自分自身の身を守るための制度であることは同様です。それぞれのハードシップを知り、ビジネスの様々な場面で活用することは躊躇なく世界を駆けるためにも必要です。グローバルなビジネスマンとして活躍を目指し、より視野を広げましょう。

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