みなし役員とは【要件や具体的な判定基準などについて解説します】

記事更新日:2022年09月08日 初回公開日:2022年09月05日

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一般的に使われている役員は会社法上の役員である経営者、取締役、会計参与、監査役が該当し、登記されています。また同族企業では親族を役員として雇用している場合や従業員として雇用している場合もあります。そのうちで親族を従業員として雇用していたにもかかわらず税務調査で「みなし役員」と判定されて思わぬペナルティを被るケースが増えています。親族がみなし役員と判定されると賞与は税務上で,役員賞与扱いとなり損金計算できなくなるなど思わぬ落とし穴があります。この記事ではみなし役員に該当する場合の条件や詳細、給料や賞与の扱い、社会保険や雇用保険、企業の経費について解説していきます。

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みなし役員とは

法人税法上の役員

みなし役員とは登記されていない役員のことで、登記されていなくても役員とみなされます。みなし役員は同族企業に該当するケースが多く、中堅・中小企業だけでなく、日本では多くの上場企業も該当します。役員には「税法上の役員」と「会社法上の役員」の2種類があります。このうちみなし役員は税法上の役員に該当し、法律によって役員の範囲が異なります。税法上で一定の要件を満たすとその者は役員と同様とされ、みなし役員と判定されます。みなし役員に該当すると給与やボーナスなど制限がかかります。

みなし役員と従業員の違い

給与

みなし役員は自身の給与を決めることができる立場となりますので、役員報酬を引き上げて利益を減らし,課税を免れるなどの手段を行うことができますので、一般的な従業員とは異なり給与については大きく制限されます。例えば、利益調整ができないように毎月定額となる「定期同額給与」としなければなりません。よって節税として決算前に役員報酬を上げることで利益を抑えるということはできません。役員報酬額を変えられるのは毎年の決算日後3ヶ月以内の一度のみと定められています。

ボーナス

役員やみなし役員がボーナスをもらうケースはほとんどありません。理由は一般社員の従業員は年2回のボーナスが支給れることが多いですが、役員やみなし役員は支給をしても税法上の損金にはならないからです。役員賞与を支給するためには、税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出する必要があります。また届け出た金額や支給時期通りに支給しなければ税務署から損金参入は却下されます。よってデメリットを考慮すると役員報酬に賞与分を含むのが一般的とされています。

退職金

みなし役員の退職金は一般の従業員と異なります。一般の従業員は勤続年数や給与、役職などにより退職金を算定するのが通常です。みなし役員は役員と同等の扱いとなります。これにより過大な退職金は損金にすることができないなどの制限を受けることになります。役員やみなし役員の退職金は株主総会で適正金額、支払い時期、支払い方法を決定します。一般的に退職金額は役員報酬額と役員在籍期間と功績倍率から算出されます。支給した退職金は適正な額であれば、原則として額が確定した事業年度に損金として参入することができます。

雇用保険

基本的にみなし役員は一般の従業員と異なり被保険者となるため雇用保険法が適用されません。みなし役員は税法上の経営従事者として扱われますので、例外として一定の条件を満たせば雇用保険が適用されます。例えば使用人兼務役員とみなされ、かつ業務内容や報酬の実態からみたときに一般の従業員と同様と見做された場合には雇用保険への適用がなされます。ただしみなし役員は経営従事者であることが前提となりますので、雇用保険の適用対象かどうかを確認しておく必要があります。

社会保険

経営者の配偶者が役員またはみなし役員となる場合、一定の条件をクリアすることで社会保険及び厚生年金にも加入することができ、経営者と配偶者の両方が年金に上乗せして厚生年金も受け取ることができます。また、みなし役員の働き方に関わらず社会保険への加入は申告制のため,社会保健の加入はしないことも可能です。ただ非加入の状態で常用的な勤務の実態が認められると、過去分に遡って社会保険料を徴収された事例があります。また社会保険に加入する必要のある人為の手続きを怠ることで年金額が下がり,実際に支給されるべき年金額との差額を請求されるケースがあります。みなし役員の雇用実態とかけ離れた申告には注意が必要です。

みなし役員のメリット

所得税を節税できる

会社として家族を役員にすることは税務上のメリットである節税が大きいと言えます。なかでも所得税は累進課税制度となるため、個人の収入が大きくなればなるほど税率が上がっていきます。そこで経営者と配偶者、近親者を役員や従業員とすることで一人あたりの収入を抑えることができ、支払う税金の税率は低くなります。例えば2,000万円の収入を経営者が一人で受け取るよりも経営者が1200万円、配偶者が800万円といった形で家族である役員やみなし役員には分配した方が所得税が小さくなり、税率も低くなります。また親族へ給与を払うことで会社の経費とすることができるので、会社の利益を下げて法人税の節税を行うこともできます。

相続税や贈与税を節税できる

家族を会社役員やみなし役員にする税務上のメリットは他にもあります。財産を相続するときや贈与するときにそれぞれかかる相続税や贈与税も節税することができます。相続税や贈与税も所得税と同様に累進課税制度となっており、どちらとも財産の多さによって10〜55%の範囲で課税されます。これらの財産を役員報酬として家族や近親者に給与として支払うことで相続税や贈与税を抑えることができます。また経営者が亡くなった際の遺産相続を行う場合、配偶者が仕事をしておらず貯蓄能力がないと判断れた場合には全財産が経営者のものと判断され、配偶者名義分までが相続税の対象となる可能性があります。配偶者が役員またはみなし役員となっている場合の相続税の対象は経営者分のみとなります。

高額な報酬を支払える

役員またはみなし役員は一般の従業員とは給与体系が異なりますので高額な役員報酬を支払うことができます。あくまでも実務に見合う役員報酬とする必要があります。税務調査において法人の収益や役員の実務内容、一般の従業員の給与、同規模の法人との比較といった基準をクリアしなければなりません。税務調査で妥当性があると判断されれば家族や近親者に高額な役員報酬を支払うことができます。ただし役員報酬額の決定は決算日から3ヶ月以内に一度のみとなっていますので注意が必要です。また役員報酬は定期同額給与となり、内訳を役員報酬と役員賞与とすることで法人税の節税をすることもできます。

みなし役員のデメリット

役員報酬を下げにくい

役員またはみなし役員の役員報酬額の決定は決算日から3ヶ月以内に一度のみとなり、定期同額給与となります。ゆえに会社の業績とは関係なく一定の役員報酬を支払わなければなりません。業績が悪化したことで事業資金が逼迫したとしても高額な役員報酬を下げることは基本できません。やむを得ず役員報酬を期の途中で下げる場合は申告する必要があり、下げた場合には損金参入ができなくなりますので法人税が増えてしまうので下げたくても下げられないということがあります。よって役員報酬は売上予測をもとにして粗利や固定費から利益を算出した上で役員報酬は決定します。

社会保険が負担となる

社会保険料は法人と個人が折半して負担するルールとなり、法人負担分は会社の経費となり、個人負担分は所得から控除されます。社会保険料は役員またはみなし役員の役員報酬が高額になると負担も大きくなります。また社会保険料の節税の方法として役員の賞与支給があります。基本的に役員には賞与を支払うことができませんが、税務署に事前確定届出給与を提出することで役員にも賞与を支払うことができます。賞与に対する社会保険料には上限が設けられているため節税をすることが可能となります。

みなし役員の要件

使用人以外の者で法人の経営に従事する者

役員は会社法上および税法上の2種に分かれ登記がされている経営者や取締役、会計参与、監査役などが該当します。みなし役員とは税法上の役員を指し、登記に関係なく役員とみなされて役員と同等の扱いを受けているなど一定の要件を満たしているものが該当します。取締役として登記されていない会長や相談役、顧問などが該当し、実質的な役員とみなされて役員報酬などの制限を受けることになります。みなし役員とみなされた場合は役員同様に給与は定期同額給与となり年に一度決定します。業績に応じた賞与などは基本貰うことはできません。

使用人のうち次の要件をすべて満たし法人の経営に従事する者

会社の株主や株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や会社のことを株主グループといいます。その経営に従事しているものが所有する株式の割合に応じてみなし役員かどうかを判断します。これを株主所有割合といい、以下の全ての要件を満たしているものがみなし役員となります。①株式所有割合が50%超となるまでの第3順位までの株主グループに属している。②属している株主グループの割合が全株式の10%を超えている。③使用人とその配偶者などの株式所有割合の合計が5%を超えている。④会社の経営に従事している。

法人の経営に従事とは

みなし役員であるかどうかを判定するときに基準のひとつとなるのが経営に従事しているかどうかが重要となります。会社の経営に従事しているものとは「主要な業務執行の意思決定に参画しているもの」とされています。この基準については税法上で明確に定義されているわけではないので税務調査で論点になることが多いようです。論点なるのは会社の経営で重要な決定をする場合に参画しているかどうかと言われています。出社頻度や給与額、勤務時間などの条件はあまり関係ありません。みなし役員に該当するか迷ったときは専門家に相談しましょう。

みなし役員判定の具体例

役員の配偶者

役員としての登記をしていない経営者の配偶者はであってもみなし役員と判定されるケースがあります。前述の株主所有割合の①〜③に該当した上で会社の経営方針において重要な立案や決定を行なっているかどうかの「経営に従事している」か判定基準となります。よって会社で経理のみの実務をしている場合はみなし役員とはならないと判定されます。また株主所有割合において配偶者が所有割合が5%以下の場合でもみなし役員と判断されるケースがあります。株主所有割合③の経営者と配偶者の合計が5%超に該当するとみなし役員と判定されます。

執行役員

会計法上で執行役員は役員ではなく従業員に分類れており、法人税法上も役員には該当しないとされています。近年、取締役会の適正化が図られ、取締役の人数や役割を見直す企業が増えています。その流れの中で執行役員制度を導入する企業が増え、執行役員が経営で重要な役割を担うケースで「経営に従事している」と税務調査で認められたときに法人税法上のみなし役員と判定される可能性が高いと考えられます。税務調査で執行役員がみなし役員と判定された事例も聞かれることから、改めて自社の執行役員が経営に従事していると判定されるかを専門家に相談して準備を行うことが重要です。

まとめ

みなし役員の判定に注意し報酬や保険を慎重に判断しましょう

役員は会社法人法と税法上の2種に分かれ登記されていなくても経営に従事していると判定された場合にはみなし役員として役員と同様の給与や賞与の制限を受けることがあります。みなし役員と判定された場合は役員報酬や雇用保険、社会保険の扱いを検討しなければなりません。みなし役員と判定されるのは「経営に従事している」かどうか、経営方針における重要な決定を行なっているかがポイントとなります。また株式所有割合に該当するケースや配偶者が所有割合5%以下でもみなし役員となるケースもありますので、経費や税務などを検討して自社の見直しを検討しましょう。

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