多能工とは【導入の手順やメリット・デメリットもあわせて解説します】

記事更新日:2022年08月18日 初回公開日:2022年08月17日

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現在、少子高齢化による労働人口の減少や働き方改革の推進が起こっています。その影響で、限られた人材を最大限に活かすことが、多くの企業の課題となっています。しかし、人事担当の方の中にはどうすればこの課題を解決できるのか、頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。そこで今回ご紹介するのは多能工という言葉です。記事の中で多能工という言葉の意味やメリット、手順や導入事例などを解説しているので、人事担当の方はぜひ参考にしてみてください。

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多能工とは

一人の従業員が複数の業務を行うこと

多能工とは、一人の従業員が複数の業務を行うことです。マルチタスクと言い換えることもできます。基本的に従業員にはそれぞれの役割が与えられており、取り組むべき仕事も決まっています。しかし、その役割を1つにするのではなく2つ以上の仕事を行うことで、さまざまなメリットが生まれるのです。多能工はもともと、製造業などの生産現場で生産性を上げるために、1人で複数のスキルを身に付けた人を指していました。そして今では、製造業以外においてもこの手法が活かされています。

多能工と単能工の違い

単能工は1つの業務に特化した人材

多能工と単能工の違いとして、単能工は1つの業務に特化した人材であることが挙げられます。単能工は、自分が担当する業務についての深い知識や高いスキルを持っています。そのため、大量生産が求められる場面において、とても活躍する人材です。ところが、1つの業務のみに集中することで全体の様子を把握することが難しく、作りすぎるという問題が起きることもあります。そこで、多品種少量生産が主流の今は、多能工であることが求められます。

多能工が注目を集めた背景

トヨタ自動車が考案した

多能工が注目を集めた背景として、トヨタ自動車が「ジャストインタイム」というシステムを考案したことがきっかけと言われています。これは、必要な時に必要な人材を必要な場所へ供給するシステムです。トヨタ自動車では初め、従業員に特定の役割を与えていました。しかし、それでは作業量にばらつきが出て、忙しさにも差が出ていたのです。そこでトヨタ自動車は、ジャストインタイムを考案しました。このシステムによって、臨機応変な対応ができる従業員を育てることに成功しました。

多能工を導入しやすい業界

製造業

多能工を導入しやすい業界として、製造業が考えられます。製造業では、品質とコストと納期が大切な要素です。現代では品質を保つことが当たり前とされ、原材料の価格高騰からコスト削減も難しいため、納期が競争力の決め手になります。そこで、多能工を育てて機械を動かすことのできる従業員や、トラブルに対応できる従業員を増やすことが必要です。多能工化が進むと人材を柔軟に配置できるため、機械稼働率が上がり利益の増加も見込めます。

流通業

多能工を導入しやすい業界として、スーパーマーケットなどの流通業も挙げられます。例えば、スーパーマーケットには品出しやレジ打ちなどの業務があります。品出しは早朝から午前中にかけて忙しい一方で、レジ打ちは夕方の買い物が増える時間帯が繁忙時です。従業員がどちらの仕事もこなせる体制を整えておけば、午前中に品出しの作業に多くの人を配置し、夕方にレジコーナーに多くの人を配置できます。業務量に合わせて適切に人が配置されることで、全体の生産性が上がります。

多能工を導入する手順

現状を把握する

多能工を導入する手順として、最初に現状を把握する必要があります。自社の中で優先順位の高い業務とその業務をこなすためのスキルを洗い出しましょう。そして、どの従業員を多能工として育てていくか検討します。理想は全ての従業員が多能工として活躍することですが、育成に時間がかかる上に指導者への負担も大きくなります。業務の効率化を図るためにも、重要な業務と適切な従業員を見極めましょう。また、従業員に多能工化の有効性をを伝え、理解してもらうことも大切です。

スキルマップとマニュアルを作成する

多能工を導入する手順として、次にスキルマップとマニュアルを作成します。スキルマップとは、従業員一人一人の業務で必要なスキルを表にしたものです。これを作成することで、不足しているスキルや偏っている業務などが見えてきます。スキルマップ作成後は、業務を平準化するために目標を設定し、その達成に向けたマニュアルを作成します。マニュアルを作成する際は、誰が見ても理解できるように図や表を入れ、実際の作業工程や内容を伝える工夫が必要です。

具体的な育成計画を立てる

多能工を導入する手順として、次に具体的な育成計画を立てましょう。立案する際はいつ訓練を行うのか、どのように訓練するのかなどを詳細に決めることが大切です。計画を立て終わったら、実際の業務を通して訓練を実施しましょう。訓練は従業員とコミュニケーションをしっかり取りながら進め、体調やモチベーションを調節できるような配慮が必要です。通常の業務と多能工化が同時に行われる場合は、従業員の負担にならないようバランスを考えて慎重に進めましょう。

定期的に振り返りを行う

実際に多能工化が進んできたら、定期的に振り返りを行いましょう。振り返りを行った際に上手くいっていないと感じた場合は、見直しをする必要があります。従業員を適切な業務に配置できているか、指導者が適切かなどを判断しなければなりません。そして改善を少しずつ行い、多能工を定着させていきましょう。しかし、企業側の都合ばかり優先して、従業員に何でも押し付けないことが重要です。時間をかけて育成した従業員の早期離職に繋げないためにも、様子を見ながら業務を任せましょう。

多能工のメリット

業務が可視化される

多能工のメリットは、業務が可視化されることです。多能工を育成するためには、一人一人に複数の業務を習得してもらう必要があります。その準備段階で業務についての知識や技能、手順について分かりやすく伝わるようにしておかなければなりません。可視化されることで、今行っている業務で改善の余地があるところを見つけるきっかけになります。それが結果的に、業務の効率化に繋がるのです。多能工を育てる上で必然的に付いてくる、生産性を上げるためのメリットと言えます。

仕事量が均等になる

多能工のメリットとして、仕事量が均等になることが挙げられます。繫忙期に応援に行くことや、普段から通常の業務を終えた後に、他の作業を手伝うことが可能になるからです。それによって特定の業務が遅れることや、一部の人に仕事が集中するのを防ぐことに繋がります。納期を遵守した上で、従業員の残業を減らせる可能性もあります。業務の進捗状況に合わせて適切な人材を確保できるため、このように仕事量を均等にすることができるのです。

お互いをフォローし合える

多能工のメリットとして、お互いをフォローし合えることが考えられます。多能工を育成していく過程で、従業員同士のチームワークが高まる効果が期待できるからです。さまざまな業務にあたっていく中で、それぞれの従業員と連携してお互いにフォローし合う体制ができていきます。また、業務内容がお互いに分かっていることで進捗状況も理解することができ、ストレスを溜めるリスクも軽減できます。多能工を育成することによって生まれた一体感で、業績も向上するでしょう。

市場の変化に対応できるようになる

多能工のメリットには、市場の変化に対応できるようになることも含まれます。消費者のニーズが多様化し変化し続ける中で、企業も柔軟に対応できなければ生き残りが難しいと言えます。多能工を育成しておくことで、従業員がいろいろな業務をこなすことができるため、その業務に長けている従業員がいない場合でも判断ができるのです。さらに、さまざまな業務のことを理解している従業員が増えることで、アイディアが出やすくなるというメリットもあります。

多能工のデメリット

適切な指導ができる人が必要となる

多能工のデメリットとして、適切な指導ができる人が必要となることが挙げられます。多能工を育成するには、まず多能工について理解した上で指導できる能力が必要となるからです。担当者には従業員の成長速度に合わせて指導していくことや、計画の見直しと改善などが求められます。多能工化を上手く進めていくには、育てるだけでなく普段の業務とのバランスを調整することも大切です。多能工を定着させるために、指導者や指揮者が従業員に寄り添うこともカギとなります。

実現までに時間がかかる

多能工のデメリットとして、実現までに時間がかかることが考えられます。多能工を育てる際は通常の業務と並行しなければならないため、時間がかかってしまいます。また、すぐに効果が出ないことも多能工化のデメリットと言えるでしょう。複数の業務を覚える必要があるため、複雑な業務がある現場では育成に時間がかかる可能性もあります。長い目で見て従業員を育てていくことが必要です。そうすることで、このようなデメリットも乗り越えてメリットを実感できる段階に進むことができます。

無駄な工数が発生する可能性がある

多能工のデメリットには、無駄な工数が発生する可能性があることも含まれます。多能工は1人の従業員でさまざまな仕事に取り組むために、多くのコミュニケーションが必要になります。また多能工化を進める上で、今まで以上に多くの人と情報を共有しなければなりません。それらに慣れていない場合、無駄な工数が発生する可能性が出てくるのです。多能工化の効果を短期間で期待して、結果が出ないことに諦めてしまうと、無駄な工数だけがかかって終わることも考えられるので注意が必要です。

多能工の導入事例

トヨタホーム株式会社

多能工の導入事例として、トヨタホーム株式会社が参考になります。トヨタホーム株式会社では、受注した戸建住宅の約8割までを工場で製造し、建築現場に据え置く手法を取っています。階段やキッチンなどの高度な技術を要する作業には、熟練した従業員が関わるため生産ラインと切り離されています。しかし、インターネット回線の広域化に伴って配線の担当員を増員するなどして、従業員の配置を柔軟に行っているのです。閑散期には工場内や現場に投入できる人材を育てて、多能工化を進めています。

株式会社星野リゾート

多能工の導入事例として、株式会社星野リゾートも挙げられます。ホテル業界の課題は朝と夜に仕事が集中して、昼に手待ち時間ができることでした。そこで、スタッフにホテルでの仕事に必要な技能を全て身に付けさせることで、このような時間を無くしたのです。1人のスタッフがフロントやレストラン、客室の業務などいろいろなスキルを持っていることで、時間当たりの生産性が高いことが特徴です。それぞれの従業員のスキルを上げることで、人材育成の面でもプラスの効果をもたらしています。

まとめ

多能工を導入して業務を効率的に進めよう

多能工を導入するには手間や時間がかかります。しかし、上手く取り入れることができると、業務の可視化やお互いでフォローしあうなどのメリットが生まれるのです。さらに、市場の変化に対応できることで新しいアイデアが生まれる可能性もあります。今回紹介した多能工を導入しやすい業界は、製造業と流通業でしたが、他の業界でも工夫次第で多能工を導入することはできるでしょう。自社に取り入れられる要素があるか検討し、ぜひ導入して業務を効率的に進めることに活かしてみてください。

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