社会保険適用拡大の要件とは?【企業と従業員のそれぞれのメリットデメリットなどについても解説します】

記事更新日:2023年04月13日

人事・労務お役立ち情報 用語集
2022年10月の社会保険の適用対象の拡大により、企業にとっては法定福利費が増加することになりました。パートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険加入義務が拡大されました。また従業員数が100人以下の企業にも適用されることになったのです。ここでは、社会保険適用拡大の内容や適用要件、対応方法などを詳細に説明していきます。社会保険の適用拡大は企業と従業員双方に影響が大きいものです。企業は対応に当たってメリットやデメリットを十分に理解した上で早急に対策を行う必要があります。

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社会保険とは

社員への加入が義務付けられている公的な保険制度

社会保険とは、社員への加入が義務付けられている公的な保険制度を指します。社員は社会保険に加入し、給与から保険料を天引きされるのが一般的です。社会保険には労災保険や雇用保険、健康保険や厚生年金があり、それぞれ加入条件や加入義務のある従業員の範囲が異なります。加入義務が生じる条件を正しく理解し、従業員の中で社会保険に加入しなければいけない人、未加入でも法律違反にならない人を正しく把握することが重要です。

2022年10月と2024年10月に適用となる社員の要件が拡大される

2022年10月と2024年10月に適用となる社員の要件が拡大されます。短時間労働者は勤務実態にかかわらず、条件に合わないために被保険者になれないことがありました。また加入要件を理由に働き方を変える必要がありました。そのため国は2012年の改正以降、所定労働時間や雇用期間、事業所の規模などの条件で短時間労働者への社会保険の適用を拡大してきました。2020年10月には雇用期間が常勤者と同様に2ヶ月以上となり、企業規模は2022年10月には従業員501人以上から101人以上に引き下げられ、さらに2024年10月には51人以上になります。

社会保険適用拡大の背景

保険料徴収額が労働人口の減少に伴い減少しているため

社会保険適用拡大の背景には、保険料徴収額が労働人口の減少に伴い減少しているということがあります。少子高齢化が進んでいる現在、保険徴収額は今後一層減少していくと考えられます。高齢者世帯の収入の7割を公的年金が占めているという状況からも、国は年金制度を破綻させるわけにはいきません。社会保険の適用範囲が拡大により保険料収入が増えるだけでなく、国民年金の財源とのバランスによって年金財政そのものも改善するという試算が出ています。将来にわたり年金制度を持続するためには、社会保険の適用範囲は今後も拡大されていくでしょう。

社会保険適用拡大の4つの要件

1週間の所定労働時間が20時間以上

社会保険適用拡大には5つの要件がありますが、その1つは1週間の所定労働時間が20時間以上というものです。この要件に当てはまる場合には、パートやアルバイトであっても社会保険の対象とされています。社会保険にパート労働者などが適用されない週20時間未満の労働については、現在では従業員数が501人以上の大企業だけに適用されます。中小企業では週20時間を超えていても30時間未満に納まれば保険加入の必要がありません。しかしこの制度は中小企業でも週20時間未満へ段階的に統一されていく予定です。

同じ企業に継続して2ヶ月以上雇用される見込みがある

同じ企業に継続して2ヶ月以上雇用される見込みがある場合は、社会保険適用要件の一つになります。以前は勤務期間の要件が「継続して1年以上使用される見込み」だったものが、2022年10月以降は「継続して2ヶ月を超えて使用される見込み」となりました。短期雇用の短時間労働者でも社会保険加入の対象となります。雇い入れ時に2ヶ月を超える見込みであった場合、結果として雇用期間が2ヶ月未満になったとしても、被保険者の資格取得の取り消しはできません。

賃金月額が88000円以上であること

賃金月額が88000円以上であることは、社会保険適用拡大要件になっています。ただし月額賃金(短時間労働者の被保険者資格の取得要件である月額賃金)は「標準報酬月額の基礎となる報酬月額」とは、算定方法が異なるということに注意が必要です。月額賃金88000円の算定対象は、基本給と諸手当で判断します。しかし結婚手当などの臨時に支払われる賃金や賞与など1月を超える期間ごとに支払われる賃金、残業代や通勤手当及び家族手当等は除きます。

学生でないこと

学生は社会保険の適用対象外です。学生とは、主に高等学校や大学または短期大学、専修学校に在学する生徒等を指します。ただし、卒業見込証明書を有する人で卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人は加入対象となります。また休学中の人、大学の夜間学部や高校の夜間等の定時制の課程の人なども加入対象です。さらに適用事業所で勤務し、4分の3基準を満たす場合は正社員等と同様に一般被保険者として健康保険及び厚生年金保険の被保険者となることに注意しましょう。

社会保険適用拡大のメリット

企業のメリット

保障が手厚くなり優秀な人材を集めやすくなる

社会保険適用拡大における企業のメリットとしては、保障が手厚くなることで優秀な人材を集めやすくなるということが挙げられるでしょう。また、会社への社会的な信用度が高まります。パートなどの短時間で働く方はただでさえ不安定な立場ですから、社会保険適用拡大により社会保険に入れる可能性が出てくると定着率が高まることも考えられます。人材が集まり定着率が高まることで、より経営が安定し業績アップにもつながるでしょう。

従業員のメリット

保障が充実する

社会保険の適用拡大が進むことで、企業側にだけでなく従業員側にもメリットがあります。その一つには、社会保険に加入すれば将来受け取れる年金額が増えるということです。また、万が一障害を負ったときに支給される障害年金は、国民年金の障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受け取れるようになります。さらに、医療保険の給付が充実するという点も挙げられます。全額個人で支払わなければならない国民年金に加入している人の場合には、半額を企業が負担する社会保険に入ることで負担が減る場合もあります。

扶養基準を気にせず働くことができる

扶養基準を気にせず働くことができる フルタイムのアルバイトとして働いている人は、給与天引きで手取りは減りますが、国民年金・国民保険よりも負担額が小さくなる場合もあります。トータルで考えれば、これまでよりもお得になるかもしれません。これまで、社会保険の扶養に入れるラインは年収130万円未満でした。しかし、今回の改正で社会保険の加入義務が生じる条件のひとつが「月収8.8万円以上」でしたよね。つまり、年収106万円以上稼ぐ人は、社会保険に加入し保険料を納める必要があるのです。国民健康保険に加入していた人と違ってお得感もないため、毎月の保険料が大きな負担になるかもしれません。ただし、働く時間を増やして手取りを増やす方法もあるので、双方でよく話し合いましょう。

社会保険適用拡大のデメリット

企業のデメリット

保険料の負担や管理コストが増える

社会保険適用拡大による企業のデメリットは、社会保険料負担が増加することです。基本的に社会保険料は企業が半分を負担します。厚生労働省によると適用拡大に伴い1人あたり年約24万5,000円、40~65歳であればさらに約1万5,000円の増加と言われています。飲食業界や小売業界などの短時間労働者が多い中小企業など、新型コロナウイルスの影響が大きかった業界には大きな負担となることが考えられます。労働条件や労働時間の変更など、長期的な視点で雇用状況を再考する必要があるでしょう。

h4>従業員の労働時間や労働日数が減少する可能性がある

社会保険適用拡大による従業員へのデメリットは手取り給与が下がることです。そのため手取りが下がることに同意できない従業員は、労働時間や労働日数を減らす希望をする場合もあるでしょう。収入を増やして保険料の増加を補うことが可能であれば良いのですが、勤務時間を増やせない場合は保険料の負担増加で収入が減ることになるのです。また、従業員の働き方の希望と会社の意向が合わない場合、勤務時間や雇用形態などの働き方を変える選択をしなければならないこともあるでしょう。

従業員のデメリット

手取り給与が下がる

社会保険適用拡大による従業員へのデメリットは手取り給与が下がることです。そのため手取りが下がることに同意できない従業員は、労働時間や労働日数を減らす希望をする場合もあるでしょう。収入を増やして保険料の増加を補うことが可能であれば良いのですが、勤務時間を増やせない場合は保険料の負担増加で収入が減ることになるのです。また、従業員の働き方の希望と会社の意向が合わない場合、勤務時間や雇用形態などの働き方を変える選択をしなければならないこともあるでしょう。

扶養対象となる年収基準が厳しくなる

社会保険適用拡大によって扶養対象となる年収基準が厳しくなるというデメリットがあります。従業員の中でデメリットを感じやすいのは、扶養の範囲内で働いている保険料自己負担額が0円だった人です。これまでは社会保険の扶養者になれるのは年収130万円未満の人でした。しかし今回の改正では社会保険の加入義務が生じる条件のひとつが月収8.8万円以上です。つまり年収106万円以上稼ぐ人は、社会保険に加入し保険料を納めなければならなくなります。毎月の保険料が大きな負担になるかもしれません。

国民年金の第3号被保険者ではなくなる

国民年金の第3号被保険者でなくなる場合、または配偶者の扶養の範囲内で働いている場合には、社会保険に加入することで扶養から外れることになります。つまり配偶者が税制上の控除を受けられなくなる可能性があるのです。厚生労働省が2000年に設置した「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」で、第3号被保険者を含めた女性の年金問題が検討されることになりました。男女平等の観点から、厚生年金保険の適用を拡大し第3号被保険者を縮小していくことが求められているのです。

社会保険適用拡大にむけて企業が取る必要がある対応

社会保険加入対象者の把握

企業は社会保険適用拡大に向けて、従業員の社会保険加入対象者の把握しなければなりません。特にパートやアルバイトなどの短時間労働者が多い企業では、各従業員の働き方によって適用になるかどうかが異なるため注意しましょう。社会保険適用拡大の改正までにはまだ時間はありますが、該当する可能性のある従業員は条件改正の1~2か月前から勤務先と労働契約の内容を確認や変更する必要があります。そのため企業は早めに保険適用対象者の見直しを行うことが必要となるのです。

対象者への周知

社会保険が適用対象者への周知することが重要です。社会保険に加入した場合は、毎月の給与から社会保険料が差し引かれるため、額面自体は下がる可能性が高くなるので社会保険に入りたくないと考える従業員もいる可能性があります。また、社会保険に入らず配偶者の扶養者のままでいたいと考える就業員がいる場合もあるでしょう。企業は社会保険に加入することのメリットやデメリットを十分に説明し、会社の意向も伝えた上で従業員本人の希望を確認することが求められるのです。

まとめ

社会保険適用拡大について理解し適切な対応を行おう

今回の改正をきっかけに現場で働く短時間労働者と雇用側の距離感が近づくことになれば、相乗効果で職場全体にも良い影響を与える可能性があります。目の前の負担額や手続きの煩雑さだけで判断せずに、組織全体が良い方向へ向かうタイミングだと捉えましょう。社会保険の適用拡大は、期日前に実施することで助成金が受け取れ補助金も優先的に受け取ることが可能です。企業は社会保険適用拡大についてしっかり理解し、従業員も理解を得て企業にとってもメリットとなるように適切な対応を行いましょう。

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