記事更新日:2020年12月15日 | 初回公開日:2020年11月16日
人事・労務お役立ち情報 用語集 外国人採用・雇用好奇心があるからりやりたい、楽しみだからやりたいといった動機で行動することが、内発的動機付け(英語ではintrinsic motivation)による行動です。自分自身の内面に持っている興味や関心に基づいて行動するわけですね。報酬をもらいたいという動機や、罰を逃れたいという動機は、内発的なものではありません。内発的に動機付けられている例としては、好きな趣味やスポーツなどに打ち込むことがあげられるでしょう。ビジネスの現場では、その企画自体が好奇心を刺激して楽しいので前向きに取り組むといった例がありますね。
内発的動機付けがなされると、意欲が高まり、しかもそれが持続する傾向にあります。したがって、社員の生産性が大幅に上がっていく可能性があるのです。更に、内発的動機付けがなされた社員の努力や成長を見ることで、他の社員が良い影響を受け、仕事に前向きとなることも期待できるでしょう。さらに、企業の業績が向上していく可能性も高まります。また、内発的動機付けがなされた社員の職務に対する満足感は向上し、離職率も低下すると考えられます。特に若手の間にうまく内発的動機付けがなされれば、長期間にわたって高いパフォーマンスを維持してくれることも期待できるでしょう。
自らの好奇心や関心に基づいて行動する内発的動機付けは、社員の創造力の源泉にもなります。かつては、大多数の社員が型にはまった仕事をしていても、企業を維持することができた時代もありました。しかし、近年では、科学技術の急速な進歩により、社会の変化も加速しているのです。社会の不確実性が増しているともいえるでしょう。創造力があれば、不確実性への耐性が強まるとともに、新たな業務の開拓も可能です。現代社会においては、まさに、創造力が重要になっています。そこで、内発的動機付けへの期待が高まっているのです。
内発的動機付けがなされると、なぜ行動に持続性が生まれる可能性が高いのでしょうか。やりたいことを主体的におこなっているので、無理をしなくとも意欲的な行動が続きます。また、行動の質も高いものになるのです。内発的動機付けによる行動以外に、報酬を得るための行動や、罰を逃れるための行動もあります。しかし、報酬目当てに行動したとすれば、報酬を得た途端に意欲が減退することになりかねません。また、罰を逃れるために行動したとすれば、罰を受けない程度でよいという消極的な姿勢になることが心配されます。内発的動機付けがなされていれば、こうした不安はありません。
内発的動機付けによって、なぜ生産性や創造力を高める可能性が大きくなるのでしょうか。内面から湧き出す意欲によって行動するので、活発かつ意欲的に行動し、生産性が高まる可能性が大きくなるのです。加えて、決められたように行動するのではなく、自主的に考えたり工夫したりする余地が大きいので、問題解決能力や創造力も高まるでしょう。また、生産性や創造力が高まることで、更にやる気が強くなり、生産性や創造性がより高まるという好循環を生むようになっていくことが期待できます。報酬を得るための行動や罰を逃れるための行動では、こうした好循環は生まれません。
内発的動機付けは、個人の内面の興味や関心による動機付けなので、全ての人に対して同じ方法を用いることができません。したがって、実際に動機付けるのは簡単ではないのです。導入するのであれば、画一的におこなうのではなく、各個人の状況を正しく細やかに把握し、各個人に応じた適切な働きかけをすることが必要です。何人かの社員が同じようなことに取り組んでいても、心情や意欲は様々です。心の中を把握するのは簡単ではありませんし、正確に把握できるとも限りません。把握するスキルを得るには相当の訓練が必要になるでしょう。
心理学者エドワード・L・デシは、内発的動機付けを生み出す3つの要因を指摘しています。1つ目は自律性です。人に指示されて行動するのではなく、自分自身の意志で主体的に行動しているという意識を持つことで、自律性が高まり内発的動機付けも生まれるのです。指示されたからおこなうという意識では、内発的動機付けはなされず、強い意欲も生まれません。自主的にやろうと思っていた事柄についても、実際にやる前に指示されてしまうと、やる気を失うことが多いのです。行動がコントロールされていると感じることで、モチベーションは低下します。自分自身で主体的に行動しているという意識を持つことが大切なのです。
デシが指摘する内発的動機を生み出す2つ目の要因は、有能感です。主体的に行動し、その行動がポジティブな結果を生めば、自分自身の能力の高さを認識でき、有能感が高まるでしょう。有能感を持つことで、主体的に行動する自信が深まります。その結果、更に前向きに行動していこうという内発的な動機が強まる可能性が高いのです。大きすぎる課題に挑んで挫折してしまうと有能感を得ることができません。頑張れば手が届くような課題を達成することを目指して行動し、ポジティブな結果を得ることを積み重ねていくことで、有能感が高まっていくでしょう。
デシが指摘する3つ目の要因は、他者との関係性です。関係性に満足できれば精神的に安定し、不安に惑わされることがありません。その結果、好奇心などに基づいて主体的に自律性を持って行動することが容易になるのです。そして、内発的動機付けによる行動が増えていきます。関係性とは、他の人とうまくつながっているという感覚のことで、人と結びつきたいという欲求や、愛し愛されたいという欲求に基づきます。家族や友人との関係はもちろん、職場の人間関係も大切になりますね。ストレスのない円滑な人間関係を持ち、その人間関係を深めていくことが望まれるのです。
内発的動機付けに対するものとして、外発的動機付けがあります。外発的動機付けとは、報酬を得ることや罰を逃れることを目的に行動することです。良い成績をとったら好きなものを買ってあげると親に言われて勉強することや、親に怒られないよう早く帰宅することが、外発的動機付けの具体例となります。社会人であれば、ボーナスや昇給を期待したり、減給や上司からの叱責を避けたいと思ったりして仕事に取り組むことが具体例となるでしょう。外発的動機付けは、すぐに効果が出ますが、持続性に乏しく、主体性や創造力を育てることも困難です。
内発的動機付けによる意欲は、外発的動機付けによって阻害されます。このことは、心理学者エドワード・L・デシによる内発的動機付け理論についての論文で示されているのです。デシは、実験により、内発的動機付けによって意欲的に行動している場合でも、途中で金銭という報酬を得ると意欲が衰えることを明らかにしました。もともと自分の楽しみや好奇心で意欲的に行動していても、その行動で金銭を得ると、報酬が目的となってしまいます。そして、報酬という目的を達成した後はモチベーションが低下していくわけですね。外発的動機付けによる内発的動機付けの阻害は、アンダーマイニング効果と呼ばれています。
報酬や罰といった外発的動機付けによる行動であっても、行動しているうちに内発的動機付けによる行動に変化していく場合があります。心理学者エリザベス・B・ハーロックの実験やコロンビア大学の実験で、言葉でほめるという報酬が徐々に内発的な意欲を強めることが明らかになっているのです。更にほめる場合でも、結果ではなく、努力やプロセスをほめることが効果的であることが判明しています。金銭を与えるのではなく、うまくほめることが重要ということになるでしょう。外発的動機付けによって、内発的動機付けが強まり意欲が増すことを、エンハンシング効果と呼びます。
マネジメントに内発的動機付けを活用すれば、社員が意欲的かつ持続的に行動し、生産性の向上や創造性を発揮することが期待できます。そして、企業の業績の向上や社員の定着につながるでしょう。かつてのような定型的な仕事ばかりやっていればよいという時代は、科学技術の急激な進歩によって終わりを迎えています。創造力によって、業務を改革することや新たな業態を作り上げていくことが必要な時代となっているのです。まさに、内発的動機付けをマネジメントに活用することが求められている時代になってきているといえるでしょう。
内発的動機付けを高めるには、適切な課題設定とほめ言葉が大切です。一方的に課題を与えても自律性が損なわれたと感じてしまいます。達成が困難な課題を与えても、有能感が阻害されてしまうでしょう。したがって、話し合った上で、意欲を持て、且つ、努力すれば達成が可能な課題を提供することが望まれます。課題全体が大きすぎる場合は分割しましょう。その上で、課題を実行する際に状況を細やかに把握し、努力できている部分にほめ言葉をかけ、有能感を高めるのです。また、職場の人間関係が深まり満足できるような声かけをおこなうことも大切です。そうする中で、課題への取り組み自体に面白みとやる気を感じるようになれば、内発的動機付けがなされていくでしょう。
内発的動機付けは個人の内面の好奇心や関心がモチベーションとなるもので、生産性の向上や創造力の発揮を期待できます。しかし、各人の内面は異なり、職場においてうまく内発的動機付けを行うことは簡単ではありません。これに対し、外発的動機付けは報酬やペナルティーを与えることによる動機付けですので、比較的容易に実行することができます。組織全体の効率を考えるならば、内発的動機付けと外発的動機付けを使い分けることも考えられます。例えば、創造力が必要な企画等については内発的動機付けを活用し、ルーティーン的に行えばよい業務については外発的動機付けを活用することが検討できるでしょう。
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