外国人労働者の労災を防ぐには【労災の発生状況や労災を防ぐためのポイントなどを解説します】

記事更新日:2021年09月28日 初回公開日:2021年09月24日

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近年はグローバル化の影響によって数多くの外国人労働者が来日して働いています。しかし一方で、長時間労働の強制や安全基準違反など外国人労働者に関連して様々な問題が起こっているのが現状です。そこで、今回は特に外国人労働者の労災について紹介していきます。労災はすべての企業で起こる可能性があります。この記事では外国人労働者の労災発生状況から注意点、実際の事例等を幅広く説明していくので、是非参考にしてみてください。

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労災とは

労働者が業務に起因して被る災害

初めに労災という言葉の意味について確認しましょう。労災とは労働災害の略称で、労働者が業務に起因して被る災害のことです。この労災には業務中だけでなく、職場への通勤中に傷病などを負った場合も含まれます。業務中に事故が起こった場合は、企業は労働基準法に従い、従業員に対して補償責任を負うことになります。その際に従業員は企業が加入する労災保険によって働くことが出来ない期間の治療費や生活費が保障されます。また正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規労働者もその対象になります。

外国人にも労災保険は適用される

さらに、労災保険が適用されるのは日本人のみではありません。法律上、外国人労働者も日本人と同様の保障を受けることが出来ます。労災保険は従業員を一人以上雇用している企業では加入が義務となっています。特に近年は日本で働く外国人も増加しているので、それに伴って外国人労働者も業務中に事故に遭ってしまうケースも増えています。いざという時には、このような保険があるので外国人も安心して働くことが出来るでしょう。

外国人労働者の労災発生状況

死傷者数は増加傾向にある

続いて外国人労働者の労災の現状について見ていきましょう。まず労災による外国人労働者の死傷者数は年々増加傾向にあります。休業4日以上の死傷者数は令和2年には4682名おり、5年前の2倍以上の数になっています。軽い怪我等も含めるとそれ以上の負傷者がいることになります。このデータから外国人労働者の労災は他人事ではなく、身近なところで起こり得るということがお分かりいただけたでしょうか。

外国人労働者の母数も増加している

外国人労働者の労災が増加した影響の一つとして、外国人労働者自体の母数が増えているということが挙げられます。厚生労働省が発表しているデータによると令和2年の日本の外国人労働者数はおよそ172万人でした。外国人雇用状況の届出制度が始まった平成20年時点では約49万人でしたが、その後は年々増加傾向にあります。特にベトナムや中国などのアジア地域から来日する労働者が最も多いです。今後も外国人労働者の数が増えることが予想されています。

技能実習生の事故率は日本人のおよそ二倍

日本で働く外国人労働者の中でも特に技能実習生は労災になるケースが多いと言われています。厚生労働省が毎年発表するデータによると、技能実習生全体のうち約0.4%の割合で労災が発生しています。一方で日本人の労働者はおよそ0.2%ですので、2倍もの差があることになります。ちなみに外国人労働者の場合は日本人の1.4倍程度の割合で労災になるケースがあります。やはり外国人労働者は日本人よりも弱い立場であることが多いため、労災が起こることも多いと考えられています。

製造業と建設業の従事者が大半を占める

外国人労働者は日本の様々な業界で働いています。その中でも労災が発生するケースが多いのが製造業と建設業です。具体的には、1年間に外国人労働者が製造業で約2300名、建設業で約800名が労災に認定されており、これらの業界がその割合の多くを占めています。その理由としては他の業界よりも肉体労働をする機会が多く、身近に危険な状況が潜んでいるためだと考えられています。また日本語のみの説明など、十分な安全対策が出来ていないことなども原因のひとつとなっています。

労災発生後の対応方法

適切な治療をする

実際に労災が発生してしまった際の対応方法を確認しましょう。まずは負傷者に対して適切な治療をすることです。現場の近くにある労災指定病院に向かい、必ず治療を受けましょう。その際は本人のみでなく、日本人の従業員も同行することが大切です。病院では外国人労働者に代わって怪我や病気の状態、労災の発生状況などを詳しく説明をするようにしましょう。基本的に費用は労災保険から給付されるので、安心して治療を受けることが出来ます。

労災の手続きを行う

労働者死傷病報告をする

次にするべきなのは、労災の手続きを行うことです。基本的に対応方法については、労働者が外国人でも日本人でも変わりません。労災の発生後は労働基準監督署に労働者死傷病報告をしなければなりません。報告書の提出は、従業員が労災によってよった休業した期間によって期限が異なります。労災による休業が4日以上または、死亡した場合は労災発生から遅滞することなく提出が必須となります。反対に3日以下の場合は3か月ごとにまとめて提出をします。また労災が発生した現場が会社以外の場合は、その現場の地域を管轄する労働基準監督署に報告を行いましょう。

労災保険の給付申請をする

続いて、労災保険の給付申請を正しく行いましょう。労災保険の給付申請は、本来は該当する労働者自身、もしくはその遺族が行います。しかし通常は企業が代行して行うことがほとんどです。言語面からも外国人労働者本人だけでは申請方法が分からなかったり、そもそも給付制度自体を知らないこともあるでしょう。ですので企業側がしっかりとサポートを行い、給付を必ず受け取れるようにしましょう。

労災発生後の注意点

外国人労働者が帰国をすると給付の一部が受け取れなくなる

次に労災が起こったあとの注意点を説明します。まず労災認定を受けた外国人労働者が帰国をしてしまった場合、給付の一部が受け取れなくなることです。原則として労災保険は国籍に関わらず、受け取りが可能です。しかし外国人労働者が帰国をするとその一部が受け取れなくなってしまいます。義肢等補装用具の支給や労災就学等援護費などが例としてあげられます。また、海外から治療費等を受け取る場合は外国為替換算率で計算した金額の支給となるので注意が必要です。

健康保険は適用できない

2つ目は健康保険が適用できないことです。外国人労働者も日本人と同様に厚生年金や健康保険の加入が原則的に義務付けられています。そのため外国人労働者が日本で病気や怪我にかかった場合は、健康保険によって帰国後も傷病手当金等を受け取ることが可能となります。しかし注意しなければならない点は労災保険と健康保険は併用できないことです。基本的に職場で労災にあった際は労災保険を、それ以外のシーンで病気や怪我になった場合は健康保険を適用することになります。

労災を起こさないようにするためのポイント

母国語を使用した安全衛生教育の実施

それでは労災を発生させないようにするにはどのようにすれば良いのでしょうか。こちらでは労災を未然に防ぐためのポイントを4点紹介します。1点目は外国人労働者の母国語を使用しながら安全教育を行うことです。安全衛生教育はどんな職場でも労災を予防するために欠かせません。特に外国人労働者に向けては母国語で指導する、日本語と母国語を併記した資料を使用するなどの工夫が必要です。さらに、ただ安全衛生教育を行うだけでなく、学んだ内容を正しく理解できているかを必ず確認しましょう。

日本語教育も行う

2点目は日本語教育を行うことです。外国人が日本で働くからには日本語の習得は欠かせません。もちろんネイティブスピーカーのレベルを目指す必要はありませんが、単純労働でない限りは一定程度の日本語力は必要なはずです。企業で働く外国人によって日本語のレベルは異なりますが、日本語でのコミュニケーションが難しい場合は企業側も日本語教育の機会を与えると良いでしょう。特に仕事で使用する専門用語などに関しては、業務をしながら丁寧に教えることで外国人労働者も内容が理解しやすくなるでしょう。

積極的なサポートを行う

3点目は外国人労働者に対して積極的なサポートを行うことです。日本以外で元々生活していた外国人にとっては仕事面、生活面の両方で慣れないことも少なくないでしょう。そうした慣れない環境でのストレスによって集中力や注意力が低下し、労災が発生してしまうこともあります。外国人労働者に対しては怪我や病気などの健康面のみならず、メンタルヘルスにも十分に気を配るようにしましょう。普段から積極的にコミュニケーションをとり、分からないところは周りの人がサポートを行うことで最終的には労災の予防にも繋がるはずです。

複数言語の標識を使用する

4点目は複数言語の標識を使用することです。外国人労働者が働いている現場では、企業によって様々な標識や注意事項の張り紙などが設置されているでしょう。しかし多くの場合は日本語表記のみのことが多く、外国人がすべて内容を理解出来るとは限りません。ですので、働いている外国人の出身国で使われている言語の標識なども作るようにしましょう。そうすることで全員に内容が伝わり、未然に事故などを防ぐことが出来ます。安全に関わる事項については、口頭でも外国人労働者が理解出来るまで説明を行うことが必要になります。

労災の事例

工場の勤務中

最後に実際の現場で起こった労災の例を紹介します。1つ目は工場の勤務中に起こった事故です。工場で当時働いていたインドネシア人の技能実習生が作業中にプレス機に頭を挟まれて死亡しました。ところがプレス機は壊れておらず、その原因は明らかになっていません。この労災ではプレス機の操作に必要な安全教育をしなかったとして、自動車用金属部品製造会社の代表取締役が書類送検されています。工場内には危険の状況が多くあるので、このような事故が起きないように丁寧に指導をすることが重要です。

マンションの外壁工事中

2つ目のケースはマンションの外壁工事中に起こった労災です。その当時はベトナム人の技術実習生がマンションの外壁改修工事をしていました。その際におよそ20メートル下の二階に転落をして、死亡が確認されました。技術実習生は墜落防止用器具を身に付けていたものの、親綱と呼ばれるロープに掛け渡されていませんでした。この事故では足場の組み立て作業の責任者に墜落防止用器具の着用状況を監視させなかったとして、労働安全衛生法違反で建設会社の社長が書類送検されました。

まとめ

外国人労働者の労災を未然に防ぎましょう

今回の記事では外国人労働者の労災について、労災発生後の対応方法や注意点、労災を防ぐためのポイントなど様々な角度からご説明をしてきました。労災はどの企業で起こる可能性があるため、決して他人事ではありません。また場合によっては労働者の命の危険に関わる可能性さえあります。特に外国人労働者は日本人と比べて労災にあう割合も高いため、より注意が必要です。今回ご紹介したポイントを押さえて、外国人労働者の労災を未然に防ぐようにしましょう。

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