脱退一時金とは【人事担当者が事前に知っておくと便利なポイントをお教えします】

記事更新日:2021年08月31日 初回公開日:2021年08月30日

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脱退一時金とは、日本の公的年金に加入している外国人労働者の方が自国に帰る際に、請求可能な支給金です。本記事では、脱退一時金の概要や脱退一時金の請求方法を具体的に解説します。外国人労働者の方は本記事を読むことで、脱退一時金についての概要を知ることができ、実際に請求できるようになります。採用担当者や経営者の方は、脱退一時金について知っておかないと、外国人労働者が自国に戻る際に金銭的なトラブルに陥る可能性もあります。そうならないためにも、ぜひ本記事を読んで概要を学んでみてください。

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外国人への脱退一時金とは

厚生年金保険から支払われる一時金

外国人への脱退一時金とは、日本で年金制度に加入していた外国籍の方が帰国する際に、厚生年金保険から支払われる一時金です。年金制度に加入しているだけでなく、保険料の支払いもしていなければ、受給できません。日本の公的年金制度には国民年金と厚生年金の2種類があります。したがって、外国人の方は国民年金か厚生年金のどちらかに加入していれば脱退一時金を獲得できる可能性があります。外国人の方であれば、脱退一時金を受け取れる資格があるかどうかチェックしておくことをおすすめします。

脱退一時金の支給条件

国民年金に加入していた場合

外国人の方が国民年金保険に加入していた場合、脱退一時金をもらうための要件は四点あります。第一に、日本国籍を有していない外国人であることが条件です。次に、現時点では国民年金制度に加入していないことも条件になります。半年以上保険料の納付期間がなければなりません。さらに、老齢年金の受給資格期間を満たしていないことと、障害基礎年金などの年金を受ける権利を有していないことも条件です。また、日本国内に住所を有しておらず、二年以上の期間が国民年金制度の受給資格がなくなった日から経過していないことも条件です。

厚生年金保険に加入していた場合

他の条件としては、日本国籍を有していない外国人であることが挙げられます。また、現時点で厚生年金保険制度に加入していないことも条件となります。半年以上の厚生年金保険の加入期間も必要です。しかし逆に10年以上厚生年金に加入していても支給対象外となってしまいますので留意してください。障害厚生年金などの年金を受ける権利を有していたことがないことも条件です。最後に、日本国内に住所を有しておらず、公的年金保険の被保険者資格がなくなった日から計算して2年以上経過していないことも条件です。

脱退一時金の支給額

国民保険に加入していた場合の計算方法

国民健康保険に加入していた場合、脱退一時金の計算は次のものになります。最後に保険料を納付した年度の保険料額 ÷2×「支給額計算に用いる数」=支給額です。国民年金保険の保険料額や、「支給額計算に用いる数」は変更されることがあるので、脱退一時金を受け取る際によく確認してみてください。「支給額計算に用いる数」は、保険料付期期間が多いほど数が大きくなります。2021年4月以降、保険料納付期間の上限が変更されました。

厚生年金保険に加入していた場合の計算方法

厚生年金保険に加入していた場合の計算は、次のようになります。被保険者期間の平均標準報酬額に支給率を掛け合わせるだけです。支給率も計算しなければなりません。計算式としては、保険料率÷2×「支給率計算に用いる数」=支給率です。被保険者であった期間の平均標準報酬額の計算は複雑なので、慎重に計算しなければなりません。「支給率計算に用いる数」は、保険料を支払った期間が長ければ長いほど上昇し、その分脱退一時金の金額も大きくなります。

脱退一時金を受け取る方法

請求書を作成する

外国人の方が脱退一時金を受け取るためにまず必要なのが、請求書を作成することです。脱退一時金請求書のフォーマットは日本年金機構のWebサイトにて無料で配布されているため、誰でも手に入れることが可能です。脱退一時金請求書には、どのような国の方でも申請しやすいようにさまざまな言語の他言語対応フォーマットが用意されています。請求書を提出するタイミングは、住民票の転出日以降でなければならない点は気をつけてください。

必要な書類を請求書に添付する

脱退一時金を受け取るためには、請求書以外にも必要な書類を請求書に添付しなければなりません。まず必要になるのがパスポートの写しです。また、日本国内に住所を有しなくなったことを確認するために、住民票の除票の写し等も提出しなければなりません。さらに、銀行名や支店名、口座番号などの銀行口座の情報とそれらの情報が本人のものであると確認できる書類も必要です。最後に、国民年金手帳、あるいは基礎年金番号が確認できるその他の書類のいずれかが必要になります。

定められた機関に請求する

脱退一時金を受け取るために必要な請求書や、その他の添付書類が用意できたら、定められた機関である日本年金機構にそれらの書類を提出します。提出先は日本年金機構の本部や、各共済組合等になります。日本で加入していた制度によって提出先が変わりますので留意してください。日本滞在中に加盟した制度が国民年金か厚生年金のみの場合は、日本年金機構が請求先になります。共済組合なのか、日本年金機構なのか、自分の請求先機関を確認しておきましょう。

脱退一時金の注意点

外国の通貨で支払われる

脱退一時金はさまざまな外国の通貨で支払われます。注意しなければならないのは、必ずしも母国の通貨で支払われるわけではないことです。アメリカ国籍の方はもちろんアメリカドルで支払われます。中国やタイ、インドネシアなどの一部のアジア国籍の方々にも、アメリカドルで支払われるので留意してください。多くのヨーロッパの国々の方にはユーロで、シンガポール国籍の方にはシンガポール・ドルで支払われます。自分の国はどの通貨で支払われるか確認してみてください。

支給までに期間を要する

脱退一時金の注意点は、支給までに期間を要する点です。国籍や、請求先の業務状況などにもよりますが、請求してから受給までには半年から1年ほど時間がかかると言われています。脱退一時金の請求自体も、請求書や他の書類の用意などでとても手間がかかります。したがって、脱退一時金を早く受給したい方は、住民票の転出が済んでからすぐに手続きを開始しましょう。脱退一時金を請求してから受給までどれくらいの期間がかかるか、担当の方に聞いてみても良いでしょう。

社会保障協定を結んでいる国は年金の加入期間が減る

社会保障協定を結んでいる国は年金の加入期間が減る場合があります。社会保障協定は、出身国と日本の間で保険料の二重負担を防止するために結ばれた協定です。したがって、出身国に保険料を支払い続けていたような場合は、日本の公的年金の加入期間は減ってしまいます。日本での加入期間は減ってしまうものの、出身国の保険加入期間と日本での加入期間を合算して保険期間の計算ができるので、脱退一時金が受け取れないわけではありません。自分の出身国が社会保障協定を結んでいる国かどうかチェックしてみてください。

制度改正により支給上限が3年から5年に変更された

脱退一時金は制度改正により支給上限が3年から5年に変更されました。以前であれば支給上限額が3年間分の金額だったものが、5年間分になったため、より多くの金額を支給される可能性が出てきたということになります。日本に3年間以上住んでいて公的年金制度に加入していた方は、脱退一時金の請求を忘れずに行いましょう。令和3年度の場合、国民年金に加入していた外国人の方の脱退一時金は3年間分の金額と5年分とで20万円程度も異なります。知らずに3年分で請求してしまうと、損をしてしまいます。

脱退一時金を複数回申請する場合は加入する期間が通算で3年分になる必要がある

脱退一時金を複数回申請する場合は、加入する期間が通算で3年分以上になる必要があります。しかし、脱退一時金を複数回申請する場合、出国の都度申請が必要になるケースが多いです。脱退一時金を複数回申請する場合は請求方法が複雑なので、直接請求先の機関に問い合わせてみてください。脱退一時金を申請する場合は毎回計算をして、その都度の加入期間で脱退一時金の計算を行う必要があります。脱退一時金を複数回申請する方は、必ず知っておくべき情報ですので理解しておきましょう。

帰国前に日本国内から提出する場合は転出日以降に届くようにする必要がある

帰国前に日本国内から脱退一時金の請求書等を提出する場合は転出日以降に届くようにする必要があります。というのも、脱退一時金の支給要件として「日本国内に住所を有していないこと」という条件があるためです。転出日以前では、「日本国内にまだ住所を有している」とみなされてしまうため、転出日以降に請求しなければなりません。転出日以降に提出しなければ、請求を受理されない可能性もあり得ます。日本国外から請求書類を提出することもできますが、国内で提出したい場合、留意しておきたいところです。

再入国許可を受けて出国している場合は転出届を提出していないと請求できない

再入国許可を受けて出国している場合は、転出届を提出していないと脱退一時金を請求できません。再入国可能な期間は、原則的には外国に転出していないとみなされるので、脱退一時金を受け取ることができないのです。再入国許可の可能期間は、公的年金の保険期間としてカウントされるためです。したがって、再入国許可を受けている方が脱退一時金を請求したい場合、忘れずに転出届を提出する必要があります。再入国許可を使って再入国する場合、公的年金に加入している扱いにはなるため、あえて請求しないということも選択肢としてはあり得るでしょう。

老齢年金の受給資格期間が短縮される

脱退一時金はさまざまな外国の通貨で支払われます。注意しなければならないのは、必ずしも母国の通貨で支払われるわけではないことです。アメリカ国籍の方はもちろんアメリカドルで支払われます。中国やタイ、インドネシアなどの一部のアジア国籍の方々にも、アメリカドルで支払われることは知っておきましょう。多くのヨーロッパの国々の方にはユーロで、シンガポール国籍の方にはシンガポール・ドルで支払われます。自分の国はどの通貨で支払われるか確認してみてください。

請求できない条件を確認する

脱退一時金の制度は複雑なので、請求できない条件も確認しておきましょう。例えば、転出届を提出して帰国するまでに2年間を経過してしまうと、脱退一時金は請求できなくなります。また、障害基礎年金などの年金を一度でも受け取ったことがある方も、脱退一時金を請求できません。また、本人ではなく、代理人に請求書類を提出してもらう場合、委任状がないと脱退一時金を請求できません。このように、脱退一時金を請求できない条件が複数あるため、自国の場合はどのような条件があるか確認しておくことが必要です。

まとめ

脱退一時金制度を導入して働きやすい環境にしよう

脱退一時金は、国民年金や厚生年金保険に加入している場合、請求できる制度です。外国人の方で、国内で労働してきた方の場合、自国に戻る際に脱退一時金が請求できることを覚えておきましょう。ただし、脱退一時金を一度請求してしまうと、それまでの年金保険料を払っていた期間が年金の受給期間に算出されなくなるので留意してください。脱退一時金を受け取る場合は、自国の年金の保険期間に合算されるのかどうかも確認しておくべき点です。自国に戻る予定の外国人の方は脱退一時金を請求するかどうか、本記事を参考にしてみてください。

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