記事更新日:2025年09月08日 | 初回公開日:2025年09月08日
用語集 人事・労務お役立ち情報
辞令とは、企業が従業員に対して役職の任命や異動を公式に伝えるための「業務命令」です。辞令は単なる通知文書ではなく、社員の労働条件の変更に法的根拠を与えるものです。具体的には昇進や転勤、職務内容の変更といった人事異動が記載されます。従業員のキャリアや生活に大きな影響を与えるため、人事担当者は単なる事務処理と捉えず、命令としての重みを理解して準備することが求められるでしょう。辞令の交付は組織の意思決定を伝え、円滑な組織運営を実現するための重要なプロセスです。
辞令交付式とは、企業が従業員に人事異動や配置変更を正式に伝える式のことです。新入社員の入社や4月1日の定期異動、昇進のタイミングで実施されることが一般的です。社長や担当役員が辞令を直接手渡すことで、人事異動が経営陣による意思決定であることを、強く印象付けるでしょう。電話やメールでの通知だけでなく対面で実施することにより、社員の気持ちを新たにさせ、組織としての一体感を醸成する効果もあります。辞令交付式は、組織の決定を公式に示す重要な行事です。
辞令交付式に、法的義務はありません。執り行うこと自体に法的な義務はないので、実際に交付式を実施しない企業もあります。特に中小企業では、個別の面談やメールでの通知をもって辞令の発令とするケースも少なくありません。しかし、式典として行うことには大きなメリットがあります。従業員の意識向上や、人事異動の重要性を組織全体で共有する良い機会となるからです。実施するか否かは、企業の規模や文化、目的によって判断されるべきでしょう。
辞令交付式の目的は、従業員への職務に関する通知を公的にする点にあります。個々の従業員に対する職務命令を、組織の公式な決定として通知することにより、誰がいつからどの役職に就き、どのような職務を担当するのかが明確になります。関係部署へ情報を共有する上でも、異動や昇進の事実を公の場で発表することは欠かせません。情報の共有により、円滑な業務の引き継ぎや新しい組織体制への移行へと繋がります。式典は人事情報をオープンにすることで、組織運営を円滑化させるための重要な手続きなのです。
辞令交付式のタイミングは、定期的な人事異動の時期に合わせるのが一般的です。事業年度の節目であれば、昇進に伴う給与変動などを新期の予算計画に反映させやすいという、実務的な利点があります。全従業員が新しい役職で一斉に業務を開始して、組織にけじめを生み、一体感を醸成することができます。一度に多くの従業員が対象となるため、会場の確保から当日の進行シナリオ作成まで、人事部門の周到な事前準備が求められるでしょう。
辞令交付式のタイミングとして、昇進や昇格が決定した際も良いタイミングです。社長や役員が他の社員の前で新しい役職を任命すれば、本人のモチベーションは大きく高まります。周囲の従業員に対しても、「努力は正当に評価される」という会社の姿勢を示すメッセージになるでしょう。式典は定期異動と同時に行っても、対象者の役職に応じて個別に行っても問題ありません。企業の文化に合わせて最適な形式を判断し、個人の成長を組織全体で祝福することが重要です。
辞令交付式のタイミングの一つに、特別な状況による異動があります。新規事業の立ち上げや組織再編など、特別な状況で人事異動が行われる際にも辞令交付があります。不定期な対応だからこそ、個別の交付や部署単位での説明会を開くなど、人事担当者による丁寧な準備と説明が求められます。本人や周囲の社員が納得できるよう、なぜこのタイミングで異動するのか背景や目的を丁寧に説明しましょう。特別な異動における説明は組織の変革を円滑に進めるための、戦略的なコミュニケーションの一環です。
辞令交付式の流れは、あいさつで始まりあいさつで終える構成が基本です。一般的な進行はまず社長や人事部長が開会の挨拶を行い、式の目的を伝えます。その後、対象者一人ひとりの名前を呼び、辞令を交付する流れとなります。厳粛な雰囲気の中で、交付者は対象者の目を見て期待を伝えましょう。新入社員や昇進者の代表が、決意表明の挨拶をする場合も多いです。最後に役員などから激励の言葉があり、閉会となります。参加人数や会場の規模に応じて、式の進行内容の調整をしましょう。
辞令交付式ではマナーとして、ダークスーツを着用しましょう。企業の公式な式典は、ダークスーツ(濃紺やチャコールグレー)の着用が一般的です。男女ともに清潔感のある服装を心がけましょう。企業から特に服装の指示がない場合でも、ビジネスシーンにふさわしいフォーマルな装いを選ぶのが無難です。人事担当者は事前に参加する従業員へ服装についてアナウンスしておくと、当日の混乱を防げます。適切な服装を選びは、式の厳粛な雰囲気を保つことにも繋がります。
辞令交付式のマナーとして、毅然とした態度で参加することが求められます。辞令は業務命令であり、厳粛な場で交付されます。名前を呼ばれたら大きな声で返事をし、背筋を伸ばして指定された場所まで進みましょう。交付される際は社長や上司の目を見て、真摯な態度で辞令を受け取ることが重要です。式全体の雰囲気は、参加者一人ひとりの態度によって作られます。人事担当者は、出席者に対して式の意義や望ましい参加態度について事前に説明しておくと良いかもしれません。
辞令交付式のマナーとして、辞令の受け取り方には注意が必要です。辞令は会社の公式な命令文書であり、敬意をもって受け取る姿勢が求められます。名前を呼ばれたら大きな声で返事をして、交付者の前へ進み一礼しましょう。辞令は両手で丁寧に受け取り、内容を確認するように一度視線を落とした後、再び交付者へ向き直り一礼するのが基本的な作法です。受け取った辞令はすぐに下ろさず、胸の高さで保持して自席に戻ります。人事担当者は参加者へ事前にこれらの作法をアナウンスしておくと、当日の式典がより厳粛でスムーズに進行するでしょう。
辞令交付式の際に起こりうるトラブルの一つに、従業員による辞令の拒否があります。前提として、辞令は法的な効力を持つ「業務命令」であり、従業員は原則としてこれを拒否できません。しかし、転勤によって従業員が受ける不利益が著しく大きい、業務上の必要性が乏しいなど特定の状況では「権利の濫用」と見なされ、拒否が認められる可能性があります。従業員から拒否の意思を伝えられた際は、一方的に処分を検討するのではなく、まずは面談の機会を設けましょう。本人の事情や拒否する理由をヒアリングし、対話を通じて解決の道を探る姿勢が不可欠です。
辞令交付式の際に起こりうるトラブルの一つに、辞令の法的効力を巡る争いがあります。辞令の拒否から発展し、従業員が「人事命令そのものが無効である」として法的な手段に訴えるケースがあります。裁判所は異動命令に業務上の必要性があるか、人選に合理性があるか、従業員が受ける不利益はどの程度かを総合的に考慮し、命令が人事権の濫用にあたるかを判断します。不当な動機や目的(報復人事など)で行われたと見なされる異動は、無効となり認められません。人事担当者は人事異動が客観的な事実に基づき、合理的な理由で決定されているかを確認する体制を整えておくべきです。
辞令交付式の際に起こりうるトラブルの一つに、退職者の欠席があります。退職者の場合、式典は長年の功労に報いる感謝状などを授与する場を兼ねることが多いですが、本人の事情や心情を考慮すれば、参加を強制することはできません。欠席の連絡があった場合は、本人の意向を確認した上で、感謝状などを後日個別に手渡すか、あるいは自宅へ郵送するといった柔軟な対応を取ります。組織として最後まで従業員一人ひとりへ敬意を払う姿勢は、在籍している他の社員に対しても、会社への信頼感を醸成する上で重要です。
辞令交付式の際には、情報共有が出来ていないことによるトラブルには注意が必要です。典型的なのが、最終決定された人事情報が式の運営担当者や司会者に正確に伝わっていないケースです。たとえば、司会者が読み上げる役職名と、辞令の文書内容が食い違うといったケースが考えられます。壇上で辞令の間違いに気づけば、本人だけでなく見守る他の社員にも動揺が広がり、式の厳粛な雰囲気に水を差すことになりかねません。このような事態を防ぐため、辞令の印刷前には複数人で最終確認を行うダブルチェック体制が欠かせません。
辞令交付式の際に起こりうるトラブルに、辞令内容が曖昧であることによる混乱があります。たとえば、「〇〇部 部長待遇」といった曖昧な辞令が読み上げられれば、社員は権限などを疑問に思います。当事者は同僚や部下から「具体的に何が変わったのですか?」と質問された際に、自身の立場や権限を明確に説明できません。結果として周囲の社員もどう接すればよいか分からず、本人もリーダーシップを発揮しづらくなります。辞令に誰もが誤解なく理解できる具体的な所属部署と正式な役職名を記載することで、無用な混乱を防ぎましょう。

辞令交付のトラブルの例として、有名なのが日本ステンレス事件です。従業員が家庭の事情を抱えているにもかかわらず、会社が十分な配慮なく遠隔地への転勤を命じたことの是非が問われました。裁判所は会社側の転勤命令には業務上の必要性が乏しく、一方で従業員側が受ける不利益が著しく大きいと判断し、辞令を「権利の濫用」として無効としました。人事担当者は辞令を発令する際に、業務上の必要性と従業員の生活への影響を常に考慮し、バランスを慎重に判断する責任があります。
辞令交付式を適切に行い円滑に人事異動を進めましょう。辞令交付式は単なる形式的な儀式ではありません。従業員の新たな門出を祝福し、モチベーションを高め、会社の公式な意思決定を全社で共有するための戦略的なコミュニケーションの場です。人事担当者は式の目的を理解し、事前準備と当日のスムーズな進行を心がける必要があります。辞令の拒否や法的トラブルといった万一の事態にも備え、関連知識を蓄えておくべきです。本記事で解説したポイントを参考に、意義のある辞令交付式を実現してください。
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