記事更新日:2020年09月11日 | 初回公開日:2020年09月07日
グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド 外国人採用・雇用ポリコレとは「ポリティカル・コレクトネス」の略語であり、性別や人種、職業や宗教などに対し公正な表現もしくは言葉を使用することです。「Political correctness」=「PC」と略称されることもあり、「政治的公正」「政治的適正」などと訳されるため、「政治的な観点から見て正しい用語を使用する」と言った意味合いにもとることが出来ます。現代では日本のビジネスシーンや福祉においてもポリコレの考え方が浸透しています。
ポリコレという言語自体は1917年のロシア革命後に、マルクス・レーニン主義と言われる「階級の無い社会主義」という思想体系において使用されていたそうです。その後アメリカでは1980年代からポリコレの概念が広まり、用語における差別や偏見を取りのぞくという目的のもとに適切な表現を使用する様になりました。代表的な例だと、以前は黒人を指していた「Black」は現在、アフリカ系アメリカ人を指す「African American」と表現されています。
ここまでポリコレが広く浸透してきた背景には、私たちの社会で「差別」「偏見」がまだまだ溢れているという事が大きく関わっています。現在では職業名に関しても「policeman」(警察官)「fireman」(消防士)と言った「man」を使用していたものが、「police officer」、「fire fighter」というように変化しました。これは「~man」が女性差別に当たるとして、女性の活躍の場を奪ってしまうことになりかねないというポリコレの概念から来るものなのでしょう。
日本で昔から使われていたある言葉が最近違う表現に変わったのは知っているでしょうか。それは「障碍者もしくは障がい者」です。以前は「障害者」という表現だった、と言えば聞き覚えのある方も多いでしょう。「害」の字が使われていることに不満の声も多かったとのことから、2001年に東京都多摩市が一番最初に「障碍者もしくは障がい者」を採用しました。漢字一つで印象が大分変わり、これはポリコレの概念を使用した成功例と言えます。
ポリコレが社会に浸透することによって、今までは人種や性別に関しての差別的な言葉や偏見に苦しんでいた人達も、周りからの反応が変わってくるのでは無いでしょうか。特に性別に関しては、職業名を男女どちらでも使用できるようなものに変えていく事により、ジェンダーレスや性同一性障害などの問題にも対応していく事が出来ます。一方海外では、名刺の性が形容詞や動詞に影響するフランス語のように、男性形と女性形を分けているとこのような事態に対応しにくいという事もあります。
また、現在では病名にもポリコレの概念が適用されています。以前は「精神分裂病」と表現されていた病気も現在は「統合失調症」という名称に変わりました。そのほかにも「痴呆症」と呼ばれていた病気は現在では「認知症」と言ったように、患者とその家族に配慮した新しい表現が次々と生まれているのです。このように、ポリコレが浸透することによって様々な立場の人々の精神的負担を軽くすることが出来、公正な新しい表現が生まれると言えるでしょう。
現在社会では様々なハラスメントが起きています。女性に対するものはもちろん、人種によって、宗教によってのハラスメントもあるでしょう。学校内でのいじめも同様です。このような問題に対処するためにもポリコレの概念を取り入れることにより、些細な言動での被害を抑えることが出来るのではないでしょうか。「肌色」という表現一つに関しても、現代では日本人に対して「ペールオレンジ、薄橙」などの表現を取るようになってきています。そう、肌の色はみんな同じではないからです。
最初に黒人差別に関する「Black」から「Africa American」への変化についてお話ししました。それ以外の人種差別に関するポリコレの例としては「Indian」が挙げられます。本来は「インド人」を指す単語ですが、そのままの読みで「インディアン」と読むと羽飾りを頭に付けた褐色の肌の弓を持った先住民を想像する方は多いのではないでしょうか。実際アメリカ州の先住民族を「Indian インディアン」と呼びますが、本来の「インド人」という言葉との区別を図るため、カナダでは「First Nation ファーストネーション」、アメリカでは「Native American ネイティブアメリカン」という表現を用いるようになりました。
英語で女性の名前の前につけるとすれば「Miss」「Mrs.」と覚えていた方もいるかと思います。しかし現在では「Ms」に統一されています。それはなぜかと言えば、男性は既婚、未婚に関わらず「Mr.」で表現されるというのに、女性は既婚か未婚かで「Mrs.」「Miss」に分けられてしまうというのは、男女差別にあたるからです。実は「Ms」は17世紀ごろ使われていたのですが、ポリコレによって現在また復活したという形になります。
先にアメリカでのpolice officerやfire fighterなどの例を挙げましたが、日本でも職業の表現がポリコレによって変わりつつあります。例えば昔は「スチュワーデス」と言われていた職業は現在「キャビンアテンダント、客室乗務員」。「看護師」は以前「看護士」「看護婦」でしたが、今でも間違いがちな方も多いのではないでしょうか。今は男性も多くなった「保育士」も、一昔前は「保母」「保父」と呼ばれていましたね。
現代におけるSNSでの表現に対する「ポリコレ棒」が、ポリコレの起こす問題の一つとして挙げられます。SNSでの自由な表現に対し、「政治的観点からすれば正しくない」とむやみやたらに誹謗中傷すること、それが「ポリコレ棒でぶっ叩く」という事です。この「ポリコレ棒」を恐れてしまうがために、SNSで自由に表現できないなどの悩みを抱えてしまう人が出てきてしまうというのも現状です。これが「ポリコレ疲れ」とも言われているのです。
ヘイトスピーチと言う単語を聞いたことがある方も多いと思いますが、そのまま訳するならば「差別的表現」となり、ポリコレとは程遠いものに感じるでしょう。しかし、先に述べた「ポリコレ棒」のようにポリコレを振りかざして特定の相手を殴るのはヘイトスピーチと変わらないのでは、と言う声もあります。本来は差別や偏見から被害者を守るためのポリコレ。間違った使い方をすることによってとらえる側からは悪意を感じてしまう場合もあるのです。
過剰なポリコレは表現の自由を奪ってしまうこともあります。現に、「今のテレビは面白くなくなった」と言う声が上がる理由の一つにポリコレが挙げられるでしょう。今はちょっとした表現や言動がすぐクレームや批判につながってしまう時代です。ポリコレを恐れるがあまり、型にはまった表現しかできなくなってしまうというのも悲しい事ではありますが、ポリコレによって救われている人が多数いるのも事実です。
現代社会の日本においてポリコレが重視される理由として、「グローバル化」がその1つです。様々な企業において、外国人留学生の雇用や、障碍者雇用など、今までとは違う雇用体系が広がってきています。企業がポリコレの概念を理解していないとなると、これからどんどん進んでいく「グローバル化」に対応するのが難しくなっていく事でしょう。そのためにも、企業全体でのポリコレに対する意識を高めていくのは極めて重要であると言えます。
グローバル化を例に挙げましたが、それ以外に、女性の社会進出も以前に比べて多くなっています。共働き家庭も増え、会社でも重要ポストに就く女性も増えたのではないでしょうか。そんなとき企業がポリコレを軽視しているとなるとすぐにセクシャルハラスメント、パワーハラスメントと言った問題が起きてしまうでしょう。今まで通りのスタイルを貫いていると、多様化していく社会のスタイルに対応できなくなってしまうので、ポリコレの重要性を確認してもらえればと思います。
現在、TwitterやInstagramなどのSNSを活用している企業も多いと思いますが、企業SNSこそポリコレ棒の被害にあう確率は高いと言えます。それに企業SNSは若い世代からすれば企業の顔と言えるものです。その発言一つ一つが影響力を持ち、ちょっとしたミスが叩かれる原因となるでしょう。企業の顔がポリコレ棒で叩かれようものなら即炎上もあり得ます。発言内容には注意が必要ですね。
現代社会では些細な言葉の一言で心に傷を負ってしまうこともあります。ポリコレに関する知識を企業全体で取り入れていくとコミュニケーションスキルの向上にも繋がるかと思います。今はすぐにハラスメントやいじめなどにつながりがちな言葉のやり取り。ストレス社会と言われる世の中で、対人関係をスムーズに送るにはポリコレを理解する事はとても大切と言えるでしょう。
このように、ポリコレとは何か、現代社会におけるポリコレの重要性に関してお話させていただきましたが、これから先、もっとポリコレは私たちの社会に深く関わってくるでしょう。ビジネスシーンだけでなく、プライベートでも対人関係やコミュニケーションを円滑に進めていくために必要となるものです。この記事をきっかけに、少しでもポリコレの概念を理解していただければ嬉しいです。
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