記事更新日:2024年06月11日 | 初回公開日:2024年06月11日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報VRIO分析とは、自社の競合優位性や経営資源を分析するフレームワークの一つです。自社の経営資源「ヒト・モノ・カネ・情報」が競合他社と比べてどれだけ優位性を持っているのかを分析するために用いられる方法です。VRIO分析は1991年に米国の経営学教授であるジェイ・B・バーニー氏によって提唱されました。VRIO分析を行うことで、自社の経営資源の強みや弱みを把握することができ、経営戦略を立てる際に役立ちます。
VRIOのVはValue(価値)という意味があります。Valueでは、企業が提供している製品やサービスが取引先や顧客がお金を支払いたいと思える価値を提供できているかを分析します。高品質な製品やサービスの提供やユニークな顧客体験など価値のあるリソースは、企業が差別化を図れる基盤となります。VRIO分析の価値とは、単純に企業の資金を指しているわけではない事を注意しておきましょう。「ヒト・モノ・カネ・情報」すべてが対象です。
VRIOのRは、Rarity(希少性)という意味です。希少性の価値評価では、企業が保持しているリソースや従業員の能力などがどれだけ珍しく、市場でユニークな位置を占めているかを評価します。希少性が高ければ競合他社と差別化を図りやすく、模倣されることもないため顧客からの指示を集めやすくなります。ここでも、商品やサービスだけでなく加工技術や接客ノウハウなどあらゆる資源についての比較が必要です。他社も同じようなものを持っていれば、希少性は下がります。
VRIOのIにはImitability(模倣可能性)という意味を持っています。模倣可能性においては、自社の経営資源が他社から真似されやすいかどうかを確認していきます。真似することが難しい場合は、他者との差別化を長期間維持できるだけでなく市場での優位性も保つことが可能です。商品やサービスを真似できないことは勿論ですが、生産過程などについても簡単にコピーできない事が大切です。技術面では特許などを申請することによって、模倣可能性を抑えることが出来ます。
Organisation(組織)という意味がVRIOのOに込められています。組織の分析は、その組織が所有している希少性が高く模倣可能性が低い価値を持っているリソースを効果的に活用できる組織体制を行えているかを評価します。組織の分析は、他者との比較ではなく自社内の分析がメインとなります。組織体制や人材育成・報酬体系など組織内のフロー全般を確認し、継続的に企業運営を行っていける状態なのかを確認します。
VRIO分析を行うメリットは、コア・コンピタンスを把握できる点です。コア・コンピタンスとは、他社に模倣されにくい自社独自の強みというビジネス用語です。グローバル化やDX化が進み企業を取り巻く外的環境が目まぐるしく変化している現代では、自社のコア・コンピタンスを軸にした経営を行っていなければ変化に対応できなくなります。VRIO分析を行い、4つの視点から自社を客観視することで様々な視点から分析することが出来ます。
VRIO分析は、自社の強みだけでなく弱みを把握できるメリットがあります。VRIO分析を行うことにより、競合優位性についても把握することができるため、他社にあって自社にはないものなども可視化することが可能です。企業が長く企業運営を行っていくためには、持続的な競合優位性を持っておく事が重要です。独自技術を持っていても、特許を取っていなければ模倣される可能性もあります。強みだけでなく弱みを把握することができれば、経営戦略の修正なども行えます。
経営戦略に活用できるのも、VRIO分析のメリットです。経営資源をただ保有している・現状維持で満足しているだけでは、市場でのシェアを確立し続けることは出来ません。継続的に市場シェアを獲得するためには、経営資源を把握し弱みにアプローチしていくことが大切です。自社の強みや弱みを明確にできれば経営戦略を構築することが出来ます。既に経営戦略を構築している場合でも、時代の流れによって内容を変更しなければならない場合もあります。そういった場合にVRIO分析は最適と言えます。
VRIO分析のデメリットは、分析に時間がかかる点です。VRIO分析で分析する経営資源は、自社の製品やサービスだけでなく社内フローや社内設備など様々な要素で構成されており、すべてのデータを集めて正しく分析するには時間が必要です。経営資源が限られている中小企業であれば比較的短時間で実施することは出来ますが、経営資源が多くある大企業などは分析に時間がかかるため注意が必要です。実施する際には事前に時間を確保しておきましょう。
VRIO分析は定期的に分析が必要になるデメリットがあります。分析に時間がかかるVRIO分析ですが、1度実施すればその結果を半永久的に利用できるわけではありません。経営資源の価値や状況はその年によって異なります。また外的要因によっても異なるため、次年度の経営資源が同じ価値があるとは限りません。リーマンショックや新型コロナウイルス流行により不況や経済に大きな変化があるような場合には、過去の結果を活用するのではなく新たに分析し直しましょう。
競合他社の詳細までは分析できないのがVRIO分析のデメリットです。VRIO分析を行うことで市場シェアの優位性や自社の強みや弱みを把握することができるため、経営戦略に活用することが出来ます。その際に競合他社の分析を行い、より一層差別化を図りたいと考える人も少なくないはずです。しかしVRIO分析は自社の経営資源を分析する手法としては適していますが、競合他社の経営資源を分析するには限界があります。公開情報から一定の情報を収集することは出来ても、詳細の把握は難しくなります。
VRIO分析を行う際は、目的とゴールを明確にしておきましょう。VRIO分析を行う前に、分析を実施する目的とゴールを明確にしておくことが大切です。目的とゴールを明確にせずに分析してしまうと、どのような情報が必要なのかが曖昧になってしまいます。自社の経営資源を明確にし、弱みを改善するための対策を立てるなど具体的にしておきましょう。あまりゴールを絞りすぎてしまうと分析する時に負担が大きくなるため注意が必要です。適切な目標やゴールを立てて分析を実施しましょう。
VRIO分析を実施する際は、比較するために競合他社を選ぶ必要があります。VRIO分析のRarity(希少性)とInimitability(模倣可能性)を評価するには、競合他社との比較が大切です。VRIO分析は選定した企業によっても分析結果は変わってきます。VRIO分析を始めて行う場合は、同地域・同規模の競合企業に絞って分析目的を達成できる競合他社を選ぶことも大切です。競合他社であっても状況が似ていない大きな企業を選んでしまうと、目的やゴールを達成することが難しくなります。
分析が終わったら、結果を4つの視点から評価しましょう。目的と比較する競合他社を決め経営資源を把握した後は、VRIOの4つの視点で評価を実施します。各項目に対してYesかNoで回答し、どの項目について競争優位性があるのかを判断します。評価する順番はValueから順番に実施していきましょう。Valueの評価を行う時点でYesがないのであれば競争劣位に該当するため、経済的価値を見直す必要があります。Noと評価されているものは競争優位性には影響しませんが、現状を把握する上で全ての評価を行いましょう。
VRIO分析の結果を、経営戦略に役立てることが出来ます。VRIO分析を行った結果競争劣位となり、この場合は経営資源を抜本的に見直す必要があります。一時的な競争優位である場合には、現在は優位性があっても模倣により覆されてしまうことが考えられるため、弱みを改善するための戦略が必要です。持続的優位性は、模倣が困難であり持続的に競争優位を維持することができるため、これに該当する企業は自社組織の改革のみ実施すれば問題ありません。最終的に全てがYesになるよう、経営資源の活用を目指す事が重要です。
国内で多くの店舗を経営している大手カフェ企業では、VRIO分析を導入しています。このカフェでは商品ラインナップとスタッフの接客などに定評があります。このカフェでは、Valueを庶民的ながら高級感のあふれる店内・コーヒーは高いものの独自の味わいがあるという分析を行い、Rarityを店舗の世界観にオリジナリティがあり美味しいコーヒーが飲めると分析しています。Imitabilityでは高品質のサービス提供により模倣が困難であり、Organizationでは顧客対応力を上げています。
生産から販売まで全てを自社で行っている大手アパレルメーカーでは、価格と品質を両立した製品製造が評価されています。このアパレルメーカーではSPA方式を導入しており、経営資源の中でも大きな魅力となっています。SPA方式とは、企画から生産や販売までを自社で全て実施するビジネスモデルです。Valueを高品質で低価格な衣類、Rarityを資金力を生かしたSPA方式と分析しています。ImitabilityではSAP方式が競合他社に真似されない点を上げ、Organizationを確固な組織力としています。
VRIO分析のメリットやデメリット、VRIO分析を行う手順などについて解説しました。自社が持っている経営資源を分析することによって、自社の強みや弱みを把握することができ今後の経営戦略に繋げることが出来ます。外的環境や市場の変化が激しい昨今においては、自社の強みを生かした企業経営が必要不可欠です。VRIO分析は1度実施すればその結果を半永久的に使えるのではなく、定期的な分析が必要です。VRIO分析を活用して経営戦略の構築や見直しに役立てていきましょう。
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