記事更新日:2021年06月30日 | 初回公開日:2021年06月25日
人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド 用語集相対評価とは、組織の中の相対的な位置による評価のことです。企業での人事評価に限ったことではなく、教育現場でも使われてきました。わかりやすい例としては、小・中・高校における五段階評価があげられます。学級などの組織内で成績による順位を決め、そのうちの上位何%を「5」という評価にする、というようなカテゴリー分けをして、相対的な位置づけを決めるのです。企業においても同様に、業務実績により順位づけを行い、評価を行う評価方法です。
相対評価は、企業にとっては、業務実績をもとに振り分ければよいので評価がしやすい方法です。例えば、S、A、B、C、Dとランク分けした場合について考えてみましょう。始めからSランクは何人、A ランクは何人と枠を決めておけるので、評価がしやすいだけではなく人件費の予算配分も行いやすくなります。さらに、教育現場でも採用されてきたので、社員にとっても受け入れやすい下地ができていました。そのため、日本企業は従来から相対評価を採用してきました。
絶対評価とは、あらかじめ定めた基準による評価のことです。他人の成績や実績に関わらず、あくまでも個人が、基準にどれだけ到達したのかということにより評価を行います。まわりに業務実績の高い人がいくら多くいたとしても、社員個人があらかじめ定めた基準に到達していれば、高評価を得ることになります。反対に、業務実績の低い人が多くいる組織内で上位に位置していたとしても、基準に到達していなければ評価は低くなります。
絶対評価は、教育現の場ではすでに導入されています。2002年度における小・中学校の学習指導要領改訂により、いわゆる「ゆとり教育」が開始されました。この時に、「集団に準拠した評価」(相対評価)から、「目標に準拠した評価」(絶対評価)に改められました。この背景には、少子化の影響があります。児童・生徒数が減少してきたため、学級や学年という集団の規模が小さくなりました。その状況下で、評価の客観性や信頼性を確保するために絶対評価が導入されたのです。
絶対評価が注目されたのは、教育現場で先行して導入されたという事情に加えて、グローバル化の進行が関係しています。日本では、バブル経済が崩壊した1990年代半ば以降、グローバル化が加速度的に進行しました。そのため、欧米の企業では一般的であった成果主義の考え方が広まってきたのです。それまで日本の企業では、勤続年数の長さや年齢により給与や昇進が決まる、年功序列主義が採用されてきました。しかし、仕事の成果を評価する成果主義を導入する企業が増えてきたのです。
企業の人事評価において、相対評価を採用するのか絶対評価を採用するのかを議論される理由は、組織によって採用している評価方法が違うからです。同業種の同じ程度の規模の企業であったとしても、相対評価を行うのか、絶対評価を行うのかは異なります。それでは、なぜ評価方法が異なるのでしょうか。その疑問に答えるためには、相対評価と絶対評価のメリットとデメリットについて理解しなければなりません。続いては両方にのメリットとデメリットついて紹介します。
相対評価のメリットは、第一に、人事評価をする企業にとって社内で比べるために評価しやすいということです。社内における社員の業績は、全て企業が把握しています。まず、あらかじめ決めておいた基準によって、社員個人個人の業績を順位づけしていきます。次に、やはりあらかじめ定めておいた割合により、カテゴリー分けしていけばいいのです。始めから評価の方向性がはっきりしているので、評価するのは難しいことではありません。
相対評価の第二のメリットは、社員同士の競争が活発化するということです。高い人事評価を得て、昇給、昇進するためには、他の社員に比べて高い業績を上げることが必要になります。そのため、相対評価はライバルよりも結果を出そうと励む動機づけとなるのです。自分は頑張ったのでここまでで十分だ、というような自己満足で終わらず、もっと上位を目指そう、頑張って仕事に取り組もうと考えるようになる社員が多くなり、自然と競争が活発化します。
相対評価のデメリットはどんなことでしょうか。デメリットのひとつは、個人の成長が評価されにくいということです。相対評価においては、あくまでも、他の社員と比べてどのようなポジションにあるのか、ということが評価されます。そのため、社員個人が努力して成長したとしても、それ以上に他の社員が業績を上げていたら高い評価は得られなくなってしまいます。また、業界全体が好況であり、社員の多くが好業績を上げているような場合にも個人の成長は評価されにくくなってしまいます。
相対評価の第二のデメリットは、組織の一体感が薄れる場合があるということです。他の社員と比較されて評価されるため、自分以外の社員は全員がライバルとなってしまいます。仮に自分が成長しなかったとしても、まわりの社員の業績が下がれば、自分のポジションは上がって評価は高まるという仕組みです。そうなると、社員同士が結束して組織が一丸となって目標達成に向かっていく、というような流れは生まれにくくなってしまうことがあります。
絶対評価のメリットは、社員に対して行った人事評価について、納得してもらいやすいということです。絶対評価においては、あらかじめ定めた基準を明示しておき、どれだけその基準に到達したかで評価するので、評価の過程に透明性があります。また、社員自身も自分がどれくらいの業績を上げたかということはわかっています。他人の業績がどれくらいであったかということとは関係なく、自分の業績と達成度のみにより評価されるため、社員が納得しやすいのも当然のことでしょう。
絶対評価における第二のメリットは、個人の成長が評価されやすいということです。絶対評価を行っていれば、いくら他人の業績の変化や業界の景気に関係なく、社員個人の評価に影響することはありません。あくまでも社員個人の業績が、基準に到達したかどうかだけが評価の対象となります。個人として成長し、それぞれが目標を達成していれば評価されないということはないのです。そのため、社員一人一人がそれぞれ目標に向かって成長していこうというモチベーションが高まります。
絶対評価のデメリットは、適切な評価基準を設定するのが大変だということです。先ほど絶対評価を行う場合には、評価のためにあらかじめ基準を定めておくと述べました。しかし、この基準設定が簡単なことではありません。企業が絶対評価を設け、評価基準を一方的に決めてしまえば、社員が満足し上手くいくというわけではないのです。評価基準が適切なものでなければ、社員に不満が生まれますし、そもそも不適切な目標に向かって努力しようとする気概も生まれにくくなってしまいます。
絶対評価の第二のデメリットは、人件費がコントロールしにくいということです。あらかじめ設定した評価基準に到達した社員を評価するので、企業が予想したよりも多くの社員が目標達成することもあり得ます。そのような場合には、高評価の人数が多くなり、すなわち支払わなければならない賃金が高くなります。予算立てしていた人件費をオーバーしてしまうという事態にもなりかねません。逆に、評価基準を達成した人が少なかった場合は、人件費が少なくなるわけです。いずれにしても人件費をコントロールするのが難しいということになります。
それでは、相対評価、あるいは絶対評価を取り入れる時に、どんな点に注意したらよいのでしょうか。それは、企業が何を目的に評価をするのか、明確にするということに尽きます。人事評価の目的によって、相対評価が適しているのか、それとも絶対評価が適しているのかが自ずと決まってきます。評価の目的を明確にせずに、これまでやってきたからという理由で相対評価を採用し続けたり、あるいは時流だからということで絶対評価を選んだりするようなことは避けるべきでしょう。
相対評価を取り入れるべき企業の目的とは、どんなものが考えられるでしょうか。例えば、組織における社員のポジションを決めたいという場合です。相対評価によって、管理職に昇格する人を決めれば、その部下となる人には納得が得られやすいでしょう。自分と比べて、高い業績を上げている人が昇格して管理職になるのですから、その人の下で働くことに違和感はないはずです。社員に納得の得られやすいように組織のポジションを決めたい場合には、相対評価を取り入れるべきです。
絶対評価を取り入れるべき企業の目的例としては、人材育成をしたい場合が考えられます。他の社員と比べられることはなく、自分が評価基準に到達することをまっすぐに目指せることが理由です。結果として、社員個人の成長が促されます。それぞれの社員が、自分の成長を目指すことによって人材育成がなされることになるわけです。前述したように、適切な評価基準を設定するのは困難です。しかし、人材育成を目指すのならば、その困難さを必要なコストだと捉えることができるのです。
この記事では、なぜ人事評価の方法が相対評価から絶対評価に転換してきたのか、相対評価と絶対評価のメリット、デメリット、相対評価と絶対評価を取り入れる注意点などについて解説してきました。どちらかの評価方法が優れているということではなく、企業の目的によって、相対評価と絶対評価のどちらが適しているのかが決まってきます。評価機序運を決めるには、今後の経営全体を見渡し企業を把握する必要があるでしょう。相対評価と絶対評価のどちらを取り入れるべきなのか十分に検討した上で、よりよい人事評価を行い、企業の発展につなげていきましょう。
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