記事更新日:2023年07月28日 | 初回公開日:2023年07月27日
用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 外国人採用・雇用エンパシーとは相手の立場に立って物事を考え、相手が何を考え事象をどのように感じているか理解することを指す言葉です。元はギリシャ語の「emphatheia(心の状態)」が語源となっていて、エンパシーを日本語訳すると「感情移入」や「共感」といった意味になります。具体的には本を読んでいる時に物語の本文の情景や人物の表情の描写を読み取り、登場人物の感情を想像する行為もエンパシーありきの行動と言えます。また、他人と自分の価値観や考え方の違いを受容するというのもエンパシーの特徴です。
シンパシーとエンパシーはよく似た言葉で、意味も混同されがちです。現にシンパシーを日本語で訳すと「思いやり」や「共感」といったエンパシーと被る意味合いの言葉になります。しかし、シンパシーには「同情」の意味合いが強く、細かいニュアンスがエンパシーとは異なります。厳密にはシンパシーは自分の立ち位置から相手を判断し憐れみ感情的に共感します。その一方でエンパシーは自分が相手の立場に立ったことを想像した上で相手を理解し共感するという違いがあるので覚えておきましょう。
エンパシーは他人とのつながりや共感を促進するという重要な役割があります。例えば落ち込んでいる人を励ますには、何故落ち込んでいるのか、どんな風に声をかければ良いのか相手の立場に立って物事を考える必要があります。この時、エンパシーの能力が高ければ適切な声掛けができますが、エンパシーが欠如していると不適切な言動で相手を傷つけてしまう危険性も少なくありません。逆に言えば、エンパシーのスキルが高まると共感性を育めるだけでなく、分断を避け他者との良好な関係構築の補助にもなります。
エンパシーは他人の視点に立ち物事を考えられるという特徴がありますが、この特徴がよく現れるのが他者とのコミュニケーションの場面です。エンパシーの能力がある人は人の話を最後まで聞き安易に否定やダメだしをしないなど、積極的に他者理解に務めます。そのため、エンパシーを身に付けて他者への思いやりを表現したい場合には、人の話に耳を傾ける姿勢を大切にする必要があります。例えば、ミスを犯した部下や後輩を頭ごなしに叱責するのではなく、事情を根気強く聞く行動でもエンパシーを示すことは可能です。
エンパシーにはコミュニケーションの質を向上させる働きもあります。社会は様々な年代や背景を持った人々で構成されているため、異なる価値観の人が職場に大勢居てもおかしくありません。このような人々が協力体制を築くには質の高い対話が求められます。そして、対話で自分と違う価値観を持った人を理解するには相手の気持ちを考える共感性や、相手を理解できなくても違いを受容できる寛容さが必要です。この共感性や寛容さもエンパシーの特徴の一つなので、エンパシーは重要な役割を果たすと言えるでしょう。
シンパシーとエンパシーの類似点は他人に対して思いやりを持ち、気持ちを共有しようとする点です。この点だけ見ると二つの言葉は似ています。しかし、シンパシーの中でも大部分を占める「同情」は、他者を自分の視点から判断した時にしか生まれない感情です。そのため、シンパシーは自分の視点から物事を判断していて、あくまで相手の気持ちは他人事として受け止めていると言えます。これに対してエンパシーは相手の視点から見て物事を判断するので、相手の気持ちも自分のことのように思い、寄り添うことができます。
エンパシーを学習し、能力を向上させていく方法として有効なのは積極的に他者との対話や交流を増やし、様々な価値観や考え方に触れ知見を増やしていくことです。これを行うことで自分自身の視野を広げることができます。また、文学作品を読み、登場人物の心理描写や感情表現に触れることでも、相手の言葉には出さない気持ちを察する能力が身に付きます。エンパシーの能力はすぐに身に付くものはなく、大切なのは日々の積み重ねと習慣づけです。そのため、常に他者との対話と感情の探求を心がける必要があります。
エンパシーの最大の利点は身に付けることで人間関係の改善が図れることです。エンパシーは他者理解を深めることに繋がるだけでなく、理解しようとする姿勢を見せることで周囲からの信頼も集めやすいという特徴があります。そして、エンパシーは他者に自分を理解してもらえるように対話をする、伝える技術の補助にも使えます。相手を理解し、自分も相手に理解してもらうと人間関係はより強固な信頼関係に変わるので、エンパシーは身に付けると人間関係の改善に役立てられると言えるでしょう。
エンパシーは前述した通り、人間関係の相互理解を助けられるという利点があります。さらに、エンパシーの特徴の1つである他者理解は自分と他者だけでなく、他者と他者との関係の仲裁など人間関係を調整する場面でも役立ちます。このような特徴から集団で行動しなければならない場面でもエンパシーを持っていることで自分と他者だけでなく周囲の人間関係全体を良好に保つことが可能です。そのため、エンパシーの有無は周囲の人間関係と協力関係を築く場面においても大きな影響を与える要素であると言えます。
エンパシーの能力が不足していると、職場内や特定のグループ内での人間関係に軋轢が生じやすくなります。エンパシーが不足しているということは他者に対して無理解または理解が足りない状態が慢性的に続くことでもあります。この状態が続くと人は相手の立場に立って物事を考えられないため、相手に対して不平や不満が沸きやすくなってしまいます。そして複数人の不満が発散されないまま蓄積されると対立の原因にもなり、結果的に連絡不足による不備やミスが増える可能性も否定できません。
エンパシーは共感という意味合いが強い言葉ではありますが、感情を共有する共感と他者の感情を理解するエンパシーでは、微妙にニュアンスが異なります。共感とは相手の感情を読み取り自分も同じ意見や感情を元々持っている際に引き起こされる感覚です。そのため、ある意味相手の意見や気持ちに同調することと言い換えることができます。対してエンパシーは他者の気持ちに対して深く理解を示すことはあっても、自分の意見や気持ちは別物として持っているので、いつでも他人の意見に同意するとは限りません。
エンパシーを育むためには他者との積極的な交流が必要不可欠です。さらに他人から見た物事の捉え方を知ろうとする興味関心も欠かせない要素と言えるでしょう。また、能力を高めていくには一時的ではなく何度も回数を重ねて、他者と交流していかなくてはなりません。そのため、例えば職場の場合は自分や従業員の意見発表の場を作るなど、いつでも自分の意見や気持ちを言い出しやすい空気を全体で作っていく必要があります。気軽に話せる環境を作ることで特別な訓練をしなくてもエンパシーは少しずつ育まれます。
エンパシーの能力で重要な他者理解とはどのようなものか理解するのが難しい場合は映画や本などの鑑賞がおすすめです。この方法では物語の事例を通じて主人公や登場人物の経験への共感を促すことができます。特に物語は意図的に表情やセリフなどの描写を利用して、登場人物の内面を表現しているので感情移入や自己投影がしやすいという特徴があります。そのため、鑑賞体験を通じて物語の登場人物の感情を演技や演出から読み取る訓練を行うことで、共感とはどういうものなのか自分自身で感じることができます。
エンパシーが欠如している状態とは他者に対し無理解かつ無関心である状態と言い換えることもできます。エンパシーが欠如している人は共感性に乏しいので、不用意な発言で他人の反感を買いやすく、信頼関係も損ねがちな傾向があります。さらに、他人に無理解な人は相手からも理解されず孤立する可能性もあります。また、相手の立場を顧みない意見の押し付けはハラスメントと捉えられることも多いため、エンパシーの欠如はハラスメントの原因になると表現しても過言ではないでしょう。
エンパシーがビジネスの現場でも求められているのは、上記のような集団内での不和や結束力の低下を防ぐためです。逆に言えばエンパシーの備わった人材が多く集まれば、それだけチームの結束力は高まる効果が期待できるということでもあります。また、エンパシーの能力の高い人をチームリーダーとして投入し、チーム内で信頼関係が生まれれば、1人1人の人材が成果を挙げようと仕事に対して意欲的になります。結果的にチームメンバーの主体性を育むことにも繋がり、全体の生産性の向上が期待できます。
エンパシーは職場という枠組みに限定されず社会生活のあらゆる場面で役立ちます。例えば他人と共同作業を行う場面や初対面の人と協力関係を築かなければいけない場面でも、積極的に周囲と打ち解けられるのが利点の1つです。また、他人は自分とは違うことを受け入れることができれば、他人の感情に振り回されることもなく精神衛生を保てるというメリットもあります。他人と長く良好な関係を維持していくためには、考え方の違いを受容することが大切です。このような点においてもエンパシーは重要な能力と言えます。
エンパシーを重視してコミュニケーションを行う際に気を付けるポイントは、自分主体ではなく相手主体の対話を心がけることです。そのためには積極的な聴取や、相手が話しやすいよう否定的な言葉ではなく共感的な言葉をかけることが大切です。話を聞く時は、時折気になった点などを質問するとより多くの情報を引き出すことができ、相手への理解が深まります。また、話の最中はなるべく相手の言葉を遮らないよう注意し、最後まで話を聞くようにしましょう。
エンパシーを身に付けるには対話トレーニングやストーリーテリングの学習がおすすめです。ストーリーテリングとは体験や物語の説明を通して自分の主張を伝えるコミュニケーションの手法で、演説やプレゼンに用いられます。ストーリーテリングの目的は相手の共感性に訴えることなので、話を組み立てる際には相手が聞いてどう思うかを考えなければならず、エンパシーを高める訓練にもなります。また、対話トレーニングでは聞く能力も鍛えられるため、行うことでエンパシーに重要な傾聴の姿勢を学ぶことに繋がります。
他者を理解することや違いを受け入れることは言葉で表現すると簡単にも思えますが、行動に反映するには常に相手の立場に立って物事を考える必要があります。そのため、エンパシーを理解し身に付けるには日々の積み重ねや、積極的に周囲の人を理解しようとする姿勢が大切です。しかし、思いやりのある言動は他人だけでなく自分を助けることに繋がります。そのため、対人スキルアップと他者との信頼構築のためにもエンパシーへの理解を積極的に深めていきましょう。
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