複線型人事制度とは【導入するメリットやデメリットなどについて解説します】

記事更新日:2021年10月15日 初回公開日:2021年10月14日

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近年は働く人の価値観やキャリアに対する考え方、人材の多様化が加速しています。そのためこのような時代の流れに合わせて日本企業の人事制度の抜本的な改革が求められています。そこで今回ご紹介するのが、近年注目を集めている「複線型人事制度」です。複線型人事制度はこれまで主流だった画一的に昇進していく人事制度とは異なります。この記事では複線型人事制度の目的やメリット、具体的な導入方法などについて説明していくので、企業の人事に関わる方は是非ご一読ください。

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複線型人事制度とは

複数のキャリアを設定する人事管理制度

複線型人事制度は複数のキャリアの選択肢を設定する人事管理制度のことです。従来の画一的な人事制度とは異なり、複数のキャリアの選択肢を用意することで多様な人材を管理することが可能になります。キャリアコースの分け方も多様で、企業によって異なります。近年は特に注目を集めるようになり、複線型人事制度を導入する企業も年々増加傾向にあります。従業員にとってもキャリアの選択肢が広がることになるので、メリットがあると言えるでしょう。

キャリア志向・適性・職種によってキャリアコースが異なる

複線型人事制度のキャリアコースは様々なパターンに分けられます。具体的にはキャリア志向、適性、そして職種の主に3つを軸としてコースが設定されます。キャリア志向は幹部層を目指す総合職、職務や勤務地が限定される一般職、専門性を高める専能職などに分けられます。続いて適性はジェネラリストとなる管理職やスペシャリストと呼ばれる専門職などにカテゴリー化されます。最後に職種は経理や法務、マーケティングといった職務内容によってキャリアコースが分かれます。

複線型と単線型人事制度の違い

単線型人事制度はキャリアの選択肢が一つしかない

複線型人事制度とよく比較をされるのが、単線型人事制度です。単線型人事制度は、基本的にキャリアコースは一つしかありません。具体的にはラインマネージャーへの昇格を前提とした人事管理システムになっています。そのため他のポストへの昇進や昇格といった手段はありません。つまり、昇格をする際には現在担当をしている職務の管理を行うポジションになることが前提となります。一方で複線型人事制度の場合は、複数のコースの中から自らが求めるキャリアパスを選択することが出来ます。

複線型人事制度の目的

社員の主体的なキャリア形成を促進するため

ここでは複線型人事制度の主な目的は2つ紹介します。1つ目は社員の主体的なキャリア形成を企業側が促進するためです。先程も述べたように近年は働き方や仕事に対する価値観の多様化が進んでいます。そのため、従来の単線型人事制度では多様な人材に対応できず、最悪の場合は不満を持った社員が退職してしまうケースもあるでしょう。しかし複線型人事制度を利用すれば、社員が自分のキャリアプランに合ったコースを選択できるため、主体的なキャリア形成が可能となります。

事業・処遇の課題を解決するため

2つ目の理由は事業や処遇に関する課題を解決するためです。自社が事業で競合優位性を獲得するためには新たな価値を生み出せる人材の存在が欠かせません。複線型人事制度であれば多様なキャリアコースが用意されているので、こうした人材の育成や定着を図ることが出来ます。また、単線型人事制度の場合は管理職のポストの数は限られているため、管理職に昇格出来ないと給与が上がらないといった課題が発生してしまいます。この課題に対しても管理職以外に高度な能力やスキルを持った人材をスペシャリストとして昇格させることも可能となるでしょう。

複線型人事制度のメリット

従業員のモチベーションを高めやすい

次に複線型人事制度のメリットを3点紹介します。まず1つ目は、従業員のモチベーションを高めやすくなることです。複線型人事制度を使うことで各社員の希望がキャリアに反映されやすくなります。そうすると当然仕事に対するモチベーションも高まりやすくなるでしょう。さらに社員のモチベーションが高まると、企業全体の生産性の向上や業務効率化にもつながります。そのため、企業にとっても社員にとってもメリットになると言えるでしょう。

専門的な知識や技術を習得しやすくなる

2点目のメリットは専門的な知識や技術を習得しやすくなることです。キャリアコースの中に専門職や専任職を設けることで、一部の業務に特化した従業員が知識や技術を効率的に高めることが出来ます。この場合、自身で選択した専門分野のコースを辿ることになるので、年数を重ねるごとに専門性を高めることが出来るでしょう。また、異動の際も急に馴染みのない分野の部門に配属されることもありません。このような高い専門性を持った人材がいることは会社にとっても非常に有益となるはずです。

キャリアの選択肢が広がる

そして3点目のメリットは自身のキャリアの選択肢が広がることです。これまで主流だった単線型人事制度とは異なり、複線型人事制度はそれぞれの従業員が自分自身に合ったキャリアを選ぶことが出来ます。例えば専門性を高めたい人はスペシャリストを目指し、様々な業務を経験したい人は総合職としてジェネラリストを目指すことも可能となります。それと同時に個人のライフスタイルに合った働き方を実現することも出来るので、従業員にとって働きやすい環境となるでしょう。

複線型人事制度のデメリット

導入にコストがかかる

複線型人事制度はメリットばかりではありません。複線型人事制度を新たに導入する際は一定のコストがかかってしまいます。具体的にはキャリアコース内でのルール決めや昇給システム、給与体系、業務プロセス等を新たに構築する必要があります。従来の人事制度を抜本的に変更することになるので、導入には多くの時間とコストがかかるでしょう。さらに単一のコースと比較して報酬の頻度も増えるでしょう。それに伴って人件費がさらに膨らむ可能性もあるので注意が必要です。

評価制度が複雑になる

続いてのデメリットは評価制度がより複雑になることです。複線型人事制度ではコースごとに求められる能力やスキルが異なります。そのため、評価制度を統一することが難しく、複雑になってしまいます。さらに評価対象が異なるため公平性を保証することが難しく、社員の不満につながってしまう恐れもあるでしょう。配属をするときには従業員一人ひとりに十分な説明を行い、未然に不安を払拭してもらうことが大切になります。さらに社内環境の変化に応じて評価制度を改善することも必要です。

複線型人事制度の導入方法

複数のキャリアコースを設定する

ここでは複線型人事制度の基本的な導入の流れを説明していきます。初めに複数のキャリアコースの設定を行いましょう。まずは自社においてどのようなポジションが必要であるかを定義して、そのポジションに合ったキャリアコースを作る必要があります。その際に各ポジションにおいて成果を出すときに必要となるスキルや能力も同時に洗い出すようにしましょう。コースの設定は会社の方向性にも関わるので、様々な意見を取り入れながら進めることが重要です。

評価制度を決定する

次に評価制度を決定し、キャリアコースとのリンクを行いましょう。設定したキャリアコースごとに役割や目標設定、能力要件などを割り当てて、その処遇を決定します。そのコースによって求められる能力やスキルも異なるため、それに合わせた評価項目を設定する必要があるでしょう。従来の人事制度では評価が難しい場合は、新たな評価項目を追加するのも一つの手段です。さらに、評価制度は能力評価、業績評価、行動評価などを組み合わせた多面的なものが好ましいと言えるでしょう。

審査基準に合わせて社員を配置する

最後のステップは審査基準に合わせて従業員を配置することです。それぞれのキャリアコースによって適性やスキルなどに関する審査基準を設けましょう。そしてこれらの業績達成度や能力要件などに応じて従業員を配置します。その際に企業側のニーズだけでなく、従業員それぞれのキャリアコースに対する意思や希望も取り入れることが重要です。そうすることで従業員もキャリアコースの選択に満足し、長期的に会社に貢献してくれるでしょう。

複線型人事制度の事例

公務員

最後に複線型人事制度を活用している実際の事例を見てみましょう。最初に紹介するのは「公務員」です。公務員というと年功序列型の制度を想像する方も多いかもしれませんが、徐々に複線型人事制度を導入する自治体も増えています。その中で有名な例が埼玉県の春日部市です。春日部市では専門性の高い職務に就いている職員は10年程同一または関連する部署で働けるようになりました。福祉や税、ITといった分野に携わる職員が主な対象となっています。その他にも千葉県柏市などが複線型人事制度を導入しています。

りそな銀行

続いてご紹介するのは、主要な都市銀行の一つであるりそな銀行です。りそな銀行は2021年4月に13年ぶりに人事制度を刷新しました。旧制度では4分野から各社員がキャリアを選択していましたが、新たな人事制度では19のコースに分かれています。ダイバーシティマネジメントの促進や分野別のプロ人材の育成などが新制度設立の狙いとなっています。それに加えて、これまでの60歳の定年制を廃止して、65歳までに自由に退職時期を選択できるようになりました。社員にとってはキャリアの選択肢が大きく広がったと言えるでしょう。

JR東日本

最後に紹介するのが、鉄道の事業者として有名なJR東日本です。JR東日本では2012年に女性社員の積極的な登用を目指してグループ経営構想Vを策定しました。この経営構想の一環として複線型人事制度も取り入れられています。具体的には従来の等級制度の廃止や管理職を補佐する主務職や人材育成のプロフェッショナルとしての技術専任職の新設などが行われました。その結果、2015年にダイバーシティ経営100選のうちの一社となり、働きやすい環境づくりもより活発になっています。

まとめ

複線型人事制度を正しく理解して導入を検討してみましょう

今回の記事では多面的に複線型人事制度の詳細について説明をしてきました。近年は人材の多様化に伴ってこの複線型人事制度が主流となってきています。複線型人事制度を導入するメリットはたくさんありますが、一方でコストがかかるなどのデメリットがあることも忘れてはいけません。人事制度の改革は企業の方向性にも関わるので、制度の内容を正しく理解することが大切です。今回ご紹介した内容を活用して、複線型人事制度の導入を検討してみてください。

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