記事更新日:2021年10月14日 | 初回公開日:2021年10月14日
外国人採用・雇用 外国人留学生の採用 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 用語集 ビザ(在留資格)先述の通り技能実習と特定技能では、それぞれ目的が異なります。技能実習では技術伝達によって途上国の技術向上に協力するという、国際貢献がおもな目的とされています。一方で特定技能の目的は、日本における労働力不足を補うことです。実際に特定技能の在留資格を持つ外国人労働者は、技能実習生が従事できる業務内容よりも多くの業務に携わることができます。受け入れの時点で必要とされる能力も特定技能の方が高く設定されているので、企業の即戦力として業務に取り組んでもらえるのが特定技能の魅力といえるでしょう。
技能実習と特定技能は、対象国が異なります。特定技能の在留資格の取得は厳密にはどの国籍の外国人でも可能とされていますが、実際に在留資格を取得できる国籍は限られているというのが現状です。受け入れに関して送り出し国との間でトラブルが起こらないように、協定を結んでいるケースがほとんどです。また、イランとトルコ国籍の外国人は特定技能の対象国から除外されていますので注意しましょう。これら2ヶ国は他国から帰国の命令をされた自国民を入国不可にするため、難民として受け入れなければいけなくなるためです。
技能実習と特定技能においては、許可されている在留期間が異なります。技能実習において1号から3号まで移行した場合、最長で5年間実施することができます。5年となると長期間のようにも思えますが、あくまで移行が順調にできた場合の年数です。移行ができなかった場合、1年で終わってしまうケースもあり得ます。特定技能の場合は1号では通算5年、さらに2号では在留期間の上限がなくなります。したがって特定技能2号の在留資格をもっていれば、かなり長期間にわたって日本で勤務することも可能ということです。
どの職種においても移行が可能というわけではなく、技能実習から特定技能への移行の対象となっている職種は限られています。製造業や建設業をはじめとした、14の産業分野において移行が可能です。したがって、自社の業種がそもそも移行の対象職種かどうかを把握しておく必要があるでしょう。試験制度などの受け入れ態勢がまだ整っていない職種については、今後新たに移行の対象となっていくことが予想されています。移行の対象となっていない場合は、技能実習3号へ移行することで受け入れ期間を延長することも可能です。
技能実習を実施した職種と特定技能への移行後の職種が一致していることは、技能実習から特定技能への移行における要件のひとつです。技能実習2号までの職種との関連性がある場合は、そのまま特定技能への移行の手続きへと進むことができます。一方で技能実習での職種と特定技能での職種が一致しない場合は、技能試験を受験して合格することによって移行が可能となります。また、この場合は日本語能力試験を受験する必要はありません。
技能実習から特定技能へ移行するためには、技能実習2号を良好に修了している必要があります。技能実習を良好に修了したと認められる条件は、技能実習を実習計画に沿って2年10ヶ月以上の期間で修了していることが1つです。これに加えて技能検定3級もしくはそれに相当する技能実習評価試験に合格しているか、実習に対する評価調書があるというのがもう1つの条件です。この場合は日本語能力の試験が免除されるため、企業にとっても技能実習生にとってもよりスムーズに特定技能への移行が行えるでしょう。
技能実習から特定技能へと移行することによって、より人手不足を解消しやすくなります。技能実習生よりもさまざまな業務を担当することが可能になるだけでなく、日本語の能力も高いことから指示が出しやすいのもメリットでしょう。さらに、特定技能においては1号の場合でも通算5年の在留期間が認められていますので、長期間安定して外国人労働者を確保することができます。さらに受入可能な人数に関しても、建設と介護以外の分野については上限がないためより多くの労働力を確保できるでしょう。
帰国した技能実習生を再雇用しやすいということも、技能実習から特定技能へ移行することによるメリットといえるでしょう。技能実習が修了すると、基本的に実習生は帰国することになります。再び雇用するための方法として最も一般的なのが、特定技能への移行であるといえます。技能実習での雇用先が異なる場合でも、要件を満たしていれば転職することも可能です。技術力の高い元技能実習生を新たに特定技能として受け入れることができるのは、企業にとって非常に大きなメリットでしょう。
特定技能へと移行すると、技能実習に比べてさらに長期間での雇用が可能となります。技能実習の場合は最長でも5年間という在留期間のため、実習を行いながら業務に取り組んでもらえるのはあくまで一時的なものでした。特定技能へと移行することによって、技能実習の期間を合わせるとかなり長期間にわたって勤務してもらうことが可能です。なるべく長期間で外国人労働者を雇用したいと考えている企業は、技能実習から特定技能への移行を積極的に実施すべきでしょう。
技能実習から特定技能に移行すると、外国人労働者が別の企業に転職してしまう可能性があります。受け入れ企業側に問題があった場合などを除くと、技能実習生は原則として転職することができません。2020年4月より一部の外国人技能実習生を対象に転職が認められましたが、簡単に転職先が見つからないのが現状です。特定技能に移行したからといって格段に転職しやすくなるということはありませんが、技能実習生に比べると転職へのハードルは低くなるでしょう。
技能実習時代に納税をしっかりと行っているかどうか、また必要な届け出の義務を守ったかを確認する必要があります。未納の税金があった場合や届け出の義務を怠っていた場合には、技能実習から特定技能へ移行する際の審査において不利な要素となってしまいます。移行を行う前に念のためもう一度確認し、もし不備があった場合には速やかに対応するようにしましょう。審査を申請する前に、マイナスポイントはなくしておくことが重要です。
技能実習から特定技能へ移行するためにまずは、申請書類を用意する必要があります。在留資格変更許可申請書などの書類が必要とされますが、そのほかにも必要な書類は出入国在留管理庁のホームページから確認することができます。提出書類のうち日本で発行されるものは、全て3か月以内に発行されたものでなければいけません。また技能試験および日本語能力試験の合格証明書についても、有効期限内のものでないといけないので注意しましょう。
必要な書類を揃えたら、地方入国在留管理局に提出しましょう。特定技能への移行手続きを円滑に進めるためにも、書類の提出漏れがないように注意が必要です。必要書類を提出後さらに別の書類の提出を求められる場合もありますので、その際には臨機応変に対応するように心がけましょう。原則として一度提出した書類の返却はできないため、もう一度入手することが困難な書面の原本などの返却を希望する場合は申請時に申し出ておく必要があります。
技能実習から特定技能への移行には、合計で約4ヶ月の期間が必要とされています。申請を行ってから承認がおりるまでに約1、2ヶ月かかるのに加え、登録機関とのやりとりなどを考慮するとさらに数ヶ月が必要となるでしょう。技能実習生の在留期間によっては申請中に一時的に帰国するというケースもありますが、その場合は入国の際に再度手続きが必要となります。したがって、技能実習生の在留期間も想定したうえで計画的な移行を実施するべきでしょう。
技能実習から特定技能への移行に関するルールを、状況に応じて緩和するという特例措置が取られる場合もあります。技能実習から特定技能への移行においてよくあるケースとしては、移行の申請中に在留期限が切れてしまう場合などが考えられます。特例措置が適応されるためには受け入れ企業と技能実習生の双方が満たすべき要件がありますが、基本的には実習の実施における要件を守っていれば問題ありません。特例措置の申請を行う場合には、出入国在留管理庁のページから必要書類などを確認するようにしましょう。
コロナ禍の影響を受けて、技能実習から特定技能への移行に関する特例措置が取られています。技能実習での在留期間が終了するまでに、特定技能への移行に必要な書類を揃えられないなどのケースが考えられるためです。このような場合は特定技能で受け入れを実施する機関で就労しながら、移行のための準備を行うことができます。在留資格は「特定活動(4か月・就労可)」へと変更し、この期間は「特定技能1号」の通算在留期間に含まれることになります。また特定技能で従事する予定の業務と同様の業務であれば、就労が可能とされています。
技能実習から特定技能への移行によるメリットや、必要な準備についてお分かりいただけたでしょうか。国内の労働力不足を解消するひとつの手段として、技能実習から特定技能への移行は非常に有効といえるでしょう。しかし同時に、特定技能への移行するためには相応のスキルや日本語能力が必要とされます。したがって技能実習を実施する企業は実習生がより大きく成長して、問題なく特定技能へ移行できるように適切な指導を行いましょう。
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