記事更新日:2024年03月25日 | 初回公開日:2024年03月22日
用語集 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報ピアプレッシャーとは「仲間からの圧力」という意味の言葉で、同調圧力になっている場合と助け合いになっている場合の2種類があります。同調圧力になっている場合のピアプレッシャーは、「周囲に合わせなくては」という気持ちが精神的なプレッシャーとなり、ストレスを感じさせるものです。また、仕事の中では相互監視的な関係性を助長するため、同調圧力が強すぎる場合には劣悪な労働環境に繋がることにもなり兼ねません。労働環境の悪化とストレスにより、作業効率が落ちることが懸念されます。
一方の、助け合いになっている場合のピアプレッシャーでは、適度なピアプレッシャーが相互配慮の関係を構築し、連帯感を高める効果が期待できます。お互いに良い距離感を保ちながら観察し合うことで、相手の良い面を見つけることができるでしょう。お互いに励まし合うことや、助け合う精神にも繋がることから、適度なピアプレッシャーは企業にとって必要だと言えます。微妙な力加減や個々の受け止め方により、ピアプレッシャーはプラスにもマイナスにも作用するものです。
ピアプレッシャーが注目される背景には、成果主義の企業が増えていることがあります。日本古来の終身雇用制度が崩壊し、年功序列主義から成果主義へと変遷する企業が増加しました。しかし成果主義では個人の結果ばかりが注目されるため、職場の協調性やチームワークが軽視されるようになります。個人の業績に固執するあまりに低下した協調性は業務全体の効率や生産性にも影響しました。企業では組織風土の立て直しを図るために、ピアプレッシャーが注目されることになったのです。
ピアプレッシャーが注目されることに大きな影響を与えたのは、チームや組織で働くことに対する評価が高くなっていることです。近年におけるフリーランスブームの反動もあり、チームや組織単位での仕事が再評価されています。一見すると気楽なフリーランスですが、特別なプレッシャーが少ないゆえに、適度な緊張感を持続することが難しくなるのです。一方の組織やチームに所属しての作業では、納期に合わせた分担作業などが主であり、相互チェックによって品質の維持も保証されています。
テレワークやリモートワークが普及したことも、ピアプレッシャーが注目されるようになった要因の一つです。新型コロナウイルスの流行により、テレワークやリモートワークが急速に普及したことは、皆さんの記憶にも新しいことではないでしょうか。通勤や営業への移動のストレスは軽減されましたが、その一方で従業員同士の繋がりが希薄になるということが問題視されるようになりました。従業員同士の関係性が薄れることによりピアプレッシャーが弱くなり、モチベーション維持や生産技術の維持向上が難しくなったのです。
日本固有の終身雇用も終焉をむかえ、年功序列型の給与形態から成果主義へ変革を企業は求められるようになります。これにより個人の評価が重視されることになったため、日本でのピアプレッシャーが持つ意味合いにも変化が現れました。和の精神を保つとされるピアプレッシャーは、それまでは意識しないなかで行われた相互監視が、成果主義によって相手に対する意識を高めたのです。そのような中で相互監視が強く働くようになり、周囲の目からも明らかに優位と評価されるように相手との差別化を意識して相互監視するように変化してきました。
長時間労働や休日労働が日常のように行われる中で、国も本腰を入れて働き方改革に取り組むようになりました。しかしピアプレッシャーは周囲に合わせることを良しとするもので、正しいことであっても単独の行動に対して異議を唱えるものです。こうしたプレッシャーは、変革を阻むものであり、働き方改革を阻害します。いまでも長時間会社にいることが正義であると思う人が少なくない中で、ピアプレッシャーはマイナスに働き、残業や長時間労働などを助長する要因にもなっています。
ピアプレッシャーが強すぎる場合には、周囲の視線が気になることでストレスが増加するデメリットが発生します。相互監視の意識が強すぎると、常に周囲から見られているという意識が強くなり、仕事に集中することは難しくなるでしょう。過剰なストレスから集中力が低下し、生産性が下がることが懸念されます。もし監視されているということで一時的に生産性が向上したとしても、従業員は周囲の視線を常に意識し緊張していることから、強いストレスを受けることになるでしょう。
残業が全くいけないこととは言いませんが、不要な残業は企業にとって生産性を低下させるものであり、従業員の労働環境を悪化させるものでもあります。他の多くの人が残業をしているのに自分だけ帰ることはできないと、同調圧力を感じることは多いようです。サービス残業なども同様で、自分の仕事が終わっていたとしても、何人かが定時をすぎても当然のように仕事をしているようであれば、ピアプレッシャーを強く受けます。良かれと思ってすることが他人を巻き込むことも多くあるため、注意しましょう。
育休取得も国を挙げて推進しているようですが、あまり効果は大きくないようです。とくに男女の差は歴然としており、女性の育児休暇の取得率が8割を超えるのに対し、男性の取得率は1割にも届かない状況です。また、ピアプレッシャーは周囲に影響されることから連鎖する傾向があり、育児休暇を取得する人が多い組織では、周囲の影響を受けて育児休暇を取得する人が増えます。しかし周囲に変化がない場合には、自ら変化を起こす人は少なく、周囲に同調して現状維持する傾向にあるようです。
企業では従業員のコミュニケーションを図る機会であるとか社員への還元の意味で、定期的な懇親会や社員旅行などを企画することがあります。それらは基本的には任意参加ですが、ピアプレッシャーによって企業内の行事を断りづらいこともしばしばです。とくに大きな波及効果を持つ人が参加した場合には、ピアプレッシャーは更に強くなって参加しなければならない雰囲気が作られてしまいます。イベントなどは、楽しく感じる人と、そうではない人がいるため、自由参加が基本であり強制は避けるべきです。
ピアプレッシャーによって強い同調圧力が働いている環境では、自己主張をする人が減っていくことでしょう。周囲に合わせることが最良であるという考えのもとで、新しい発想や他人と異なる自分の考えを述べることは難しいものです。多様性が尊いと叫ばれる昨今にあっても、ピアプレッシャーが強く働く状況で、自己主張を続けるのは難しく、受け入れられることは更に難しいと考えられます。このような状態が続くことは、多様性が失われるとともに、組織自体の変化と発展が阻害されることにもなりかねません。
ピアプレッシャーが適度な場合には、モチベーションを高く保てるというメリットがあります。適度な緊張感によって、ミスの少ない効率的な作業が期待できるでしょう。お互いに見られているというプレッシャーは過度になればストレスと感じますが、軽い緊張感は集中力を高める効果があり、ミスの低減や生産性向上に繋がります。そして、時間内に業務を終わらせなければいけないという思いが個々に生まれることにより、高いモチベーションを持続する効果が期待できるのです。
働く人同士の間に切磋琢磨し合う環境が生まれることも、ピアプレッシャーの大きなメリットです。お互いを意識し同じレベルで仕事をしなくてはいけないという気持ちと緊張感が、高く安定した品質の商品生産に繋がります。また、最もレベルの高い従業員の仕事を見ることで、従業員の作業レベルを底上げすることが期待できます。お互いに見られているという意識は切磋琢磨し合う環境を生み、高い技術と生産性を持つ組織へと導いてくれるでしょう。
ピアプレッシャーが適度に働くことは、協調性の向上に繋がるメリットもあります。チームや組織として働いている場合、お互いの仕事を見ることで、普段とは違う作業にいち早く気付くことができるでしょう。いつもと違う作業は問題発生に繋がるものです。その違いに気付いて相手に知らせることは、ミスを最小限に抑えることになるでしょう。こうした双方向でのやりとりは相互補完の意識を生み、協調性の向上に繋がります。お互いを良い意味で意識し合うことで、必要なときには協力する体制が構築されるのです。
ピアプレッシャーが適度な場合には、個々の心理的安全性が高まるというメリットもあります。ピアプレッシャーによる相互監視は、周囲に対する攻撃的な言葉や言動を抑制する効果があり、心理的安全性が高まり安心できるのです。重要な会議などでは、お互いの議論を主張するあまりに、過激な言葉で相手を批判する状況も生まれます。しかし相互監視のピアプレッシャーが特別な状況や個人の暴言を許さず、組織のメンバーが安心して自分の意見を伝える環境を作ってくれるのです。
ピアプレッシャーの具体的な活用方法として、1on1ミーティングを実施することが挙げられます。短いサイクルで1対1にて行う1on1ミーティングは、組織に適度な緊張感を与えるのに有効です。実施方法としては、リーダーとメンバーが1対1で対面して会話をします。時間は週に1回程度の間隔で1回30分くらいを目安に行うのが良いでしょう。定期的な会話は、組織のまとまりを持続するだけでなく、自己主張の場を与えることで挑戦する意識を育てることにも繋がります。
ピアプレッシャーは、過度に作用すれば弊害を起こし、適度に作用すれば理想的な職場環境を作り生産性向上にも寄与するものです。それだけに、ピアプレッシャーを有効活用するには慎重であることが重要であり、ピアプレッシャーの意味を十分に理解することが大前提になります。従業員を抑圧するのではなく、従業員が生き生きと働ける適度な緊張感を持てる環境づくりが肝要です。ぜひ、ピアプレッシャーを上手く活用して、組織の持つ可能性を十分に引き出してください。
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