記事更新日:2020年07月26日 | 初回公開日:2020年07月26日
人事・労務お役立ち情報 用語集ホワイト500とは、経済産業省が2016年に立ち上げた認定制度「健康経営優良法人認定」を受けた法人上位500社を指す通称です。のちに詳述しますが、認定制度は大規模法人部門と小規模法人部門の2種類に分かれています。もともとはこの大規模法人部門全体を「ホワイト500」と呼んでいましたが、2020年度選出分より、上位500法人のみを「ホワイト500」として認定することになりました。
よく混同されるものに「健康経営銘柄」がありますが、これはホワイト500に先駆けて2014年に開始された制度で、経済産業省と東京証券取引所が共同実施で企業を選定しています。上場企業限定、かつ1業種につき1企業のみが選出されるなどホワイト500に比べよりチェック項目が多いことが特徴。未上場や中小企業も広く対象にした制度をという声を受けて、2016年にホワイト500が創設された経緯があります。
ホワイト500に紐づく「健康経営優良法人認定」とは、企業の健康経営に関する取組を国が認定・評価する制度です。認定するのは、NPO法人日本健康会議という団体で、経済産業省が設計した「健康経営」という観点に即して認定を行っています。企業における地域の健康課題に即した取組や社員の健康増進への取組など、健康経営に関する取組を広く評価・顕彰する制度だといえます。
健康経営優良法人認定制度には、「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つに部門が分けられています。この部門は業種ごとの従業員数により分類されており、その区別は次の通りです。製造業その他:301人以上、卸売業・医療法人・サービス業:101人以上、の従業員を持つ企業が「大規模法人」。それ以下の基準の企業や医療法人は、中小規模法人部門にあたります。
「健康経営」とはNPO法人健康経営研究会の登録商標で、国民の健康寿命の延伸に関する取組のひとつです。もともとはアメリカの臨床心理学者、ロバート・ローゼン博士が唱えた「ヘルシーカンパニー」に基づく考え方で、個人の健康増進を企業の業績向上に繋げようというもの。従業員の健康管理は企業にとって重要な経営資源であり、それをより戦略的に実践していこうとする活動です。
ホワイト500認定を受けた企業は、経済産業省のウェブサイトで企業名が公表されます。よって社会的に広く認知され、健康経営が実践できている企業として企業イメージの向上が期待できます。認定と同時に健康経営優良法人のロゴマーク使用も許可されるため、広告や名刺などでも取得をアピールできますね。コンペなど他社競合となる場合にも、差がつくポイントの一つとできるはずです。
また、ホワイト500認定を通して、社内では従業員の健康を守る取組が推進されるため、従業員はより安心して働くことができるでしょう。愛社精神が生まれ、働くモチベーションがUPするという効果も期待できます。もし従業員が体調を崩せば、企業にとっては医療費にかかる経費負担が増え、休職や退職で人材を失うことにもなりますよね。日々の働く環境の整備は職場の雰囲気の活性化、そして生産性の向上に繋がるのです。
従業員一人一人にとっても、自社が実施する取組を通して健康への意識が高まり、自分のキャリア、生き方への誇りを持てるようになるというメリットがあります。企業を取り巻く「ストレスチェック」法制化に伴い、従業員のメンタルヘルス対策も企業の義務と言われる現代社会。健康面の意識向上は身体だけでなく心・ストレス面でのサポートに大きく繋がるといえるでしょう。
ホワイト500認定のアピールは採用面でも効果を発揮します。昨今の社会環境において、よりワークライフバランスを重視する就活生が増加しているからです。給与の高さよりも働きやすさを重視する若者も増えており、この認定を受けただけで応募者数が大幅に増加したという事例もありました。内定辞退率の減少も含め、優秀な人材の確保がスムーズに行いやすいという効果が期待できるでしょう。
2019年4月より働き方改革関連法案の一部が施行され、働き方改革は国としても重要な課題の一つとして認知されてきています。これは少子高齢化が急速に進展する日本の現状を背景に、国民の誰もが個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できるようにするためのものですね。 ホワイト500認定のための活動により、長時間労働の撲滅、労働生産性の向上など「働き方改革」を実践できるという点も、メリットの一つといえるでしょう。
では、「健康経営優良法人」に認定されるにはどのような基準が設けられているか、5点確認していきましょう。「経営理念」の観点では、経営者自身が従業員の健康保持・増進に対する会社方針を明文化しているかどうかが評価されます。また、それをどのように社内外へ発信しているかが問われます。公式webページやアニュアルレポート、統合報告書等で発信をしている企業がほとんどです。
次に組織体制の項目があります。この項目では、健康経営に関する取組について、いかに経営層自身が関与しているか、その度合いが問われます。評価される例として多いのは、従業員の健康保持・増進に関して、社内に統括組織を置いていたり、役員自身がその責任者として活動していたりするケース。管理職へ適切な教育体制を敷いているかどうかも評価されるポイントといえます。
この項目では、経営者の理念とその下に構築された組織によりどのような制度が作られ、実行されているかが問われます。「定期健康診断受診率」、「ストレスチェックの実施」、「受動喫煙対策」、「長時間労働者への対応」など15の小項目が設定されており、これと照らし合わせて評価されます。従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討ができているかがポイントですね。
この項目は各企業が保険者へのデータ提供の重要性を理解しているかどうか、また保険者より従業員へ健康医療情報に基づく健康推進ができているかどうか、を問うています。例えば、従業員の健康診断データをもとに健保組合や産業医からの面談や健康サポートを実施しているケースなどはここで加点があるでしょう。やはり健康経営には企業のみならず保険者(健康組合等)との連携が必須だと考えられているのです。
最後に、労働者の最低限度の労働条件を定める、労働基準法、労働安全衛生法などの法令遵守がされているかを申告する項目があります。確認されるのは定期健診の実施、特定健康診査・特定保健指導の実施、50人以上の事業場におけるストレスチェックの実施、など。企業に必須な法令に関して重大な違反をしていないかなどが問われます。嘘の深刻があった場合は認定を取り消されることもあります。
さらに、ホワイト500に認定されるための方法も解説していきます。まず必要なのが、毎年8月後半から10月前半に健康経営度調査票を提出すること。従業員の人数や構成などの基本情報から、長時間労働者数や裁量労働者数の実態、年次有給休暇の取得状況など、細かい情報が求められます。法定福利費や、法定外福利費の実績、健康経営に関する年度計画や実施計画なども調査の対象となるようです。
上記の健康経営度調査票に回答すると、記載内容を受けて法人ごとに順位が付きます。全回答法人のうち上位50%以内であれば、認定基準達成と判断され、ホワイト500への申請書類が送付される仕組みになっています。併せてフィードバックシートも返却され、全回答法人における自社の順位や、設定した健康課題に照らして対応できていない内容、過去評価からの変遷なども示されます。
上記のステップでホワイト500の「適合状況兼申請用紙」を受領した企業は、必要事項を記入し、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会事務局へ提出します。その際、健康保険組合などの保険者と連携した健康経営への取り組みが前提となるため、企業単独での申請はできません。必ず保険者と連名の形になる点は覚えておきましょう。提出期限は毎年11月中旬から下旬頃です。
企業がホワイト500認定申請を行うと、申請書類が受理され、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会において申請内容の審査が行われます。審査には一定の基準があり、認定基準に即しているかをチェックされます。この基準は一般には明らかにされていないようですが、申告内容の確認、専門家内での取組度合いの評価により点数付けがされると考えてください。この審査には例年12月〜2月頃の3ヶ月程度を要します。
審査の結果、基準に達していると企業には例年2〜3月にホワイト500認定が下ります。認定後、経済産業省主催にて「健康経営アワード」と称される式典が開かれ、認定企業の発表やフォトセッション、認定証の授与が行われます。これで晴れて「ホワイト500認定」を名乗れるというわけですね。なお、ホワイト500認定には有効期限があり、この認定日より翌年3月末までの約1年間とされているので注意が必要です。
では、中小規模法人部門ではどのようなステップが必要になるか、確認しましょう。中傷規模法人部門では、まず所属する保険者(全国健康保険協会および健康保険組合)が実施している「健康宣言」に参加することが必要になります。逆に、所属している保険者(全国健康保険協会及び健康保険組合)が健康企業宣言の取組をしていない場合は、申請ができないことになっています。
次に、自社の取組状況に関して、認定基準に該当する具体的な取組内容を申請書に記載することが必要です。先ほど、健康経営優良法人認定基準においては「定期健康診断受診率」、「ストレスチェックの実施」など15の小項目で評価されると述べました。中小規模法人部門では、この15項目のうち6項目以上を満たすことが必要とされています。大規模法人部門における「健康経営度調査票」は必要ありません。
この後の流れは大規模法人部門と同様です。上記の申請書にてホワイト500の認定基準達成が認められると「申請用紙」が送られてきます。これを申請する際も、必ず保険者(全国健康保険協会および健康保険組合)と連名での申請となります。この提出フローに関しては、これまで申請書の記入漏れや記入ミスにより不適合となった事例とユーザビリティを鑑み、2019年より一部電子化が進んでいます。
こちらも大規模法人部門同様、日本健康会議健康経営優良法人認定委員会において申請内容の審査が行われます。2019年のスケジュールでいうと、10月末までに申請、11月〜2月が審査期間となりました。中小規模法人部門はエントリー数・認定数も多いため、大規模法人部門に比べ認定審査期間が長くとられています。なお・審査のポイントについてはあらかじめ説明会でも詳しく公表されています。
認定タイミングは大規模法人部門、ホワイト500と同じく例年2〜3月頃です。大規模法人部門では上位500社をホワイト500と称しますが、中小規模法人部門ではそのような区分けはありません。2019年は全国で2,502法人が認定を受けました。またこの認定法人は大規模法人部門と同様に「健康経営アワード」に招待され、代表法人はそこで認定証を授与されます。認定に有効期限があるのも大規模法人部門・ホワイト500と同様です。
最後に、ホワイト500の上位企業の取組事例を紹介します。株式会社IHIでは「IHIグループ健康経営宣言」を社内外に公表し、全社横断的な健康経営の推進体制を確立すること、重点施策や実績の開示を社外にコミットしています。海外赴任者に対する健康管理の強化に加え、従業員の家族をも対象に健康教育を進めるなど、健康経営の裾野を広げる取り組みを推進している点は高く評価されました。
愛三工業株式会社では、2018年6月、80周年を機に独自の健康宣言を制定しました。「持続的な成長を実現していく上で、社員や家族の心身の健康は重要な経営資源、企業活力の厳選である」という考えに基づくものです。それ以降、担当役員を筆頭に会社・労働組合・健康保険組合が一体となって健康経営を進めていく体制を整備。会社方針において「健康」を基盤方針のひとつに据え、定期的に経営会議で活動報告を行っています。
アイシン精機株式会社では、「安全と健康はすべてに優先する」という基本理念のもと、全従業員の安全と健康の向上に取り組んでいます。健康診断結果に基づき、保健師による禁煙や運動、食生活改善アドバイスの実施、脳・心臓疾患リスクの高い人へ適切な事後措置を実施。また、メンタルヘルスケアにも力を入れ、未然防止・早期発見に努めるだけでなく、復職トライアル、復職後フォローなど再発防止に努めているのも印象的です。
一方で、ホワイト500認定が取り消され返納手続きをした事例もあります。武田薬品工業株式会社では、2018年、ホワイト500認定を受けたものの認定条件のうち法令遵守・コンプライアンスの項目において、虚偽申請があったことが発覚しました。具体的には「長時間労働等に関する重大な労働基準関係法令の『同一条項』に『複数回』違反に該当があったとのことで、認定を自主返納したようです。
本記事では、ホワイト500が健康増進を通じて国家課題である働き手の生産性向上を推進する取組であることを述べてきました。ホワイト500認定を受けることで企業にとって大きなメリットがあることは上述の通りですが、認定を受ける過程での取組自体が従業員、そして社会全体の意識改革につながっていくでしょう。ホワイト500認定を目指し、良い会社・そして良い社会づくりを進めていきたいものです。
「日本語+英語+さらに語学が堪能な社員の採用」「海外の展示会でプレゼンが出来る人材」「海外向けサービスのローカライズ出来る人材」「海外向けWebサイト構築・集客」など、日本語も堪能で優秀な人材へのお問い合わせが当社に相次いでいます。
グローバル採用ナビ編集部では外国人の採用や今後雇い入れをご検討されている皆様にとって便利な「就労ビザ取得のためのチェックリスト」をご用意いたしました。また、在留資格認定申請書のファイル(EXCEL形式)もこちらよりダウンロード可能です。
他社での事例やビザ申請の際に不受理にならないようにまずは押さえておきたい就労ビザ取得のためのポイントを5つにまとめた解説付きの資料です。
この記事を読んだ方は次のページも読んでいます。