SECIモデルとは何か【プロセスや実践のポイントも解説します】

記事更新日:2024年01月15日 初回公開日:2024年01月14日

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企業における資本といえば、「人材・お金・モノ」の3つとされますが、近年においては「個々の持つ知識」に注目が集まっています。中でも長い経験によって得られる「暗黙知」という知識の共有が鍵を握り、ナレッジマネジメントと呼ばれる知識管理および知識システム改革が叫ばれている状況です。ここでは、ナレッジマネジメントで最も注目されている「SECIモデル」について、詳しく解説いたします。ぜひ企業の高い知識共有にお役立てください。

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SECIモデルとは

ナレッジマネジメントのフレームワーク

SECIモデルとは、ナレッジマネジメントのフレームワークであり、個人が持つ知識や知見を組織全体で共有することで新しい知識を発見し企業の発展に繋げるものです。フレームワークという仕組みに当てはめることで、異なる業種であっても組織での知識共有が現実のものとなり、組織全体のレベルアップが図れます。「SECI」とは4つの英単語の頭文字をとったアクロニウムであり、4つの過程を繰り返すことで効果が期待できるフレームワークです。

SECIモデルの4つのプロセス

共同化(Socialization)

SECIモデルの「S」は「Socialization・共同化」です。共同化とは、ベテラン職人が長年の経験などから得た「感覚的な作業の秘訣」などの暗黙知を同じ経験をしてもらうことによって伝授することを意味します。暗黙知を暗黙知のまま伝えるプロセスであり、伝える側は長年かけて体得した言葉にすることは難しい五感を使って経験を凝縮して伝えなければいけません。そのため、伝える側と受け取る側の信頼関係と相互理解が重要になります。

表出化(Externalization)

SECIモデルの「E」は「Externalization・表出化」です。表出化は、経験から得た暗黙知を誰もが理解できる形式知に変換するプロセスになります。暗黙知は繰り返しの経験によって自然に身につくものでもあり、言語化するのは簡単ではありません。しかし、長い期間を経ることにより体得する難しい暗黙知を言語化できれば、伝授の難しい暗黙知を多くの人が体得できる大きなメリットがあります。SECIモデルの中でも非常に重要な作業です。

連結化(Combination)

SECIモデルの「C」は「Combination・連結化」です。暗黙知が表出化によって今までになかった形式知となれば、新しい形式知の連携が可能になります。複数知同士を関連付けることや部分的な複合などによって、新しい形式知を生み出すことにも繋がるプロセスです。部署を超えた形式知なども含む多数の形式知を複合することで、より新鮮で磨きのかかった知識を言語化することができ、会社全体で共有することが可能になります。

内面化(Internalization)

SECIモデルの「I」は「Internalization・内面化」です。内面化とは、連結化によってブラッシュアップされた形式知を反復練習などによって暗黙知に変換していくことを意味します。連結化までのプロセスでは、新しい知識を生み出すことはできたものの、個々の知識として体得するまでには至っておりません。個人が意識せずとも日々の業務において知識を使えるようになるために、言語化された新知識を暗黙知になるまで体内に浸透させる必要があります。この4つのプロセスを繰り返すことで組織全体の知識がレベルアップできるという考え方が、SECIモデルです。

SECIモデルのプロセスに適切な場

創発場

創発場とは、他者と意見交換をできる場所であり、SECIモデルのプロセスでは共同化に有効です。創発場は事前に設定することなどは必要なく、休憩時間や飲み会でのたわいのない会話をする機会など、気軽に話せることが重要になります。共同化は他からの指摘や助言が必要なため、一人で行うことができないプロセスです。自然に他と会話のできる場所ができる雰囲気作りを心がけ、お互いが打ち解け合う中で経験や仕事への熱意などを聞きながら、積極的に暗黙知を習得していきましょう。

対話場

対話場は、創発場とは異なり事前に対話の場所を用意します。突発的や偶然で対話が発生するのではなく、対話のテーマも決めておいて話し合う場所です。SECIモデルの中では、暗黙知を誰もが理解できる言語に転換する表出化に有効と言えます。言語化された暗黙知はマニュアルに盛り込むことや、各部署のミーティングなどで発表して知識を共有するようにしましょう。暗黙知を言語化することは容易でないため、前もって意見をまとめておき活発な議論を交わすことが大事です。

システム場

システム場は、複数の形式知を有効に繋げる場所です。たくさんの形式知があっても、上手く連結させることができなければ、大きな効果は見込めません。関連のある形式知をシステムとして連動させることで、SECIモデルの効果も増幅するでしょう。システム場には多くの形式知を集約することが重要ですが、形式知を持つ複数人が集合する必要はありません。現在ではオンラインなどにより離れた場所で話すことも可能であり、資料なども瞬時に交換できるため、工夫してシステム場を用意しましょう。

実践場

実践場は、三段階のプロセスを経て構築された新しい知識とシステムを実践する場所です。新知識を身体や脳が当たり前に反応するようになるまで叩き込む必要があります。表出化された新しい知識を暗黙知として身体と脳に染み込ませなければいけません。新しい知識やシステムは考えるだけでは意味がなく、実践して効果を得ることで初めてSECIモデルの1サイクルが完結します。さらに、このサイクルを繰り返すことにより、企業としての知識が発展し続けられるのです。

SECIモデル運用の際の課題

知識を表出化することにメリットを感じない人もいる

貴重な暗黙知を持つベテラン社員の中には、経験によって得た知識を表出化することにメリットを感じない人も多くいます。これはSECIモデル運用の際の大きな課題です。この課題を克服するためには、暗黙知を身に付けた社員にSECIモデルについて理解を深めてもらうとともに、相応のインセンティブを与えることも検討すべきでしょう。SECIモデルのために、業務の軽減や特別に時間を与えるなどの仕組みを作り、ベテラン社員の負担を少なくすることが肝要です。

高度な知識を社内全体で共有することが困難である

専門的な高度な知識を習得するには、それに見合う基礎知識が必要であり、社内全体で知識を共有することが困難であることも事実であり大きな課題です。企業としてナレッジマネジメントをするのであれば、部署を越えて高度な知識を共有することが最終目的となります。しかし個々の中に内在する暗黙知は専門的なものも多く、言語化したとしても理解することは難しく、実践して暗黙知にまで落とし込むには長い時間と労力を要するでしょう。

ゴールを定義することが難しい

SECIモデルは4つのプロセスの繰り返しであり、徐々に知識をパワーアップするものです。そのため明確なゴールがないものであり、目標がないため途中で投げ出したくなる人もいるでしょう。ゴールや目標が明確に定義できなければ、個々のモチベーションを維持することさえ難しいものです。そのため、個人の評価制度や中間地点での具体的な目標を設定するなどして、参加者のモチベーションアップを図って下さい。また、暗黙知を伝えるベテラン社員の方々にも、相応の評価と報酬を用意しましょう。

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SECIモデルを実践する際のポイント

優秀な人材の積極的な参加を促す

SECIモデルを実践するには、優秀な人材の積極的な参加を促すことが大きなポイントです。前述のように専門的な深い知識を理解するためには、ベースになる基礎知識が必要になります。また、暗黙知を理解したうえで言語化するためには、高い日本語力と理解力が必要になるでしょう。場合によっては日本語以外の語学や別分野の知識も必要となるため、探求心が高く柔軟な考え方をできる人材が適しています。また、いくら優秀であっても積極的でなければ知識の習得は難しく、希望者の中から優秀な人材を選抜しましょう。

専用ツールを上手く活用する

Excel

SECIモデルを実践する際に、Excelなどの専用ツールを上手く活用することも大きなポイントになります。幅広い分野でデータ処理および画像機能も使えるマイクロソフト社のExcelは、汎用性も高く使い勝手の良い慣れ親しんだツールです。情報交換や作業の進捗状況、個々の評価など、多様な場面で使用できます。Excel以外にも使えるツールは全て試すつもりで、複雑で手間のかかる作業を省力化し、目的とする新しい知識の開発に注力しましょう。

社内SNS

社内でのSNSは、お互いの情報交換に役立ちます。代表的なビジネスチャットなどは、離れた場所にいてもリアルタイムで会話ができる便利なツールです。SECIモデルにおいても、重要な部分では頻繁な情報および意見交換が必要になるでしょう。また、制約された時間の中で行わなければいけない作業もあるため、社内でのSNS活用は必須のアイテムと言えます。他にも特別な事象が起こったり、急を要する場面がおきたりした場合にも、社内SNSが大いに役立ちます。

社内ポータルサイト

自社内で定期的に発信されるポータルサイトも、社員全員に情報を提供できる強力なアイテムと言えます。とくにSECIモデルにおける新しい知識の内容や進捗を社内全体に伝えるには、非常に効果的です。社内の内部情報サイトであるため、部署をまたぐ社員にもまんべんなく情報が伝えられることも大きな魅力です。SECIモデルを実施する際には、専用ページを用意してもらうなど、社内ポータルサイトの制作グループとも連携を密に取るようにしましょう。

まとめ

SECIモデルで個々の知識を活用しよう

SECIモデルは4つの過程を継続し続けることによって、最先端の知識を企業として共有するものです。過去に持っていた知識は未来に繋がるものであり、ベテラン社員が時間を経て身に着けた暗黙知は企業の大きな財産であることに間違いありません。これらの貴重な知識をSECIモデルで新しい知識に変換し、社員が暗黙知として身に着けることで、企業の価値も大きく高まります。個々の知識も大事ですが、皆で共有することによって自分も含めた全社員が大きく成長できるのです。SECIモデルを有効に使い、個々の持つ知識を広く新しい分野で活用しましょう。

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