新卒採用スケジュールの変遷は?【企業の動き方について】

記事更新日:2019年10月17日 初回公開日:2019年10月17日

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2018年10月9日、経団連の中西宏明会長が大手企業の採用面接や内定の解禁日などを定めた指針、俗にいう「就活ルール」を2021年春入社の学生から廃止すると発表しました。今後の新たなルール作りは政府が主導することとなります。企業および学生の混乱を避けるため、当面は現行の新卒採用スケジュールを維持する方針ですが、あくまで各企業への要請という域を出ていません。経団連加盟の各企業にとって、重い足かせとなっていた「就活ルール」が無くなったことで、より有望な人材獲得のための人材争奪戦に拍車がかかりそうです。今後の新卒採用スケジュールがますます早期化することが予想されています。

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新卒採用スケジュールとは

日本独自の新卒一括採用システムの変遷

大学に在学中の卒業予定者を対象に求人を行い、採用試験によって事前に内定を出し、卒業後正式入社する、という新卒一括採用のシステムは日本独特の雇用慣行です。このシステムの歴史は古く、企業の将来を担う管理職の採用方法として明治時代に一部の財閥系企業が始めたことがきっかけだといわれています。大正に入り、第一次世界大戦開戦に伴う人材不足によって、多くの企業が少しでも早く有望な人材を確保したいと考えました。そこで卒業前の学生に選考活動を行い、在学中に採用するようになったのが現在の原型です。昭和に入り、金融恐慌などの影響で学生の就職難が社会問題となったことを機に在学中の学生は採用しない、という協定が結ばれることになります。しかし各企業は建前上、在学中の学生は採用しないとしつつも、採用選考を在学中から行い、「内定」という形で学生を囲い込み、卒業後に正式採用する方法を編み出しました。
1953年に「就職協定」が制定され、内定を出す時期を「卒業年次の10月1日以降」としました。しかし徐々に「青田買い」と呼ばれる協定日より前に内々定を出す企業が続出、協定は形骸化し、最終的に1997年に廃止になりました。その後、就職協定に代わるガイドラインとして経団連が「倫理憲章(=就活ルール)」を設けますが、この「就活ルール」も改定が繰り返され、混乱を招くばかりでした。そしてとうとう、昨年10月9日、経団連の中西会長がこの「就活ルール」を2021年春入社の学生から廃止すると正式に発表しました。およそ100年もの間、形を変えながらも続いてきた新卒学生の採用ルールがなくなることになったのです。

2020年の新卒採用スケジュール

幾度となく、変遷を辿った「就活ルール」ですが、直近2020年卒業予定の大学生はどのような新卒採用スケジュールで活動しているのでしょう。
2020年卒生は「就活ルール」に則った採用スケジュールの最終年です。

・各企業の広報活動は2019年3月1日解禁
・選考開始は2019年6月1日解禁
・内定は2019年10月1日解禁

が協定で決められたスケジュールです。よって、現時点で2020年卒業予定の学生への内定は2019年9月の現在、まだ出ていないはずです。しかしながら現実にはほとんどの学生の就職活動は終わっているのが実情です。

形骸化した就活ルール

多くの大手企業は、広報活動解禁前に大学三年生を対象にした就業体験(インターンシップ)という名目の実質プレ選考を始めます。経団連ではインターンシップと就職活動は切り離す、と指導をしていますが、インターンシップの過程で有望な学生がいれば採用したいと考えるのは当然です。実際、まだ広報活動すら解禁になっていない3年生の12月段階ですでに企業から内定をもらっている、という学生も少なくありません。外資系企業や経団連未加盟の企業だけでなく、経団連加盟の大手企業でも現実には内定を出しているのです。それだけ有望な人材獲得に各企業が必死になっているということです。

新卒一括採用のメリット・デメリット

企業側のメリットとデメリット

日本の雇用体系の核として、長年続いてきた新卒一括採用のメリット、デメリットはどのようなものでしょうか?まずは企業側から見たメリット、デメリットです。
企業側のメリットとしては、

・時期を絞って採用を行うことで手間とコストを省け、優秀な学生の取りこぼしも起きにくい。
・社会経験の少ない学生を一から入社後に教育し、自社の社風に染めて育てていくことができる。
・将来の会社を背負う有望な人材を低賃金で雇うことができる。
・〇〇年入社という形で、効率的な社員教育ができ、同期入社社員間での競争による相互成長も期待できる。
・社内人口ピラミッドのバランスがとりやすく、人事管理も行いやすい。

といった点が挙げられます。
逆にデメリットは、

・就活ノウハウなどの影響で画一的な学生ばかりになりやすい。
・転職しづらく、転職市場が発達しない。

などでしょう。

学生側のメリットとデメリット

対する学生側にとってのメリット、デメリットですが、

・実務経験、スキルがなくても大手企業に就職できる貴重な機会である。
・卒業前に就職先が決まることで安心できる。

という点が大きなメリットです。
逆にデメリットとなるのが、

・短期間で判断されるため、個性や内面を評価されづらい。
・短期間で多くの企業を受験するため、心身や学業への影響が出ることがある。
・景気変動で求人数が変わる。(その年採用がない企業には就職できない)
・このタイミングでの就職に失敗すると、将来に亘りハンディを背負う可能性が高い。

といったことです。

新卒採用スケジュールが注目される理由

早期化が進んでいる

新卒一括採用は、「終身雇用」や「年功序列」という日本独自の雇用形態と密接に関わり、企業側と学生側双方にとってメリットがあるシステムだったのです。10月9日に経団連が「就活ルール」の廃止を発表したことで、この新卒一括採用の流れに変化が起こるかもしれないと考える人も多かったことでしょう。しかし現実には新卒一括採用に大きな変化は当面起きないだろうというのが、専門家の一致した意見です。経団連の廃止発表を受け、政府は引き続き2021年度卒業予定者の新卒採用スケジュールも2020年度に準じたスケジュールで行うよう通達を出しました。大きな混乱を避けるためです。そしてなにより、企業も学生もこの新卒一括採用システムがまだまだ都合の良いシステムだと考えているからです。新卒一括採用の流れは変わりませんが、今後の各企業の採用スケジュールは、早期化が進むことになると予想されます

中小企業にとって厳しい人材確保

大卒求人倍率の推移をみると、2020年卒で1.88倍と、以前として売り手市場が続いているように見えます。しかしながら、企業の従業員規模別に詳細を見てみると違った一面が見えてきます。リクルートワークスの調査によると、社員数300名以上の企業では過去10年間1.6倍以下で推移しており、この数値は若干の買い手市場と考えられます。さらに社員数5,000人以上の大手企業に限ると0.42倍と完全に買い手市場となっているのです。対して300名未満の企業の大卒求人倍率は2019年で9.91倍、2020年は8.62倍と若干低下したものの、依然非常に高い水準の売り手市場になっていることがわかります。大卒学生の大企業志向が強まっており、中小企業の新卒採用が極めて困難な状況に陥っていることは明確です。

2021年卒業から新卒採用スケジュールはどう変わる?

すでに2021年卒学生の就職活動は始まっている

2019年8月にあさがくナビが会員向けに実施した2021年卒学生への調査によると、8割を超える学生がすでに就職活動を開始しており、この数字は2020年卒学生に対する調査結果より5%近く上がっています。具体的な準備で最も多く回答されていたのは、インターンシップへの参加で7割を超えています。すでに8月の段階でインターンシップが行われ、そこに7割もの学生が参加しているのです。年々、企業側の就職活動のスケジュールが早まっていることを学生も感じており、ほとんどの学生がすでに就活に動いているのです。

インターンシップ活用を主軸にした早期の人材確保

就職情報のディスコが約1,097社に実施した2020年新卒採用に関する調査によると、広報解禁前にインターンシップを実施している企業は約75%、その多くが効果ありと感じています(2019年5月実施)。インターンシップは今後とも採用の主力として継続されることが予想されます。面接を開始した時期に関しては3月上旬と答えた企業が最も多く、3月末までに開始している企業が全体の5割を超えています。また、内定を出し始めた時期も4月下旬が最多で、全体の6割近くが4月中には内定を出しています。「就活ルール」が廃止される2021年以降の採用への危機感については、約95%の企業が危機感を持っていると答えました。2021年の採用スケジュールは、約27%が「2020年よりさらに早める」と答えています。中でも社員数1,000人を超える大手企業でその傾向は顕著になり、30%に届く勢いです。中小企業にとっては、ますます厳しい採用環境だといえるでしょう。

中小企業が新卒採用で勝ち残るには

大手企業以上に早くからの採用活動

2019年2月22日付日経新聞に、中小企業の約25%が2019年入社の新卒採用で、募集したが採用できなかった、と商工会議所の調査に回答したという記事が掲載されました。この記事ではさらに、採用できたが十分ではなかった中小企業が4割以上あると書かれています。つまり実質約7割の中小企業が人材確保できていない、という極めて厳しい採用環境が見えてきます。売り手市場といわれる就職環境を背景に、学生側はますます大手志向になっています。「2019卒マイナビ大学生就職意識調査」によると約7割の学生が大手企業への就職を志向しているのです。かつての買い手市場であれば大手企業の採用が一段落しても、その採用に漏れてしまった学生の中から十分有望な人材を採用できたかもしれません。しかし現在のように大学進学率が5割を超え、玉石混交の学生の中から有能な人材を確保するためには大手企業の採用が終わった後では間に合わないのです。とにかく大手企業以上に早い段階で就活生にアプローチすることが大事です。

自社の求める人材の明確化

大手志向が7割ということは、逆に企業規模にとらわれない学生がまだ3割もいるといえます。この大手にこだわらない就活生にどうアピールできるかがポイントです。そのために、まずは自社の強み、経営理念、将来の展望などを明文化し、アピールする要素を整理します。次に、自社がどんな人材を求めているのか、会社の社風からどんな学生に入社してもらいたいかをはっきりさせ、就活生に提示できるようにします。先頭に立って様々な新しいことに取り組みたい人なのか、目立たなくても裏方としてコツコツ仕事をこなしていくタイプの人なのか。また人とのコミュニケーションに長けている人なのか、それとも正確に事務作業をこなせる人なのか。どんな人物を必要としているのかを明確にすることで、学生の側もより具体的にそこで働くイメージを持つことができ、ミスマッチングも避けることができます。

攻めのリクルーティング

ITリテラシーの高い近年の学生は、インターネットやSNSを駆使し、早くから企業情報を集めています。企業の情報発信が少ない会社に興味を持ってもらうことは難しくなっています。また、これからの採用活動は、就職を希望する学生を待つだけではダメです。特に中小企業では、就職を希望する学生に対し、企業の側から積極的にアプローチする「攻めのリクルーティング」が必要です。企業側が求める人材にマッチングする登録就活生を紹介し、企業から個別に就活生にアプローチできる新卒採用ダイレクトマーケティングサービスがすでに始まっています。有名なサイトとして「OfferBox」https://offerbox.jp/が挙げられ、現在16万人を超える就活生が登録しています。こうした個人へのアプローチによる採用活動は大量採用を基本とする大手企業ではなかなか対応できない中小企業が強みを発揮できるリクルーティング手法と言えます。

新卒採用スケジュールの考え方

年間を通じた情報発信で接触機会を増やしましょう

就活生はインターネットを活用して常に企業の情報を収集しています。企業側も常に新しい情報を発信することで、就活生の情報収集アンテナに引っ掛かることが大切です。

・自社のサイト内での募集告知と新卒採用ページの制作
・ツイッターやFacebookなどを含めたオウンドメディアの運用

は、低予算で年間を通じて就活生との接点を持てる有効な活動です。
さらに、

・大手新卒求人情報サイトへの掲載
・求人情報誌等の媒体への広告掲載

も可能な限り実施して、就活生との接点を増やすことが重要です。

とにかく採用スケジュールは早く

予算的にも人員的にも大手企業ほどの投資ができない中小企業としては、とにかく採用時期に関わらず、学生との接触の機会を出来るだけ増やすことを考えなくてはなりません。採用活動を早める大手企業以上に早い段階から学生と接触し、自社が新卒採用を行っていることを多くの学生に早くから知ってもらうことが必要です。
三年生の春から

・新卒採用ダイレクトマーケティングによる就活生へのアプローチ
・自社サイト、その他オウンドメディアの情報発信

三年生の夏には

・インターンシップの実施

さらに秋から

・合同企業説明会等イベントへの積極的な参加

年末から

・選考面接の実施

そして四年生に上がる前の3月には一定数の内定を出せることを目標に計画を組みましょう。

激化する新卒採用戦線で生き残るために

中小企業にとって今後も厳しい採用環境が続くことが想定される中、新卒採用スケジュールは、大手企業主導の下ますます早期化することが確実視されています。こうした中で有望な人材をどう確保するかは中小企業にとっての死活問題です。終身雇用という日本固有のシステムにも綻びが見られはじめており、大企業に就職して一生その会社で勤め上げるというスタイルに学生たちも決して魅力を感じてはいないはずです。大手企業に負けない中小企業ならではのアプローチ方法を構築し、早くから計画的に新卒採用スケジュールを組み立てていくことで新卒採用戦争に勝ち抜くことを目指してください。

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