同一労働同一賃金の基礎知識【罰則・派遣の労使協定方式とは】

記事更新日:2020年06月12日 初回公開日:2020年04月25日

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2020年4月に大企業が先行して同一労働同一賃金が「法的」に施行されました。本来、賃金については、市場原理に鑑み、企業が独自に決定すべきものであったと言えるでしょう。しかし、この法施行を契機として合理的な理由がなければ、正職員といわゆる非正規職員間で同じ業務を行っている場合は、賃金を同じにすることが求められました。また、「同一労働同一賃金」と銘打たれているにも関わらず、休暇などの賃金以外の項目も蓄積された判例上、是正が求められることとなります。

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同一労働同一賃金とは

正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を設けることを禁止するルール

同一労働同一賃金の建てつけとして、正社員や非正規社員を問わず、業務が同じ場合同じ待遇をすることとなっています。しかし、何をもって同じとするかは企業によって異なると言わざるを得ません。責任の程度が異なっていたり、求められる職務の範囲が異なったりなどが挙げられるでしょう。しかし、その場合は、その「異なった分に応じて」考慮することが求められている点はおさえておくべきでしょう。また、労働者派遣法(同一労働同一賃金)の改正は中小企業であっても2020年4月施行である点は重要事項です。

同一労働同一賃金はいつから?

同一労働同一賃金は2020年4月1日から開始

最も多く寄せられる質問で、同一労働同一賃金はいつから?との内容です。これは、大企業は2020年4月1日から開始であり、中小企業は2021年の4月1日となります。しかし、導入日以降、直ちに待遇の格差が是正されるとは言えません。その背景として、企業が最も恐れる法律の一つ、強行法規である労働基準法のように罰金などの規定がないことです。つまり、グレーゾーン対応が横行する可能性が高いとも言えるでしょう。その場合、企業としては、判例も蓄積されてきていることから、長期的な解決にはならないと言えます。

同一労働同一賃金のメリット

非正規社員が教育を受ける事で業績が上がる

同一労働同一賃金のメリットとして、非正規社員が教育を受ける事で業績が上がることが挙げられるでしょう。正社員が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものであれば、既にその能力を保持する場合を除いて非正規社員にも実施することが求められます。これは長期的な視点で考えれば、先行投資とも言えるでしょう。不確実性の高い現代においては、必要となるスキルも刻々と変化していく可能性があります。そうなると、必要な教育は非正規にもあって然るべきと言えるしょう。

非正規社員の労働意欲が向上し人材不足が解消される

同一労働同一賃金施行により、非正規社員の労働意欲が向上し人材不足が解消されると言えるでしょう。これまで、正規社員と非正規社員の不合理性を基礎づける客観的な証拠は判例のみでした。しかし、判例は専門家であるような場合を除いて一般的に知られているとは言えないでしょう。しかし、法律に明記されたことにより、判例と比較すると一般的な認知度も高まると言えます。同法を粛々と履行することにより、非正規社員の必要とされているという「承認欲求」が満たされます。

非正規社員の賃金が上がる

同一労働同一賃金施行により、非正規社員の賃金が上がると言えるでしょう。近年は最低賃金上昇も後押しとなり、かつ、同法施行により、「引き下げる」という選択肢は取りづらいと言えます。引き下げる選択肢が取りづらい理由として、法施行の根拠として、正規労働者と非正規労働者間の処遇改善が目的でした。そのような背景で一般的に低処遇とさる非正規労働者に対して、更に処遇を下げるという判断は目立ってしまうことが挙げられます。すなわち時代に逆行する動きということです。

同一労働同一賃金のデメリット

同じ賃金を支払うことで人件費が上昇する

同一労働同一賃金のデメリットとして、同じ賃金を支払うことで人件費が高くなる傾向にある点は否めません。これを人件費膨張ととるか、先行投資ととるかは解釈がわかれることでしょう。時代の流れであっても、慈善事業でもない限り、利益追求から脱却することはできません。そして、中小企業であれば尚更その問題は深刻と言えるでしょう。しかし、企業である限り、同法施行により非正規社員の活力が漲るのであれば、必ずしもマイナス面ばかりとはまで言い切れません。

派遣社員やアルバイトの雇用が減る可能性がある

同一労働同一賃金施行により、派遣社員やアルバイト社員の雇用が減る可能性がある点は否めません。これは、企業体力を鑑みるとそもそも実施できないような企業を推察するとあり得ることです。また、派遣労働者に関しては、企業規模を問わず、2020年4月から施行されることから、既に顕在化している場合もあるでしょう。特に派遣社員については、労務の提供と指揮命令関係は派遣先にあり、労働契約関係は派遣元にあります。派遣元と派遣先の力関係によっては、そのような冷遇も甘受せざるを得ない事案も想定できます。

失業率が上がる可能性がある

同一労働同一賃金施行により、失業率が上がる可能性がある点は今後、注視していくべきでしょう。同一労働同一賃金の導入により人件費が向上すれば企業は人員削減や抑制に動くでしょう。このような課題はコロナ禍により、施行の報道が減らさざるを得なかったことは否めません。しかし、今後、落ち着きを取り戻すと、訴訟も再開されます。一般的に罰則が付されないことから不合理な格差是正は訴訟で争うことも多くなるでしょう。その場合、勝訴敗訴に関わらず、非正規労働者自ら、企業へ「戻る」という選択は取りづらいと言えます。よって、不本意ながらも失業率が上がる可能性があるということです。

派遣社員の同一労働同一賃金の労使協定方式とは

派遣元が派遣社員の賃金を決めることが出来る

派遣社員の同一労働同一賃金の労使協定方式とは、派遣元が派遣社員の賃金を決めることが出来る手法と言えます。派遣社員の同一労働同一賃金は、派遣先均等均衡方式と労使協定方式のいずれかを選択しなければなりません。原則は派遣先均等均衡方式であるものの、派遣先の情報提供が多いことなどの理由から労使協定方式がメジャーな手法となりつつあります。また、派遣先均等均衡方式の場合は、原則として、派遣先が変わるごとに賃金も変わることとなり、生活へ与える影響も無視できないでしょう。

厚生労働省の定める「一般労働者の賃金水準」以上を支給する

同一労働同一賃金の労使協定方式においては、厚生労働省の定める「一般労働者の賃金水準」以上を支給するとの建て付けとなっています。すなわち、世間一般の水準も考慮することとなり、著しく不合理な賃金水準は示しづらいと言えるでしょう。尚、一般労働者とは、同じ職種、同じ地域、同程度の能力・経験の無期雇用かつフルタイムの労働者とされています。すなわち、地域別最低賃金も考慮されており、一定水準以上の賃金であることは担保されていると言えるでしょう。

労使協定の締結が必要

派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定方式では、労使協定の締結が必要です。最も留意すべき点は、労使協定締結時の過半数代表者の選出は、民主的な手法で行わなければなりません。これは、選出される者が労基法41条2号に規定する監督者でないことや、労使協定を締結する者を選出することを明らかにして実施されることなどが求められています。また、この人は相応しくないとし、残った人が過半数代表者とするいわゆる不信任投票では、意思が反映されているとは言い難く、認められません。

同一労働同一賃金の罰則はあるのか?

企業が違反した場合の明確な罰則は無い

同一労働同一賃金の罰則はあるのか?との質問も今後予想されます。結論としては、企業が違反した場合の明確な罰則は無いということです。しかし、報道のとおり、訴訟される可能性は孕んでいると言えるでしょう。よって、企業が被るリスクは罰則以上に肥大化するリスクは認めざるを得ません。罰則がないということは、行政としては、公権力を行使することができないため、司法が加入するというロジックです。ここまで来てしまうと対外的な信用に傷がついてしまうことから、早めにリスクヘッジすべきでしょう。

労働者から損害賠償請求される場合がある

労働者から損害賠償請求される場合があるに、どのようなリスクが顕在化するかを整理しましょう。まず、訴訟となると、1年以上の期間が費やされることとなるでしょう。また、その期間に裁判所にて陳述する時間もカウントすると、時間的な損失は計り知れないと言えるでしょう。現金を始め有形資産は経営戦略において、取り返すことはできます。しかし、喪失した時間を取り戻すことは不可能です。また、時間だけに留まらず、判決が出るまでの間、精神衛生上、生産性が担保されているとは言えません。

同一労働同一賃金の導入のポイント

賃金の変更があるので人件費を再調整する

同一労働同一賃金を導入する際のポイントは、賃金の変更があるので全体の人件費を再調整する必要があると言えるでしょう。再調整すると言っても特に賃金は労働条件の中でも生活に密着した部類であり、高度な必要性がなければ引き下げることは困難です。すなわち、合理的な理由がなければ難しいということです。よって、年齢による一律の定期昇給や法律で支給が義務付けられていない賞与の支給率など違法とならない部分から見直しすることが多いと言えるでしょう。

給料の変更があるので社員全体に理解が必要

同一労働同一賃金を履行するにあたっては、給料の変更があるので社員全体に理解が必要と言えるでしょう。一般的に昇給の満足度は短期間で消えてしまうのに対して、降給の場合は尾を引くことが多い点は否めません。納得感を得られないまま放置してしまうと、特に有能な労働者の離職を招いてしまう点は留意すべきでしょう。一般的に「物、金」は再生することはできても、「人」に関しては、余人をもってかえがたいようなスペシャリストに離職されてしまう可能性は大きなリスクでしょう。

同一労働同一賃金の導入例

株式会社クレディセゾン

同一労働同一賃金の導入例として、株式会社クレディセゾンが良い事例と言えるでしょう。2017年に約1,000名の時給制有期雇用労働者を無期雇用の正職員に1本化しました。これは、「全社員共通の新たな人事制度」が導入されました。これは、煩雑さが取り除かれ合理化推進の動きに留まらず、経営層の覚悟も感じ取ることが出来るでしょう。規模も約1,000名ということで、人件費高騰は否めません。しかし、それ以上のベネフィットを見越しての経営判断と推察します。

イケアジャパン株式会社

同一労働同一賃金の取り組みとして、イケアジャパン株式会社も参考になるでしょう。内容としては、フルタイムとパートタイムと問わず、全ての従業員に「正社員」の待遇を保障しながら、「多様な働き方」も認めるということです。働き方改革の目的として、生産性の向上と多様性の推進にあります。旧来は新卒一括採用後に横並びでの労務管理が主流でした。しかし、子育てや介護など、それぞれの労働者の事情に応じた働き方の推進が時代にマッチした働き方としてモデルケースとされています。

同一労働同一賃金の導入で労働者の力を最大限に生かしましょう

各企業は、今後、継続的に自社の発展を考えているのであれば、同一労働同一賃金の導入で労働者の力を最大限に生かしましょう。これは、生産年齢人口減少の時代において、最も枯渇している資産である「人」の確保なくして企業の発展はないということです。また、雇用の流動化も活発になり、その人が一生涯同じ会社に勤め続けることも少なくなっていると言えるでしょう。そうなると特に、大企業と比して資金力がない中小企業であればあるほど、「辞めさせない」施策が重要と言えます。

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