記事更新日:2020年12月15日 | 初回公開日:2020年11月27日
人事・労務お役立ち情報 用語集 グローバル用語解説AI技術者は、大きく3種類に分けられます。まずAIそのものを進歩させる人材で、最先端のAI技術を研究し、開発するAI研究開発者。次にAIを具現化する人材で、開発されたAIモデルをユーザーの現場環境に合わせて実装する役割のデータサイエンティスト、AIエンジニア等になります。それから、AIを活用する人材で、現場の課題を整理し、開発側と使う現場のビジネス側をつなぐコンサルタントです。次の項目でそれぞれの役割を見てみます。
AI研究者は、独自の新しいAIモデルを開発し、データサイエンティストやコンサルタントから上がってきた改善要求等から、既存モデルを改良します。データサイエンティストやAIエンジニアは、開発されたAIモデルをビジネス現場のシステムにインストールする役割です。現実の課題に合わせて調整し、ユーザーは使いやすいシステムを構築します。コンサルタントは、運用の中でのニーズを吸い上げ、開発者やエンジニアに改善要求します。
AIの応用分野といえば、多岐にわたります。自動診断を目指す医療、自動車の自動運転技術、5Gスマートフォンに代表されるコミュニケーション、介護用ロボット、企業の人事、工程管理などです。材料や基礎技術の発展によるハードウェア技術の進歩や、それを支える基本的なソフトウェアも開発が進んでいます。どの分野でも、そこに頭脳となるAI技術が求められているといえるでしょう。AI技術者の需要は急増し、不足の事態を招いています。
企業の基本的な業務を効率化し、なければスムーズな経営が成り立たなくなるシステムが基幹システム。その基幹システムは、主に中高年のエンジニアによって支えられてきました。一方、若年層のエンジニアは、Webやゲームなどの制作に携わる傾向が強く、基幹系エンジニアは次第に減少傾向となり人材不足を招いています。AI関連の人材不足は中高年のエンジニアによって補おうとする傾向が強く、AI系エンジニア不足が解消しないのです。
ITエンジニアは、過去には「かっこいい」、「最先端」というイメージでもてはやされてきました。ところが現在では、「きつい」、「厳しい」、「帰れない」という3Kイメージの強くなっています。もとより、納期に追われる厳しい仕事であり、突発のシステム障害の復旧のため、帰宅時間が遅くなることもありました。このようなイメージ払拭のための就労環境改善が遅れているのも現実。このような現状も若い人材から避けられる理由です。
ITエンジニアの平均年収は、600万円前後といわれており、その激務の割には低いというイメージなので、AIも含めITエンジニアを志す人の数は減少傾向。大手ベンチャー企業の中には、新卒から年収1000万円級の給与を提示する会社もあります。それでも、単独で高い契約金を取るアメリカのフリーランスエンジニアに比べれば低い報酬。企業に雇われることの多い日本のエンジニアで下請けの場合は、さらに給与は低くなります。
IT業界は技術の変化がとても激しく、移り変わりが非常に早く、新しい技術を習得したと思えば、すぐに廃れてしまいます。エンジニアは常に新技術を学び続ける必要があり、多くのエンジニアが技術を更新していくのに疲弊してしまうのです。特にAIでは、新言語(Python、R言語)が使われ、従来の言語(PHP、Ruby)に比べて使えるエンジニアが少ないのが現状です。AIエンジニアの需要と供給が合わなくなってきているといえます。
一般的に、AIリテラシー、つまりAIを正確に理解し活用できるようにすることを目的とした資格試験向けの教育プランは多く存在します。しかし現状は実務に立ち入ったAI教育は少ないのです。これは、AI教育を展開する多くの会社が実際のAI案件に携わっていないこと、また携わっていても企業の現場データを教材として使用できないことが要因です。実践的なデータの使用による教材整備には、AI業界全体での知財関連の整理を待つ必要があります。
従来型IT人材の育成は、「基本情報技術者試験」などの資格試験で基本的知識・技能を学んだ後に、実務で経験を重ねてスキルアップしていくことが定石でした。しかし、AI人材のスキルアップとなると、当然ながらAI案件の実務で経験を積んでいく必要があります。先述の教材不足の現状下では、事業へのAI導入という果たすべき課題を前に、人を育てながらの取り組みとなるケースも多いのです。OJTの方法が標準化しにくいといえるでしょう。
AI開発に必要な新言語Pythonの教育の加速は、教育機関の課題となるといえますが、AIは応用される用途を念頭に置いた開発も重要。となると企業側の課題にもつながってきます。企業としては、AI技術者育成では何が課題であるかを把握し、AI人材育成の目的、目標レベル、そしてチーム体制などは、AI技術者育成のプランを立てるべきでしょう。自社の事業をよく知るAI技術者が、自社の専門分野や技術にAIを活用できれば、新たな価値創造や事業開発につながるからです。
AI開発のような先端IT技術者不足解消のため、社内人材の育成に加えて、多様な人材採用が効果的です。多種多様な人材の登用のためには、フリーランスを採用する、海外の子会社を外注として使う、あるいは優秀な外国人を雇うなどの方法もあるでしょう。IT先進国といえば、中国、アメリカ、北欧などが想起されますが、インド、ベトナムなどのアジア圏も該当します。こういった海外のリソースを外注にする、あるいは社員として採用するオフショア(offshore)開発も有効です。
AI技術者は、AI開発に必要な言語Pythonの学習に加えて、その応用力が問われます。それは部門横断で業務プロセスを把握する力、該当業務を理解する力、現場からニーズを汲み取る力、現場に実行させる力などの能力。これらの能力を習得するには、現場による現場で活きるAI教育が必要です。そのために企業の実際の課題にもとづくケーススタディがとても重要です。すぐさま実務への活用を求められる場合は、特にどれだけ具体的な想定課題を教材として学ぶかが重要になります。
AI技術の導入でこれから期待される分野をざっと挙げてみます。まずウィルス性疾患の拡大予測や病気の診断機能に用いるため、医療の分野で大きく期待されています。そして通信やコミュニケーションの分野である、スマートフォン、IP電話、チャットボットなどにも。それからアミューズメント、特に将棋などで注目されるゲームの分野にも欠かせません。他には、自動運転技術やドライブレコーダーの車載分野や、福祉分野で介護ロボット、企業の人事などとその用途は多岐にわたります。
医療の分野では、AIによる病気の診断機能が待ち望まれています。1日に多くの患者と接する医師は、その日の体調から診断の見落としが無いとも言い切れません。医師の診断とAIによるダブルチェックを併用すれば、病気の診断精度は飛躍的に向上するといえます。電子カルテは専門の医療器メーカーが開発しますが、どのメーカーの電子カルテにも「AIによる病気の診断機能」はありません。AIを考慮した設計をすべきであり、医療向けのAIエンジニアの採用育成が課題です。
米国テスラ社の自動運転技術や、GoogleのWaymoなどは、自動運転のIT化としての先駆けでした。日本のトヨタ、日産、マツダも自動運転技術の開発に余念がありません。この高度な自動運転技術にはAIの搭載が必須です。トヨタでは「車両ビッグデータを活用した新サービス開発」として、AI技術者を募集しています。また、自動車分野では、高齢者の自動車事故をはじめ、事故の正確な分析、危険運転の判別のために「AI搭載型のドライブレコーダー」開発も注目の的です。
5Gに代表されるスマートフォンは通信IT化の代表例です。またAIエンジンとしてスマートフォンに搭載されたのが、iPhone音声の「Siri」でした。「Google Lens」は、カメラ撮影した画像データを元に情報検索を可能にしました。防犯防止のための画像処理も、治安維持の重要な開発テーマです。カメラの視覚能力の進化は、複数の分野で期待されており、画像処理はAIエンジニアの中でも活躍が見込まれる分野で、映像技術に長けたAI技術者教育もニーズが高まっています。
経済産業省は、IT人材の不足は、現状約17万人から2030年には約79万人に拡大すると予測しました。AIを使いこなして、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手となる高度IT人材の育成が急務と発表。AIを使いこなし、新ビジネスを創造する新たな人材像を見直すことが、同省によるAI人材育成の取組の基本構想です。経済成長を牽引していくトップ人材の育成の拡充、ミドル人材のスキル転換、ITリテラシーの向上や教育現場の底上げ等を進めるなどがその方針です。
ここまで見てきたように、AIの応用分野は多岐にわたり将来が期待されています。一方で、AI技術者の言語習得や応用技術に直結した開発能力の教育は遅れており、AI技術者の不足が深刻な社会問題となっています。この問題を打開するには、教育機関に頼るだけでなく、応用技術を開発する各分野の企業側でも、自らAI技術の理解を深めていかなければなりません。AI人材の採用促進がこれからの企業競争力の源泉といえるでしょう。
「日本語+英語+さらに語学が堪能な社員の採用」「海外の展示会でプレゼンが出来る人材」「海外向けサービスのローカライズ出来る人材」「海外向けWebサイト構築・集客」など、日本語も堪能で優秀な人材へのお問い合わせが当社に相次いでいます。
この記事を読んだ方は次のページも読んでいます。