記事更新日:2018年10月11日 | 初回公開日:2018年05月28日
人事・労務お役立ち情報私は都内の多文化共生を主にテーマとして活動している団体で働く林あゆみです。団体発足当初からのメンバーです。活動が始まってからようやく10ヶ月が経過しようとしています。私の働く団体では日本人スタッフ3名と外国人スタッフ5名の計8名で様々な講演会やワークショップを行うなど精力的に取り組んでいます。主に多種多様な文化背景のある人達とどのように共存していったら良いのか、これからのグローバル社会でどのような取り組みが必要であるかなどディスカッションを通して一人ひとりが気づくことができるそんな活動をしています。
しかし、団体発足当初から実は困っていることが私にはあります。「多文化共生」と謳っている肝心の私達団体の中でも日々その文化の違いによる小さな問題が発生するのです。それは1ヶ月程前のことでした。外国人のAさんを呼んで「ホームページに毎月の多文化共生イベントカレンダーを掲載します。Bさんと協力してイベントの内容と日程を毎月20日までに次月分を掲載してください。」と伝えました。Aさんは「はい。わかりました。」と返事をしてすぐにBさんと業務の分担をしていました。どうやらAさんがイベントの内容を決める役割でBさんはそれをデータ化する役割に分担したようでした。Bさんも同じ外国人です。私はこれできっと大丈夫だろう!と思っていました。
ところが、期限の20日を過ぎても一向にホームページにイベントカレンダーが掲載されていませんでした。私はAさんを呼んで、イベントカレンダーが掲載されていないことを伝えると、Aさんは、「私はちゃんと言われた通りにイベントの内容を決めてBさんに案を渡しました。あとはBさんの責任です。私は関係ないです。」と何の悪びれもなく言うのです。そこで私は、「もちろん最後にデータを作成してホームページに掲載していないBさんが悪いけれどもBさんだけの責任ではないですよね。業務を分担し自分の役割を終えたら終わりではないでしょう?現にイベントカレンダーはホームページに掲載されていないので仕事は未完了です。」と伝えました。すると、Aさんはみるみるうちに不機嫌になりました。
私はアメリカ出身のアーサーです。来日5年目になります。アメリカの大学卒業後日本に来ました。大学時代に日本文化が大好きになりました。来日して1年目には「日本語能力試験1級」を取得しました。来日して4年間は小学校のALTとして働き、今年の7月から多文化共生をテーマとしたNPO法人で働いています。憧れの日本で得意の語学力を活かして世界の架け橋になるような夢のような仕事に就けて本当に嬉しいです。
先日困った事が起きました。毎月行う自社のイベントの内容を考えてイベントカレンダーを毎月20日までにホームページに掲載する業務を頼まれました。同じアメリカ出身のエリカさんと協力してするように指示があったので、私はイベント内容を考える役になり、エリカさんがその案を元にデータ化してホームページに掲載するという役割分担を決めました。
私は期限まで逆算してエリカさんがデータ化するまでの十分な日数を残して案をまとめ、エリカさんにバトンタッチをして業務を完了させました。ところが、20日を過ぎた時に日本人スタッフに呼ばれたのです。内容はホームページにイベントカレンダーが掲載されていないという内容でした。私は透かさず事の経緯を説明し、自分の責任ではないことを主張しました。そしたらどうでしょうか?!私にも責任があるかのように注意されたのです。私は全く理解できませんでしたし、理解したくないとも思いました。
さて、ここで今回の事象の原因を探る前に異文化間のコミュニケーションで大切な「仕事のスタイル」について学んでいきましょう。まず「仕事のスタイル」には2つのタイプがあります。
仕事を依頼した相手がどちらのタイプかによって例え的確な指示だったとしても、各業務の責任範囲の捉え方には誤差が生じます。
では事象を振り返ってみましょう。
今回、林さんはアーサーさんにエリカさんと協力をしてイベントの内容を決めてからカレンダー形式でホームページに掲載するように指示をしました。お分かりでしょうか?アーサーさんとエリカさんは「テトリス型」の為、それぞれ「イベント内容を決める」と「カレンダー形式に資料を作成してホームページに掲載する」という業務分担をしました。この「業務分担」は日本人の私達の感覚にある「業務分担」とは全く違います。それぞれ仕事のゴールがはっきりと区別されました。アーサーさんの仕事のゴールは「イベント内容を決めてエリカさんに情報を渡す」ここまでとなりましたので、その後の業務が滞りなく進んでいるのかどうかは確認やフォローする必要がなくなったのです。なぜなら、その責任も問われないからです。舞台が同じ「テトリス型」の人が多い欧米であれば、もしかしたらアーサーさんの言い分も通るのかもしれません。
仕事のスタイルは国籍・文化に左右されずその人の持っている価値観や目指すキャリアで「テトリス型」か「アメーバ型」のどちらかに程度の差はあれど当てはまります。仕事を割り当てるときは、どちらのタイプか見極め業務を依頼する事がポイントですね。
今回、林さんは「必ず二人で業務の進捗を確認とフォローをしながら、20日までにホームページに掲載すること。そして出来なかった場合は二人の責任であること。」と伝えていたら結果は違っていたかもしれません。しかし、林さんだけが伝え方を注意すれば良かったという事ではありません。アーサーさんは「日本で働いている」という意識を持って、状況判断をその都度していくスキルや異文化調整能力を身に着けなければなりません。今回は社内の問題であった為そこまで大事には至りませんでしたが、社外であったらどうでしょうか?そしてお客様に平然と「私の責任ではありません。」と言ってしまったら信用と仕事を失います。
このように多様性(Diversity)の組織となると習慣・文化・価値観の違いがさらに広がり、仕事や仕事以前の問題により人間関係でトラブルが多く発生します。また、そもそもの考え方や常識が違うためお互いに歩み寄りがなければ、原因追求や解決策を話し合う場が持たれず平行線のまま冷戦状態となることは言うまでもないでしょう。
しかし、グローバルで仕事をする人がその事を理解して異文化調整能力とコミュニケーションをとる力を身につければ十分Diversityの組織の中でもやっていくことができます。またDiversityの組織の皆がこのスキルを持ち仕事をすれば多様性を生かしたハイパフォーマンスを発揮できるのです。社会人基礎力(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)に加え異文化調整能力を併せ持つことができるかどうかが、今後キャリアアップできるかどうかの鍵となることでしょう。
いかがでしたか?もしかしたら外国人労働者だけに限られた話でもないですよね。異文化問題とは習慣・文化・価値観の違いだけではなさそうです。最近の日本のビジネス社会では年代の差による同じような問題が起きているようです。新人教育にも併せて、事前にどんな点に注意して何をどのように説明したら良いのか?少しでも役に立てたらと思います。
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この記事を書いた人
佐多 由梨(さた ゆり)
1981年生まれ。神奈川県出身。日本企業にて総務・人事部門で10年ほど勤務後、現在のグローバル企業の同部門マネージャーとして働いている。人事・教育担当としての経験と学生時代から活動していた国際交流や言語学習で培った経験を活かして、これからのグローバル社会において企業側が心得ておくことや、どのように人材開発したら良いかのポイントを発信している。
HP:Spectrum
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