ホワイトカラーエグゼンプションとは【高度プロフェッショナル制度や裁量労働制との違いもわかりやすく解説】

記事更新日:2021年09月09日 初回公開日:2021年09月09日

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現在、世界中でテレワークなどをはじめとしたさまざまな働き方が導入されています。日本においても近年の「働き方改革」によって、労働者の働き方は多様化していると考えられます。この記事で解説するのは「ホワイトカラーエグゼンプション」という制度です。ホワイトカラーとはオフィスでデスクに向かって仕事をする人などを指すので、一般的なサラリーマンなどがこれに当てはまります。制度の仕組みとその他の類似した制度との関係などについても解説しますので、雇用形態の見直しを考えている企業の方はぜひ参考にしてみてください。

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ホワイトカラーエグゼンプションとは

労働時間ではなく成果に対して報酬を支払う制度

ホワイトカラーエグゼンプションとは、労働時間ではなく、その労働によって得られた成果に対して報酬を支払う制度のことです。極端な例をあげるならば、同じ成果を出していれば6時間労働でも8時間労働でも給与は同じということになります。一般的にホワイトカラーに分類される業務はITや事務系など、労働時間に比例して単純に多くの成果が得られるわけではないものが多いです。そこで企業はそのような労働者たちに対して、成果主義であるホワイトカラーエグゼンプションを導入し始めたのです。

労働基準法の規定に縛られず柔軟な働き方ができる

ホワイトカラーエグゼンプションを導入することによって、労働者は労働基準法の規定に縛られることなく柔軟な働き方ができるようになりました。労働時間の上限が定めていられていたことで日数がかかっていた業務にも、短期間で集中して取り組むことが可能になったのです。したがって短い時間でも効率的に業務をこなして成果をあげることができる労働者にとって、ホワイトカラーエグゼンプションという制度は非常に相性がいいといえるでしょう。

ホワイトカラーエグゼンプションの歴史

アメリカで誕生し欧米に広まった

ホワイトカラーエグゼンプションという制度はアメリカで誕生して、そこから欧米諸国に広まっていきました。1938年にアメリカで誕生したこの制度は、一定の要件を満たす労働者に対しては残業による割増の賃金を支払う義務を除外するというものです。除外される対象のほとんどがホワイトカラーであったことと、除外という言葉から「ホワイトカラーエグゼンプション」と表現されるようになりました。現代に至るまで、対象となる労働者の要件の見直しなどが繰り返されています。

日本では高度プロフェッショナル制度として導入された

日本においては、ホワイトカラーエグゼンプションを参考にした「高度プロフェッショナル制度」があります。労働時間の長さに応じて給与が支払われることが一般的でしたが、業務をゆっくり行うことによって残業代を受け取ろうとする労働者も発生したからです。また日本においてもホワイトカラーの労働者の業務は、時間に比例して成果が得られるものではないということも導入された理由の一つです。ホワイトカラーエグゼンプションをもとに導入されましたがその後の改善によって、働き方改革の一環として高度プロフェッショナル制度という制度になりました。

高度プロフェッショナル制度の対象

対象業種は製造業や建築業等を除くオフィスワーカーのみ

高度プロフェッショナル制度の対象となる業種は、オフィスワーカーのみとされています。したがっておもに肉体労働を行うブルーカラーの労働者などは、高度プロフェッショナル制度の対象ではありません。また、専門的かつ高度な能力や知識を持つ労働者が対象とされています。労働時間とその成果の関連性が高い場合も対象にはならないので、高度プロフェッショナル制度を導入する際にはその条件について詳しく確認しておきましょう。

年収は1,075万円以上

年収が1075万円以上というのも、高度プロフェッショナル制度の対象となる条件です。1075万円というのは、給与の平均水準の3倍を上回る程度の金額として想定されています。しかし残業時間に対する割増賃金の支払いがなくなるからといって、対象の労働者の賃金を減少させてはいけないという指針があります。これは高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者のモチベーションにもつながるので、導入における非常に重要な条件といえるでしょう。

ホワイトカラーエグゼンプションと裁量労働制の違い

対象業種や年収要件の制限

ホワイトカラーエグゼンプションと類似した制度の一つに、裁量労働制というものがあります。裁量労働制もホワイトカラーエグゼンプションと同様に、労働者の裁量によって労働時間が決まります。しかし業種や年収要件の制限など、ホワイトカラーエグゼンプションよりも対象となる労働者が多いのが特徴です。ホワイトカラーエグゼンプションの要件を満たしていないという場合は、自社の業種が対象になっているか調べたうえで裁量労働制の導入を検討してみるのもいいでしょう。

残業代や割増賃金の発生

残業代や割増賃金が発生するということも、ホワイトカラーエグゼンプションと裁量労働制の違いです。ホワイトカラーエグゼンプションの場合は原則、時間外労働という考え方がないため残業代などが発生することはありません。それに対して裁量労働制は、契約された「みなし労働時間」が法定労働時間を超えている場合にはその分の賃金が発生します。したがって、契約の際には「みなし労働時間」をどのように設定するのかが重要となってきます。

ホワイトカラーエグゼンプションのメリット

労働生産性の向上が見込まれる

ホワイトカラーエグゼンプションの導入によって、労働生産性の向上が見込めるでしょう。労働生産性は社員一人あたり、もしくは時間あたりに生み出される付加価値を表します。したがって同じ成果をあげたとしても、それに費やした人数や時間が少ないほど労働生産性は高いということになります。ホワイトカラーエグゼンプションの導入で労働者のモチベーションを上げ、短時間で成果をあげることによって労働生産性の向上という結果につながるでしょう。

ワークライフバランスが実現できる

ワークライフバランスが実現しやすくなるのも、ホワイトカラーエグゼンプションの導入におけるメリットです。社員が時間外の業務をダラダラと行っていた場合、必然的にプライベートの時間が減ってしまいます。この場合、社員側には残業代が支払われるというメリットもありました。しかしホワイトカラーエグゼンプションを導入した場合、残業代は発生しないので労働者は効率よく業務をこなすことに集中できます。その結果、仕事以外の自分の時間を多く確保できることになり、ワークライフバランスの実現につながるでしょう。

ホワイトカラーエグゼンプションのデメリット

長時間労働となる可能性がある

ホワイトカラーエグゼンプションは成果報酬のため、これまでよりも労働時間が長くなってしまう可能性も充分に考えられます。もちろん個人の能力には差がありますので、効率よく短時間で成果を出せる労働者ばかりというわけではありません。成果を出すために長時間労働した結果、過労による体調不良などを引き起こしてしまっては本末転倒です。企業側は、適切な量の業務を振り分けるということをこれまで以上に意識する必要があるでしょう。

時間外労働に対する賃金が支払われなくなる

時間外労働に対する賃金が支払われなくなるということも、労働者にとってはホワイトカラーエグゼンプションのデメリットといえるでしょう。ホワイトカラー導入以前よりも給与が減少しないということは考慮されていますが、労働時間の長さに対しての評価は一切されないということになります。結果的に、労働者から企業に対する満足度が下がってしまう可能性も充分に考えられます。したがって企業は労働者の成果について、より一層適正な評価を行う必要があるでしょう。

高度プロフェッショナル制度を導入する際のポイント

選択的措置を実施する

企業を制度を導入する際のポイントは、高度プロフェッショナル制度においてもホワイトカラーエグゼンプションにおいても共通するものが多いです。その中のひとつとして、選択的措置を実施するということがあげられるでしょう。具体的には年一回以上の継続的な休暇や、健康診断の実施などの措置の中から選択して実施します。これらは主に象者の体調管理を目的としており、労働時間が不規則になってしまいがちな対象者が常に万全の体調で業務に取り組めることを促進します。

健康管理時間を把握する

対象者の健康管理時間を把握することも、高度プロフェッショナル制度の導入における重要なポイントだといえるでしょう。健康管理時間というのは、労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間を足し合わせたものです。これらの時間を全て自己申告制にしてしまうと、企業は正確な健康管理時間を把握することが難しくなってしまいます。したがってタイムカードや勤怠システムを活用するなど、対象者の健康管理時間を正確に把握するための工夫をしなければならないでしょう。

休日の確保など福利厚生の管理を怠らない

高度プロフェッショナル制度の導入において、福利厚生の管理も必ず怠ってはいけません。高度プロフェッショナル制度の対象者は基本的に、出退勤の時間や休日を自由に設定することができます。しかし1年間・1ヶ月のうちに設けるべき休日の日数などは、制度の中に定められています。したがって対象者が必要な日数分の休暇を取っていない場合などは、本人にしっかりと伝えるようにしましょう。対象者の健康面を守るためにも、企業は対象者の休日取得についても正確に把握しておく必要があります。

欧米諸国のホワイトカラーエグゼンプション

アメリカ

ホワイトカラーエグゼンプションが誕生した国であるアメリカでは、適用のための条件が職種ごとに細かく設定されています。管理職の労働者を例にあげると、「2人以上の部下がいる」「部下の解雇権を持っている」などの要件があります。また対象となる労働者の給与水準の見直しも繰り返し行われており、今後も継続して行われる予定です。対象の労働者に時間的な拘束をすると直ちに厳しい罰則があることから、ホワイトカラーエグゼンプションの人選は慎重に行われています。

ドイツ

ドイツにおいても、ホワイトカラーエグゼンプションを導入している企業はあります。しかし労働時間や賃金についてなど、細かい点ではアメリカのホワイトカラーエグゼンプションと全く同じということではないようです。さらに、ドイツにおけるホワイトカラーエグゼンプションの対象となる職種はアメリカに比べると少なく、企業の管理職員などが主な対象者となっています。1970年代の調査によると、対象者は全体の2%ほどとのことですので、決して一般的な制度とはいえないでしょう。

まとめ

ホワイトカラーエグゼンプションを参考に新しい働き方の導入を検討してみましょう

ホワイトカラーエグゼンプションと、類似しているその他の制度についてご理解いただけたでしょうか。国によってその要件や対象となる労働者はさまざまですが、企業もしくは労働者のどちらか一方にだけメリットが集中してはいけません。労働者の私生活を充実させてモチベーションの向上を図りつつ企業側はより高い生産性を目指すことができるというのが、制度を導入する際の理想といえるでしょう。導入においては様々な手続きが必要とされますが、現在よりも変化したいという企業は新たな制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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