記事更新日:2020年11月18日 | 初回公開日:2020年11月02日
用語集 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報社内失業とは、労働者が正社員として企業に在籍しながらも仕事がない状態を指す言葉です。出世コースから外れた一昔前の中高年層「窓際族」や雑用だけ与えられ時間を持て余す最近の若年層「社内ニート」も社内失業の一形態です。社内失業に陥ると、専門知識やスキルが蓄積されないため社内での将来展望が描きにくくなるだけでなく、働く意欲を失うことで精神的に追い詰められていく人も少なくありません。2011年の内閣府調査によると、全国の労働者の8.5%にあたる465万人が社内失業者に該当し、2025年には500万人近くに増加すると言われています。
エン・ジャパン株式会社は、2020年5月、同社が運営する人事向け総合サイトを利用する様々な業種の企業381社を対象に、社内失業者に関する実態調査を行いました。調査結果によると、「現在、社内失業状態の社員はいますか?」という質問に対して、業種別の全体平均で「いる」が9%、「いる可能性がある」が20%でした。つまり、全体の約3割の企業に予備軍を含めた社内失業者がいることが明らかとなり、事態の深刻さが伺えます。
続いて上記質問の回答を企業規模別で表したところ、従業員規模1,000名以上の企業の実に47%が「社内失業者がいる」、「いる可能性がある」と答え、最多であることが分かりました。全体平均が29%だったことから、企業の規模が大きくなればなるほど社内失業者の存在を感じていることが分かります。また、いると回答した企業に社内失業者の属性を伺うと、年代は「50代」、役職は「一般社員クラス」、職種は「企画・事務職」がそれぞれ最多でした。これらの結果から社内失業の実態と傾向が見えてきますね。
社内失業が生まれる背景として、「年功序列」と「終身雇用」といった日本型雇用システムの慣行が大きく関係しています。年功序列とは、年齢や勤続年数などを考慮して賃金や役職を決定する制度で、企業が正社員を定年まで雇用する終身雇用とともに高度経済成長期に広く普及しました。安定した雇用と収入がメリットである一方、成果と評価が連動しないために努力して成果を出さなくとも企業に在籍できてしまうことが、社内失業につながっているのでしょう。
「新卒一括採用」も社内失業を生み出す要因だと言われています。新卒一括採用とは、生涯雇うという保証と引き換えに、安めの賃金で新卒者を一括で採用し、何年もかけて教育・育成することを目的に行われてきました。そのため、企業側が新卒者を採用する際には、現時点で持っている技術や能力ではなく、将来性や可能性を重視する傾向にあります。つまり、採用時に正しく能力を評価出来ておらず、実際現場に出てみると、スキルや環境が合わなかったという状況が生まれてしまうのです。
社内失業が生まれる背景として、近年のビジネス環境の変化もあげられます。加速度的なテクノロジーの進化に伴い、ビジネスモデルは激変し、業界外からのプレーヤーの参入・外国企業の参入などにより既存領域が脅かされています。変化を恐れず、時代に合わせた柔軟な対応力やスピード感が求められているのです。これに反して社内失業者は、これまでの積み重ねや実績に固執することで、時代に乗り遅れてしまっているのかもしれません。
前述の調査によると社内失業者の発生要因は、「該当社員の能力不足」が最多という結果でした。年齢は上がっているが求められている仕事に対して自分の能力を開発できていない状況です。グローバル化やIT化など、ビジネスの急激な変化に伴い、働く人に求められるスキルも変化しています。そんな時代の変化についていけない社員、新たに学ぶ意欲のない社員が会社の役に立ち続けるのは困難でしょう。変化に対応しきれない社員への救済の方法は難しく、企業の課題となっています。
次に多かったのが「該当社員の異動・受け入れ先がない」という理由でした。該当社員の過去の実績や他の部門からの評判などを基に異動先部門が受け入れを拒否、その結果、人材が埋もれてしまうケースです。もしくは新たな業務に必要なスキルと本人のスキルが一致しない、そもそも異動先がないなど企業側の体制に問題があることもあります。いずれにせよ一度社内失業のレッテルを貼られてしまうと、よほどの頑張りがないと払拭することは難しいでしょう。
新卒一括採用とはいえ一旦は正社員として雇用している以上、その社員自体にスキルやポテンシャルそのものが足りないという状況は多くはないかもしれません。つまり、企業側が該当社員に適切な教育や環境を与えていないことにより、成長スピードが著しく遅かったり、環境に適合できていないことがあるのです。適切な人材サポートはなされているのか、上司はきちんと仕事を割り当てているかなど、企業は人材育成の在り方を確認する必要があります。
社内失業によって業務の効率が悪くなるのは想像に難くないでしょう。残念ながら、社内失業者のスキルは業務に対して低いと言われることが多く、企業側は手放しで仕事を任せることができません。しかしそれが理由で解雇することは不当解雇として争うことになる可能性があり、企業は面倒事を避けるためにも該当社員に対して何もせずに放置する傾向にあります。結果、社内失業の該当社員は与えられた業務をだらだらとこなすようになり、業務の効率は悪くなる一方です。
だらだらと業務をこなしていても給料がもらえる状況が常態化すると、「社内失業のほうが楽して稼げる」という意識になっていきます。既に該当社員のモチベーションは著しく低く、自分は会社に必要とされていないという自己認識が強くなっています。その状況を周囲の社員が見ると、「不公平だ。頑張っている方が損なのかもしれない。」という考えにいきつくことは必然で、社内失業が周囲の社員のモチベーションまでをも下げてしまうのです。
社内失業を放置することにより、「業務効率の悪さ」と「モチベーションの低下」といった問題が起きることが分かりましたね。これら2つの要因が組み合わさると、結果として会社全体の業績低下を招く可能性があります。面倒だからと実態に目を背け、具体的な解決策を見つけずに社内失業者を放置しておくと、次から次へと問題が発生。ついには社員本人だけでなく、会社にも悪影響を与えるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
では、社内失業者に対して企業はどう対応していけばよいのでしょうか。まずは該当社員本人にやる気があるかを確認した上で、「社員は企業に属している、会社とは個の集合体」という認識に改めてもらうことです。そして意識を変えて、資格を取るなり行動を変えるよう意識改革・自己変革を促すのです。新たな学習が必要であれば、それに伴う金額を一部補助するなどして、社内失業者が再び復帰できるよう人材育成につながるサポートを行いましょう。
異動や配転などで環境を変えることにより、キャリアを発展させる機会を作ることも対応策の一つです。部署内の人間関係の悪化を理由に社内失業状態に陥っていた社内失業者が、異動によってやる気を取り戻すことができた、というケースは決して珍しいものではありません。1つの環境でうまくいかなかったとしても、それは全て本人のせいとは限らないですよね。大事なのは企業側が定期的に本人の意思を確認し、適材適所の人員配置を実践して業績向上や会社の発展に結び付けることです。
キャリアパスを考える機会を与えることも有効です。残りの人生をどう歩んでいきたいのか、何をしたいのかなど。こういった問いを企業側から投げかけることにより、社内失業者本人のキャリアプランやライフプランを考えるきっかけを与えるのです。人生について考えるのが難しいのであれば、「自分がやりがいを感じる社会課題」を問いかけるなど、目的ややりたいことを考えることでモチベーションアップを図るのです。キャリアパスを描く支援セミナーを実施するのも良いでしょう。
社内失業者を生み出さないために企業が取り組むべきことは、「賃金体系の見直し」です。やる気のない社員にこれまで通りの賃金を出していては経営がうまくいかないのと同時に、周囲の社員からの反発があがるでしょう。やる気のある人に対しては賃金を高く、やる気のない人には低くというように賃金体系や評価制度の大改革が必要なのではないでしょうか。現在進行している業務量に見合う賃金体系や職階などを見直して、適切な配置ができる取り組みが求められています。
社内失業者の中には、今後社外での活躍を望む人もいるのではないでしょうか。企業はそんな社員がいつでも動き出せるよう退職制度を充実させ、社員の選択肢を増やしていくことも必要です。退職金の割増しや再就職の支援などが受けられるのが「早期退職優遇制度」。終身雇用を是としてきた日本企業でも近年一般化してきており、うまく活用できれば社内失業者が今後社外でキャリアを伸ばす上で、貴重な追い風になるのではないでしょうか。
現在社内失業は、50代を中心とした中高年に多い傾向ですが、20代・30代といった若年層でも少しずつ増加しています。そのため、キャリアアップができない若手社員は今後増加すると危惧されており、具体的な解決策が求められています。ビジネスの世界で深刻な問題となる「社内失業」。若手社員からベテラン社員まで全員が、企業は個の集合体であることを意識し、新しい知識やスキルを身につける意欲を忘れずに新たな働き方を考える必要があるのではないでしょうか。
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