記事更新日:2021年10月21日 | 初回公開日:2021年10月19日
用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説サクセッションプランとは、Succesion(継承・相続)の意味を持ち、「後継者育成のための計画」または「後継者育成」そのものを指します。近年ではこの「後継者」にはCEOだけでなく、役員クラスや幹部の候補も含まれます。重要なポストが思いがけず空席になってしまった時にも、事前に備えとして優秀な人材を確保しておくことでリスクヘッジとなりますね。優秀な人材が増えると持続的な企業の発展に繋がるので、サステナビリティの観点からも近年注目を集めているようです。
CEOや経営幹部に求められるものは、マーケティングの知識や組織マネジメントなどのスキルの他にも、キャッシュフローの感覚を覚えることや人を見る目など、日々の業務の経験から培われるものも多いです。サクセッションプランは次期後継者を育成するためのものなので、中長期的にプランを進めていきます。後継者候補がジョブローテーションや重責な業務などを通して、経営方針や経営戦略に則って経営者の視点で物事を見られるように成長させていきます。
人材育成は、従業員全体を対象として企業の業績を伸ばすためにおこなう育成の施策全般を指します。主に人事部が主体となっておこなう業務です。比べてサクセッションプランは、後継者候補として相応しい人材を選び対象とし、中長期的に全社横断的な研修、育成をおこなう施策です。経営層自ら育成に関わります。
後任登用は、現職に近い年次の社員からキャリアを重視して後任が選ばれることが多いです。しかしサクセッションプランにおいては、より長期的な視点で人選を考えます。経営理念や経営戦略も踏まえつつ、キャリアだけでなく成長期待度や適正も考慮して後任を選ぶことが、より経営層に相応しい人材を育成する上で重要です。
2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で策定した「コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)」は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために策定したものです。それによると「取締役会の役割、責務」の一つに、「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。」と記載があります。これにより、やはり後継者を育成することは企業の持続的な成長に必要不可欠なことであり、今後さらに重要視されていく課題だと考えられます。
サクセッションプランのメリットとしては、組織が活性化するということがあります。後継者候補自身はもちろんのこと、経営層も優秀な人材を未来の後継者として育成していくのでモチベーションは上がるでしょう。また、後述する「サクセッションプランの導入方法」の中で「対象となる人材の要件を定める」というプロセスがありますが、その要件を社内に公表します。そうすることで要件を満たせるように頑張ろうと意気込む従業員が増え、社内全体のモチベーションが向上するでしょう。そして企業の発展につながることも期待できます。
もう一つのメリットは、事前に後継者候補を育成しておくことができ、後継者の不在に頭を悩ませる必要がないということです。株式会社東京商工リサーチが中小企業庁の委託によりおこなった「企業経営の継続に関するアンケート調査」では、「企業が廃業を考える理由」の項目で最も多かったのが「業績が厳しい」の37.3%でした。それに次いで、33.3%は「後継者を確保できない」という理由から廃業を考えているとのことです。また、「事業の引継ぎを検討するために必要な支援や解決策」では「後継者の確保」が最多の46.0%を占め、同じく後継者がいないことが原因と考えられる「事業の一部の譲渡、売却、統合」の25.4%も合わせると全体の7割が後継者不在の問題を抱えているということがわかります。この問題はとても深刻ですが、事前にしっかりと対策を立てておけば避けることができます。
サクセッションプランの課題の一つは、経営層による育成を数年~十数年かけて計画し実行していく必要があるので、候補者が辞退、退職してしまう可能性もあるということです。そうすると、その候補者にかけた時間とコストが無駄になってしまいます。そういったリスクを回避するには、候補者の選抜をより慎重に行うことが重要となります。
もう一つ課題として挙げられるのは、後継者候補に選ばれなかった従業員のモチベーションを維持させなければならない、ということです。これはメリットの部分でも前述しましたが、後継者候補の選定基準を公開することで、基準を満たせば自分も選ばれると思い努力する従業員も多いはずなので、モチベーションの向上につながるのではないでしょうか。
現時点で変えていく必要があるのはどの部分か、これからも守っていくべき志は何か等を考え、今後の方針や取るべき戦略を明確にします。また、CEOや経営幹部全員が共有して足並みを揃えていくことも重要です。
対象となるポジションの範囲によってプランの規模や内容が大きく変わってくるので、CEOのみで良いのか、役員や部長、課長までなのか、それぞれ必要な人数もはっきりさせておきましょう。また、各ポジションによって求められるスキル等が変わることもあります。そのためポジションごとに、「専門的知識」や「リーダーシップ」といった項目で具体的な評価の基準を設けましょう。基準を定めることで、主観ではなく客観的に評価することができます。
設定した評価基準をもとに、経営理念や経営戦略も踏まえて後継者候補を選出します。中長期的な視点で見て現段階での能力や業績だけでなく、本人の熱意や将来性などを考慮することも重要です。このプロセスで適切な人材を選出できるかどうかが、サクセッションプランを成功させるための大きな鍵となります。評価方式以外にも自他推薦方式、選抜試験、研修方式などがあります。
後継者候補の選出が完了したら、候補者ごとに育成計画を作成していきます。一人ひとりに合わせて伸ばすべき特性、習得すべきスキルなどの目標を設定し、目標達成のために研修や海外派遣などをプランニングします。そしてプランの進捗状況は必ず定期的に確認しましょう。そうすることでプランに遅れが生じても早急に対処することができます。ただ、次期後継者を確保しようと進捗に敏感になるあまり、候補者に過度なプレッシャーがかかっていないかなど、候補者に対するケアも必要です。
サクセッションプランとは何か、導入するにはどうしたらいいのか分からない、といった疑問を解決してくれる書籍です。基本的なサクセッションプランの仕組みや概念を解説し、導入のための手順を丁寧に紹介しています。人材育成に対する理解を深め、サクセッションプランを組織に定着させるためのヒントが得られます。
花王株式会社は「花王ウェイ」という経営理念のもと、実績評価に加えて「意識と価値観の共有」、「強い信念に基づくリーダーシップ」など7つの項目に分けられた「多面的人材(人財)評価」を踏まえて人材を選抜。また後継者候補の人材の定義を3つに分類しており、①ReadyNow 今すぐ後任となれる人材(人財)1名必須②ReadySoon 1~3年で後任として育成する人材(人財)2名まで③MidTerm 3~5年で後任として育成する人材(人財)3名までとし、ReadyNowに必ず1名配置しておくことで、不測の事態にも社内の混乱を最小限に抑えることができる仕組みとなっています。
1996年からコーポレートガバナンスの充実に取り組んできたオムロンでは、2006年より「社長指名諮問委員会」を設けました。この委員会は、日本取締役協会が主催する「コーポレートガバナンスオブザイヤー2018」にてガバナンスにおいて特に重要な後継者計画や社長選任計画について高く評価され、「経済産業大臣賞」を受賞しています。サクセッションプランが毎年この委員会で審議されており、持続的な企業価値の向上を目指しています。また、2020年のオムロングループ環境方針として「自然との共生」や「資源の有効活用」など5つを設定。経営面ではもちろんのこと、環境面においてもサステナビリティを意識した取り組みをおこなっているといえます。
「無印良品」のブランド力で知られる株式会社良品計画では、サクセッションプランを実施するにあたり3つのオリジナルツールを使用しています。①プロフィールシート 従業員の社内歴や評価歴、海外研修受講歴などをまとめたもの。②ファイブボックス 各人材のポテンシャルとパフォーマンスを「高い」と「合格点」の評価でそれぞれ2つに分けて4つのボックスとし、そこに「どちらも低い」の1ボックスを加えた計5つのボックスに人材を分類するもの。③キャリパーポテンシャルレポート リーダーに求められるスキルを自己管理能力や意思決定能力など詳しい要素別にグラフ化して評価をおこなうもの。これらのツールを使用することにより「トップが代わっても人材の一貫性が保たれる組織」の構築を目指している、とのことです。
サクセッションプランを正しく理解して導入することで、後継者に適した人材が選ばれれば次期後継者不在の心配をする必要はありません。メリットはそれだけに留まらず、社内全体のモチベーション向上を図ることができ、多方面から企業の持続的な成長につながり得ます。企業の将来を見据え、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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