記事更新日:2023年07月28日 | 初回公開日:2023年07月10日
人事・労務お役立ち情報 用語集 グローバル用語解説 外国人採用・雇用昇給とは、様々な条件によって給与が上がることを言います。昇給といっても、長期的に安定して得ることが出来る物や、一時的に得ることの出来る物など様々です。昇給は年次や勤続年数に応じて行われる定期昇給制度が多くの企業で導入されており、業績や労働の質に直結するわけではありません。昇給の制度は企業によって異なりますが、終身雇用制度や年功序列制度などが崩壊している今、定期昇給をデメリットと感じる人も増えてきています。
昇給する条件として、考課(査定)があるかどうかで分類されている自動昇給と効果昇給があります。自動昇給は、企業の業績や従業員の能力に影響することなく年齢や勤続年数を基準としている昇給です。企業に所属している全員が対象となります。効果昇給は従業員の成果などを基にして判断する昇給制度で、査定昇給と呼ばれていることもあります。考課昇給の昇給率は企業や職務内容によっても差があり、社会情勢や時代に影響されます。
昇給のタイミングが決まっているかどうかで異なるのが、定期昇給と臨時昇給です。定期昇給は、毎年昇給する時期が決まっており従業員の能力や成果に関係なく昇給するため、年功序列賃金とも呼ばれます。基本的に昇給時期が決まっていますが、業績によって実施するかどうかを企業が決定します。臨時昇給は、昇給することが決まっているものではなく企業ごとに就業規則の範囲内で昇給することもあれば、業績の急激な上昇により臨時的に実施する企業もあります。
昇給の範囲によって、普通昇給か特別昇給か区別されます。普通昇給は、従業員がスキルアップした際や職務遂行能力がアップしたタイミングで昇給を行います。定期昇給のように時期を決めて一斉に昇給を行うのではなく、個人を対象としている事が相違点です。特別昇給は特殊な業務に従事・功労した際に、通常の昇給基準では対応できない場合など特別な対応が必要な際に実施されます。成績が特に優秀な場合に、通常の昇給ではなく飛び級として制度を設定している企業もあります。
昇給と似た言葉として、ベースアップがありますが給与の引き上げ対象者が全員か個人かという違いがあります。ベースアップはベース(基本給)に対しての昇給率や昇給額を表しています。その為、ベースアップは勤続年数や成績に関係なく、所属している従業員全員の給与を一律の比率で昇給させる仕組みです。定期昇給と混同されやすいですが、定期昇給は個人の年次と共に昇給していく仕組みのため昇給の比率が一律でない場合もあります。
日本の昇給制度は、定期昇給制度が主流です。日本では昔から終身雇用制や年功序列を重視している企業が多いため、定期昇給を行い勤続年数が長い人により多くの給与を払うという考え方でした。近年では、実力主義を唱える企業も増えてきていますが、未だに長く勤める程昇給を見込める企業は少なくありません。厚生労働省のデータによると、一般従業員の定期昇給がある企業は8割を超えており、実際に昇給を行っている企業も7割を超え高い水準です。
定期昇給制度が主流でしたが、最近では見直されつつあります。定期昇給制度は1930年代から年功序列型賃金体系を支える一つの制度として実施され、戦後改めて役割が重要視され昭和20年代末から30年代にかけて広く普及していきました。しかし日本でも1990年代からグローバル化の推進を行っていることにより、年齢や勤続年数で給与が変わる昇給制度やベースアップの見直しが行われています。従来のような定期昇給をやめ、考課昇給の比重を高める企業が増えています。
日本企業では定期昇給制度を実施していない企業もあります。厚生労働省が行った賃上げに対しての調査によると、従業員100人以上の企業で定期昇給制度を実施していない企業は約17%あります。前年実施した同じ調査結果と比べて微増している傾向です。実力主義を導入していることから定期昇給制度を導入していない企業もありますが、従業員数が少ない中小企業ほど定期昇給制度を導入していない企業が多い傾向にあります。中小企業では経営基盤が弱いため、従業員の給与に反映出来ていない場合があります。
昇給の時期は企業によって異なり、就業規則に明記されています。昇給の時期は事業年度などの兼ね合いで4月に設定されている企業が多くありますが、昇給するタイミングは業種や企業によって様々です。企業によっては株主総会後の7月に設定している所や、会計年度が1月のためそれに合わせて昇給を行っている企業もあります。自分が所属している企業の昇給の時期を知るには、就業規則や会社規定に明記されているはずなので規則を確認しましょう。
昇給制度には上限があり、平均48.9歳で昇給が止まることが殆どです。定期昇給制度とはいっても、昇給する年齢に制限をかけている場合が多く、公益財団法人日本生産性本部が行った調査で定年まで定期昇給を行う企業は約18%でした。半数以上が昇給に年齢制限をかけており、46~50歳・51~55歳が最も多く、平均すると50歳前後で基本給の上昇が止まる企業が多くあります。昇給停止は平均して48.9歳ですが、企業規模によって昇給が止まる年齢は異なっており、中小企業では平均より早い場合もあります。
2023年大企業の昇給率と昇給額の平均は、昇給率は3.91%で昇給額は13,110円でした。経団連が発表した春季労使交渉では、大手企業で定期昇給とベースアップを合わせて3.91%で前年よりも1.64ポイント上昇しました。2年連続で前年より上回っており、昇給率が3%後半代を記録したのは30年振りの数値です。中でも造船業が6.06%と最も高く、12業種で3%を超えるなど高い数値を示しています。従業員数500人以上の大企業の中で241社に対し集計を行い、昇給額が1万円を超えたのも30年振りの記録です。
2023年に昇給実施を予定している企業は、約8割です。毎年産労総合研究所が行っている「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」では、自社の賃上げについて賃上げ(定期昇給を含む、以下同じ)を実施する予定と回答した企業が約8割を超えていました。賃上げを予定しているのは大企業だけでなく、回答した中小企業の内84%が賃上げ実施を予定しています。これは前回の調査と比べ、大企業よりも中小企業の方が賃上げに前向きな姿勢を示していることがわかります。
2023年の昇給を、価格転嫁を理由に実施しない企業が全体で約4割を占めています。一方で実施する企業が約2割、対応を決めかねている企業が4割となりました。戦争の影響での資源不足や円安の影響により、物価高が続いています。今までと同じ部品や製品を使って同じものを商品やサービスとして提供しても、今まで以上にコストがかかってしまいます。40年振りと言われるほどの物価上昇に対して、うまく商品に価格転嫁出来ていない企業では賃上げ実施は難しいと回答しています。急激な物価高騰を上手く価格転嫁出来ていない企業にとっては賃上げに慎重にならざるを得ません。
昇給制度を導入する企業にとってのメリットは、従業員のモチベーション向上を見込める点です。定期的に昇給を受けられることによって、従業員が業務に対してモチベーションを保つことが出来ます。業務を行っていることで企業への貢献度やスキルアップを給与で評価してもらえることで、従業員は業務に対してモチベーションを高く維持することが可能です。また定期的に給与が上がることによって、従業員が生活を維持・向上しやすくなる為、離職率低下にも繋げることが出来ます。
企業経営の成功を証明できるのも、昇給制度を導入するメリットです。定期的な昇給を実施できている企業は、企業経営が安定し成功しています。社会情勢など企業を取り巻く環境が様々変化している中で、周りに影響されることなく従業員の賃金を安定的に増額できている企業は社内だけでなく社外に対してもアピールすることが出来ます。安定している企業だと証明することが出来れば、消費者や取引先の心象に繋がるだけでなく新しく入社してくる人材にも好印象を与えることが可能です。
従業員や転職者が昇給制度を上手く利用する為には、リスキリングを行いましょう。リスキリングとは、時代や環境の変化によりこれから必要になる新たなスキルや知識を身に付けることです。グローバル化やDX化推進に伴い企業を取り巻く環境は毎年変わってきています。そういった変化に迅速に対応していく為にも新たなスキル習得が欠かせません。新しい情報をしっかりと取り入れ、状況に合わせたスキルを取得してくれる従業員は企業にとっても欠かせない存在です。リスキリングを行うことで、昇給対象となり得る人材に繋がります。
自分の経験や能力を活かす事も、従業員や転職者が昇給制度を上手く利用する方法です。定期昇給制度は年齢や勤務年数で昇給する額が決められている為、従業員側で昇給するために行えることはありません。しかし普通昇給や効果昇給はスキルアップや業務の成果を上げることで、昇給に繋げることが可能です。自分が行っている業務で必要な資格取得をすれば、昇給が見込めるだけでなく資格手当の対象になる可能性もあります。自分の経験や能力を活かして、昇給制度を上手く活用していきましょう。
昇給の種類や、日本の昇給制度について解説しました。昇給制度は本来、企業側と従業員側の双方にメリットのある制度です。しかし定期昇給制度は従業員の成果に関係なく年数が経てば給与が上がっていく為、若手従業員や優秀な人材のモチベーション低下にも繋がりかねません。働き方改革により、年功序列制度や終身雇用制度が崩壊しつつあることから、成果主義の昇給制度に移行している企業も増えてきています。企業だけでなく従業員も昇給制度の役割をしっかりと理解することが大切です。
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