アート思考とは【デザイン思考ロジカル思考との違い、活用事例について解説します】

記事更新日:2023年08月09日 初回公開日:2023年08月09日

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近年、ビジネスにおいて技術革新や環境の変化が目まぐるしく起こる中で、「アート思考」という考え方が注目を集めています。先の見通しを立てることが難しい現在、企業価値を新たに高めていくためにも、事業やサービスに取り入れる企業もあるのです。そこで本記事ではアート思考についての説明を踏まえた後、メリットやデメリット、身につける方法を解説します。活用する際のポイントや事例もご紹介しますので、アート思考に興味がある方は是非参考にしてみてください。

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アート思考とは

アーティストが作品作りに使う思考法

アート思考とは、アーティストが作品作りに使う思考法のことです。アーティストと呼ばれる人たちはそれまでになかったものを新たに創り出していることから、0から1を生み出す発想法と捉えられています。ビジネスにおいてアート思考は、アート作品ではなく事業を新たに打ち出すための発想法として活かすことができるでしょう。アート思考は「起こりそうにないものを創り出す」「現状を疑うことで作品をデザインする」ということを実現します。

アート思考が注目される背景

AIにはない独自性が求められている

アート思考が注目される背景として、人間にAIにはない独自性が求められていることが考えられます。AIはロジカル思考を得意としますが、ビジネスにおける課題解決をしていく過程では、柔軟な思考が欠かせません。技術革新が急激に進む中でも、人間のニーズや感情を深く理解して新しい発想を生み出すためには、人間の想像力が必須となってくるでしょう。アート思考で発想力を高めることで、技術革新と自由なアイデアの掛け合わせをビジネスに活かせるようになります。

価値観の多様化に対応しなければならない

アート思考が注目される背景には、価値観の多様化に対応しなければならないことも含まれているでしょう。時代が進むにつれて、人々が求めるものや価値観は多様化してきています。企業がサービスを提供する際も競合他社と同じようなことばかりしていては、似たようなサービスが展開される社会になってしまいます。価値観が多様化することに合わせて、独自の価値を生み出すことがカギになります。企業にイノベーションを起こすためにも、従来の考えに囚われないことが大切です。

アート思考とデザイン思考の違い

デザイン思考は顧客の目線で考える

アート思考とデザイン思考の違いとして、デザイン思考は顧客の目線で考えることが挙げられます。アート自体は自由な表現や創造を指しているので、人々に感動を与えたり、社会に問題提起をしたりすることが目的なのです。しかし、デザインの目的は課題解決を行うことにあります。アート思考は自分軸の考え方を重視するため、ビジネスの場目ではオリジナリティを出すことに向いていると言えるでしょう。一方デザイン思考では、顧客の目線に立って考えることが大切です。

アート思考とロジカル思考の違い

ロジカル思考はすでに問題やテーマが見出されている

アート思考とロジカル思考の違いは、ロジカル思考ではすでに問題やテーマが見出されていることです。アート思考は0から1を生み出す発想法ですが、ロジカル思考は先に問題やテーマがあり、それについて順序立てて考えたり体系的に整理したりします。また、ロジカル思考は「論理的思考」という意味を持っているため、直感で物事を捉えずに筋道を立てて矛盾や破綻がないように結論を出すのです。物事を分解して考える際や、因果関係を把握する際に役立ちます。

アート思考を身につける方法

ビジョンスケッチ

アート思考を身につける方法には、ビジョンスケッチがあります。ビジョンスケッチとは、アーティストが作品を生み出す際の思考回路を真似するというものです。まずは、多くのアートに触れてその時の感情を振り返る時間を増やすようにしましょう。その中で特に心が動いたアートを取り上げて、その理由を追求します。そして、アーティストの思考回路を想像し、自分なりに言語化してみてください。そうすることで、アートに触れた時に自分なりの解釈ができるようになるのです。

アートイノベーションフレームワーク

アート思考を身につける方法として、アートイノベーションフレームワークというものもあります。最初に自分が面白いと思うものを発見し、好奇心を高めておいてください。その後、発見した対象の特徴や独自性を調査して、類似するものや思考を探り出す作業に移ります。次に、発見した対象のオリジナル性を出すために表現方法を考えましょう。そして、過去の歴史上で誰も表現したことのない方法を生み出すことに繋げてください。生み出した商品が誕生した理由や背景を言語化して伝え、評価をもらうことも大切です。

アート思考のメリット

独自性のあるサービスが展開できる

アート思考のメリットとして、独自性のあるサービスが展開できることが考えられます。アート思考ではもとからあった知識やデータを使用しないためです。自分の中で生まれた問題提起やアイデアを抽出し、それを深掘りすることによって自分の中で模索することを繰り返します。こういった作業をすることで、今までにない商品やサービスが生まれやすくなるでしょう。現在は市場に似たような商品やサービスが多く出回っているので、アート思考が大きなメリットになると言えます。

社員から自由なアイデアを引き出せる

社員から自由なアイデアを引き出せることも、アート思考のメリットです。先ほども述べたように、アート思考では自分軸の考え方を重視します。それを企業として尊重することは、独自の発想力を大切にすることに繋がるのです。今まで思いつくことができなかった内容が出てくることで、柔軟に事業の課題を解決する方法を探ることができます。現在ある課題を放置せずにアート思考を使って解消していくことで、事業を継続する土台づくりにもなるでしょう。

アート思考のデメリット

消費者に受け入れられるとは限らない

アート思考のデメリットとして、消費者に受け入れられるとは限らないことを忘れてはなりません。自分軸によって生み出されたアイデアは、デザイン思考のように顧客に寄り添って考えられていないためです。それが時代のニーズに合っていないことや、消費者にとって使いにくいものである可能性もあります。消費者に受け入れてもらえないということは、市場でシェアを獲得できないということにも繋がります。アート思考を取り入れる際は、頭に入れておいてください。

社内で認識を共有しづらい

アート思考のデメリットでは、社内で認識を共有しづらいということも挙げられます。アート思考は自分軸であるがゆえに、新たなアイデアも独りよがりになってしまう可能性があるのです。それは消費者に伝わる以前に、社内で共通認識を持つことが難しいと感じることもあり得ます。また、アート思考だけではありませんが、新しい思考法が組織に浸透すること自体に時間がかかります。デザイン思考やロジカル思考とバランスを取りながら、上手くアート思考を活かしましょう。

アート思考を活用する上でのポイント

表現したい気持ちを強く持つ

アート思考を活用する上でのポイントとして、表現したい気持ちを強く持つことが大切です。アート思考の根源は、自己の中にある「表現したい」という強い想いにこそあります。アート思考を活用したいと考えていてもこの強い想いが根底になければ、上辺だけになってしまいます。その状態では本来の成果を生み出すことは、難しいと言えるでしょう。アート思考を単なる1つの手法と捉えるのではなく、根源となる想いを見つめ直すことから始めることが大切です。

社会の常識を取り払って考える

アート思考を活用する上では、社会の常識を取り払って考えることがポイントです。実現したいことをアウトプットする前に、自分を深く掘り下げましょう。そこで「自分が実現したいものは何か」ということを何度も再定義して問うことが大切です。ビジネスをしていると数字やこれまでの経験、消費者のニーズなど、常識の範囲内で考えるようになってしまいます。アート思考を取り入れる際には一度そういった常識から離れることで、新たなアイデアを生み出すことに繋がります。

収益性や実現性も考える

アート思考を活用する上では、収益性や実現性も考えるようにしましょう。これまで、アート思考では自分軸で考えるということを強調してきました。しかし、ビジネスを展開するからには収益性や実現性を頭に入れておくことも忘れてはなりません。アート思考を導入する時には、ビジョンやコンセプトを考えることに活かすようにしましょう。それを事業化していく時には、デザイン思考やロジカル思考も上手く取り入れて実現していく、という流れが重要になってきます。

アート思考の活用事例

Apple社

アート思考の活用事例として取り上げることができるのは、Apple社です。iPhoneが開発された背景には、アート思考の活用があります。Apple社は顧客調査をほとんどしない企業として有名です。まずiPhoneを生み出す際には「優れたデバイスを生み出す」という課題がありました。そこにスティーブ・ジョブズが持っていた「世界の人がポストPCのような端末を持てたら良い」という考えが組み合わさったのです。それにより、結果的に大きなイノベーションを起こしています。

SONY

アート思考の活用事例としてSONYも参考になります。SONYで開発されたウォークマンは、アート思考がきっかけで誕生したと言えます。当時の名誉会長であった井深大には「旅客機内で綺麗な音で音楽が聴けるデバイスを作ってほしい」という考えがあったのです。そして、事業部長であった大曾根部長に依頼したことが始まりでした。当時は「ただ音楽を持ち歩ける」というだけでは売れないという声も上がりましたが、結果的に多くの人の手に届く商品となりました。

バルミューダ社

アート思考の活用事例として、バルミューダ社も紹介します。この会社は「BALMUDA The Toaster」という注水口が搭載されているトースターで有名です。注水口に水を入れることでパンが中からふっくら焼き上がる仕組みになっています。このトースターは代表取締役の寺尾玄氏の気づきによって生まれました。それはバーベキューに行った時、雨の中で焼いた食パンがいつもより美味しく感じたという経験です。そこから湿気が重要だと考えて新たなトースターが生まれました。

アート思考に対する海外の動向

MFAが注目されている

アート思考に対する海外の動向として、現在MFAが注目されています。MFAとは美術学修士のことです。絵画やデザイン、演劇といった芸術系の実践科目を、大学院などの教育機関で所定の課程を修了することで取得できる学位となっています。2004年、作家のダニエル・ピンク氏が“The MFA is the New MBA”と題した論文を発表したことがきっかけで、注目を浴びるようになりました。MFA取得者のような感性や創造性が今でも求められています。

まとめ

アート思考を取り入れて新たなアイデアを生み出そう

価値観の多様化や独自性が求められているという背景から、アート思考は現在注目を集めています。アート思考を取り入れることで、自分軸での新たなアイデアを引き出すことに繋がるのです。しかし、消費者に受け入れてもらえるとは限らず、社内でも共有が難しいことは頭に入れておきましょう。アート思考を実践する際は、表現したい気持ちを強く持つことや、社会の常識を取り払って考えることが大切です。そうした中でも、収益性や実現性も考えることは忘れないようにしましょう。

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