ノーマライゼーションとは【意味や考え方について解説します】

記事更新日:2022年05月13日 初回公開日:2022年05月12日

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ノーマライゼーションは「標準化」や「正常化」という意味を持っており、今まで行われていた特別なことを一般化していくという考え方を示しています。世の中が多様化・グローバル化している中で、社会的マイノリティを持っている人たちに対して一般市民と同じ普通の生活や権利が保障されるように環境の整備が必要です。ノーマライゼーションは福祉の面だけではなく職場環境においても重要になっています。社会的弱者に変化を求めるのではなく、環境を変えるためにノーマライゼーションという考え方を取り入れてみてください。

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ノーマライゼーションとは

社会基盤や福祉の充実を整備していく考え方

ノーマライゼーションはもともと福祉用語で、高齢者や障害を持っている人が他の人と同じように生活していくために社会基盤や設備などを整備していく考えのことを指します。社会的弱者を特別視せず、支援するだけではなく社会の一員として役割を担っていくことが重要だとしています。社会的弱者に一般常識などを押し付けるのではなく、社会の在り方そのものを変える必要があります。それぞれが生きがいや役割を見つけられる社会を作り上げていく事が目的です。

ノーマライゼーションとバリアフリーの違い

バリアフリーは日常生活で障害となるものを取り除くこと

ノーマライゼーションとよく比較されるのが、バリアフリーです。バリアフリーとは高齢者や障害者が都市空間上において安全に生活しやすいように障壁(バリア)となるものを取り除いていく、という意味を持ちます。バリアフリーは障害者が困らないようにという思いから生まれたものだといえますが、根本的に健常者と障害者の間に隔たりがあるような表現です。そのため近年ではバリアフリーが障がい者への施策ではなく、すべての人が安全に暮らせる環境を作るという考えに変わりつつあります。ノーマライゼーションを実現するためのひとつがバリアフリーと言えます。

ノーマライゼーションとユニバーサルデザインの違い

ユニバーサルデザインは誰でも利用できるデザインのこと

ユニバーサルデザインは、あらゆる人が言語や国籍・年齢・性別・障害の有無などに影響を受けることなく利用できるデザインのことを指します。ユニバーサルデザインのコンセプトとして、「できるだけ多くの人が利用可能なデザインにすること」が提言されています。障害者や高齢者も含めた、すべての人が使いやすいデザインにすることが最も重要です。ユニバーサルデザインもノーマライゼーションを実現するためのひとつの方法と言えます。

ノーマライゼーションの8つの原理

1日のノーマルなリズム

ノーマライゼーションには8つの原理があり、最初は「1日のノーマルなリズム」です。例え重い障害を持っていたとしても、朝ベッドから起きて洋服を着てずっと家の中にいるだけではなく、外へ出て学校や会社などに通います。当たり前の時間に着替えて、しっかりとテーブルについて食事を行います。保護者の都合などで昼食が夕方になってしまうことなく、障害のない人たちと同じように生活リズムを保っていくという事が大切になります。

1週間のノーマルなリズム

2つ目は「1週間のノーマルなリズム」です。月曜から金曜日までは自宅から職場へと働きに行きます。1日のノーマルなリズムを元にして1週間のリズムを作ります。一般的には平日は学校や仕事に励み土日は休みを取ることですが、賃金の発生する仕事という意味合いではなくても、家の手伝いをする日として充てることも可能です。休日には楽しく友人と遊びに行くこともあれば、のんびり家で過ごすこともあります。そして月曜が始まるとまた学校や仕事に行きます。障害の有無にかかわらず、メリハリのあるリズムを作ることが大切です。

1年間のノーマルなリズム

3つ目は「1年間のノーマルなリズム」です。日本には四季があり、季節に合わせた食事をとることもイベントに参加することも可能です。学校では長期の休みが数回あり、仕事では繁忙期や閑散期があるなど変化も生じます。学生や社会人に関係なく四季折々の様々な食事・行事・スポーツ・余暇を体感することが可能です。社会人になると学生の時ほど長期で休暇を取ることは難しくなってきますが、夏季休暇や冬期休暇といった季節感覚を持ちながら過ごすことは変わらずに行えます。

ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験

4つ目は「ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験」です。子どもの頃に公園で遊び、夏にはキャンプに行く、思春期にはオシャレや恋愛に興味を持って友達と盛り上がるといった体験をします。大人になったら仕事を任され責任を持つようになり、年を重ねると様々な経験の元、懐かしい思い出を振り返るというような普通の人が行っていることをと同じように体験していく事です。この一連の流れを体感できる環境がライフスタイルのノーマルな経験です。

ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

5つ目は「ノーマルな個人の尊厳と自己決定権」です。普通に生活していく中で、自分の意見や思いを誰もが主張することが出来ることを指します。障害の有無にかかわらず、自分の思っていることや願望を発言することができ、周りもそれを認め尊重できる社会を目指すことです。住みたいところに住む自由や、働きたい仕事に就いて好きな時に好きな場所へ遊びに行ける権利を持っていることを指します。他人の意見や価値観に左右されることなく個人を尊重される社会である必要です。

その文化におけるノーマルな性的関係とそれを得る権利

6つ目は「その文化におけるノーマルな性的関係とそれを得る権利」です。現代におけるセクシャリティはさまざまなため、性的な関係が必ずしも異性に限定されるものではありません。そのような状況下において異性とのいい関係性を築くことが出来るという権利を有していることを指します。異性(自分の性的趣向の相手)と恋愛をして交際に至り、同棲や結婚などを意識することが出来るような生活を行える権利を誰しもが持っています。

その社会におけるノーマルの経済水準とそれを得る権利

7つ目は「その社会におけるノーマルの経済水準とそれを得る権利」です。全員が同じ水準になるために、障害者や働けない人にお金を配る等という意味ではありません。誰もが平均的な経済水準を保証され、公的財産支援を受ける権利を持っていて、その責任を全うする権利のことです。社会で設定されている児童手当や老齢年金を受け取れるということや、最低賃金基準法が遵守された環境下で働けることが大切です。その中で、自由にお金を使うことができて欲しいものを購入できる権利も含まれています。

その地域におけるノーマルな環境形態と水準

最後に「その地域におけるノーマルな環境形態と水準」です。これは住居等の生活環境を指しており、先述した7つの原則を順守している場所や環境のことです。障害があるからと言って大規模な施設で他の障がい者と一緒に社会から隔離されて暮らすこともノーマルな生活とは言えません。ほかの人たちと同じように施設などではなく家に住み、地域の人とのかかわりを持ちながら暮らしていく環境が求められています。当たり前のことを当たり前に行えることがとても大切です。

日本におけるノーマライゼーションの課題

離職率が高い

障害者の離職率が高いこともノーマライゼーション実現に向けて大きな課題です。障害者雇用の割合が低ければ低いほど、障害者の離職率は高くなる傾向にあります。入社して1年経つと障害を持っている人たちは平均して約3割が離職しており、労働全体では15%程度なので障害者の離職率が高いことが分かります。一般的に職場の雰囲気や人間関係が原因で離職する人が多いです。障害者も同じく障害者雇用で入社したが社内の理解が進んでおらず雰囲気が悪くて辞めたという人が多くいます。

社内理解度が低い

社内での理解度が低いという事も、ノーマライゼーションにおける課題のひとつです。日本では人権教育が欧米より進んでいません。実際に他国から侵略を受けたり他民族が多く流入してこないこともあり人権侵害を理解する機会があまりないことも要因として考えられます。また日本では実際に障害者に接する機会がある人は少なく、多くの企業では障がい者の受け入れに対して経験が豊富ではありません。そのため障害者を雇用する時に知識や体制を整えることになるので、障がい者への理解が浅い場合が多いのです。

ノーマライゼーションにおける課題の改善策

業務を見える化してルールを設ける

障害を持っている人に対する社内の理解度を改善するためには、社内での業務を見える化してルールを設ける必要があります。複雑で分かりにくいルールではノーマライゼーションが実施できているとは言えません。障害者の人たちにとってわかりやすいルールや業務を伝える手段は、障害を持っていない人にとっても分かりやすく、業務効率を上げられる等双方にメリットとなります。複雑に組まれているシフトや文章が多く読みづらいマニュアルなどは、一度見直してみましょう。

障害者についての知識を広げる

障害者についての知識を広げるということも、ノーマライゼーションにおける課題を改善するための方法のひとつです。障害に対して知識や理解を持っていないために、差別や偏見が生まれています。バリアフリーやユニバーサルデザインを取り入れればノーマライゼーションが実現するわけではありません。従業員のノーマライゼーションや障害に対しての正しい理解によって、知識や関わり方がベースに生まれた時にユニバーサルデザイン等を最大限に活用することが出来ます。障害を個性としてきちんと理解した上で、相手に合った配慮を行うことが当たり前であるという意識を私達全員が持つ必要があります。

日本におけるノーマライゼーションの取り組み

障害者雇用促進法

日本でのノーマライゼーションの取組のひとつ目は、障害者雇用促進法です。障害者雇用促進法は障害者に就労機会を与え、雇用の安定を図ることを目的にしています。障害者を雇用する際に守るべき義務を定め、差別の禁止や安全配慮義務等が盛り込まれています。この法ではすべての国民が障害の有無にかかわらず、個人として尊重されることを目的として掲げています。その為就労の場においても障害を区別されずに労働者の一人として活躍できる場を提供されることが重要と考えられているのです。

行政の取り組み

2つ目は、行政としての取り組みです。厚生労働省では障害者の自立と社会参加の促進を目的としてノーマライゼーションの理念に基づいた取り組みを行っています。従来から行われていた措置制度(行政が利用者に提供する福祉サービスを決める制度)を改め、利用者自身がサービスを選び、事業者と直接契約を行う制度(支援費制度)に変更されました。それだけではなく、障害者が安心してサービスを利用できるように障害保健福祉に関する総合的な施策を行うための「障害者自立支援法」の成立も実現しています。

民間の取り組み

3つ目は、民間としての取り組みです。社会福祉法人ノーマライゼーション協会では「すべての人の人権を基軸としたノーマライゼーション社会の実現」を理念として掲げています。生活すること・就労すること・創造すること・アートすることなど様々な観点から障害を持っている人々が社会から孤立することなく、社会の中で共に生きていくための取組をすすめています。障害者や高齢者の日々の生活や地域福祉を増進させるために、社会福祉事業や各種施設の運営などを行っています。

教育の取り組み

4つ目は教育現場での取り組みです。ノーマライゼーションは教育現場でも重要な課題となっています。その中で最も注目されているのは障害をはじめ、どのようなバックグラウンドを持つ人たちでも一緒に教育を受けられるようにする「インクルーシブ教育」です。インクルーシブ教育とは多様性を尊重することで、障害のある子どもが精神的・身体的に発達して社会に参加できるように支援する方針です。それぞれのニーズに合わせた教育を提供できる環境を整えることを目指しています。

まとめ

ノーマライゼーションについて理解して社会活動を広げよう

ノーマライゼーションの問題点や取組について解説しました。障害の有無や年齢にかかわらず、人権や個性を大切にして一人一人に合った指導方法や仕事のやり方を模索し、働きやすい環境や制度を作っていく必要があります。日本ではノーマライゼーションの認知度は低く、地域社会において障害を持っていない人と同じように生活することは当たり前ではありません。企業においては必要な人に必要なサポートが出来る体制を整えながら、すべての社員が個性や長所を活かして働きやすい環境を作っていくという意識がとても大切です。

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