記事更新日:2022年10月03日 | 初回公開日:2020年09月09日
人事・労務お役立ち情報うつ病患者は年々増加しています。厚生労働省が行った調査によると平成29年時点で精神疾患を有している患者数は419万人であることが分かりました。またこの調査により精神疾患の中でもうつ病を含む気分障害の患者数が激増していることが判明。今や通院しているうつ病患者は100万人を超え、15人に1人がうつ病を経験するとも言われています。うつ病は心の風邪とも言われており、誰でもなりうる身近な病気と言っても過言ではないでしょう。
うつ病を発症する原因には会社などの環境による影響も考えられます。例えば長時間の残業やハラスメント、人間関係の悪化、転勤や異動による環境の変化も原因として考えられるかもしれません。またうつ病を引き起こす原因には複数ある場合もあります。仕事でストレスを感じることがあったとしても経済的に簡単に仕事を辞めることはできないと思っている人が多いでしょう。ストレスを溜め続けるとうつ病になってしまう可能性が高まるため、会社側は継続的に社員を雇用するためにも社員の体調の変化をよく観察しておく必要があるでしょう。
うつ病の代表的な症状として憂鬱な気分が続いたり、気持ちが悪いと感じてしまうことがあげられるでしょう。うつ病は精神的な症状と身体的な症状のどちらも現れることが多いです。精神的な症状については憂鬱な気分が続き気力が低下したり、不安感や焦燥感を感じやすくなる点があります。また身体的な症状としては気分不良や不眠、食欲の低下、頭痛や腹痛、めまいなどが考えられるでしょう。内科などの病院に行っても特に病気が見つからない場合、精神疾患になっていることもあるので注意が必要です。
うつ病には様々な種類があります。うつ病は単極性うつ病と双極性うつ病の2つがあると現在考えられています。単極性うつ病は気分や気力の低下、睡眠障害、疲労感や無価値観を感じやすいといった症状があるでしょう。一方双極性うつ病は単極性うつ病とは全く別物で、気分が高まる躁状態と気分が低下するうつ状態を繰り返す病気です。躁状態のときは周囲から明るく見えるため病気の発見が遅れてしまうこともあるようです。元気に見えるからうつ病ではないとは言い切れないということを覚えておきましょう。
うつ病による休職期間の目安は、症状が軽度でも最低1ヶ月程かかるでしょう。うつ病をはじめ精神疾患の治療には時間がかかることが多く、再発もしやすいと言われています。そのため思ったよりも治療が進んでいない場合や治療中に症状がぶり返してしまうことも十分考えられるでしょう。一度申請した休職期間で治療が終わらないと医師が判断した場合、休職期間の延長を社員から頼まれることもあるかもしれません。会社側は社員の症状や治療の進み具合によって、休職期間が延びる可能性があることを把握しておきましょう。
うつ病の症状によっては3ヶ月から半年間の休職期間が妥当な場合もあるでしょう。うつ病になったことで希死念慮が強まり自殺未遂を起こしてしまったり、薬の副作用により体調が悪化してしまうケースもあります。また症状が深刻な場合、入院をしながらうつ病治療を行うことも考えられるでしょう。人それぞれうつ病による症状やうつ病を発症した原因、うつ病を緩解するまでの期間は変わってきます。場合によっては医師から長期間休職すべきと判断される可能性もあることを知っておきましょう。
うつ病で社員から休職したいと申し出があった際はうつ病の診断書を受け取り、社員の病状により休業期間を定めるようにしましょう。医師が記載する診断書には患者の病名や治療に要する期間、医師の意見などが書かれています。休職期間を決定するときは診断書に書かれた休職期間を目安するといいでしょう。また治療の進み具合によっては休職期間を延長しなければならないこともあるかもしれません。その場合は再度診断書を医師に書いてもらう必要があるでしょう。
社員からうつ病になり休職したいという申し出があった際、職場に原因があれば環境を改善しましょう。うつ病になった社員から環境を改善してほしいと言われた場合はもちろん、今後同じように精神疾患による休職者を出さないためにも職場環境を見直す必要があるでしょう。仕事量や残業時間、上司からの指示やフォロー体制のなどがストレス源となっているかもしれません。職場の照明やレイアウト、温度や湿度を変えるだけでもストレスを軽減させる効果が期待できると言われています。少しでも社員に負担がかからない環境づくりをこの機会に考えていきましょう。
うつ病で社員が休職したときは定期的に現状報告をしてもらうといいでしょう。社員が復帰する日を想定したうえで職場の環境改善をするためにも社員と連絡を取りたいと考えている企業の方もいるかもしれません。社員の病状によっては現状を報告すること自体が強いストレスとなり治療が遅れ、職場復帰が遅くなってしまうことも有り得ます。診断書に記載された情報や社員の状態を見て社員本人と連絡が取れそうか判断し、現状報告をしてもらうようにしましょう。
うつ病で社員が休職したときは、メールよりも電話の方が社員の状態を把握しやすいでしょう。電話で現状を報告してもらうことで社員の声色から、どれほど治療が進んでいるのかを知ることができるでしょう。またメールのように何度も連絡を取るわけではないので、一度で社員の状態を把握することができるのもメリットかもしれません。しかし社員の病状によっては電話ではなく、メールでしかコミュニケーションが取れない場合もあるでしょう。どのような手段で現状報告をするのが精神的に負担とならないか、事前に社員と話し合っておくのもいいかもしれません。
うつ病で休職したときは社員にプレッシャーを与えないように注意しましょう。うつ病を発症した社員は休職期間中職場に行けないことに対し、他の社員や会社に迷惑をかけてしまっていると罪悪感を感じているかもしれません。罪悪感や焦燥感を抱いてしまうとさらにストレスがかかり、うつ病治療が長引いてしまう可能性があります。いつ復帰できそうか、体調はまだ良くならないのかと必要以上に質問したりして、社員がプレッシャーと感じるような言動は控えるようにしましょう。
うつ病で社員が休職したときは復帰時のことも考え環境を整える必要があるでしょう。うつ病の症状である気力の低下から思うように体が動かせなくなり、社員の体力が落ちてしまっていることも考えられます。うつ病は再発することも多いため、会社側はいかに職場復帰した社員をフォローできるかが重要になってくるでしょう。社員が少しずつ元の職場に体を慣らすために、短時間勤務やリハビリ勤務、残業禁止などの取り組みを行っている企業もあるようです。自社でできるフォロー体制を考え、実行していくといいでしょう。
社員がうつ病で休職している場合、企業側に給料の支払いの義務はありません。病気になり休職する社員への対応については会社ごとで定めている就業規則を参考にしましょう。休職中も給料を会社が支払うという風に就業規則に書いていない限りは、会社側が給料を支払う必要はないでしょう。しかし休職する前にうつ病の治療として有給休暇を利用する場合は、会社側は社員に対して有給休暇分の給料を支払わなければなりません。また休職中であっても会社に社員の籍はあるため、厚生年金や健康保険の支払いは必要となるでしょう。
社員がうつ病で休職している場合、状況により休業補償給付金を給付してもらえるよう申請しましょう。休業補償給付金とは業務中や通勤中に怪我や病気をしてしまい、仕事ができない状態になった社員に対し支払われる補償給付金のこと。この休業補償給付金は労災認定を受けた際に利用できる補償になります。また業務外で怪我や病気をしてしまい、仕事ができない場合に関しては休業補償給付金ではなく傷病手当金を利用できます。状況に応じて利用できる補償が違う点には注意しておきましょう。
休業補償給付を利用できる条件に労災の認定基準を満たし、精神障害を発症している場合があげられるでしょう。長時間労働などが原因でうつ病を発症したと考えられる場合、業務災害として労災認定される可能性があります。企業は労働災害が起こった際に報告をする義務があるため、必ず労働基準監督署に報告するようにしましょう。また労災として認められるかどうかの判断も労働基準監督署が行っています。労働基準監督署の指示に従い、労働者死傷病報告等の書類や参考資料を提出しましょう。
休業補償給付を利用できる条件として、業務により強い心理的負担を抱えている場合も考えられるでしょう。職場でハラスメントを受けうつ病になってしまった場合も、業務労働災害として労災認定される可能性があります。ハラスメントにはパワハラやセクハラをはじめ、マタハラやパタハラ、モラハラなども増えてきています。またアルコールハラスメントやハラスメントハラスメントなどあまり聞き慣れないハラスメントも存在します。一度どのような言動がハラスメントとして考えられるのか企業全体で考えることで労災を防ぐことができるかもしれません。
社員の変化に気付ける環境を整備することで社員のうつ病による休職を避けることができるでしょう。うつ病なり社員が休職した場合会社は人手不足に陥り、社員は将来への不安や経済的な不安と闘う日々が始まります。うつ病で社員が休職した際のダメージは会社にとっても社員にとってもかなり大きいと言えるでしょう。うつ病が急増している現代、社員のメンタルケアは会社の存続のためにも必須となります。社員側も会社側も安心して仕事ができる環境づくりを始めていきましょう。
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