インストラクショナルデザインとは?【研修で活用するメリットや活用事例などを紹介します】

記事更新日:2023年11月20日 初回公開日:2023年11月14日

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世界中にSNSが普及し、コロナ対策や働き方改革としてリモートワークも広がる昨今において、企業における教育のあり方にも変化が生じています。インストラクショナルデザインと呼ばれる誰にでも同等の学習能力を効率的に与える教育方法が、企業における教育現場でも注目されるようになりました。日本で学習方法として定着したeラーニングも、インストラクショナルデザインの教育法の1つです。ここでは、インストラクショナルデザインの意味や注目されるに至った背景から、インストラクショナルデザインのモデルや理論について詳しく解説いたします。

インストラクショナルデザインとは

最適な効果をもたらすための教育設計のこと

インストラクショナルデザインとは、最適な効果をもたらすための教育設計のことを言います。もとは第二次世界大戦中に新人兵隊の訓練のためにアメリカで生まれたものです。多人数に短期間で技術を教える目的で考えられた学習方法で、戦後は学校教育から企業での教育まで幅広い分野で採用されています。日本では2000年頃からSNSの普及とともに注目されるようになり、現在では企業での研修や教育で不可欠なものとなっています。

インストラクショナルデザインが注目される背景

eラーニングの普及が拡大した

インストラクショナルデザインが注目される背景には、eラーニングの普及が拡大したことが大きく関与しています。日本でeラーニングが注目され始めたのが2000年頃ですから、インストラクショナルデザインも同時進行で教育現場に普及したのです。それまで主流であった講師が各人の反応などを見て理解度をチェックしながら指導する教育方法は過去のものとなりました。どこでもいつでも学習できるeラーニングによって、教育設計も大きな変遷を迎えることになったのです。

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インストラクショナルデザインを研修に活用するメリット

実践的な学びを社員に提供できる

インストラクショナルデザインを活用した研修では、実践的な学びを社員に提供できるという大きなメリットがあります。企業での学びは頭で理解することではなく、実際に作業や作業工程ができるようになることが本来の目的です。インストラクショナルデザインでは、学習後の実践的な能力測定までができるようになり、現場ですぐに役立つことを学べます。また個々の学習習得能力に合わせて教育ができるため、全体の歩調を合わせて教育することも可能です。

学びに対するモチベーションが向上する

前述のようにインストラクショナルデザインでは学習後に自分が習得した能力測定もできるため、自分が学んだことを知ることができ、自分の成長を実感できます。学びを実感できることで、個々のモチベーションは向上し、更に学ぶように努力する姿勢が持続できるでしょう。モチベーションアップによって現場の雰囲気は良くなり、生産性アップも期待できます。周囲に与える影響も大きく、企業全体のモチベーションアップにも繋がるでしょう。

学習の効率性を図れる

インストラクショナルデザインでは全ての分野をまんべんなく学習するのではなく、要所を押さえた学習法のため、学習の効率性を図れるというメリットがあります。単に学習内容を省略するのではなく、学術的にも裏付けのある理論やモデルにより体系的に内容を捉えて段階的に知識を詰め込むことで、効率的に学力が身につく方法です。多忙を極める社員であっても隙間時間を利用して学習することができ、それでいて高い学習効果が期待できます。

インストラクショナルデザインのモデル

ADDIEモデル

インストラクショナルデザインの代表的なモデルが、「ADDIEモデル」です。ADDIEモデルは「Analysis・分析」「Design・設計」「Develop・開発」「Implementation・実施」「Evaluation・評価」の5段階で構成されています。教育ニーズなどにより学習すべき内容を分析して学習プログラムをデザイン(設計)し、設計されたプロセスを実行するために有効な学習教材を開発するものです。

ARCSモデル

ARCSモデルは、学習する人のモチベーションアップを目的とするものになります。ARCSは「Attention・注意」「Relevant・関連性」「Confidence・自信」「Satisfaction・満足」のアクロニムです。学習者に注意を促すことで関心を持たせ、学習内容に目的や動機付けなどの関連性を持たせることで学習意欲を駆り立てます。学習過程において成功体験を積むことで個々の自信とし、更なる学習意欲を引き出すものです。

TOTEモデル

TOTEモデルは目標達成に向かって、「TEST」「Operation」「TEST」「Exit」の4つを繰り返し行う学習モデルです。TOTEモデルの特徴は、テストによって自分が目標を達成しているかを確認し、達成していると判断すれば以降の工程は省略して次の目標に向かいます。目標を達成していないと判断したときのみ作業を実施し、テストで目標達成できれば出口を通過して次の目標に向かうという繰り返しで、学習能力を向上させるシステムです。

インストラクショナルデザインの理論

ID第一原理

アメリカのユタ州立大学名誉教授であるM・デイビッド・メリルは、ID第一原理という教育設計理論を提唱しました。ID第一原理は、「課題」「活性化」「デモンストレーション」「応用」「統合」の5つのフェーズで成り立つ理論です。学習者は社会問題等を自分の課題として捉え、課題解決のために既存の知識を新しい知識の基礎とすることで活性化を促します。新しい学びを例示することにより、応用へと繋げる理論です。研修などで学んだ知識を現場で活用し調整することにより統合が完了します。

9教授事象

アメリカの教育心理学者であるロバート・M・ガニエは、教育と学びの過程をさかのぼることで、教育構成の枠組みとして9つの効果的な研修プロセスを提案しました。導入として「学習者の注意を獲得する」「授業の目標を知らせる」「前提条件を思い出させる」。実践として「新しい事項を提示する」「学習の指針を与える学習活動」「練習の機会をつくる」。評価および定着として「フィードバックを与える」「学習の成果を評価する」「保持と転移を高める」ことが9教授事象です。

ガニエの学習理論の5分類

ガニエの学習理論は、時として前述のメリルの理論と比較されます。ガニエの理論は学習能力の習得に有効であるのに対し、メリルの理論は実践により近い学習法です。ガニエの学習理論の5分類についても、学習者が身につけるべきスキルを種類別に整理した学習能力取得に有効なものとなっています。5つは「知的技能」「言語情報」「認知的方略」「運動技能」「態度」です。最初の3つは認知領域に帰属するもので、「運動技能」は運動領域に、「態度」は情意領域に帰属します。

インストラクショナルデザインの活用事例

日本ユニシス・ラーニング株式会社

日本ユニシス・ラーニング株式会社は、2022年に「BIPROGY株式会社」へ変更されました。BIPROGY株式会社は、マーケティングからビジネス開発から各種コンサルティング業務を行う会社です。多様化に合わせた各企業にマッチしたeラーニングシステムを開発するなど、インストラクショナルデザインに必要なツール政策の第一人者になります。企業みずからもインストラクショナルデザインを導入し、先を見る洞察力を駆使して新しい技術とアイデアを組み込んだ新商品を販売し発展し続けている企業です。

ベーリンガーインゲルハイム社

ドイツに拠点を持つ大手製薬会社であるベーリンガーインゲルハイム社は、インストラクショナルデザインを取り入れることで自主性の高い学習を実現した企業です。インストラクションデザイン導入前までは目的やゴールが定まっていないため、強制して教育受講させるものの思った結果は得られませんでした。理論的に裏付けのある学習方法を計画的に行うことにより、短時間で思った以上の結果を得るとともに、社員のモチベーションも高まり成長力のある企業へと大きく変貌を遂げています。

インストラクショナルデザインに関する資格

ビジネスID expert

ビジネスに特化したインストラクショナルデザインの資格として「ビジネスID expert」があります。こちらは、JEIEL(一般財団法人 日本教育学習評価機構)が認定する正式な資格です。資格取得により、企業内教育のプロフェッショナルであることを証明するものになります。資格取得には短期集中講座を受講する必要がありますが、オンラインで受講することも可能です。規定の講座を受講するとともに、実際に企画書の作成にあたって相応の評価を受けることで「ビジネスID expert」の資格を取得できます。

インストラクショナルデザインに関する本

インストラクショナルデザイン道具箱101

タイトルに「道具箱」と表記があるように、インストラクショナルデザインを有効に実践活用するためのツールや方法などを解説した実用本です。インストラクショナルデザインについて最初から詳しく知るための入門的な本ではなく、IDを理解したうえでどのような方法で活用していくべきか考えている人におすすめします。101の道具を知ることで、それまで主流であった「KKD・経験と勘と度胸」や「MD・自己流」から脱却し、IDを有効活用する効果を実感できる一冊です。

学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論

アメリカの教育理論化であり研究者であり改革者である、チャールズ・M・レイゲルースが提唱するインストラクショナルデザイン理論を説いた一冊です。情報技術やITが進歩を続ける中で、学習と教育がどのように変化していくべきかを問い、包括的な指針を提供しています。また、インストラクショナルデザイン理論の有効性と重要度を、様々なアプローチで理解させてくれる書籍です。IDの巨匠と呼ばれるレイゲルースが考えるインストラクショナルデザイン理論を、日本のID第一人者である鈴木克明が監訳しています。

インストラクショナルデザインの原理

インストラクショナルデザインについてのことは全て網羅していると言ってよい本です。「授業設計理論の父」と呼ばれたロバート・M・ガニエの言葉を忠実に訳してまとめています。ガニエの考える教育法の本質に触れることができるとともに、インストラクショナルデザインの基礎となる基本プロセスをフェーズごとにポイントを押さえて解説しています。基本原理を十分に理解し、新しい教材作りの工程などへ繋げられるインストラクショナルデザインの教本と言って良いでしょう。

まとめ

インストラクショナルデザインで効果的な研修を行おう

インストラクショナルデザインは学びと実践によって効果が得られる企業学習法です。ガニエは学びの場を重視した論理を展開し、メリルは実践に繋がる学習理論を提唱しました。実際の企業教育では、両者の理論を理解することが肝要です。頭の中で理解するだけでなく、実践に生かせなければ意味はありません。そこに新しい学習プログラムやツールのヒントが隠されています。積極的にインストラクショナルデザインを採用することで、変化する時代に合わせた効果的な研修や教育を行っていきましょう。

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