パスゴール理論とは【パスゴール理論におけるリーダーシップの型や判断要因などを紹介します】

記事更新日:2023年11月20日 初回公開日:2023年11月14日

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パスゴール理論とは「リーダーシップは状況によって取るべき形が違う」という考え方のことです。ビジネスシーンでは企画や営業に限らず、様々な場面でリーダーシップを求められます。しかし、リーダーシップの取り方には様々な形があり、その場の状況に合わせてアプローチしていかなくてはならないことも少なくありません。そのため、パスゴール理論は理解することで、状況によって取るべき対応が判断しやすくなるだけでなく、自分自身の成長にも繋がります。今回はそんなパスゴール理論の意味や成り立ち、活用方法についてご紹介していきます。

パスゴール理論とは

状況によって取るべきリーダーシップの型が異なるという考え方

パスゴール理論とは、目標を達成するためには状況によって取るべきリーダーシップの型が異なるという考え方のことです。一般的にリーダシップで思い浮かべるのは、部下をまとめ上げ指示やチームの運用を行う行動です。しかし、パスゴール理論ではリーダーシップの本質は部下がゴールに到達するために、どのようなパス(道)を辿れば良いか把握し、有効に働きかけることと定義づけています。そのため、パスゴール理論では、リーダシップは臨機応変に取り方を変えることでより良い働きかけに繋がると述べています。

理論の成り立ち

パスゴール理論はアメリカの学者であるロバート・J・ハウスが1971年に提唱し始めたことが理論に成り立ちと言われています。パスゴール理論は元々1960年に提唱されたリーダーシップ条件適応理論の一つです。リーダーシップ条件適応理論とは、画一的な条件や望ましい行動を満たすことが、リーダーシップをとる上で常に最善で唯一の方法とは限らないと述べています。パスゴール理論は上記の言説に加えて、リーダーシップの型を四つに分類することで、状況別の望ましいスタイルを確立させました。

理論に対して批判的な見解もある

パスゴール理論では環境的要因とメンバー要因の二つの要素の組み合わせによって、リーダーのとるべき行動が異なると述べられています。しかし、パスゴール理論で想定される要因は数多く、全ての要因に関して幅広い研究が行われたというわけではありません。実証的なデータが少ないことに加え、必ずしも全ての状況に対して理論が当てはまるわけではないことから、否定的な意見も少なくありません。そのため、現段階では一つの理論を正しいと思い込むのではなく、あくまで参考の一つとして捉えることをおすすめします。

SL理論との違い

SL理論とは1977年に行動科学者のポール・ハーシーと組織心理学者のケネス・ブランチャードによって提唱された理論です。SL理論は部下の状況や成熟度によって異なるスタイルでリーダシップを取るべきと言う内容の理論となっています。内容はパスゴール理論と似ていますが、SL理論はパスゴール理論と異なり、部下の状況に重きを置いて判断することを重視しています。そのため、二つの理論はその都度取るべき選択の判断要素が違うと考えると良いでしょう。

優れたリーダーとは

部下の成長を促す

優れたリーダーの定義には様々な見解がありますが、共通して言えるのは部下の成長を促すことのできる人材はリーダーとして優れているということです。一つの目標を目指して活動する集団における成功とは目標達成に他なりません。しかし、リーダーが自分の成長や利益ばかり優先していると、部下の成長に繋げることは難しくなり、比例して目標達成困難になります。そのため、優れたリーダーとは目標の達成だけに目を向けるのではなく、達成に向けた取り組みの中で部下の成長を促すことのできる人材と言えるでしょう。

新しい考えを取り入れる

新しい考えを取り入れることができるのも、優れたリーダーの資質の一つです。チームが成長し、プロジェクトを成功に導くためには従来の方法に頼るだけでなく、社会の変化に合わせて新しい考え方を取り入れていくことが重要になります。しかし、複数人の人材をまとめる役割にあるリーダーは、自分自身の考えや正しさに固執しがちです。そのため、優れたリーダーになるためには自分は必ずしも、常に正しい判断ができるわけではなく時には他者の意見に耳を傾けることが必要という点を意識することも大切です。

しっかりとした倫理観をもっている

優れたリーダーとして活躍するためには、しっかりとした倫理観を持っていることも大切です。チームをより良い方向に導いていくためには、部下に信頼してもらうことは必要不可欠であるため、リーダーは人格面でも優れている必要があります。しかし、挨拶や出勤時間の厳守など社会人として当たり前のことができていなければ、どれほど仕事で優れていても部下の信頼を集めることは不可能です。また、このようにリーダーの倫理観に問題のある組織は結束力に乏しく、些細なことで内部から瓦解するリスクも否定できません。

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パスゴール理論におけるリーダーシップの型

指示型リーダーシップ

パスゴール理論において、四つに分類されたリーダーシップの一つには指示型リーダーシップがあります。指示型リーダーシップは名前の通り、チームの課題の解決を重視したスタイルです。具体的には部下の個別の目的をはっきりとさせ、明確に指示や進捗管理を行う手法がこれに当てはまります。指示型リーダーシップは上記の特徴から、チームの目的が曖昧な状況にある時や、経験やスキルがまだ育っていない部下が多い状況で効果を発揮すると言われています。

支援型リーダーシップ

支援型リーダーシップは部下とリーダーとの信頼関係の構築または維持を重視した型です。このスタイルでリーダーが取るべき行動は部下の感情や状況に配慮を示し、フォローを重点的に行うことです。支援型リーダーシップは、この特徴から上司から部下への指示系統がはっきりしている場合に用いられやすいスタイルです。また、支援型リーダーシップは部下の支援を重点的に行う側面から、明確にチームの目標が定められている場合にも利用できます。

参加型リーダーシップ

参加型リーダーシップは、リーダーだけがチームの方針や仕事の割り振りを行うのではなく、部下も含めてチーム全体で相談し物事を決定する型です。参加型リーダーシップは部下が目標を達成するのに十分なスキルや判断力を持っている場合に用いられます。部下もチームで行う業務に決定権を持つことで、それぞれのモチベーションを維持する効果が得られます。また、リーダーも部下と同じように通常業務に参加することで、現場の状況をより詳しく把握できるのも利点と言えます。

達成志向型リーダーシップ

達成志向型リーダーシップは、敢えて困難な課題をチーム全体に課すことで、メンバー全員に努力を促すことに重視した型です。このスタイルは前提として部下が一定の水準以上の能力を保有していて、リーダーのサポートが無くても自分たちで考えて仕事を行える必要があります。そのため、効果を発揮できる状況は個別に業務を行うことの多い技術職や営業職などに限られています。困難かつ曖昧な課題を課せられている状況に用いることで、チームの結束力を高めることができます。

パスゴール理論におけるリーダーシップの判断要因

職場要因

パスゴール理論を活用し、状況に合わせたリーダーシップを取るための判断要因の一つ目は職場要因です。職場要因は言い換えると環境的要因のことで、リーダーやチームメンバーが現在置かれている状況のことと定義されています。具体的には、チームに課されている業務の内容や公式で設定されている指揮系統の有無など、または現状チームワークの統制が取れているかなどが判断材料に上がります。この職場要因の内容が曖昧なほど、リーダーは積極的な指示や働きかけが求められます。

メンバー要因

パスゴール理論では全体の状況だけでなく、チームメンバーにも焦点を当ててリーダーシップの型を選択します。メンバー要因は職場要因とは異なり、チームメンバー1人1人の能力のレベルや経験、自立性が判断基準です。具体的な判断方法としてはチームメンバーの経験や能力が乏しい場合にはリーダーが指揮を執り、能力の水準が高い場合には支援型や参加型を用いります。このように部下の能力にも注目して対応を変えていくことで、所属する人材に無理をさせることなくプロジェクトを進めることができます。

リーダーシップの型の発揮の効果的状況

指示型リーダーシップ

指示型リーダーシップはチームの課題が曖昧な場合や、チームメンバーが自立性や経験に乏しい人材で構成される場合に効果を発揮します。例えば、チームで達成すべき課題の設定ができていない場面では、誰かが積極的に目標設定しなければ仕事は進められません。また、メンバーが新入社員や業界経験の浅い社員であった場合も同様に、「自分で考えて行動しよう」と指示されても効率的には動けません。そのため、複数の新人で構成されたチームや初対面の人ばかり場面では、指示型リーダーシップを用いて、細かく具体的な指示を出すとメンバーの負担が軽くなります。

支援型リーダーシップ

支援型リーダーシップは、業務の指示系統や仕事内容が明確に定められている場面で有効です。例えば、業務フローが確定している事務や経理の仕事がこれに該当します。上記の業務はある程度やるべきことが決まっていて、チームメンバーは決められた内容に従って仕事を行えます。このような場合にはリーダーが具体的な指示を出す必要はありません。その一方でモチベーションを保ちにくい業務でもあるため、リーダーはメンバーの意見や考えに耳を傾けて適切に支援しなければなりません。具体的には、急な休みが出た際のシフトやスケジュールの調整等が挙げられます。

参加型リーダーシップ

参加型リーダーシップは、管理職をまとめる会社上層部の役職に就いている人に有効なスタイルです。参加型リーダーシップは部下が自立して自分の意見や考えを持ち行動できることを大前提としています。このような場合に行うべきなのは、細かな支援や指示よりも、積極的に部下の意見を取り入れて、新しいアイディアや方針を固めていくことです。また、この方法は自分自身もチームに参加することで組織全体を活性化させる効果も期待できます。そのため、管理職のさらに上の役職にある人材が用いるのが適切と考えられます。

達成志向型リーダーシップ

達成志向型リーダーシップは、新規参入する事業や新しいプロジェクトの立ち上げをする際に効果的なスタイルです。上記のような仕事内容は創意工夫が求められます。そのため、自立性が高く優秀な能力を持った人材でチームが構成されるケースが大半です。このような場合ではリーダーは困難な目標を達成すべくメンバーを勇気づけ、自分たちで問題をクリアしていくよう促さなくてはなりません。また、このスタイルは困難な課題を解決するために用いられるものなので、リーダーは部下の能力が仕事内容に見合っているのか見極める能力も必要です。

まとめ

パスゴール理論をよく理解して優れたリーダーの育成に活かそう

組織をまとめる上で必要なリーダーシップは、どのようにして取っていくべきかは人によって見解が分かれます。そのため、今回ご紹介したパスゴール理論に沿った対応が、全ての状況に適応できるとは限りません。状況によってはリーダーが一貫した態度を取らなくては部下が混乱する恐れもあることを覚えておきましょう。しかし、状況に合わせた形で部下を指導・指示していくことで、高い効果が得られる可能性があることは事実です。そのため、パスゴール理論を深く理解し、優れたリーダーを育成することは組織や企業が成長していく上で欠かせない行動と言えるでしょう。

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