記事更新日:2022年01月20日 | 初回公開日:2021年12月22日
グローバル用語解説 用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル経済VUCAとは、2010年頃から、アメリカのビジネスシーン使われ始めた、未来の予測が困難な状況を表す言葉です。後述する4つの英単語で構成されており、それぞれの頭文字をとってVUCAという言葉ができました。現在では、不確実性の時代を象徴する造語として注目されるようになりました。ビジネスを取り巻く状況は常に変化しており、ブロックチェーン技術や5G、新しいテクノロジーの開発や新型コロナウイルス感染拡大のような予期せぬ事象も重なり、将来の予測をするのは非常に困難です。
VUCAが注目を集めている背景には、現代に起きている多くの事象や時代の変化が影響しています。特に、新型コロナウイルス感染拡大は、現代のほとんどのビジネスパーソンが予測をしていなかった出来事であるでしょう。外食業や観光業を中心とした、多くの国内産業が打撃を受け、倒産や業績低迷が相次いでいます。このような予測不可能な事象によって、不確実性の時代(VUCA)という言葉がさらに注目度を増しています。現代のビジネスでは、不確実な事象に対しての対応力も大きな成功の要素となっています。
グローバル化の急速な発展により、異なった言語間のコミュニケーションや異文化理解など、以前はあまり考慮する必要のなかった要素も重要になり、ビジネスの複雑化が進んでいます。観光業の例では、コロナ前の2019年度に、3,000万人以上の外国人観光客が来日しており、日本の観光産業も受け入れ態勢の整備を急速に進めました。具体的には、イスラム教徒への食事の配慮や礼拝堂の設置、ホテルでの外国語対応スタッフの雇用など、宗教や多言語にも対応できる準備が整えられています。
IT技術を中心としたテクノロジーの急速な進歩や、SNSの普及はビジネスのみならず、人同士のコミュニケーションの方法にも、大きな変化を起こしました。グローバル化の発展にも大きく寄与しており、世界的に有名になったビデオ会議ツールのZOOMは、世界中にいる参加者が簡単、且つ円滑な会議への参加を実現しました。今後は、同時翻訳機能も開発予定であるなど、ITの力で、異言語間の円滑なコミュニケーションまで実現しようとしています。
環境問題についても、世界中で重要議題のひとつとなっており、代表的な世界的事例として、環境への配慮から、2035年には、EUで新車のガソリン車販売禁止も決定しています。日本でも同様に、2030年代中には、新車のガソリン車が販売禁止になるといわれています。環境配慮の流れに後押しを受け、電気自動車の販売に強みをもつアメリカ「テスラ社」の株式時価総額は2位のトヨタ自動車の2倍以上の値をつけました。現在は、世界をリードしている日本の自動車産業も、環境問題のトレンドに上手く順応できなければ、将来的なビジネス縮小に向かう可能性もあるでしょう。
「VUCA」は4つの要素で構成されており、それぞれが、不確実性の時代を理解するのに重要な意味合いを持ちます。頭文字のVolatility(変動性)は、「急激な変化が継続する状況」の意味を持ちます。現代では、新しいテクノロジーの開発やグローバル化が、かつて無いスピードで進み、それに追いつくように、多種多様なビジネスが新たに生み出され続けています。今後は、従来のビジネスモデルを継続するだけでは、時代に取り残され、長期的に収益を上げ続けるのは難しいでしょう。一方で、競合よりも、早く変化に対応した企業は、優位な立場でビジネスを展開していくことができます。
Uncertainty(不確実性)とは、「将来の見通しが難しい状況」を意味します。新型コロナウイルスの感染拡大を例として、今までに無い事象が起こる中、今後も、その時々の状況に対応したビジネス展開をして行く必要があります。不確実な将来の要素については、事前の対策が難しいため、直面した際に、いかに迅速に対応していくかが命運を分けることになります。コロナ下でも、いち早くテレワークを取り入れた企業は、影響を最小限に留め、且つ働き方改革にも成功している事例があるようです。
Complexity(複雑性)とは、「関連する要素が多く、且つそれぞれの要素が多様な側面をもつ状況」を意味します。グローバル化によって、ひとつの国で起こった事象が、世界中に波及し、国外で起こった問題からも影響を受けてしまうことがあります。また、国内外での分業化が進む中で、将来のビジネス戦略を計画する際にも、それに絡む多くの事業者との調節など、複雑性は以前より、高まっています。問題解決や将来の予想をする際に、考慮しなければならない要素は日ごとに増えており、従来のように単純では無くなりました。
Ambiguity(曖昧性)とは、「何かを理解するのが困難な状況」を意味します。急速なテクノロジーの進歩によって、現在では、ほとんどの分野で、IT技術を使わずにビジネスを成功させるのは難しいでしょう。かつては、IT技術とは縁の無かった、農業や漁業などの分野でも、ドローンやロボットが使われるなど、分野どうしの垣根も曖昧になっています。事業を進める際にも、従来では関係の無かった他部署との連携が必要な場面も増えるなど、曖昧な状況でも上手く連携できなければ、遅れをとることになります。
VUCA時代にはビジネスの急激な変化に対応すべく、臨機応変な対応力が必要不可欠です。2021年に実施された東京オリンピックでは、新型コロナウイルス感染症が原因で、直前まで、開催の可否が不明確となり、参加者のみならず日本全体が混乱しました。結果、臨機応変な対応力が上手く発揮できなかった事例となったのではないでしょうか。VUCA時代には、不確実な状況でも臨機応変に決断できるリーダーが求められています。
グローバル化が急速に進展しているVUCA時代においては、価値観や信条も異なる人材を上手く活かすことのできるコミュニケーション能力も必要になります。ほぼ単一民族である日本は、他国と比べても多様性の面では非常に遅れており、人種や宗教にも配慮してマネジメントできる人材が必要不可欠です。グローバル化には必須の英語教育を見ても、実際にビジネスレベルで英語を使える人材は限られています。多様性を活かした経営ができていないことも理由で、世界的に競争力を持っていた企業でさえ、外国企業に買収される事例があるなど、日本企業の競争力は低下しています。
曖昧な事象が多いVUCA時代には、問題が発生した際に、その本質を見極める能力が求められます。現代に発生する問題は、さまざまな要素が絡み合い、本質を特定するのは容易ではありません。日本の環境問題を例に見ても、単純に家庭や企業での節電や電気自動車の普及率向上などでは問題解決できないことは明らかです。電力の発電方法自体を火力発電から環境にやさしい方法へと転換することが必要であるなど、実際の解決策を見出すためには、本質を見極める問題解決能力が求められます。
アジャイル経営は、現代の企業が採用すべきとされている経営手法のひとつで、VUCA時代に合った経営方法のひとつです。従来の「綿密な経営計画の立案をした後に実行に移す方法」ではなく、「実行と計画を同時並行で進める経営方法」で、リスクを重視する日本で採用されてこなかった方法です。アジャイルとは「迅速」という意味で、ビジネス環境が急速に変化する現代において、環境変化を前提とし、実行をしながら変化にも迅速に対応できる経営手法です。特に、IT業界など、技術発展が速い業界では、特に注目されている経営方法です。
人材の多様性が広がる現代において、それぞれの人材を理解し、適材適所への配置や強みを延ばすなど、個々の人材に最大限の能力を発揮させる方法として「ダイバーシティ経営」が注目されています。従来のダイバーシティのイメージは人種や宗教などの分かりやすい部分の配慮が中心でしたが、今後は、性格や適性など、わかりづらい部分の配慮も必要です。そのため、入社時やその後に多くの適性検査を実施するなど、人材と業務のミスマッチを無くし、個々人の能力を最大限に活かすことのできる取り組みが必要不可欠です。
日本の人口は、年々減少しており、2050年頃には人口が1億人を下回ると予想するデータもあります。人口減少とともに、労働力人口の減少や高齢化も急速に進展しており、解決策として、外国人材の採用やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増えています。特に、DXを推進することで、人で発生する「病気や怪我」「人間関係」などの問題も減らすことができ、問題に対応する労力など、「見えないコスト」の削減にも期待されます。DXを上手く実行できた企業は、少数精鋭で、大きな利益を生み出すことも可能となるでしょう。
VUCAの4要素に対抗するためのフレームワークに、「VUCAプライム」があります。VUCAに対抗することだけに特化して、設計されたフレームワークで、VUCAの要素4つそれぞれに対抗した行動内容が示されています。具体的には、変化の激しい中でもこれからの事業の明確な目標を設定し、将来が不確実な中、さまざまな方法で情報収集をして、現状のビジネス環境などの状況を理解。複雑な事象もそれぞれの要素を細分化して対応策を明確化し、方針が決まれば迅速に行動に移すという内容です。
アジャイル経営を目指す際に活用できるフレームワークのひとつに「OODAループ」があります。VUCAと同様に4つの要素で構成されており、ターゲットを観察、その後、観察結果からの状況判断を行い、意志の決定と実行をします。有名なPDCAサイクルのフレームワークと比べ、経済や政治情勢などの外的要因の考慮にも重きを置いており、状況によって、ひとつ前の段階に戻るなど臨機応変な対応ができます。また、PDCAサイクルとOODAループの長所を上手く活用することで、相乗効果も期待できます。
従来の組織体制の方法を継続するだけでは、時代に追いつけず、衰退して行く可能性も高いVUCA時代。急速な変化やいっそう複雑になるビジネス環境にも対応できる体制を整え、組織を牽引できる優秀な人材を育成することが不可欠です。本記事で解説した「企業が対応すべきこと」や「フレームワーク」を参考に、それぞれの企業に合った経営を実現することが望まれます。ダイバーシティ経営が強く求められる中、個々の人材の能力を最大限活かすことのできる組織体制を築くことが急務となるでしょう。
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