エスノグラフィーとは【具体的な流れやビジネスにおける活用事例などについて解説します】

記事更新日:2022年08月29日 初回公開日:2022年08月23日

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商品やサービスの開発を進めていく中で消費者の気持ちを深く理解すると、使用する人に寄り添った商品やサービスを作ることに繋がります。しかし、どのような調査方法で消費者の気持ちをくみ取るべきか、頭を悩ませている企業もあるのではないでしょうか。そこで今回ご紹介するのが、エスノグラフィーという調査方法です。実施の流れやメリットを解説した後に、導入している企業の事例を紹介します。消費者のニーズをより詳しく知りたいという企業の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

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エスノグラフィーとは

フィールドワークで行動観察をして記録を残すこと

エスノグラフィーとは、フィールドワークで行動観察をして記録を残すことです。これは、民族学や文化人類学などで使われている研究手法です。ところが近年、エスノグラフィーがビジネスの場においても有効な手段として注目を集めています。多種多様な商品やサービスが生まれ続ける中で、消費者にインタビューを行っても購買理由などを言語化することは難しい状況です。エスノグラフィーでは、潜在意識から生じる無意識的な行動の観察によって、これまでの手法とは違う気づきを得ることができます。

エスノグラフィーとアンケート調査の違い

アンケート調査は一貫性を保ちやすい

エスノグラフィーとアンケート調査の違いとして、アンケート調査は一貫性を保ちやすいことが挙げられます。アンケート調査はパターン化した質問に沿って回答してもらうことで、データを収集する手法です。アンケート調査では用意した質問によって調査を進めていくため、調査の一貫性は保ちやすくなります。質問しなければ引き出せないような回答を集めることに繋がるのです。調査の方法としては口頭や書面、webページなどのシステムを使用することが一般的です。

エスノグラフィーとグループインタビュー調査の違い

グループインタビュー調査は自由な意見を引き出しやすい

エスノグラフィーとグループインタビュー調査の違いとして、グループインタビュー調査は自由な意見を引き出しやすいことが考えられます。グループインタビュー調査は、回答者を複数人集めて直接話を聞くことによって調査する方法です。対話を行うため、質問者は相手の回答に合わせて話を深掘りすることができます。また、回答者も自由な発言をできる形式のため、いろいろな意見を引き出すことができるのです。複数人で意見の共有を行うことで、1人へのインタビューでは出てこなかった意見が出る可能性もあります。

エスノグラフィー実施の流れ

調査の設計を行う

エスノグラフィー実施の流れとして最初に行うのは、調査の設計です。調査目的を決定した上でどのような生活状況に寄り添うか、調査によって得られた情報をどう活用するかなどを設定します。そして仮説を立てることが大切です。しっかりとした仮説がなければ、調査対象者とただ生活を共にするだけになり、ニーズが発見できません。仮説では既存顧客データと売り上げデータをもとにして、調査対象者が抱えていると思われるニーズを予想します。

調査対象者を決める

エスノグラフィー実施の流れとして次に行うのは、調査対象者を決めることです。エスノグラフィーでは、エクストリームユーザーを調査対象とすることが多いと言われています。エクストリームユーザーとは、商品やサービスの利用頻度が一般よりも多いヘビーユーザーや、商品を絶対に利用しないアンチユーザーのことです。このようなユーザーは商品やサービスに対する考えが極端であるため、両者の考えを知ることで強みや改善点を発見することに繋がります。

行動を観察する

エスノグラフィー実施の流れとして、次に実際の行動を観察します。調査対象者の自宅を中心とした私生活の場に調査員が身を置くことによって、行動の観察を行います。写真や動画の撮影とインタビューなどを組み合わせて調査を行うことが多いです。店舗などにカメラを設置し、来店する調査対象者の行動を観察するという方法もあります。丁寧な調査を実施するためにも十分な時間を確保し、複数人で調査を行うことで多角度から検証することが可能になります。

調査結果を分析しニーズを深掘る

エスノグラフィー実施の流れとして、最後に調査結果を分析しニーズを深掘ります。現場の調査員が気づいたことや、映像を確認した調査員が気づいたことと仮説を照らし合わせます。そして、ディスカッションを重ねることで、調査対象者のニーズを深掘りして整理することが必要です。調査対象者ごとの細かな行動の違いも、データとして残しておきましょう。調査を通じて得られた対象者のリアルな反応から傾向を読み取り、改善案を考えます。

エスノグラフィーのメリット

実際に商品がどのように使われているか分かる

エスノグラフィーのメリットは、実際に商品がどのように使われているか分かることです。例えば洗濯機や掃除機、電子レンジなどの家電製品は、消費者の日常の中で使用される製品です。生活に溶け込んでいる製品について会議室でただ頭を悩ませていても、使用している人の気持ちになって考えることは難しいと言えます。このような場合にエスノグラフィーを用いることで、実際に消費者がどのように製品を活用しているのか知ることができ、強みや改善点を発見することに繋がります。

新たなニーズを発見できる

エスノグラフィーのメリットとして、新たなニーズを発見できることも挙げられます。調査対象者の生活を観察することで、インタビュー調査などでは引き出すことのできないような、対象者自身が気づいていないニーズを知ることができるのです。それによって、これまで顕在化していなかったニーズや価値観を見つけることに繋がります。改善点やユーザーにとっての価値を発見できるだけでなく、新商品や新しいサービスの開発にも役立てられるでしょう。

消費行動を具体的に理解できる

エスノグラフィーのメリットとして、消費行動を具体的に理解できることも考えられます。商品やサービスの評価は、売り上げによって知ることができます。しかし、なぜ消費者が購買という行動に至ったのか、至らなかったのかというのは企業側は想像するしかありません。エスノグラフィーを活用することによって、自社の製品を消費者がどのように利用しているのか、なぜ利用しているのかが見えてきます。消費行動を具体的に理解できるので、背景を知った上でこれからの開発に活かすことができるのです。

エスノグラフィーのデメリット

調査に時間がかかる

エスノグラフィーのデメリットは、調査に時間がかかることです。エスノグラフィーは調査の設計からレポートの作成や発表に至るまで、2週間から1か月かかります。調査員が自身の生活に入ってくることを、了承してくれる対象者を見つける作業が必要です。他にも調査をする前には必要機材の確保や、調査を終えた後の分析に必要な人員の確保もしなければなりません。そして何より調査期間に対象者に寄り添える添える調査員が必要なため、そこに時間を割ける人員を探すことも、場合によってはハードルが高いでしょう。

調査員の確保が難しい

エスノグラフィーのデメリットとして、調査員の確保が難しいことも挙げられます。先ほども述べたように、エスノグラフィーでは対象者の生活に寄り添う調査員が必要です。その中で状況に応じて録画や録音、アンケートやインタビューなど数々の手法を使いながら調査を進める技術が求められます。エスノグラフィーを成功に導くには、調査員の行動が要になると言えるのです。企業が求めている情報や今後に活かせることを、的確に判断しながら調査を進めることのできる人員を確保するのは、難しいことです。

エスノグラフィーを導入した企業

花王

エスノグラフィーを導入した企業として、花王があります。花王は、エスノグラフィーを用いて消費者の心理を理解することに成功しています。その目的は、消費者のアンチエイジングに関する考え方や、行動理由を明らかにすることです。「人々はアンチエイジングをどのように認識しているのか」「エイジングに熱心な理由は何か」という疑問を解決することが狙いでした。カメラやビデオを使い、声や動作などの細かな反応も記録することに努めることで、消費者の考え方を知ることができています。

バンク・オブ・アメリカ

エスノグラフィーを導入した企業には、バンク・オブ・アメリカも挙げられます。バンク・オブ・アメリカは2005年にエスノグラフィーを用いて、スーパーマーケットで人がお金を払うところの調査をしました。その結果貯金ができない人は、小さな買い物を沢山しているということが判明したのです。また、レジでは細かいおつりを募金箱に入れるか、小銭を家のどこかに置いてしまうという習慣があることが分かりました。そこからヒントを得て、余ったお金を全て銀行の貯金に預けられるサービスの開発に役立てました。

LION

エスノグラフィーを導入した企業として、LIONの例も参考になります。LIONでは新しい洗剤の開発に向けて、エスノグラフィーを実施しました。対象となった主婦は家の中で使っているパジャマやタオルと、外で着ている服を分けて洗濯していました。この調査結果から家の外から持ち込んだものに対して、衛生上の不安を抱えていることが分かったのです。その不安に寄り添い抗菌力をうたった洗剤が開発され、ヒットしました。衛生上の不安という要素に気づくことができたのは、エスノグラフィーを行ったからだと言えるでしょう。

Heinz

エスノグラフィーを導入した企業として、Heinzの例も分かりやすく参考になるでしょう。Heinzは売り上げ低迷期から脱するために、ケチャップのボトル入り商品の開発に取り組みました。そこで、消費者の自宅を訪問する形でエスノグラフィーを行ったのです。その結果量が減るにつれ出しにくくなるケチャップを逆さにして、冷蔵庫に保管していることが分かりました。それを受けてHeinzではキャップを逆さにしたプラスチック製のボトルを開発しました。その斬新なアイデアで3ヶ月で純利益が17%も増加したと言われています。

P&G

エスノグラフィーを導入した企業には、P&Gもあります。P&Gでは新しいカミソリの開発に向けて、エスノグラフィーを活用しました。そこで、インドの農村部では水道設備があまり整っていないため、わずかな水か水を使わずにヒゲをそるのが一般的だということが分かりました。その現状を踏まえ両刃のカミソリに代わる、より安くて最小限の水でヒゲをそることができる、一枚刃のジレットガードを開発したのです。カミソリの消費量が世界最大規模のインドで、50%以上のシェアを獲得することに繋がりました。

まとめ

エスノグラフィーを活用して潜在的なニーズを見つけよう

エスノグラフィーは調査員の確保が難しいことや、調査自体に時間がかかることなどのデメリットはあります。しかし、他の調査方法では得られないような、リアリティのある結果を得られるでしょう。実際にエスノグラフィーを実施した企業では、会議だけでは気づくことのできないようなことに気づき、開発に役立てて成功しています。自社の製品やサービスが消費者にどのように利用され、活用されているのか知ることで、潜在的なニーズを見つけることに繋がるでしょう。ぜひ、エスノグラフィーを活用してみてください。

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