パワハラに当たらない事例とは?【パワハラの定義やパワハラ対策なども解説します】

記事更新日:2023年06月28日 初回公開日:2023年06月28日

用語集 人事・労務お役立ち情報
近年、パワーハラスメント(以下、パワハラ)という言葉を目にする機会が増えました。学校での部活動を通してパワハラ被害を受けている生徒も少なくありません。生徒であれば尚更悩みを打ち明けられないことでしょう。また、学校だけではなく企業でもパワハラ被害は存在しています。こうした被害は、被害者の精神状態を破壊するだけではなく、企業全体の風評被害にもつながりかねません。いかにパワハラ被害を無くすように努めるかが今、企業側に求められています。この機会にパワハラ防止について再考してみませんか。

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ハラスメントとは

行為者の意図とは関係なく相手に不快な思いをさせること

ハラスメントとは何を意味しているのでしょうか。ハラスメントとは、行為者の意図とは関係なく相手に不快な思いをさせることを指します。ここで重要なのが、行為者の意図とは関係ないというところです。行為者は意図的な言動をしている場合もありますが、非意図的に何かを言ったり行動したりする可能性もあるということです。よって、行為者は相手が不快な思いをしていることに気づきにくいことがあります。こうしたハラスメントにはパワハラをはじめ、性的な嫌がらせに当たるセクシュアルハラスメントも含まれます。

パワハラの定義

職場におけるパワハラの3要素

パワハラの定義ですが、職場におけるパワハラの3要素があります。この要素は、厚生労働省の規定によって次のように定められています。優越的な関係を背景とした行動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることであり、これら全てを満たすものがパワハラに該当します。言い換えると、業務上必要かつ相当な範囲内での指示や指導についてはパワハラに当たりません。しかし、定義というのは数値では表せないため、パワハラに当たるかどうかの判断はつきづらいでしょう。

パワハラに当たる6つの分類

身体的な攻撃

パワハラに当たる6つの分類のひとつに身体的な攻撃があります。身体的な攻撃とは、直接相手を殴ったり叩いたりする暴行を指します。例えば、上司が部下に対して物を投げたり、胸ぐらをつかんだりして指導するような場合が該当します。最もパワハラと判断しやすい類ですが、被害者にとっては大きな傷となり兼ねません。また、直接的に暴行を加えなくても威嚇に当たる行為も該当します。意図的に机を強く蹴ったり叩いたりすることは相手を脅かす身体的な攻撃とみなされますので、注意が必要と言えるでしょう。

精神的な攻撃

2つ目は、精神的な攻撃です。精神的な攻撃とは、暴言や侮辱、名誉棄損などを指します。いわゆる言葉によるパワハラと言えそうですが、社内でのメールやチャットによる侮辱も該当します。例えば、業務遂行に関わる叱責を必要以上に長時間行うことや相手の性的思考及び性的自認に関して侮辱的な発言をすることなどが挙げられます。身体的な攻撃とは違い、非意図的に言ってしまう言葉がうっかり相手を傷つけてしまうこととなるため、慎重に言葉を選択する必要があるでしょう。

人間関係からの引き離し

3つ目は、人間関係からの引き離しです。人間関係からの引き離しとは、ある特定の人を無視したりチームから孤立させたりすることを指します。例えば、自分の意見とはそぐわないとみなし、相手を長時間別室にいるよう指示することや個人もしくは集団で、ある特定の人を無視することが挙げられます。性別や年齢、雇用形態などその人の属性による差別的言動も該当しますが、決して許されないことです。何気ない陰口という言動から膨らむ可能性もあるため注意が必要でしょう。

過大な要求

4つ目は、過大な要求です。過大な要求とは、業務上明らかに不必要なことや達成不可能な業務を与えることを指します。例えば、入社後の教育を受けないまま難易度な業務を与え、不完全な場合にひどく叱責することが挙げられます。また、長時間にわたる過酷な条件下での肉体労働や業務とは関係のない私的な雑用を強制することなども該当します。しかし、繁忙期に業務上の必要性から通常時より多く業務を与えることはパワハラに当たらないとされています。業務をむやみに与えるのではなく、現実的に可能であるかどうか確かめる必要がありそうです。

過小な要求

5つ目は、過小な要求です。過小な要求とは、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い業務を命じることを指します。例えば、気に入らない部下に対して業務を全く与えなかったり、ごく少量の業務しか任せなかったりというものが挙げられます。また、退職してほしい管理職に誰もができるような易しい業務を与えることも過小な要求に該当します。一方で、相手の能力や進捗状況に応じて少ない業務を与えることはこの基準に反していないため、パワハラには当たりません。

個の侵害

6つ目は、個の侵害です。個の侵害とは、私的なことに立ち入ることであり、いわゆるプライバシーの侵害に当たります。この類の例は多岐にわたっています。例えば、相手を職場外でも監視したり私物を撮影したりすることや、相手の性的指向や性自認、不妊治療などについて了解を得ずに聞き出し暴露することなどが該当します。相手を知ろうとするがゆえに聞きすぎてしまい相手を不快にさせてしまうケースがありますが、相手の顔色をうかがう能力が要求されそうです。

パワハラとはみなされない言動

パワハラの定義に当てはまらないことが原則である

パワハラの定義に当てはまらない言動は、パワハラに当たりません。具体的な数値としてパワハラであるか否かを判断することは難しいですが、原則としてこれまで見てきたパワハラの定義や6つの分類に反していなければ、パワハラに当たらないと言えるでしょう。しかし、相手によっては些細なことが不快であると感じる可能性もあるため、相手をよく知ったうえでの言動を心掛けたいものです。では、パワハラに当たらない事例とはどのようなものがあるのでしょうか。

パワハラに当たらない事例

誤ってぶつかること

パワハラに当たらない事例の1つ目は、誤って人にぶつかることです。誰しも歩いたり小走りしたりすると、すれ違いざまに肩と肩が誤ってぶつかってしまう場合があります。こうした状況では直接的に接触はしていますが、ぶつかろうとして行った行為ではないため、パワハラには当たりません。反対に、あからさまに悪意をもってぶつかってきた場合はパワハラ、特に身体的な攻撃とみなされますので注意が必要です。誤ってぶつかってしまった場合でも自然にすみませんという謝罪の言葉が出てくることが望ましいです。

会社の規定を厳守しない人への注意

2つ目は、会社の規定を厳守しない人への注意です。以前から何度も注意しているにもかかわらず、マナーに欠ける言動をし続ける者に対して強く注意することはパワハラに当たりません。また、企業の情報を悪利用したり、漏洩したりするなど、企業の規定を厳守しない者に対して同様に注意することもパワハラに当たらないでしょう。しかし、強く注意するとは言っても、暴力をふったり脅迫したりする行為はパワハラに当たりますので注意が必要です。まずはこうした不正を行う労働者にさせない教育を徹底させることが重要でしょう。

従業員の育成のために高いレベルの業務を任せること

3つ目は、育成という目的で従業員に高いレベルの業務を任せることです。部下に成長してもらいたいという肯定的な願いや期待から高いレベルの業務を任せることはごく一般的なことであり、パワハラに当たりません。上司から高いレベルの業務を任せられることは、部下にとっても期待されていると感じ、モチベーションを上げられる一方で、上司と部下の信頼関係が良好でなければ、ただの過大な要求として受け取ってしまうでしょう。また、上司が部下へ業務を無理やり押し付けたり、度を越えた量を課すことは過大の要求としてパワハラに当たるので注意が必要です。

従業員の了解の下機微な個人情報を聞くこと

4つ目は、従業員の了解の下、個人情報を聞き出すことです。企業にとって従業員の情報が必要な際に、従業員の了解の下個人情報を聞くことはパワハラに当たりません。法的側面から、入社に関わる書類や家族関係を提出する書類など様々な場面で個人情報を企業に提供しなければなりません。こうした書類は通常、個人情報を提供することに同意するという条件のもと提供をしているため、聞くことができます。しかし、職場での会話で上司が部下へ私的なことを聞き出し、不快に思わせてしまうことがあります。上司と部下の信頼関係を構築するために会話をすることは重要ですが、無意識のうちに私的なことを聞きだしてしまわないように注意が必要です。

企業側のパワハラ対策

ハラスメントに関する教育制度を整える

企業側に求められるパワハラ対策の1つ目として、教育制度を整えることが挙げられます。企業全体で共通したハラスメントの教育を整えることは、パワハラ被害を大幅に減らすことができるでしょう。しかし、一度ハラスメント教育を受けたからとはいえ、その後のハラスメントに対する危機感は長く持続されず、薄れていきます。こうした教育は定期的に開催することで被害防止に繋がり、各々の危機感も維持されることから、外部からの講師を招き教育研修を行うことも効果的であると言えます。また、こうした教育を通じて現在の企業の状況を知ることも重要でしょう。パワハラをしない、受けない企業を構築することが従業員の精神的安定に繋がるとともに仕事の質の向上にもなります。

聞き取りやアンケート調査を行う

2つ目に、聞き取りやアンケート調査を行うことです。実際にハラスメントを受けている事態があるのかを把握するために必要です。ハラスメントに関する教育では、従業員へ一方的に注意を促すものですが、こうした取り組みも定期的に行うことで、被害者は長くため込むことなく伝えることができます。被害者の立場を考慮して、周知には目立たないように聞き取り調査を行う必要が求められるでしょう。また、実際に被害を受けている例がある場合、二度と同じような事態が発生しないように具体的な対策を練る必要が企業側に求められます。

相談しやすい環境を作る

3つ目に、相談しやすい環境や空間を作ることです。ある特定の時期に行われる聞き取り調査やアンケートも効果的ですが、ハラスメントの被害を受けている被害者にとってすぐにでも被害の状況を言える場所や空間が同時に存在するというのは大きな安心感に繋がり、パワハラの被害が減少するでしょう。また、窓口とはいえ、対面での窓口だけでなくメールやチャット機能を使用した非対面の手段での相談も可能である体制を整えることで、被害者の立場を考慮することができるでしょう。

グレーゾーンに気を付ける

4つ目に、パワハラに当たるかどうかが曖昧なグレーゾーンに気を付けることです。ハラスメントの被害者にとって、これはハラスメントに当たるのかどうかという判断が難しい場合があり、グレーゾーンであると被害者が判断したが故に誰にも相談できず、ますます精神的に追い込まれてしまう可能性があります。該当事例がハラスメントに当たるかどうかは企業側が客観的事実に基づいて判断する必要がありますが、まずは些細なことでも我慢せずに相談することが必要です。気軽に相談できるという雰囲気作りも企業には求められています。

まとめ

社内での取り組みが大切

パワハラに当たらない事例をパワハラの定義と共にご紹介してきましたが、まずはパワハラをする環境を作らないことが非常に重要です。企業全体で教育研修を行い、相談窓口を設置するなどハラスメントに対する啓発活動を徹底的に行い続けることがパワハラをしない、受けないことへの第一歩に繋がります。ただ、パワハラに当たるという恐れから部下へ何も言えなくなってはいけません。パワハラに当たらない正当な言動と共に、円滑な業務遂行や人間関係の構築に努めていく必要があるでしょう。

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