懲戒処分とは【種類や手順について解説します】

記事更新日:2023年02月07日 初回公開日:2023年02月07日

用語集 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 外国人採用・雇用
企業で働く従業員の中には問題行動をする従業員や、企業のイメージを損なう言動をする従業員がいます。問題のある言動を起こす従業員を放置するとほかの従業員へ悪影響を与え、モチベーションの低下や生産性低下などに繋がる恐れがあります。そこで企業はそのような問題のある従業員に対して厳しく厳罰を与えなければなりません。そのような厳罰を総称して懲戒処分と呼びます。懲戒処分には複数種類があり、問題の度合いによって処分の重さが変わるため正しい理解が必要になるのです。今回は懲戒処分の種類や問題発生時の対応の仕方など分かりやすく解説します。

就労ビザ取得のためのチェックリストをダウンロードする

懲戒処分とは

企業が従業員に対して行う制裁

懲戒処分とは、企業が従業員に対して行う制裁のことです。就業規則や企業に損害を与える言動などが対象となります。一般的には業務態度となり、遅刻や無駄欠勤が連続するなどの事象が該当します。他にも社会通念上許されるべきではない行為として、犯罪行為や犯罪未遂に対しても制裁対象となります。また昨今では各ハラスメント行為も対象となっており、管理職を含む従業員の社内秩序を乱す行為が増えているため適切な対応が必要となっているのです。処分の対象が従来のものとは変化してきていることも近年の傾向と言えます。

懲戒処分の目的

企業秩序を維持するため

懲戒処分の目的は企業秩序を維持することであり、大きく分けて2つあります。まずは問題のある言動を起こした従業員に対して制裁を行うことで、企業秩序を維持することです。次にほかの従業員に対して懲戒処分を受けた従業員の問題のある言動について周知し、同様の問題が発生しないようにする抑止力です。よって懲戒処分とは問題のある言動を起こした従業員だけではなく、企業全体の従業員にも向けられたものであるといえます。適切な懲戒処分を行うことは、企業が規律を持って運営するには重要な要素なのです。

懲戒処分の種類

戒告

懲戒処分の種類は、大きく分けて7つあります。戒告は制裁のなかでは一番軽いものです。問題のある言動をした従業員に対して、経済的な制裁とはならない程度との処分です。ただし、軽いとはいえ、懲戒処分ですので全従業員に対して問題のある言動の再発防止になるような周知を行うことが多いのでその責任は重いと言えるでしょう。よって上司からの注意や指導とは大きく異なります。内容としては、書面をもって指導するものです。一般的には戒告に対して従業員から反省と改善を含めた顛末書や始末書の提出を求めるケースがあります。

譴責

懲戒処分の2つ目は譴責(けんせき)です。基本的な意味は、先ほどの戒告と同義語として使われるケースが多いでしょう。他にも訓告という言葉を使うケースもあります。譴責は勤怠不良や短期間の無断欠席、軽微な業務命令違反が対象となります。他にも軽微な暴力事件、軽微な就業規則違反などが譴責の対象となります。よって譴責は軽微な問題のある言動ということになります。多くの会社では従業員から始末書を提出させるなどの処分を行います。なお、問題が軽微であることからその線引きが難しく、従業員から訴訟を起こされるケースもあります。

減給

従業員に対して行う懲戒処分のなかで、経済的な制裁となるのが減給です。減給は就業規則等に違反した際に従業員の賃金に対して処分が行われるものです。企業は対象となる従業員の賃金の一部を差し引いて支給することになります。なお賃金から差し引く金額は無制限ではなく、労働基準法91条に定められている額までとなります。労働基準法91条には「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められています。

出勤停止

出勤停止とは、一定期間の出勤及び業務を行うことを禁止する処分のことです。また出勤停止の処分中は賃金は発生しません。前述の減給と比べて出勤停止は期間によっては経済的制裁の程度が大きくなります。理由は懲戒処分の軽重において、減給のほうが軽くならないように期間を定めている企業が多いからです。また出勤停止は労働基準法などで期間が定められていません。そのため、多くの企業は就業規則の中で期間を定めています。また企業によっては出勤停止ではなく、停職や懲戒休職、自宅謹慎処分と定めているケースもあります。

降格

降格とは、問題のある言動を行った従業員の現行の役職から下位へ引き下げるものです。降格は減給や出勤停止よりもさらに重い懲戒処分となり、対象となる従業員が受ける経済的な損害が大きくなります。なぜなら降格は一時的なものではないからです。降格すると役職給与が下がることや、役職手当などが無くなるなどの処分となります。そのため期間の定めのない降格は元の役職に戻るまでの間は給与が下がるため従業員にとって大変重い処分と言えるのです。また企業は降格の懲戒処分を行う際には、規律違反の証拠があることや明確な理由が必要になります。

諭旨解雇

諭旨解雇とは、問題のある言動を起こした従業員に対して自主的に一定期間内に退職届の提出勧告を行うことです。従業員から一定期間内に退出届が提出された場合は、一般退職扱いとなります。提出がなかった場合は、懲戒処分のなかで最も重い懲戒解雇となります。なお懲戒解雇との大きな違いは従業員による自主的な退職か、企業による強制的な退職かといった違いがあります。諭旨解雇の勧告は情状酌量の余地がある場合や、企業が反省をしていると認めたときなどに適用されます。諭旨解雇は自主退職となるため、解雇予告手当として30日分以上の賃金や退職金が支払われます。

懲戒解雇

懲戒解雇とは企業が行う懲戒処分の中で最も重い処分で、企業が一方的に従業員を解雇するものです。通常、解雇勧告は30日以上の期間を設ける必要がありますが、解雇予告期間を与えず即時解雇にあたります。そのため従業員は再就職はもちろん生活においても経済的損失が大きなものとなります。懲戒解雇に該当するケースは業務上横領や金銭的な不正行為、重要な業務命令に従わない場合などになります。企業は懲戒解雇を行う際には、従業員から不当解雇として訴訟を起こされるケースがあります。よって解雇するに値する証拠や明確な理由が必要です。

懲戒処分の法的要件

懲戒事由に当てはまっていること

懲戒処分の法的要件は懲戒事由に当てはまっている必要があります。企業の勝手な都合で懲戒処分を行うと従業員から労働監督署からの指摘や訴訟に発展するケースがありますので、十分な注意が必要です。懲戒事由は正当な理由のない欠勤・早退・遅刻などの勤怠不良があります。他には故意または過失による会社に損害を与える行為や、各ハラスメントによる職場環境を悪化させる行為も該当します。これら事由は就業規則に記載することで従業員に対して懲戒処分となりうる条件と、その処分法を明確にさせることが重要です。

処分や手続きが相当であること

企業は懲戒処分や手続きが相当であることを、従業員に対して根拠とともに明確にしなければなりません。前述の通りで企業は就業規則に懲戒処分について該当する項目や、その処分について明記する必要があります。また懲戒処分には相当性というルールがあります。問題のある言動を起こした従業員に対して重すぎる懲戒処分は無効とされています。逆に軽すぎる処分では本来の目的が果たせないため、同様に適正に行う必要があります。また過去に起きた同様の問題に対しての懲戒処分と同様な処分を行う平等処遇の原則もあります。

懲戒処分を下す際の手順

事実関係を整理する

懲戒処分を下す際の手順について説明します。まずは事実関係を確認することから始めます。発生した問題について当事者や関係者から徹底したヒアリングを行い、多方面から事実確認を行いましょう。客観的に判断ができるように口頭だけではなく、物的証拠を集めることが重要です。また証拠隠滅や隠ぺいの恐れがある場合には、問題のある言動を起こした従業員を自宅待機・謹慎とするケースもあります。自宅謹慎は業務命令に該当するため、謹慎期間中の賃金の支払いを命じられる判例もありますので注意しましょう。

処分理由を告知する

事実確認が取れて懲戒処分を伝える際には、処分理由を告知しなければなりません。告知する理由は、従業員に問題のある言動を起こしたことへの処分について合意させなければならないからです。告知の際には事前に当事者や関係者からヒアリングを行った内容や、調査から判明した物的証拠などをもとに行います。合意なく処分を行った場合には、従業員から処分について不服申し立てや訴訟になることが考えられます。懲戒処分後に訴訟になった例は多く、企業は従業員に対して丁寧な告知を行う配慮が必要です。

弁明の機会を与える

懲戒処分の告知後には、従業員に弁明の機会を与えましょう。企業が一方的に懲戒処分することには大きなリスクが伴います。懲戒処分の告知と同様に懲戒処分への不服申し立てや訴訟になるケースがあります。問題のある言動を起こした従業員の言い分を確認することで、その後の労働トラブルを未然に防ぐことにも繋がるでしょう。また懲戒処分の際には事実内容を記載した弁明通知書を交付し、期限を定めて従業員より弁明書を提出させることで記録を残すことができます。万が一の訴訟の際には弁明の機会を与えたことが記録書として利用できます。

懲戒処分の種類を検討する

問題のある言動を起こした従業員や関係者からのヒアリングや、懲戒処分理由の告知と従業員からの弁明を受けた後に懲戒処分の種類を検討します。懲戒処分の内容と事実確認や物的証拠、告知に対しての弁明などの最終的な精査を行います。実際に認められる事実と相違がないかを確認し、最終的な判断を行います。懲戒処分の決定時のポイントは、違法性や故意・不注意、損害の大小、就業規則違反、過去の懲戒処分内容です。これらに基づいて客観性や合理性を欠くものでないか注意しましょう。

懲戒委員会の会議に持ち込む

懲戒処分の種類を決定した後は、懲戒委員会の会議に持ち込みます。懲戒委員会とは、企業や大学、医療法人などで従業員に対する懲戒処分を審議するために設置された委員会です。懲罰委員会は懲戒対象となる具体的な行為の特定や、就業規則の懲戒事由などを審議します。最後に従業員に対してどの懲戒処分が妥当かも審議します。なお、企業の規模によっては懲罰委員会を設置せずに就業規則にも記載がない場合があります。その場合には懲罰委員会の付議なしに懲戒処分が行われても違法には該当しません。

対象となる労働者に通知する

懲戒委員会の審議を経たら、問題のある言動を起こした懲戒処分の対象となる従業員に対して懲戒処分通知書の送付を行います。これは法的な義務はありませんが、口頭ではなく書面で行うことでトラブルを回避することができます。通知書には懲戒処分の事由や根拠となる就業規則の該当事項、懲戒処分内容を記載します。また懲戒処分は非公表にする企業と公表する企業に分かれます。懲戒処分を行った後に対象の従業員の氏名や対象となる行為などを公表することで、同様の問題が生じないように徹底させることを目的としています。

まとめ

懲戒処分を理解して企業秩序の維持のため適切に行おう

懲戒処分は企業秩序の維持をすることに繋がりますので、企業全体で理解することが重要です。従業員のモラル向上になることで、企業の利益を守ることができます。一方で従業員にとっては、懲戒処分が頻繁に行われる企業では安心して仕事に従事することができません。よって就業規則に対象となる問題行為や、その処分について明記することで安心感を持たせることができます。そして、問題のある言動を起こした従業員に対しては適切に対処することで抑止力とすることができます。企業秩序とともに従業員が安心して働くことができる組織にしていきましょう。

外国人・グローバル人材の採用をお考えの企業様へ

事例

「日本語+英語+さらに語学が堪能な社員の採用」「海外の展示会でプレゼンが出来る人材」「海外向けサービスのローカライズ出来る人材」「海外向けWebサイト構築・集客」など、日本語も堪能で優秀な人材へのお問い合わせが当社に相次いでいます。

他社の外国人採用成功事例はこちらからご覧ください。

【無料】就労ビザ取得のためのチェックリストがダウンロードできます!

就労ビザ取得のためのチェックリストダウンロードバナー

グローバル採用ナビ編集部では外国人の採用や今後雇い入れをご検討されている皆様にとって便利な「就労ビザ取得のためのチェックリスト」をご用意いたしました。また、在留資格認定申請書のファイル(EXCEL形式)もこちらよりダウンロード可能です。

こちらのチェックリストはこのような方におススメです!


  1. 外国人採用を考えているがビザの申請が心配。
  2. 高卒の外国人は就労ビザの申請できるの?
  3. どのような外国人を採用すれば就労ビザが下りるの?
  4. ビザ申請のために何を気を付ければいいの?
  5. 過去に外国人のビザ申請をしたが不受理になってしまった…
  6. 外国人材を活用して企業の業績アップを図りたい方。
  7. 一目で分かるこんな就労ビザ取得のチェックリストが欲しかった!


他社での事例やビザ申請の際に不受理にならないようにまずは押さえておきたい就労ビザ取得のためのポイントを5つにまとめた解説付きの資料です。

就労ビザ取得のためのチェックリスト(無料)のダウンロードはこちらから!

ページトップへ戻る
ダウンロードはこちら
ダウンロードはこちら