再雇用制度とは【終身雇用との違いやポイントを解説】

記事更新日:2020年12月15日 初回公開日:2020年12月03日

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再雇用制度についてきちんと理解できていますか。再雇用制度とは定年退職した社員をもう一度同じ会社で雇う制度のこと。同じように高齢になった社員を雇い続ける方法として継続雇用制度がありますが、再雇用制度と継続雇用制度は全く別物です。雇用形態や賃金、役職など様々な点で再雇用制度と継続雇用制度には違いがあるでしょう。今回は多くの企業が取り入れている再雇用制度の概要や再雇用制度を取り入れるメリット、継続雇用制度との違いなど幅広くお話していきます。この記事を読んで再雇用制度に関する知識を深め、人事管理や企業運営に役立ててみてください。

再雇用制度とは

定年になり退職した社員を再度雇用する制度のこと

再雇用制度とは定年になり一度退職した社員を再び雇用する制度のことを指します。近年日本では様々な雇用改革が進んでいます。2013年に改正された高齢者雇用安定法では、社員の定年年齢を65歳未満に設定している企業に対し、65歳まで社員が働ける環境を整備するよう政府が企業側に義務付けました。具体的には定年を65歳とする、定年制を廃止する、継続雇用制度を設けるなどの措置を企業側は講じなければなりません。またこの高齢者雇用安定法の改正により定年年齢を60歳未満に設定することが禁止され、社員から再雇用の希望があれば企業側は応じなければならなくなりました。

再雇用制度が生まれた背景

少子高齢化に伴う労働人口の減少

再雇用制度が生まれた背景には少子高齢化に伴い、日本の労働人口が減少していることがあげられるでしょう。令和2年時点で日本の人口は約1億2600万人。その中でも65歳以上の人口は全体の28%の約3600万人だったという調査結果が出ました。この結果から現在の日本は超高齢化社会に突入していると言えるでしょう。出生率の低下と平均寿命の向上から、今後も労働人口が減り続けていくことが予想されます。そこで働く意思のある高齢者を積極的に活用するため政府は高齢者雇用安定法を改正し続けています。この高齢者雇用安定法を遵守するため多くの企業が再雇用制度を取り入れるようになりました。

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再雇用制度を企業が取り入れるメリット

人手不足の解消

再雇用制度を企業が取り入れるメリットとして人手不足を解消できる点があげられるでしょう。人手が足りていないと悩んでいませんか。建設業界や運送業界、介護業界、飲食業界などの業界では特に人手不足が深刻化しています。またこれらの業界でなかったとしても今後労働人口の減少が加速することを考え、採用活動に力を入れている企業も多くなっています。これからも今と同じように会社運営をしていくためにも早めに人手不足に陥らないための対策をそれぞれの企業が行う必要があるでしょう。再雇用制度を取り入れれば長年共に働いてきた社員を会社に繋ぎとめることができ、人手を確保する対策の1つとなるかもしれません。

人件費のコスト削減

再雇用制度を企業が取り入れるメリットには人件費のコストを削減できる点もあげられるでしょう。60歳を超え一度退職し再び再雇用制度を利用して働いてもらう場合、当該社員に対し勤務形態や処遇の変更を行っている会社も多いです。年齢を重ねると仕事をする際、体力的な負担がこれまで以上にかかってくることでしょう。年齢による職業能力の低下を考え社員の年齢に合った業務や処遇に変更するとなれば、人件費の大幅なコスト削減が期待できます。ただし他の社員に比べ賃金や福利厚生、労働環境などに不合理な差があれば違法となるため、賃金の設定や処遇の変更は慎重に行うようにしましょう。

教育コストの削減

再雇用制度を企業が取り入れるメリットとして教育コストを削減できる点もあげられます。新しい社員を雇った後、企業の業務を覚えてもらうために教育を行う必要があるでしょう。しかし教育を行っても実際の業務に活かせるようになるには時間や経験が必要となり、即戦力としてはなかなか活用しづらいかもしれません。再雇用制度を利用し退職後の社員を再び雇用することで新たに社員を採用する必要がなくなるため、教育コストを削減することができます。また再雇用制度を利用して雇用するのはベテラン社員。高い業務遂行能力を確保し続けられるため業績の急落も防げるかもしれません。

採用活動にかかるコストの削減

再雇用制度を企業が取り入れるメリットとして、採用活動にかかるコストを削減できる点もあげられるでしょう。労働人口の減少により、企業は攻めの採用活動が求められています。求人広告の掲載やSNSの運用、合同説明会や就職イベントへの参加等、採用活動には金銭的なコストや時間のコストがかかります。また採用活動に力を入れたとしても思うような人材が集まらなかったり、早期退職者を出してしまうこともあるかもしれません。しかし再雇用制度を利用すれば新しく社員を雇用する必要がなくなり、採用活動にかかる金銭的なコストや時間のコストを削減することができるでしょう。

助成金を活用できる

再雇用制度を企業が取り入れるメリットに助成金を活用できる点もあるでしょう。働く意欲がある高齢者を雇用する際、企業側は国から助成金を受け取れることをご存知でしょうか。65歳超継続雇用促進コースは65歳以上に定年を引き上げたり定年制を廃止したり、希望者を66歳以上まで雇用できる雇用制度を導入した場合に企業が受け取れる助成金です。また高年齢者向けに雇用管理制度を整備した場合、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースという助成金を受け取ることもできます。これらの助成金を受給するためには一定の条件を満たす必要があるため、気になる事業主の方は一度厚生労働省のホームページで確認してみましょう。

再雇用制度のポイント

1年ごとに契約を更新

再雇用制度のポイントとして1年ごとに契約を更新する点があげられるでしょう。再雇用制度を活用している多くの企業がフルタイムで働いてもらいながら1年ごとに契約更新を行う有期雇用契約社員という形態で高齢になった元社員を雇用しています。1年ごとの契約になるため必ずしも毎年雇用しなければならないということではありませんが、国の意向を考えれば65歳になるまでは雇用するべきなのかもしれません。通常の社員と雇用形態は異なりますが、不合理と思われる労働条件の下で有期契約社員を働かせた場合は違法となってしまうので注意しておきましょう。

雇用形態の変更が可能

再雇用制度のポイントとして雇用形態の変更が可能になる点があげられるでしょう。再雇用制度を活用している企業の多くが契約社員や嘱託社員といった非正規雇用で高齢になった社員を雇用しています。その他にもパートやアルバイトへ雇用形態を変更している企業もあるかもしれません。再雇用制度は一度企業を退職した社員をもう一度雇用するという流れを取るため、雇用形態の変更が可能です。高年齢の正社員は役職が高いことも多く、1人の社員に対して企業側が支払う賃金も多いことでしょう。雇用形態を変更すると人件費を抑える1つの手段にもなるかもしれません。

賃金の引き下げが可能

再雇用制度のポイントとして賃金の引き下げが可能な点があげられるでしょう。再雇用制度を活用している企業の多くが高年齢の社員に対し仕事効率の低下を加味した賃金設定を行っています。再雇用制度を利用した社員の賃金は定年前の5割から7割程度に設定している企業が多いでしょう。しかし労働基準法で定められている最低賃金の範囲内で賃金設定を行わなければ違法となるため注意が必要です。またこれまでと比較し75パーセント未満の賃金になった労働者は高年齢雇用継続基本給付金が受け取れます。再雇用制度を活用したいと考えている社員にはあらかじめこの給付金について説明しておくと親切でしょう。

手当や賞与は支給するのが一般的

再雇用制度のポイントとして手当や賞与を支給するのが一般的である点があげられるでしょう。過去に休日以外の全ての日出勤した嘱託社員が正規社員と同じように精勤手当を支払われなかったことが裁判となった事例がありました。この裁判では嘱託社員側が勝訴し、社員と嘱託社員との間に手当に関して不合理な差があったとみなされました。また2020年4月から正規社員と非正規社員との間に賃金に関する不合理な差を生まないために『同一労働同一賃金』が規定されました。手当や賞与に関しては正規社員と差を感じさせないようにする必要がありそうです。

有給休暇の日数は通算される

再雇用制度のポイントとして、有給休暇の日数は通算される点があげられるでしょう。定年退職した社員を再雇用した場合、有給休暇の扱いはどうすればいいのかと困っている方もいるのではないでしょうか。そもそも有給休暇は雇用してから6ヶ月継続して勤務し、勤務日の8割以上働いている社員に対して与えられるもの。そして定年退職した社員をもう一度雇用する再雇用制度は引き続き労働関係が継続しているとみなされます。そのため勤務年数を通算し有給休暇が取得できる条件を満たしていれば再雇用制度を利用した社員も有給休暇を使うことができ、日数は通算して考えていいと言えるでしょう。

再雇用制度と継続雇用制度の違い

継続雇用制度の場合、雇用形態は正社員のまま

再雇用制度と継続雇用制度の違いとして、継続雇用制度は雇用形態が正社員のままであることがあげられるでしょう。再雇用制度と継続雇用制度の違いについてきちんと把握できていますか。そもそも継続雇用制度とは退職をせず雇用形態を変えないままで雇用関係を延長する制度のことを指します。そのため定年前の社員を今後も正社員で雇い続けたいと考えている事業主の方や退職をせず正社員として働き続けたいと思っている従業員の方におすすめの制度になります。毎年契約を更新しながら従業員を雇用する再雇用制度と違い、継続雇用制度は雇用が安定している点が一番の特徴と言えるでしょう。

継続雇用制度の場合は仕事内容などはさほど変わらない

再雇用制度と継続雇用制度の違いとして、継続雇用制度を利用した社員は仕事内容がこれまでとさほど変わらない点があげられるでしょう。継続雇用制度は高年齢の社員を正社員として雇用し続ける制度。そのため継続雇用制度を利用した社員にはこれまで行ってきた仕事をそのまま継続してもらっていることが多いでしょう。また継続雇用制度を利用した社員の場合、役職や賃金、労働環境もこれまでと変わらないことが多いです。そのため引き続き役職に就いて職務に全うしてもらいたい場合や企業からもらえる給料をあまり下げたくないと考えている従業員の方には継続雇用制度がおすすめでしょう。

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まとめ

再雇用制度を活用して優秀な人材を確保し続けよう

採用活動が年々厳しくなり、働き手が足りないと感じている企業が増えているかもしれません。再雇用制度を利用すれば人件費を抑えながら即戦力として活躍してくれる優秀な人材を確保することができます。また高年齢者雇用安定法が改正され、国は事業主に対し70歳まで就業機会を確保する措置を講ずる努力義務を設けました。実際にこの努力義務は2021年4月から施行され、今後も様々な制度や法改正の可能性があるかもしれません。企業は今後の政府の動きに注目しながら再雇用制度の整備など高年齢者が働ける環境を整えていく必要があるでしょう。

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