オープンブックマネジメントとは【メリットや導入例などについて説明します】

記事更新日:2022年01月14日 初回公開日:2022年01月12日

用語集 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報
会社の業績を上げるために社員のノルマ達成を促進しているが、なかなか効果が出ない。社員に危機感が足りないといった経営の悩みは現代社会においても根強く残っています。それは、経営者と従業員の間に発生するギャップが問題かもしれません。そんな問題を解決する経営手法として、オープンブックマネジメントがあります。オープンブックマネジメントは、企業の透明性を高め、社員一人一人の自発的な行動を促し、企業全体で課題や目標に向かうことができる経営手法です。今回は、オープンブックマネジメントの導入について詳しくご紹介していきます。

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オープンブックマネジメント(OBM)とは

会社の財務指標を全社員に公表する経営手法

オープンブックマネジメント(OBM)とは、会社の財務・経営指標を全社員に公表し、企業の透明性を高める経営手法のこと。「オープン」が公開、「ブック」が会計の帳簿という意味があります。財務・経営指標の公開により、売り上げ・利益・コストといったお金の動きを従業員が見ることができ、経営の透明性が高まります。オープンブックマネジメントは、経営の透明性による従業員の自律性の促進と、組織全体のモラルを高めることを目的とした経営手法なのです。

全社員参加型の経営が期待できる

企業のお金周り全般の情報は、経理部や経営陣以外に共有していない企業がほとんどです。一般社員では、売り上げと販管費と給与がどのようにやりくりされているのかが見えません。そのような状態で成績を上げることばかり指示されている社員の中には、不満を持つ人もいるかもしれません。そこで、経営の実態を明らかにして社員全体で経営状況を共有するのがオープンブックマネジメントです。社員全体で経営状況を共有することで、社員一人一人が業務の中で経営を意識して動くようになり、全社員参加型の経営が期待できるのが特徴です。

オープンブックマネジメントが注目される背景

中小企業では財務指標の公開が義務付けられていない

生産性が高く業績を伸ばしている企業の共通点として、全員が経営者という意識を持っていることが挙げられます。これを実現する経営手法がオープンブックマネジメントです。中小企業では、財務指標の公開は義務付けられていません。そのため、社員に見せる必要がない、見せることに抵抗がある企業が多く、財務の公開は日本での企業経営においては浸透していない経営手法でした。近代のグローバル化社会において経営も多様化しており、従業員全体が生産性や利益を意識した働きができる経営手法として、オープンブックマネジメントが注目されているのです。

トップダウン経営が社内の不信感や業績不振を招くことがある

トップダウン形式の経営では、一般社員は経営状況が分かりません。例えば、営業部署などでノルマのある業務であれば、なぜ毎月指定のノルマ件数を達成しなければならないのかが分かりません。その状態で、毎月ノルマのことだけ厳しく指摘を受けると、不信感や業績不振につながることがあります。企業の経営状況を公開し、なぜこのノルマ件数を設けているのかを説明することで、不信感による退職の防止にも期待ができます。社員一人一人が目標に対する意味を理解し、日々の業務で経営を意識した働きができるようになるのです。トップダウン経営でこそ、オープンブックマネジメントは有効な経営手法と言えるでしょう。

オープンブックマネジメントを成功させる4つの条件

組織の透明性を高める

オープンブックマネジメントは、ただ経営状況を公開するだけでは成功しません。オープンブックマネジメントを成功させるための4つの条件をご紹介します。一つ目は組織の透明性を高めること。社員に対して公開する情報として、財務や経営指標、給与査定や評価制度など様々なものがあります。自社がどんな事業でどのように利益を出しているのか、実際に数字として具体例を出しながら自社のビジネスについて説明しましょう。組織の透明性が高まる事で、従業員は自身の業務をもっと身近に感じることができ、自律心を持って臨むことができます。

財務や経営に関する社員教育を行う

二つ目は、財務や経営に関する社員教育を行うこと。ただ経営状況を公開しても、社員に財務や経営に関する知識がなければ、ただの数字になってしまいます。売り上げからどのようにして利益が出るのか。従業員の給与はどこから出ているのか。このような会社のお金のやりくりを知ってもらうための社員教育を行いましょう。損益計算書や、決算報告書、貸借対照表といった書類を実際に見てもらうことも良いでしょう。経営に関わる書類の見方や、数字が意味するものをしっかりと理解してもらうことが重要です。

各部署への権限委譲を進める

三つ目は、各部署への権限委譲の推進です。財務の公開により自社の経営状況が分かれば、必要な売り上げ高やコスト削減できるポイントなどが見え、経営ですべきことが分かります。それらを社員が把握した上でオープンブックマネジメントの効果を最大限発揮するためには、従業員への権限委譲が重要です。経営に関する知識がついても裁量がなければ効果が発揮されません。社員が自発的に考え行動できる環境を作り出すためには、従業員のレベルに応じた権限移譲が重要となります。

公平な報酬体系を整える

四つ目は、公平な報酬体系を整えることです。全社員の報酬はどのようにして決められるのかを公開した上で、売り上げから何割かが社員への報酬となるような仕組みづくりをしましょう。その計算方式等もすべて公開します。そうすることで、社員は自分の出した売り上げから、どのように利益が出て、自分の給与にどれだけ反映されるかを自ら計算することができます。これは経営の知識として役立つと共に、社員自らが給与を予測することができるので自身のマネジメント力向上や、モチベーションアップにもつながります。

オープンブックマネジメントのメリット

企業と社員の信頼関係が強まる

オープンブックマネジメントを導入するメリットとして、企業と社員の信頼関係が強まることが挙げられます。自社の財務や経営指標、評価制度などは一般社員からは見えにくいところです。しかし、そのような見えにくいところを公開し、社員一人一人が経営に必要な存在であることを社員が意識することで信頼関係が強化されます。ただし、公開するだけはかえって逆効果となる可能性がありますので、財務知識の教育や権限委譲の体制を整え、段階的に公開していく方が良いでしょう。

各社員が経営の実態や課題を認識できる

各社員が経営の実態や課題を認識できることもメリットの一つです。中小企業では財務指標や損益計算書の公開は義務付けられていません。そのため、経営陣が危機感を持っていても従業員は具体的に何が危機なのかが分からず、経営陣と従業員間ではギャップが生じてしまいます。オープンブックマネジメントにより、各社員が経営の実態や課題を認識できることによって、企業と従業員のギャップを埋めることができます。企業全体として課題解決に取り組むことができ、経営促進が期待できるでしょう。

社員の積極性や生産性が向上する

前述のように、各社員が経営の実態や課題を認識することにより、企業全体で課題解決や目標に向かうことができます。従業員一人一人が経営に関わっているという意識を持つことで、積極性や生産性の向上が期待できる点もメリットと言えるでしょう。企業の経営において、自身の行動がどのように結びついているか、どうすれば経営が向上するかを従業員一人一人が考えて行動することにつながります。従業員の経営を意識した行動が企業文化として浸透すれば、次世代のリーダーの発掘や人材教育にも役立つでしょう。

オープンブックマネジメントを導入する際の注意点

社員の財務知識の有無に合わせて徐々に情報を開示する

オープンブックマネジメントを導入する際、突然情報を公開するのは逆効果になることもあるため注意が必要です。導入時には、社員の財務知識の有無や段階に合わせて徐々に情報開示するようにします。財務知識のない社員に財務情報を見せると、誤解から不信感につながってしまうケースもあるためです。財務知識習得のための教育と知識の習得度の確認を行う体制をつくり、その結果に応じて情報を段階的に開示していくことがベストです。

部署ごとに公開する情報の取捨選択を行う

情報開示する際には、部署ごとに公開する情報の取捨選択も行います。全部署の全情報を公開しても従業員にとっては不要な情報になってしまいます。まずは、従業員一人一人が経営の当事者であるという意識を持ってもらうため、自分の部署に関連する情報のみを開示するようにします。部署ごとに財務状況は全く異なりますので、部署ごとに開示する情報は取捨選択し、そのうえで今後の課題や経営方針について部署全体で共有し取り組むようにしましょう。

経営戦略の方向性を財務データに紐づけて説明する

経営戦略や方針の共有においては、財務データに紐づけて説明しましょう。過去のデータから実際の数字を見せることで、より実感が沸きやすくなります。さらに、この分野でこのくらいの売り上げがでて、利益がこのくらいという風に数字を細かく分解し、社員の働きが数字にどう反映されるかを意識づけます。このように、過去のデータから細かく分析を行いながら今年度・来年度の課題においても数字で共有を行いましょう。細分化された数字から、一人一人がどれだけの働きが必要なのかを共有することが重要です。

オープンブックマネジメントの導入例

SRC(スプリングフィールド・リマニュファクチャリング・コーポレーション)

SRC(スプリングフィールド・リマニュファクチャリング・コーポレーション)社は、オープンブックマネジメントを初めて導入した企業です。はじめは、現場レベルの従業員にも財務諸表の読み方を教え、自社の業績の良し悪しと現在の財務状況を共有しました。その結果、従業員は予算と結果を比較することで、経営戦略を意識した取り組みができるようになりました。さらに、社員の経営意識を高めるため、成功報酬制度と社員の株式保有制度を導入しました。従業員にも経営者の一員であるという意識が生まれ、その結果、1600万ドルほどだった売り上げが約15年で1億5000万ドルまでに大幅に売り上げを伸ばすことに成功したのです。

ジンガーマンズ・コミュニティ・オブ・ビジネシズ

食品業を展開するジンガーマンズ・コミュニティ・オブ・ビジネシズ社では、かねてから財務情報を社員に公開していましたが、これといった効果は見られませんでした。財務諸表の数字は全従業員が生んだ総額であり、一人一人の働きによる結び付きが不透明であることに気づいたのです。そこで、経営指標に対する意識を持ってもらうためには従業員の裁量が及ぶ範囲にすべきだと考え、サービス向上のためのコンテストやゲームを導入しました。問題解決などの功績があった社員にボーナスを与えることで、社員は自発的に行動するようになり、業績は大きく回復したのです。

まとめ

オープンブックマネジメントを取り入れて企業を活性化しましょう

今回は、オープンブックマネジメントについてご紹介しました。導入事例では、2社の例をご紹介しましたが、どちらも長期に渡って導入し、結果に結びついていることが分かります。その結果、どちらも業績の回復やさらなる売り上げ向上など、大きな効果を得ています。社員一人一人が経営に関わっているという意識を持ってもらうためには、社員教育や権限委譲、数字の細分化など様々な工程があります。オープンブックマネジメントを成功させるために、しっかりと計画をたて、企業を活性化しましょう。

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