人材アセスメントとは【人事評価の違いや主なツールを紹介】

記事更新日:2021年06月11日 初回公開日:2021年01月25日

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人材アセスメントという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。人材アセスメントについては、近年、その必要性が高まり、利用も増えているといわれているところです。アセスメントという語は評価を意味する英語ですので、人材アセスメントは人材の評価を意味します。しかし、人事の世界では、特別な評価法を指すことになるのです。この記事では、まず、人材アセスメントの具体的な意味や目的を説明します。そのうえで、歴史や近年必要性が高まっている背景を紹介し、具体的な方法やメリットなどにも触れていきましょう。

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人材アセスメントとは

外部機関による能力や適性の客観的な評価

人材アセスメントとは、企業や組織の外部にある第三者機関によって、従業員の能力や適性を客観的に評価することです。人材アセスメントを行うにあたっては、まず、目的(管理職の選抜や適正な配置等)を設定することになりますね。そして、外部機関に属する訓練を受けた評価者が、心理テストやグループ演習などをとおして、客観的な基準に基づいて、従業員を評価していくのです。すると、目的とした、管理職への適性がある人材を見出すことや、人材を発掘して適正配置をおこなうことなどが可能となっていきます。

人材アセスメントの目的

選抜や管理職の育成など

人材アセスメントを行う主な目的は、管理職へ昇進する際の選抜や適正な人材配置です。それに加えて、管理職の育成や、職務に関するスキルの明確化などを目的として活用されることもあります。情実や相性などに影響されない客観的な評価が可能ですので、適性の少ない人材を昇進させたり、職務に見合わない人材を配置したりする可能性は少なくなるわけです。そして、昇進や配置換えの後の満足度も高くなる傾向になっていますね。また、管理職となるために今後強化していくべき部分や、スキルを充実させるために必要な事項も把握できますので、効率的な人材育成にもつながります。

人材アセスメントの歴史

発祥は第一次世界大戦当時のドイツ

人材アセスメントの発祥地はドイツで、発祥した時期は第一次世界大戦中とも第一次世界大戦後ともいわれています。いずれにせよ、ドイツ軍で有能な将校を選抜するために開発されました。その後は、ヒトラー親衛隊の選抜や、アメリカで情報局員の選抜として利用され、第二次世界大戦後になると、会社での選抜にも利用されるようになったのです。日本では、1973年の第一次オイルショックで戦後の高度経済成長が終わると、管理職ポストが減少し、昇進者を絞る必要が生じました。こうしたことを理由に、企業で活用されるようになったのです。そして、1990年代前半のバブル崩壊後、活用する企業が広がってきていますね。

人材アセスメントが必要とされる背景

客観的評価の必要性

近年、転職者の増加などによって人材の流動性が高まることに加えて、ビジネス環境の変化も速まってきています。そのため、スピード感を持って、情実などに影響されない客観的で適正な評価を行ったうえで、管理職に昇進させることや適正に配置することが重要となっているのです。こうした適正な昇進や配置が、生産性やモチベーションを上げることが期待されています。モチベーションの向上は、企業への定着率の向上にもつながるでしょう。客観的に、潜在的可能性も含めて評価できる人材アセスメントの必要性は、今後ますます高まると思われます。

人材アセスメントと人事評価の違い

評価者が第三者機関か上司か

人材アセスメントと従来の人事評価の最大の違いは、評価者が企業や組織の外部にある第三者機関となるか、上司となるかという点です。上司が評価すると、主観的要素が入り込むこともあり、評価についての納得を得にくい場合も生じてしまいます。人材アセスメントでは、外部の機関が客観的な基準に基づいて評価しますので、客観性が担保され、評価についての納得性も得やすくなるのです。また、人材アセスメントでは、普段の業務とは直接的な関係がない潜在的な能力も含めて評価できますが、人事評価の場合、潜在的な能力の評価は容易ではありません。

人材アセスメントの主なツール

知能検査や性格検査

人材アセスメントでは、目的に合わせていくつかのツールを組み合わせて評価をおこないます。知能検査や性格検査は代表的なツールです。知能検査にはいくつかの方法がありますが、多くの検査では、認知能力や推論能力などを測定します。そして、知能面での強みや弱みも把握できるわけですね。性格検査には様々な方法があり、その人の性格的な特徴やストレス耐性など検査に応じた様々なことを掴むことができます。また、適性検査もよく使われますが、適性検査は、知能検査と性格検査の双方を含んでいるものがほとんどです。

360度評価

360度評価(多面的評価)も代表的なツールです。これは、上司だけではなく、対象者とかかわりの深い、同僚や部下などをも評価者とし、対象者の日常的な職務行動を多面的に評価するものです。多面的な評価ですから、客観性や対象者の納得性が高まることが期待できます。また、対象者の自己評価も行いますから、他者による評価と自己評価の差異の理由をよく考えることで、自己の強みや弱みを客観的に認識することもできるでしょう。そして、その客観的な認識を対象者の成長へとつなげることも可能となっていきます。

アセスメントセンター

アセスメントセンターは、マネジメント能力を評価するための重要な技法です。対象者に対して、職務上実際に起こり得る場面をシミュレーションした演習をおこない、アセッサー(専門の評価者)が評価します。具体的には、インバスケット演習などを行うことになりますね。インバスケット演習とは、制限時間を設け、管理者として処理するべき多数の案件を処理する演習です。そして、処理のプロセスや処理の内容等を評価します。これにより、将来発生しうる状況に対処していく能力を客観的に評価することができるわけです。

人材アセスメントのメリット

客観的な評価ができる

外部の第三者機関が評価を行いますから、客観的な評価が可能となります。人間関係や情実に影響されることはありません。そのため、評価を受ける側も評価に納得しやすくなります。上司の評価のみで管理職に昇進するとした場合には、例えば、営業成績が良いために、上司から高い評価を受け、管理職に昇進することがあるかもしれません。その場合、実際のマネージャーとしての能力は育っておらず、管理職としては成功しないこともあるでしょう。人材アセスメントによる客観的な評価を行えば、このようなことがなくなる可能性が高まります。

適正配置が可能となる

人材アセスメントを行うことによって、管理職としての適性を客観的に評価できます。したがって、従前の人事評価に人材アセスメントを加えれば、適性を持った人材を管理職に登用できるようになるでしょう。また、人材アセスメントによって日常の業務には現れない潜在的な能力についても把握することが可能となります。そこで、人事異動や新たなプロジェクトを開始する際などに、新たなポジションに適性のある人材を配置できるようになるでしょう。このように、人材アセスメントを活用することで、適材適所の昇進や配置をおこなえる可能性が高まっていくのです。

管理職の育成を行いやすい

管理職候補者に人材アセスメントを行えば、対象者によっては、管理職として不足する部分が客観的に明らかになります。したがって、その部分を伸ばしていく研修などを施すことで、有能な管理職へと育成していくことも可能でしょう。また、管理職候補者以外の従業員であっても、その強みや弱みを客観的に把握できますから、強みを伸ばし、弱みを克服していく研修などによって、能力を高めていくことが可能となります。管理職や一般従業員の能力が高まれば、組織は強化され、業績が向上する可能性も強まるでしょう。

自己啓発の動機付けとなる

人材アセスメントでは、面接等により結果を本人にフィードバックすることが一般的です。フィードバックを受ければ、自分自身の客観的な強みや弱みを自覚するとともに、あるべき理想の姿も把握できます。上司による評価のみでは、相性の問題もあり、納得しにくい場合もあるでしょう。しかし、人材アセスメントの結果には、情実に左右されない客観性がありますので、フィードバックの内容にも納得しやすいのです。したがって、フィードバックは、その後に自己啓発をおこなっていくための効果的な動機付けや方向付けとなるでしょう。

人材アセスメントのデメリット

費用と時間がかかる

人材アセスメントを実施すれば、外部機関に支払う費用がかかりますし、検査や演習、更にはフィードバックをおこなう時間もかかります。こうした点がデメリットといえますね。また、昇進試験の一環として行われる場合などは、落ちたら困ると考え、対策本などを使って、実力以上の好結果を得ようとする対象者も存在するでしょう。こうした点にも留意しておくことが必要です。昇進試験の一環でない場合であっても、人材アセスメントで高く評価される人物にみせかけようとする対象者がいるかもしれません。これらの場合には、昇進や配置のミスマッチが生じる可能性もあるのです。

人材アセスメント導入時の注意点

目的の明確化

人材アセスメントを実施するにあたっては、実施目的を明確にしておくことが非常に重要です。例えば、管理職への適性を把握することを目的とするのか、人材を発掘することを目的とするのかなどといった点ですね。そして、目的に合わせて評価項目を設定して、全体の構成などをデザインしていくことになります。目的があいまいだったり、評価項目が目的から離れていたりすれば、費用や時間をかけて実施する意味がなくなるでしょう。目的や、それにかなった評価項目をきちんと設定することで、意味のある人材アセスメントをおこなうことができるわけです。

人間性の全てをアセスメントするわけではない

人材アセスメント実施にあたっては、その結果は人間性の全てを評価しているわけではないことを十分に理解しておくことが大切です。結果に示されるものは、目的に合わせて設定した項目の範囲内にとどまるわけです。人間性も良き管理職の要件であるとするならば、昇進等に活用する場合は、人材アセスメントに加えて、別の観点からの人事評価が必要となることもあるでしょう。また、評価を示す一部の数字が独り歩きすることは、人物に対する誤解を生むことになる可能性が高いですから、避けなければなりません。

人材アセスメントで人材の有効活用と能力開発をはかろう

人材アセスメントを活用することで、昇進や適正配置等の目的にかなった、客観的な人材の評価が可能となります。更には、結果のフィードバックによって、自己啓発を促すこともできるわけです。このような優れた特徴を持つ人材アセスメントを導入すれば、従業員を有効に活用するとともに、従業員の能力開発も進んでいく可能性が強まるでしょう。その結果、組織としての生産性が上がることも期待できます。人材アセスメントは、このような優れた特徴を持っていますので、まだ活用していない場合は、今後の活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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