記事更新日:2024年05月01日 | 初回公開日:2024年05月01日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報RJPとは、ありのままの仕事を発信するという採用理論です。RJPはRealistic Job Previewの略称で直訳すると、現実的な仕事情報の事前開示という意味を持っています。1970年代にアメリカの産業心理学者であるジョン・ワナウスによって提唱されました。RJPは入社前にポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報な情報含めて社風や職場環境などありのままを伝え納得してくれた人を採用するという手法です。
これまでの採用方法では、企業の魅力や働きがいなどポジティブな情報を前面に押し出して母集団形成を行い、その中から採用する人を選んでいました。しかしそういった採用手法で入社した人は、入社後のギャップに耐えられず離職してしまうという事も多く起こっていました。RJPは選考段階からネガティブな情報も候補者に伝える事を重視しています。ありのままを知った上で選考に進めるので、企業に合った人材が自然と集まります。
RJPが注目される背景には、人材定着が課題となっていることが考えられます。日本の採用市場では長期間売り手市場となっており、企業は優秀な人材の確保が出来ないだけでなく求人を出しても全く応募がないという企業も少なくありません。ミスマッチが起きてしまうと、人材の定着が行えません。こういったことからRJPはネガティブな情報を織り込むことで、採用した優秀な人材や成長した人材に企業に長く定着してもらう事を目的としています。
RJPの効果は、入社後の失望感を緩和させられます。RJPではワクチン効果と言われており、企業のリアルな情報をありのまま伝える事で入社後のミスマッチを減らし失望感を緩和させる効果です。ポジティブな情報だけでは、入社後に免疫がないため理想と現実の差に耐えられなくなってしまいます。ネガティブな情報もそのまま伝えられていれば、幻滅感が薄れ現実を見たときのショックから自分を守り課題に立ち向かう力を身に付ける事にも繋がります。
RJPを活用することで、企業とのマッチ度が分かる効果があります。RJPでは、ネガティブな情報を加味した上で求職者が自分に合う企業を選ぶことが出来るというスクリーニング効果があります。RJPは求職者が選択するという点が重要で、「入社後に辛いことがあるかもしれないが自分に適した会社だから入社したい」と考え責任感を持って働いてもらう事が出来ます。合わないと感じた人は選考中に減っていくため、入社後のミスマッチを減らすことに繋がります。
RJPは、企業が誠実さを示すことが可能です。現在の就活生はSNSなどから様々な情報を収集しているため、ポジティブな情報ばかり掲載している求人には却って怪しいと感じられてしまう可能性があります。ネガティブな情報も求人票に記載しておくことで、誠実な企業であると感じてもらい愛着心を抱いてもらえるコミットメント効果を発揮します。愛着心が生まれる事で、企業に貢献したいと考えるようになり従業員のエンゲージメントを高める効果も期待できます。
役割が明確になるのも、RJPの効果の一つです。選考を行っている段階で、企業が候補者にどういった業務を行ってほしいか・何を期待しているのかを明確にしておくことでその期待に応えたいという意欲が沸いてきます。役割を明確にされずに入社するよりも、入社後に活躍してもらえる可能性も高まります。実際に企業から説明を受ける事で、入社後どのような働き方をすればいいのかが想像しやすくなり入社したいという意欲を高める事も可能です。
採用コストを削減できるのもRJP効果です。従来の採用手法では、母集団形成に力を入れるためにポジティブな情報を中心に記載していました。そういった採用手法であれば、応募者の数を集めることは出来ます。しかしポジティブな情報ばかりを押し出してネガティブな情報を伝えないまま入社すると、ミスマッチが起こり再度人材を採用しなければなりません。更にコストを掛ける必要があります。RJPでありのままを伝える事で入社を考えている人に入社してもらえ、結果としてコスト削減に繋がります。
RJPの懸念点は、企業のイメージが下がる恐れがあるところです。ありのままを伝える事で、入社後のミスマッチやギャップを抑える事は可能です。しかしネガティブな情報が目立っていたりポジティブな情報より多くなったりしてしまうと求職者にとって魅力的な職場として捉えてもらえない可能性もあります。企業の情報を公開する際に大切なことはポジティブな情報とネガティブな情報のバランスです。ネガティブな情報を伝える時は表現などに注意するようにしましょう。
応募者が減少する恐れがあるのも、RJPの懸念点です。ネガティブな情報を公開することで、自分には向いていない・条件が合わないという考えの人も増え従来の手法と比べると応募者が減る恐れがあります。本当に入社したいという人材だけが残ることから選考しやすくなるといったメリットもある一方で、応募者が少ない事に不安を感じるかもしれません。しかしネガティブな情報を開示した上で応募してきてくれた人材は、長期的に働いてもらえる可能性が高くなります。
RJPはバランスよく情報発信することが大切です。ネガティブな情報をしっかりと開示することは大切です。しかしありのままを伝え、ネガティブな情報ばかりになってしまうと応募者が集まらなくなります。その為求人にネガティブな情報を掲載する時は2~3割のイメージで掲載するようにしましょう。ネガティブな情報を掲載する時は具体的に掲載するようにし、そのネガティブな情報に対して企業どういった対策や工夫を行っているのかを記載することも大切です。それにより、求職者の印象も変わってきます。
RJPの注意点として、受け入れ部署と連携を緊密にする必要があります。求人票を作成する人事と人材を求めている受け入れ部署で仕事に対してのやりがいや職場環境に対しての認識に相違があった場合は、正しい情報を提供することは出来ません。また、受け入れ部署が欲しいと思っている人材から条件や求めるスキルがズレてしまう可能性もあります。そうすると入社後のミスマッチに繋がってしまうため、受け入れ部署としっかりコミュニケーションを取っておくことが重要です。
RJPの注意点は、情報の正確性を確認することです。ネガティブな情報をありのまま掲載していても、情報が古くなっていたり誤った内容を掲載したりしている事もあります。求職者に企業としてネガティブな情報を隠さずに伝えようとしても、情報が間違ってしまっては意味がありません。情報が誤って掲載されているままになっていると、入社後のミスマッチに繋がります。求人票に掲載している情報が常に正しい情報になっているかどうかを定期的にチェックすることが大切です。
求職者のイメージしやすい内容を心がける事も、RJPの注意点です。昨今の採用市場は売り手市場が続いているため、企業が求職者を選ぶという立場から求職者に企業を選んでもらう立場になりました。求職者に数多くある求人の中から自社を選んでもらうためには、求職者の立場になり何を求めているのかを知る必要があります。企業で働くことがイメージしやすい内容にすることで、応募へとつなげることが出来ます。一方的に情報を伝えようとするのではなく、求職者目線で工夫することが必要です。
RJPの取組を行っているのは、エン・ジャパンです。人材採用などを提供しているエン・ジャパンでは、体感転職プログラム(入社前職場体験)を導入しています。この体験を通じて、職場の雰囲気や同僚になる人たちの事を良く知ってもらうことを目的としています。体感転職プログラムを体験してもらう事で、企業のポジティブな部分とネガティブな部分を知ってもらい実態として感じてもらう事が可能です。プログラム導入後は、中途社員の1年以内の退職が約4割あったものから体験して入社した人の退職は0という結果となっています。
RJPはアプレッソでも取り入れられています。IT企業であるアプレッソでは、エンジニアを採用する際にコーディング面接を実施しています。一般的な面接では、求職者に対して職務経歴や自己PRを記載している書類を提出してもらい、その情報に基づいて質問などを行っていました。これに対しアプレッソでは、そういった面接とは別に実際に求職者にソースコードを書いてもらいそれをベースにした面接の実施を行っています。企業と求職者の双方が確認できるため、ミスマッチが減ります。
ノパレーゼもRJPを行っている企業です。ブライダルやレストランの事業を展開しているノパレーゼでは、求職者に対して面談パスポートというのを発行しています。この面談パスポートは、最大10回まで面談を行う事が可能です。面談の回数を重ねることで、企業が採用したいと考えている人材の入社意欲を高める事を目的としています。また入社する意志の低い人は面談回数が少なく志望度を測ることも出来る仕組みになっています。現場で働く人とも面談でき、企業の実態を知ってもらえます。
RJPの効果や実施する際の注意点などについて解説しました。ネガティブな情報を共有することで、応募してくれる母集団形成においては不利になってしまいますが、正しく活用すれば志望度の高い人だけを集める事が可能です。ネガティブな情報を開示することで、求職者に誠実さをアピールすることが出来る一方でネガティブな情報ばかりになってしまわないように注意しましょう。RJPを自社に合わせて導入することが出来れば、ミスマッチ防止にも繋がります。内容をしっかりと理解し、採用活動に役立てていきましょう。
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