記事更新日:2024年05月16日 | 初回公開日:2024年05月16日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報労働安全衛生法は、労働災害を防止するために必要な事項を定めた法律です。労働安全衛生法が制定された1970年代の日本は、世界にも類を見ないほど経済産業の発展が目まぐるしい時代でした。技術革新や生産設備の高度化が進んでいましたが、その裏で多くの労働者が労働災害にあっていました。こういった事態を踏まえ、企業に対して安全衛生の促進や労働者の安全や健康を確保し快適な作業環境を守るために安全衛生法が制定されました。
労働者の安全を守るための法律は、戦前から工場法や鉱業法といった形で存在していました。ただしこういった法律は、労働災害が起こりやすい業種にのみ特化して制定されており、あらゆる業種でカバーできるものではありませんでした。その後1947年に労働基準法が制定され、業種を問うことなく労働安全衛生に関する規則が定められるようになります。しかし高度経済成長に伴い労働災害が急増したことにより、労働者の安全や健康を守る必要性が高まりました。労働基準法の内容を充実させ独立させたものが労働安全衛生法です。
労働安全衛生法が制定された目的は、労働者を労働災害や健康被害から守り、安心して働ける社会にするためです。この目的を果たすために、労働安全衛生法では危険防止基準の確立・責任体制の明確化・自主的活動の促進が規定されています。危険防止基準の確立は、リスクマネジメントの実施や労働者の健康診断を行い健康リスクなどを確約することです。責任体制の明確化は、安全管理者や安全衛生管理者、産業医の選定が求められます。自主的活動では安全衛生委員会の設置や健康サポートなどが含まれます。
労働安全衛生法と似たものに労働基準法があります。労働者保護を目的としているため似た法律だと考えている人も多いですが、制定された経緯や目的が異なります。労働基準法は、労働条件の最低ラインを定めたものであるのに対し労働安全衛生法は、労働者の安全や健康を守るために職場の労働安全面に関連する組織体制や労働者の健康管理に関することが定められています。また労働安全衛生法は高度経済成長期の労働災害による死者を減らすため、労働基準法をより詳細に規定する目的で制定されました。
労働安全衛生法では事業者と労働者が定義されています。事業者とは、「事業を行う者で、労働者を使用するもの」と定義されており一部を除き全ての企業が対象です。労働安全衛生法に違反すると、現場の責任者と事業者に罰則が適用される恐れがあります。また労働安全衛生法で保護される対象となっている労働者は、「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」です。但し同居している親族や船員は対象外となります。
労働安全衛生法で定められている義務は、管理者・責任者・産業医の選任です。事業者は業種や業務内容・事業場規模に応じた管理者を設置する義務があります。特に従業員が50人以上所属している事業場では、衛生管理者と産業医を少なくとも配置しなければなりません。事業場は、企業全体を指すものではなく支店や工場など労働者が働いている一つの場所を指しています。50人未満の事業場は対象外という訳ではなく、10人以上50人未満の場合は安全衛生推進者を配置する必要があります。
労働安全衛生法では、安全衛生委員会の設置が義務付けられています。事業主は安全衛生に関して審議や意見交換を行う場として業種や従業員数に応じて委員会の設置が必要です。常時50人もしくは100人の従業員を雇用している場合には、安全委員会を設定する必要があります。安全委員会は、職場の安全確保や労災被害の防止を目的としています。常時50人以上の雇用している事業所に設置が義務付けられているのは衛生員会で健康被害防止を目的に設置しなければなりません。
労働安全衛生法において、労働災害の防止措置も義務化されています。労働災害の防止措置とは、設備や作業によって労働者に危険が及ばないように対策を行うことです。具体的な措置としては、機械などの設備や発火性のある物質・引火性のものや電気、熱などよって発生する可能性のある事象への対策です。他にもガスや粉塵・放射能などに対しての健康被害が起きないようにする対策などが求められます。防止措置を怠った場合は、事業主に罰則が課されるため注意が必要です。
労働安全衛生法で事業者に義務付けられているのは、安全衛生教育の実施です。事業者が労働者を雇用した際には、労働者が従事する業務に対して適切に安全衛生教育を行う必要があります。この教育は正社員だけでなくパートやアルバイトに対しても同じです。また中高年層や外国人労働者など特に配慮が必要な労働者に対しても、十分な教育体制が求められます。これに加えて一部の業種では監督者を一新した場合や労働者の配置が変わった場合においても安全衛生教育が必須になっています。
リスクアセスメントの実施も、労働安全衛生法で定められている義務です。リスクアセスメントとは、事業場にある危険性や有害性の特定を行いリスクの見積り・優先度の設定・リスク低減措置の決定の一連の手順のことです。労働災害や健康被害を防ぐためには、リスクアセスメントが欠かせません。安全衛生委員会は、リスクアセスメントを遂行するために重要な役割を担っています。労働者の危険を防止するための施策や、健康被害を防止するための施策が実施されているか安全衛生委員会で審議されます。
健康診断やストレスチェックを実施することも、労働安全衛生法で事業者に義務付けられています。事業者は労働者を新たに受け入れた際に、年1回の健康診断が義務付けられています。また健康診断結果は労働基準監督署に提出も行う必要があり、結果を5年間保管しなければならない決まりもあります。2015年からは常時50人以上の労働者が働いている事業場を対象に、年1回のストレスチェックも義務化されました。50人未満の企業では努力義務となっていますが、実施している企業も増えています。
労働者が安全に働くために、職場環境の整備も義務付けられています。事業者は事業場の安全水準を高めるために快適な作業環境を整備することが義務となっています。職場環境の整備とは、作業者が効率よく業務に取り組めるように環境整備を行うことや作業者の疲労を回復するための施設や設備の整備などが項目としてあげられています。職場環境を快適にするためには、適切な温度管理や衛生面の維持など労働環境の整備が不可欠です。労働環境の整備だけでなく、業務の効率化や人間関係の円滑化なども含まれています。
2019年の労働安全衛生法の改正内容は、労働者の労働時間の把握や保管義務です。事業者は全ての労働者の労働時間を適正に把握しておく必要があります。原則的な方法として、現任と客観的な記録があります。現任とは、使用者が全ての従業員の始業・終業を確認しておくことですが、あまり現実的ではありません。そのため、タイムカードなどで出退勤を管理する客観的な記録が一般的です。労働時間の把握は残業時間を管理することではなく、健康管理に使用されます。また労働時間の記録は3年保管しなければならないと決まっています。
2019年の労働安全衛生法の改正により、産業医や産業保健機能の独立性や中立性の強化が行われました。事業主は労働者が健康維持・管理出来るために健康相談を受けられる環境を整えておく必要があります。これは努力義務となっていますが、労働者の数によって産業医の選任なども行わなければなりません。2019年の改正では、産業医などの独立性や中立性を高めるために産業医が辞任や解任に至ったときには、安全衛生委員会・衛生委員会への報告が義務付けられています。
産業医面接指導基準を月80時間の残業に引き下げられたのも、2019年の労働安全衛生法の改正です。2019年の改正が行われるまでは、面接指導基準は月100時間の残業が対象でした。しかし2019年の改正によって残業時間が月80時間を超えた場合は、労働者からの申し出を受けて産業医との面接指導を行うように変更されました。産業医との面接指導後、事業者は面接結果に基づいて必要な措置を取らなければなりません。この措置が不十分であると産業医から判断された際には、産業医から勧告を受けてしまいます。
2023年の労働安全衛生法の改正によって、危険有害な作業を行う事業者の保護措置が定められました。これは雇用されていない一人親方や資材搬入業者を対象に保護を行う事が決められた改正です。具体的には、局所排気装置等の設備に関して稼働もしくは使用許可を行う、義務付けられている作業方法を周知する措置などが付け加えられました。他にも、化学物質の有害性に付いてその場で関わる従業員以外にも見やすい箇所に掲示するなどの改正が行われました。保護の適用範囲を広げる事が目的とされています。
新たな化学物質規制の導入についても、2023年の労働安全衛生法で改正されました。従来の労働安全衛生法では適用範囲外とされていた化学物質のリスクアセスメントも、2023年の改正で適用されることになりました。この改正により、ばく露防止を目的としています。化学物質による労災が起こっていることから、国が化学物質のリスクを判断するのではなく事業者が必要な対応を実施するよう求められています。対象となる事業者には化学物質管理者の選任も義務付けられており、専門的な講習を受講することで管理者として認められます。
労働安全衛生法で定められている事業者としての義務や、改正された内容について解説しました。労働安全衛生法に違反した場合は、懲役や罰金が課せられる恐れもあるため事業者としては必ず守らなければいけない法律です。企業規模によって義務と努力義務に分かれているため、企業規模に合った対応が求められます。労働安全衛生法は働き方改革などに伴い、内容が改正されています。毎年改正されることもあるため注意が必要です。労働安全衛生法の内容をしっかりと把握し労災防止に努めましょう。
「日本語+英語+さらに語学が堪能な社員の採用」「海外の展示会でプレゼンが出来る人材」「海外向けサービスのローカライズ出来る人材」「海外向けWebサイト構築・集客」など、日本語も堪能で優秀な人材へのお問い合わせが当社に相次いでいます。
グローバル採用ナビ編集部では外国人の採用や今後雇い入れをご検討されている皆様にとって便利な「就労ビザ取得のためのチェックリスト」をご用意いたしました。また、在留資格認定申請書のファイル(EXCEL形式)もこちらよりダウンロード可能です。
他社での事例やビザ申請の際に不受理にならないようにまずは押さえておきたい就労ビザ取得のためのポイントを5つにまとめた解説付きの資料です。
この記事を読んだ方は次のページも読んでいます。