記事更新日:2023年02月07日 | 初回公開日:2023年02月02日
グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 採用成功事例ダグラス・マクレガーは主流であった権限行使や命令による経営手法を否定し、同時期に心理学者として名をはせたマズローの5段階欲求説を基に自己統制による新たな経営手法を提唱しました。マクレガーは旧来より続く命令などの圧力による経営手法をX理論とし、低次の欲求が満たされているときには高次の欲求を満たす経営手法が必要であるとY理論を展開します。2つの対立的な理論は前述のようにマズローの5段階欲求説を基に考えられたもので、マズローの理論を理解することで2つの理論が相反するものでないことが分かります。
マズローは人間の欲求をピラミッド型の5段階の層に分け、下層にある欲求が満たされることで上層の欲求が芽生えると言っています。単純に人間の持つ欲求を5種類に分けるのではなく、下層にある低次の欲求が満たされることで高次の欲求が生まれて進化するというものです。生理的欲求はマズローが提唱する5段階の中では最も下層にある低次な欲求とされ、人間の生きるために最低限必要な欲求です。食欲や睡眠欲などがそれに当てはまり、人間が生まれながらに持っている欲求になります。
安全の欲求は生理的欲求を満たすことで、安全で安定した生活をしたいと考えるものです。敵から身を守ることや長く生きるために必要な安全の欲求は、やはり人間本来が持つものであり、低次の欲求に分類されます。ただし低次の欲求といっても、これらの欲求が満たされてこそ高い次元の欲求が生まれることを忘れてはいけません。コロナや紛争の勃発により安全が脅かされる昨今では、安全の欲求が満たされないため高次の欲求を断念する人も少なくありません。
生理的欲求と安全欲求が満たされると、社会的欲求が芽生えます。社会的欲求は生存するために必要とされる2つの欲求と比較すると進化した欲求です。組織やグループに属することで安心感が得られるという心理的な欲求です。同じ目的や考え方の似ている人間といることで安心でき一緒にいたいと考える欲求であり、家族や友人仲間と仲よく過ごしたいという親和欲求も社会的欲求に含まれます。社会的欲求はいろんな言葉で表現されますが、他者と関わりを持つことを望むものと理解してください。
組織やグループに入ることができたら、組織仲間や別の組織から認められたいという気持ちが生まれます。これが承認欲求です。組織に所属するだけでは物足りなくなり、もっと認められたい、もっと高く評価してもらいたいと考えるのが承認欲求の具体例といえます。仕事であれば評価は給与の金額や地位である事が多く、もっと高い給与をもらえる会社に入りたいということや高い役職に就きたいというのも承認欲求に入ると考えられます。
マズローの5段階欲求説で頂点にある欲求が「自己実現欲求」です。組織および社会からも認められたあとには、自分しかできないことを成し遂げたいという欲求が芽生えます。この欲求は誰しも持つ欲求ともいえますが、理想に掲げるだけで終わる人が多く、真の欲求とする人は数少ない人間に限られるでしょう。このようにマズローの欲求段階説では欲求が満たされるごとに欲求の次元が高くなっていき最終的に自己実現欲求に到るため、自己実現欲求説とも呼ばれます。
ここでマズローの提唱した有名な5段階欲求説は終わりですが、実はこの上にマズローが晩年に発表した最高領域の「自己超越」の欲求があります。自己実現欲求までの4段階は欠乏欲求とも言われ、不足の部分を補って欲しいとするものですが、自己実現欲求と自己超越は成長欲求と言われる別格の欲求に分類されます。とくに自己超越は利害関係などは全くなしにして純粋に目標達成を目指すというものです。周囲からは特異な感じに見えることもありますが、損得勘定などを度外視して目的を目指すことは人間の理想といえるでしょう
X理論は生理的な欲求や安全の欲求など低次元の欲求を多く持つ人間の行動モデルとされ、この傾向が強い人たちをX型人間と呼ぶこともあります。前述のように人々が貧しい時代や発展途上の国々では低次欲求を満たすことができないのでX型人間が多く見られます。X型人間は自ら働こうとはせず責任もとろうとしないため、自己実現を目指すようにアプローチするよりも、命令や統率によりモチベーションが維持できると提唱されています。
X理論の根底にあるのは「人は生まれつき怠けもので責任を取りたがらない」ということです。これは性悪説に基づくものと言われます。性悪説とは中国の儒教の大家である荀子が唱えたもので「人間の本性は悪である」という説です。そのため国を安全に統治するためにはアメとムチが効果的であり、法律などで罰則などを定めて犯罪などを抑止するという考え方です。現在の日本や列強諸国も法治国家であり、性悪説に基づくものだと言えます。
X型人間が多い低次欲求が満たされない発展途上国などではX理論に基づいたアプローチが効果的です。また、単純作業を繰り返す作業者に対してもX理論に基づき、間違えたらペナルティを与えることで間違いは少なくなり効率も良くなるでしょう。できれば上手くいったときには報酬をアップするなどすれば、相乗効果となり多大な変化をもたらすこともあります。報酬は食欲などを満たす財源にもなるため大きな効果が期待できるのです。
業務に慣れていない新入社員などに、自分で考えるように促しても良い答えが出ることは多くありません。経験があってこそY理論型の行動モデルをとれるため、間違いをはっきりと教えるためにも新入社員などの経験のない人へはX型人間へのアプローチである「アメとムチ」が効果的です。部下本人も間違えたらダメだししてくれる方が楽であり、自分で考えるようにと言われても苦痛になるだけでしょう。仕事の内容を理解し経験を積むごとに自分のやりがいなども分かり、X理論型からY理論型へと変わっていきます。
Y理論は自主性を重んじるもので、低次な欲求が満たされていることが多い近代において有効な理論だと考えられます。マクレガーも1960年代には既に低次欲求が満たされていることを前提としてY理論を展開しました。Y理論では高次欲求を持つ人間をモデルとしているため、高次元の欲求を刺激することでモチベーションアップがはかれると考えられます。人から監視されて処罰を恐れながら作業をするよりも、個人の自主性を大事にしてあげることで動機付けできるのがY理論型人間といえます。
Y理論は「人間は条件次第で目標達成に取り組み、自ら進んで責任を取ろうとする」という考え方であり、X理論とは真逆のものといえます。これは中国の儒家である孟子が説いた性善説に基づくものであると言われています。孟子は「人間はすべて善として生まれる」という考えを広めようとしましたが、戦乱の世の中においては受け入れる人は多くありませんでした。このあとに登場した同じ儒教家である荀子が性悪説を説いており、先輩である孟子を徹底的に批判したことは有名な史実です。
Y理論は社員と個人が一体となり目標につき進むときなどに有効です。自主性を重んじて自分に期待してくれる会社を大切に思うようになり、自ら会社のためになる行動をするようになります。ただし、あくまで低次欲求が満たされている場合に有効であり、一時でも低次欲求が満たされなくなれば状況は一変することも覚えておきましょう。例えば自分のそばにいる大切な人が病気になったとすれば高いモチベーションが簡単に失われることもあります。高い欲求を維持することは難しいことだとマズローやマクレガーも言っています。
X理論とY理論の中間的な立場にあるのがZ理論で、X理論とY理論の良いところだけを抜き取ったものです。ここまでのX理論とY理論の説明では、生まれながらに悪で怠惰な人間か、生まれながらに善で働き者の2つに分けられることになります。しかしマクレガーはそのように理論を展開したのではありません。あくまでX理論型のモデルとY理論型のモデルを想定しているだけで、X理論とY理論は連続したもので中間も存在すると理解しましょう。X型に近いY型人間やY型に近いX型人間などと、多様性を尊重する昨今ではいろんなタイプの人間がいることを忘れてはいけません。
ダグラス・マクレガー本人によって書かれ、日本では1967年に出版されました。自己統制による経営ということで、X理論からY理論に移行するまでのプロセスなどを詳しく知ることができます。若い人であれば後に指導者や経営者になって役立つ書籍であり、現在にて指導者や経営者である方には現在の企業運営や社員のモチベーションアップにつながるものです。自分の身近にいる人たちを観察し、X理論型の人間かY理論型の人間か観察してみるのも面白いでしょう。X理論・Y理論を深く知りたいという方にはおすすめのバイブルです。
会社組織を中心に据えて、社員のモチベーションをアップさせる最善の策を探し実践した記録です。日本の文化には合わない部分も多くありますが、深い部分で共通することも多く後になって理解できることも多くあります。同じ能力の人が仕事をしてもモチベーション次第で成果が全く違う理由が分かるでしょう。動機づける源となる力であるモチベーションを自らが向上させることや、部下の正しいマネージメントを示唆してくれる一冊です。またMBO評価やピグマリオン効果についての解説も分かりやすく、教育指導書としても人気となっています。
X理論・Y理論とは、それぞれが全く異なるものではなく、そのモデルとなる人間も完全に2つに分けられるものではありません。人間の誰もが低次の欲求や高次の欲求を持つことが可能であり、X理論とY理論で展開された部分を合わせ持っています。多様性が人間の価値観を高めると考える現在では、各々の成熟度や状況に合わせたマネージメント方法が大事です。指導者や指導者を育てる人材開発担当の方々は、X理論とY理論を上手く併用し個々に最適なモチベーションアップを提案しましょう。
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