記事更新日:2021年02月05日 | 初回公開日:2021年01月05日
用語集 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報変革型リーダーシップとは「生き残りのために企業を変化させることができるリーダーシップ」のことで、1986年にノール・M・ティシーが提唱しました。高度成長期の右肩上がりの市場経済の中では、主にリーダーはスケジュール管理などを行う、いわゆるマネジメントの役割でした。しかし、市場が円熟し、またニーズも多様化する現代において、これまでの流れをそのまま維持した「変革できない組織」は、時代の変化に取り残されてしまうでしょう。
変革型リーダーシップは主に4つの要素を持つといわれています。それはカリスマ性、モチベーションを鼓舞する力、知的刺激を与える能力、周囲への配慮力の4つです。まずカリスマ性とは、優れた処理能力、目標達成力のこと。次のモチベーションを鼓舞する力は部下をやる気にさせる要素です。そしてリーダーの目標達成や問題解決の実践は、そのままトレーニングの優れた知的教材といえるでしょう。それでいて周囲に個別の配慮を欠かさないことで、信頼される力を持つのです。
変革型リーダーシップが提唱される前の、いわば従来型のタイプは交換型リーダーシップと呼ばれます。会社の規則やルールを重視し、管理者自らもその上司の指示を受身的に実行する、いわばパッシブ型といえます。チームメンバーの成功や失敗に応じて報償や懲罰を与え、個々人の能力やモチベーションを引き出そうとするギブアンドテイク型のリーダーシップです。一般的な上司と部下、あるいは雇用者と従業員の関係性を表すものと言って良いでしょう。
受身的イメージの交換型に比較すると変革型リーダーシップは、能動的です。企業の目標に対し、強いビジョンを創出し、従業員の挑戦を奨励します。従業員に積極性を発揮させ、変化と変革をもたらすカリスマ性を発揮し、周囲の従業員に対し、モチベーションを刺激します。交換型のようなギブ&テイクの関係に頼りません。従業員にマインドの面から影響を与え、感情を揺さぶり、信念と価値観を与えることで行動を変えようとするアプローチを取ります。
企業の業績が悪化した場合、それまでのやり方に問題があることが多いといえます。そこで古いやり方にこだわっていれば、さらに悪化してしまうでしょう。そこで業績を回復させるために問題点を洗い出し、その問題を解決できる新しいやり方を導入しなければいけません。変革型リーダーシップによって問題点を洗い出し、その問題を解決できる新しいやり方を導入することが可能になります。変革型リーダーシップは企業の窮地を救う一つの手段になりえます。
昔ながらのやり方を続ける保守的な企業の場合、時代に適応することができず、大手でも時代に取り残されて、倒産したり買収されたりする例が多いです。その一方で経営危機に陥った際、企業内改革を行ってV字回復を果たした企業はたくさん存在します。そのような、時代に遅れずに成長し続ける企業では、変革型リーダーが積極的に新しい挑戦を続けているのです。成長し続ける企業には変革型リーダーシップが不可欠といえるでしょう。
変容を遂げる市場経済の中で勝ち残り、企業を存続させていくためには、いかにして変革型の人材を獲得するかということは重要な課題です。変革型リーダーシップに関しては、生まれ持った素質の面が大きく、採用段階で素質を見抜くことが大切です。とはいえ個性の差はあるものの、後天的に身につけていくことは不可能ではありません。素質を持った人材が才能を発揮できるような機会創出のため、既存のリーダーを教育するプロセスを構築していくことも企業の重要な課題です。
挑戦すべき課題に直面した時、「自分にはできる」と解釈して挑戦する人もいれば、「自分には無理」と解釈して挑戦しない人もいます。同じ情報を受け取っても、それを「チャンス」と解釈する人もいれば、「ピンチ」と解釈する人もいます。このような場合、変革型のリーダーは、常に挑戦型の姿勢で問題解決に臨みます。仕事で直面する逆境や困難などに打ち勝ち、再起する力を強化する能力で、部下も変革型リーダーとなりピンチをチャンスに変える力を養えるのです。
変革型リーダーには、プレゼン能力があります。プレゼン力を持つ人の話し方や表情は自信に満ち溢れていて、人を惹きつけます。そのため、周りの人からリーダーとして尊敬されやすく、組織を引っ張っていくポジションに向いています。プレゼン力には論理的な考え方(ロジカルシンキング)と人前で落ち着いて話せるアウトプット能力が必要。それゆえにリーダーのプレゼンを見て、部下もプレゼン力を身に着けたいというモチベーションが上がります。
変革型リーダーは、常に事業に付加価値を与える明確なアイディアを出そうとします。現状に甘んじない姿勢で、継続的に変化できる組織を構築していくことができます。またそのリーダーは変革の結果の価値観を明確に維持し、組織に根付かせることも可能。そのため、常にエネルギッシュに迅速に行動するリーダーは、従業員に勇気をもって決断する力を与え続けます。リーダーの推進力は、組織の構成員に影響を与え、組織全体の変革が継続するのです。
変革型リーダーシップ論の「ビジョン」というワードを強く意識してひたすら変革の必要性を訴えるだけでは、従業員が行動に移す可能性は極めて低いと言わざるを得ません。従業員の目にはその「ビジョン」は荒唐無稽の目標に映り、むしろ反発が強くなり、信頼を失うことにもなりかねないでしょう。現状維持を重視する組織に対して、いかに変革に向かって行動してもらうかという壁を崩すには、従業員が自ら行動する動機について理解しなければなりません。
組織に変革を起こそうとするときに、組織とそのメンバーは変化に抵抗する傾向があります。従業員は、習慣が変更されること、個人の安全が脅かされること、収入の減少への不安を持つものです。また未知の仕事に対する不安も。組織的抵抗としては、組織のマニュアル・ルール・手順などの変更、外注化への専門職の疎外感についての不安などになるでしょう。変革を進めるには、個人的にも、組織的にも従業員の理解を促すようにし、変革後の効果を従業員に明確に示す必要があるのです。
プレゼン力や直感力などは生まれ持った面や育った環境が大きく、育成には時間とコストがかかるため、企業の体力も問われることから、ある程度余裕がある企業でないとリーダーの育成は難しい側面があります。既存の社員の中で、変革型リーダーを選出するのは困難と思われるかもしれません。そのような場合、外部からの選出や、あるいはそれを刺激剤として、既存社員の潜在能力を開花させる方法もあるでしょう。既存社員に「やってみればできるものだ」という経験を積ませることで変革型リーダーに抜擢する可能性も計画するとよいでしょう。
変革型リーダーシップのスキルを持った人材を育てるにあたって「リーダーシップ」と「マネジメント」を混同しないように注意するとよいでしょう。変革をする際には、もちろんマネジメント能力も求められますが、マネジメントとリーダーシップは別物。まずリーダーシップとは目標に向かって組織を束ね、自発的にメンバーの方向性を定めたり導いたりしながらメンバーのモチベーションを上げる能力のこと。それとは別に、マネジメント能力とは分析や管理を行い、目標に向けて組織の活動をうながす能力のことを言います。
アメリカン・エキスプレスは、過去にVisaやマスターカードとの競争で危機にさらされていました。そのためアメリカン・エクスプレスは危機を脱するために、従業員にリスクを取っても挑戦することを奨励しました。他社がまだ試みていなかった富裕層へのサービスを始めたのです。さらに損害補償を付与することで安心して商品を購入できるようにし、リボ払いで富裕層以外も高額商品を買えるようにする仕組みも導入。その結果、変革型の方針の甲斐あり成功を納めました。
イーストマンコダック社は、良いものは高く売れると信じるトップダウンの官僚主義を貫いていました。結果、主力商品の高性能複写機は高コスト体質となり、ほぼ利益なしの状態に陥落したのです。そのため当時のリーダーのチャック・トローブリッジ、ボブ・クランダルは、官僚主義を排する分権組織を作ることと、従業員とのコミュにケーション機会の充実を図ることで、変革への意識改革を会社内に浸透させました。この変革の結果、品質と生産性が向上したのです。
バブル崩壊後の「失われた20年」に直面し、経営危機にさらされた企業も少なくありません。危機回避に奏効した日本の変革型の参考例として、パナソニックの5つの原則があります。それは、組織の使命を明確に掲げる。素直な心で現状を正しく認識する。肯定的な人間観で人を活かす。自然の理法に適った職場風土改革の設定。最後までやり抜く自主責任の経営を心掛ける。の5つです。過去に作られた経営規範ですが、この原則を適用して危機を回避した企業も少なくないと聞きます。時代を超えた変革型の経営規範だったのでしょう。
経済変動の大きな現代、企業には変革型リーダーシップが必要とされています。変革に対しては、なかなか危機感を自覚できない従業員や組織の抵抗に合うことは必至でしょう。もとより変革型リーダーをはぐくむ土壌のなかった企業には、変革型リーダーを据えることは難しい課題です。それでも成功例に学び、また既存社員の潜在能力を開花させるなど、実現に向けての手段は存在します。企業体質に合った変革型リーダーの育成で生産性を向上させるべきではないでしょうか。
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