記事更新日:2022年10月07日 | 初回公開日:2022年09月27日
用語集 外国人採用・雇用 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報人手不足が深刻化する日本では、技能実習生の受け入れが年々増加しています。受け入れ企業にとっては国際的社会貢献になると同時に、グローバル化するビジネス機会の拡大や、海外進出のきっかけになる可能性があるのです。日本人の働き手が集まりにくい業界や地方を中心に、実習生が働く現場が多くなっています。また2020年の東京オリンピック開催決定後には関連施設の整備が急がれ、建設業界やインバウンド関連の業界で受入れが進みました。
受け入れの増加に伴い、技能実習生に関する問題も多くなっています。失踪や喧嘩、犯罪など実習生自身が起こす問題があります。一方パワハラやセクハラ、賃金未払いや長時間労働など雇用者側に問題があるケースも少なくありません。技能実習生を雇用する場合にありがちな問題について分析し、原因を理解して対策を考える必要があります。文化が異なることも踏まえた上で、技能実習生の雇用について注意すべき点を考えてみましょう。
技能実習生の賃金に関する問題がよく指摘されています。技能実習生にも日本の労働関係法令が適用されるので、2か月間の講習終了後には賃金は最低賃金以上となります。労働時間は原則として1日8時間、週40時間までで、時間外労働や深夜勤務、休日勤務には割増賃金が支払われなければいけません。しかし、実際にはこれらが守られない事態が頻発しています。また実習先によってタイムカードや勤務記録が改ざんされるという悪質なケースもあります。
技能実習生の失踪も増加しています。失踪の原因は低賃金、指導の厳しさや暴力などです。技能実習生の待遇への悪さや労働環境の劣悪さが、実習生の失踪につながっているのでしょう。企業は技能実習生が失踪した場合、今後の技能実習生を受け入れられなくなる可能性があります。少なくとも優良認定を受けることが難しくなります。優良認定を受けられないと、受け入れが5年間認められている場合でも3年までしか滞在できなくなるだけでなく、受け入れ可能人数が減少することもあります。
技能実習生の生活におけるトラブルについても指摘されています。技能実習生が日本人の暮らし方や社会ルールなどを理解していないために、ゴミの出し方や騒音などで近隣の住民とトラブルが発生してしまう場合があるのです。基本的には、あらかじめ日本の社会ルールや習慣を学んだ上で企業に配属されますが、地域特有のルールなどについては企業もサポートしましょう。日本の文化や習慣を正しく伝えることや、同じ国籍の外国人と交流の場を設けるなどの予防の対策を講じる必要があります。
技能実習生に対するハラスメントもよく問題になっています。企業によってはパスポートや在留カードを取り上げたり、技能実習生の自由を規制する場合があります。また上司によるパワハラやセクハラもしばしば失踪の原因となっています。経営層の気づかないところで暴力が振るわれている場合もあるのです。技能実習生を危険な場所で働かせる安全基準違反や、怪我をしても治療を受けさせてもらえない労災隠しなどが起きているケースもあります。
技能実習生が起こしてしまう事件や事故もあります。なかでも、窃盗事件が多く発生しています。背景には低賃金によって、実習生が経済的に困窮しているということがあるでしょう。また、同じ国の人同士でトラブルになることもありますし、犯罪に誘われるというケースもあります。日本人も同じですが、事故や災害に巻き込まれてしまう場合もあります。災害に対する教育などは事前に行いましょう。日頃からコミュニケーションを取り、技能実習生の状況について把握するように努めることが大切です。
技能実習生は言語が通じずうまく意思疎通ができないということが、問題の原因の1つになっています。ある程度の日本語は来日前に勉強しますが、多くの技能実習生は日本語能力試験におけるN4レベルです。挨拶などの日常会話が出来る程度なので、専門用語を含む会話を理解することは難しいでしょう。そのため社内で外国人が孤立してしまうことがあり、差別やパワーハラスメント、労災事故などにつながる場合もあります。受け入れる企業ではゆっくり話す、簡単な言葉に言い換えるなど、工夫して意思の疎通を図ることが大切です。
技能実習生の問題が起こる原因として、悩みを相談できる相手がいないということが挙げられます。来日したばかりの技能実習生は言葉や日本の文化、社会ルールなどがわからず不安を感じてしまいがちです。仕事上の事柄だけでなく、生活全般においてもさまざまな不安や疑問があるのが普通でしょう。技能実習生は困ったことがあっても相談できないと孤立し、就労にも影響を及ぼしてしまいますので受け入れ企業側は十分に注意することが必要です。
技能実習生同士でのトラブルも起きています。同じ国から来ている技能実習生達は同じ地域に住んでいたり、プライベートの時間を一緒に過ごすことが多い傾向がありますが、それだけにトラブルも起きがちです。金銭問題、恋愛問題などさまざまな問題が起こり得ます。悪い仲間に誘われ、犯罪に加担してしまう可能性もあります。トラブルに巻き込まれた技能実習生について、受け入れ企業はあらかじめ対応策を考えておく必要があります。
相談相手を作り、不安にさせないことが技能実習生の問題の解決策になります。受け入れ企業は相談役を任命し、技能実習生が仕事に関する事だけでなく生活全般について気軽に相談できる体制を作りましょう。また、日本語や日本文化などについて勉強できる機会を作り、日本への理解を深めてもらうことは仕事上の意思疎通に役立つだけでなく、コミュニケーションの促進にも効果的です。企業は技能実習生が孤独や不安を抱えることなく仕事に打ち込める環境を整える必要があるのです。
技能実習生との業務以外でのコミュニケーションも増やしていきましょう。プライベートでの付き合いを増やすことも、技能実習生の問題を防止するための解決策の1つとなります。技能実習生との交流会を開催する、母国の文化や考え方を紹介する機会を作るなど、文化の違いを共有する機会を持つことで、互いの理解を深めることができます。日本について学ぶことでスムーズにコミュニケーションをとれるようになれば、仕事を効率的に進めることが可能です。技能実習生と上手く意思疎通が取れていないという場合には、プライベートでの付き合いを増やすことを考えましょう。
技能実習生の失踪などの問題をなくすためには、労働環境の見直しをすることも大切です。社内の安全衛生対策を見直し、外国人労働者に理解(実施)できるルールを整備していかなければなりません。同時に外国人にわかりやすく指導する方法も検討しましょう。外国人労働者と働くことに慣れていない企業では、日本人社員向けの研修も行うことが必要となります。言葉や文化の違う相手との接し方を学び、日本との文化の違いを知ることで日本人から技能実習生に歩み寄れる意識を育てましょう。
技能実習生には、働き方や賃金についてなどの規則や規約をわかりやすく説明しなければなりません。契約書は母国語で書くなど実習生が理解しやすい文章で作成し、内容の説明も明確に行いましょう。たとえば残業があることや、高所作業や気温の高低などの従事する業務内容や作業環境についても事前にしっかり伝えることが重要です。あらかじめ伝えられずに従事することになると技能実習生に不満が溜まり、失踪などの結果を招くことになります。言葉がわからず伝わらない場合には、通訳を用意することも考えましょう。
技能実習生を受け入れる場合、人事の担当者や受け入れ担当部署では技能実習の目的がわかっていますが、そのほかの従業員は理解できていない場合があります。技能実習の目的や必要性を社内に周知するようにしましょう。会社全体で技能実習生への理解が進むことにより、パワーハラスメントなどの回避につながります。会社全体で歓迎する雰囲気が醸成されれば、技能実習生側も居心地よく働く事ができます。互いの理解が進んで日本人従業員との意思疎通も図られ、トラブルや失踪なども減っていくでしょう。
技能実習生に関する問題が起きた場合には監理団体へ連絡しましょう。監理団体とは、技能実習生の受け入れや受け入れ先企業のサポートなどを行う団体のことです。トラブルが起きてもすぐに報告することで、スムーズに対応してもらえるのです。監理団体は英語以外にも様々な言語に対応しているので、技能実習生とも上手くコミュニケーションをとることが可能です。事故や病気など特別な対応が必要な場合でも監理団体に相談することが重要です。監理団体を頼ることが問題解決への近道となります。
技能実習生の問題が起こった場合には、警察へ連絡することも重要な対処方法の1つです。特に技能実習生が失踪してしまった場合には、地元の警察署に行方不明届けを出しておくことでスムーズに対応することができます。また、地方勤務の技能実習生が都市に失踪するケースも多いのです。企業が地方にあっても、管理団体が東京などの都市部にある場合は、団体の所轄署にも届け出を出しておきましょう。何事も素早く対応することで事態が大きくなることを防げます。失踪などの問題が起こった場合は、まず警察に届け出を出してください。
技能実習生に関する様々な問題を解決し、外国人労働者と日本人の双方が気持ちよく働ける環境を整えましょう。そのためには企業側の意識や社内システムの改革が必要となります。 外国人の雇用では、日本人同士ではできていた暗黙の了解というものが簡単にはできなくなることを理解しなければいけません。契約については文書で明確にし、口頭でもしっかり説明することが大切です。人手不足が本格化になってきた現在、企業のステップアップの機会と捉えて技能実習生の雇用を考えてみるのはいかがでしょうか。
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