シェアードリーダーシップとは【サーバントリーダーシップとの違いや、導入するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します】

記事更新日：2024年02月02日｜初回公開日：2024年02月02日

変化するVUCAの時代に備えて、いままでとは異なるリーダーシップの在り方が多くの企業で検討されています。その中でも特に注目を集めているのが「シェアードリーダーシップ」です。シェアードリーダーシップでは、組織を構成するメンバー全員がリーダーシップを持って意見を発し、組織の重要事項なども決定します。新しいアイデアを求める企業では、今までにない新組織における変革に期待を込めていることでしょう。ここでは、「シェアードリーダーシップ」の意味や注目される背景から、実践するメリットや実践のポイントまで詳しく解説いたします。今後における経営の一助となれば幸いです。

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シェアードリーダーシップとは

メンバー全員がリーダーシップを発揮すること

シェアードリーダーシップとは、メンバー全員がリーダーシップを発揮するもので、一般的なリーダーシップとは異なる概念の組織統率および指導力になります。また、参加者全員がチームを牽引する気持ちを持つことによって、最高のパフォーマンスを引き出す手法とも言えるでしょう。チームや組織が共通の目的と責任意識を持ち、個々のメンバーが持つスキルや強みを発揮しながら全員で組織をリードすることにより、組織全体の能力を向上させるものです。

サーバントリーダーシップとの違い

サーバントリーダーシップとは、チーム内の一人がリーダーとなり、最初にリーダーが組織メンバーに奉仕（サーバント）することが大きな特徴です。奉仕を受けたメンバーはリーダーと信頼関係を持つことで、自ら進んでチームや組織に協力します。義務感ではなく自律的に組織に協力して総合力を高めるという意味ではシェアードリーダーシップに近いと言えますが、根本的な概念が大きく異なるものです。また、一般的な支配型のリーダーシップとは違い、相互の信頼関係のもとでメンバーから協力を得るという意味では、全く違う概念のリーダーシップと言えるでしょう。

オーセンティックリーダーシップとの違い

オーセンティックリーダーシップでは、リーダー自身の持つ価値観や信念を貫きながら「自分らしい」行動でメンバーを統率します。「オーセンティック」とは、本物・真正・確実などの意味を持ち、倫理観に沿って自分らしいリーダーシップを発揮することが重要です。一般的なリーダーシップ理論では、リーダーとは斯くあるべしということを探求するものでしたが、オーセンティックリーダーシップは自分らしさという人間力を優先します。

シェアードリーダーシップが注目されている背景

VUCA時代が迫ってきている

シェアードリーダーシップが注目される大きな理由の一つに、VUCAと呼ばれる不確定要素の高い時代の到来があります。いつ何が起きてもおかしくないと言われる変動性の高いVUCAの時代には、一人の優秀なリーダーだけでは組織が持ちこたえられないと判断されるからです。近年においても、IT技術の急速な進歩や類を見ない感染症の拡大など、いままで想像できなかったことが現実となっています。これからの世界情勢では、いま以上の大きな変化が予想されており、組織が維持・成長を続けるために、新しい意思決定方法や組織の在り方にも変化が求められているのです。

デジタル化が進んでいる

AIやRPA（Robotic Process Automation）などデジタル技術の進展も、シェアードリーダーシップが注目されている要因の一つです。全ての職業で活躍すると思われるAIや、人間に代わって事務作業を短時間で行うRPAなどは、今後の職業事情を大きく変えることになるでしょう。そして、それらの作業をする人たちを束ねているリーダーの存在にも、大きな影響が出るに違いありません。技術のみがアナログからデジタルに変わり、操作や組織を統率する人間がアナログのままで追いつかない状況が予想されます。リーダーシップの変革も、企業として喫緊の課題となっているのです。

シェアードリーダーシップのメリット

仕事のモチベーションが上がる

シェアードリーダーシップでは、自らが考えて答えを出し判断して相手に伝えます。他のメンバーも同様の行動を起こすことで、お互いを理解するとともに更に高みを目指して考えることになるでしょう。これらの連続は内発的モチベーションの弧状に繋がるものです。同じ目的を持ちお互いを同等のリーダーと意識しながら考えることで、集中力や創造性が大きく向上します。そうした競争心や内から起きる興味や意欲などは、仕事のモチベーションアップに大きく貢献するでしょう。

生産性が向上する

仕事へのモチベーションアップが実現すれば、生産性が向上することは間違いありません。単にやる気が出るだけでなく効率の良い作業や創意工夫にも好影響が期待できるため、想像以上の結果が期待できます。そして自分が考えたアイデアが採用されれば、さらに個人のモチベーションが上がるとともに、他の社員へも好影響を与えます。好循環の持続期間が長ければ、生産性の向上だけでなく、企業の大きな躍進と繁栄にも繋がることでしょう。

新しいアイディアが生まれやすい

昔ながらのトップダウン型リーダーシップでは、発言する人物が固定されてしまうため、考える方向性などに、いつの間にか制限ができてしまいます。しかしシェアードリーダーシップが実現できたならば、様々な人の様々な発想が期待でき、新しいアイディアが生まれやすい環境が育ちます。とくに全く異なる方向性から見た発想は、突拍子もないようなことでありながら、素晴らしいアイデアに変わることも少なくありません。まずは自分もリーダーであることを意識して発言し、他のアイデアも否定せず、柔軟に受け入れて考えるようにしましょう。

社歴の浅い社員もリーダーシップを発揮できる

シェアードリーダーシップでは、全ての社員が同等の立場で発言することができ、学ぶ事が出来ます。一般的企業では、社歴の浅い社員は他の社員の意見を聞くだけで終わることが普通かもしれません。しかしシェアードリーダーシップにおいては、社歴なども一切度外視したフラットな舞台で議論が交わされるため、社歴の浅い社員も存分にリーダーシップを発揮できます。こうした環境は、次世代のリーダーを育成する良い機会となり、一方では隠れた逸材を見つけることにも繋がるでしょう。

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シェアードリーダーシップのデメリット

うまくまとめられないリスクがある

シェアードリーダーシップのデメリットとしては、それぞれが個々を主張するばかりに、うまくまとめられないリスクがあることです。シェアードリーダーシップでは、個々がリーダーとしての責任感を持って積極的に発言しながら、同じように積極的に相手の意見を良く聞くことが重要になります。話すだけでなく「話し合う」ことが大事です。一人の意見では大したアイデアでなくとも、複数のアイデアを複合することで、素晴らしいアイデアに変わることもあるのです。とくに若年の経験が浅い担当者が行動を起こす際には、多数の人がリーダーとして後押してあげるべきでしょう。

シェアードリーダーシップのポイント

組織方針を理解してもらう

シェアードリーダーシップを成功させる第一のポイントは、組織方針を十分に理解してもらうことです。組織の目的や将来のビジョンを考え皆で共有したうえで、なぜシェアードリーダーシップを行うかも良く理解してください。目指すポイントは同じであり、議論では戦いながらも良い方向に進むために行っていることであると思えなければ、皆がバラバラになってしまいます。シェアードリーダーシップとは、一般的なリーダーシップよりも大きな効果を期待できるものですが、一歩間違えると企業の破綻にも繋がる危険なものです。そのような間違いを起こさないためにも、根底に掲げる組織方針は十分に理解しなければいけません。

フォロワーシップを理解する

シェアードリーダーシップでは、メンバー全員がリーダーになるとともに、メンバー全員でフォロワーシップを行うことも重要な役割であることを理解しなければいけません。社員全員がリーダーになって企業を牽引するシェアードリーダーシップですが、実際にはプロジェクトリーダーになることよりも、フォロワーとして支援することの方が多いでしょう。しかし、通常のリーダーも自分がプロジェクトを任されてリーダーとしてまとめていくことは多くありません。統率および指導によってチームをまとめることがリーダーの重要な役割であり、フォロワーシップを深く理解することで組織リーダーとして成長することができます。

リーダーシップの定義を統一する

シェアードリーダーシップの経験が無い人には、自分がどのように参加すればよいか分からない人も多くいます。とくに一般職などの権限を持たないメンバーは、自分が意見を発することや提案することを期待されていないと思う傾向にあり、ときには意見を発してはいけないと感じることもあるようです。特別な権限を持たないメンバーなどは、自分が意見を発することや提案することを期待されていないと思うことや、意見を発してはいけないと感じることさえあるようです。全員にリーダーシップを発揮してもらうためにも、リーダーシップの定義を統一し、皆に理解を促す機会を準備しましょう。

経営陣がしっかりとシェアードリーダーシップを理解する

今までにない役職を超えたシェアードリーダーシップを成功させるためには、経営者側もしっかりとシェアードリーダーシップを理解しなければいけません。社員の素早い動きに翻弄され、経営者が右往左往しているようでは、参加者全員が不安になるでしょう。経営者としては、個々が進んでリーダーシップを取ろうとすることに歓迎の意思を示し、悠然と見守るべきです。そして成功したときには、躊躇せずに褒めるようにしましょう。経営者の理解が得られたシェアードリーダーシップは、さらに大きな効果を企業にもたらしてくれるに違いありません

PDCAサイクルを回す

シェアードリーダーシップを行ううえで、PDCAサイクルと併用することも大きなポイントと言えます。意見だけを交わすだけであったり、計画を立てて終わったりするようでは、全く企業の前進は期待できません。良いアイデアがあったとしても実行に移さなければ意味はなく、実行後にも改善する場所を見つけて何度も繰り返すことが大事です。「Plan・計画」「Do・実行」「Check・評価」「Action・改善」を繰り返し回すことによって、シェアードリーダーシップの大きな効果が期待できます。

エンパワーメントを推進する

エンパワーメントとは、組織の一員である個が本来持っている力を発揮し、自らの意思により決定し行動できるようにすることを意味する言葉です。シェアードリーダーシップは、個々が持つ能力を発揮するという意味で、重複する部分も多く併用して行うことで相乗効果が期待できます。また、エンパワーメントとは「能力の開花や権限を譲る」ことも意味しており、経験が少ない未熟な社員に権限を与えて成長を促すという点でも共通します。この二つの方法を上手く組み合わせて使うことで、よりシェアードリーダーシップの効果が際立つことでしょう。

シェアードリーダーシップの注意点

他のリーダーシップを否定するものではない

シェアードリーダーシップは、皆がリーダーとしての責任を感じながら積極的に自分の意見を述べるものですが、他の意見やリーダーシップ否定するものではありません。多数の積極的な意見をぶつけ合うことで、より効率的で斬新なアイデアを求めることが本当のシェアードリーダーシップ制度です。むやみに他の意見の短所を否定したり弱い部分を指摘したりの単なる潰し合いでは、大きな進展は期待できません。お互いの意見に良く耳を傾けて、他の考えの長所を称え合うことが大切です。お互いの良い部分に目を向けた議論を心がけ、良きライバルであり良き理解者であることが重要だと言えます。

まとめ

シェアードリーダーシップを理解し導入を検討しよう

シェアードリーダーシップは組織を構成する全員がリーダーとしての自覚を持って、重要な決定や新しいアイデアについて積極的に意見を述べるものです。ただし、これは自分の考えを押し通すのではなく、多くのアイデアを持ち寄って自分の意見も含めた多数のアイデアから、より良い提案を実行に移そうというものになります。そして、本当のリーダーとは自分の考えを最も正しいと考えて押し付けるのではなく、どんな人材のアイデアであっても優れたものは認めて協力するものです。ぜひ、シェアードリーダーシップを十分に理解し、導入を検討してみましょう。