記事更新日:2023年11月10日 | 初回公開日:2023年11月10日
用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 採用成功事例自己奉仕バイアスとは、自分が成功した時には原因が自分の能力によるものと考え、失敗した時には他人や環境など自分で制御できないことが原因と考える心理現象のことです。例えば朝寝坊をして学校に遅れた際に、本来ならば「昨日夜更かしをした」「アラームをかけ忘れた」など原因は自分にあると思うのが通常です。しかし、これに自己奉仕バイアスが強く働いていると、人は「家族が起こしてくれなかったから遅刻した」など、他人に責任転嫁してしまいます。
バイアスは日本語で「先入観、偏見」という意味があります。熟語で使用される場合にはおおむね「思い込み」で利用される場合が多いです。また、自己奉仕バイアスは英語で「セルフ・サービング・バイアス(Self-serving bias)」と言います。Self-servingは日本語では「利己的な、私利的な」という意味です。そのため、日本語の「自己奉仕」では意味が分かりにくいですが、自己奉仕バイアスという言葉そのものには「利己的な思い込み」という意味が込められています。
確証バイアスとは自分が既に持っている物事への先入観が正しいものだという確証を持たせるために、無意識に自分にとって都合の良い情報ばかり集める心理のことです。確証バイアスと自己奉仕バイアスは、物事を自分にとって都合良く解釈するために働く心理という点では似ている部分があります。しかし、自己奉仕バイアスはあくまで都合の良い思い込みをする心理に枠組みが限定されています。そこからさらに思い込みを立証するための根拠を集める行動に移った時、心理状況は確証バイアスに陥っていると言えるでしょう。
自己奉仕バイアスが働いてしまう原因には、自尊心を保ちたいという気持ちが強い可能性が考えられます。人は失敗してしまうと少なからず、恥ずかしさや申し訳なさなどの感情が湧き、自尊心が傷つけられて居心地の悪い気分を覚えます。自己奉仕バイアスが働いていると、事実をそのまま受け止めるよりも先に自尊心を保ちたいという気持ちが優先されます。そのため、自己奉仕バイアスが強い人は成功は自分の力によるものだと思い込み、失敗は他者に責任転嫁しがちです。
自己奉仕バイアスの克服が必要とされる理由には、人事において公平な評価が必要だからです。管理職が社員の評価を行うためには、客観的な視点を持つ必要があります。しかし、自己奉仕バイアスが強いと先述した通り、偏った視点で他者を見てしまいます。これを放置すると、他者の能力を実際よりも過小評価してしまい公平な評価がしにくくなります。不公平な人事評価は社員の不満の原因にもなるので、自覚がある場合は早急な対応が必要です。
自己奉仕バイアスが見られる具体例として多く見られるのは仕事の出来です。例えば、自分の仕事が成功した際に、自己奉仕バイアスが強いと成功は自分の個人的な能力や努力によるものだと思いがちになります。逆に、仕事で失敗してしまった場合にも自己奉仕バイアスが強いと自分の行いを顧みることができずに、他人のせいにしてしまいます。また、他人の仕事が成功した場合にも、自己奉仕バイアスが強いと「あの人はたまたま運が良かったから成功した」と思うなど、他人に厳しい評価を下しがちです。
自己奉仕バイアスが強い人は自分だけでなく、自分の所属している会社や組織にも甘い判断を下す傾向が見られます。例えば、自分の会社が上手くいってる時には、自社の経営方針や企業努力が報われたと思いますが、他社が上手くいっている時は時代や景気が良かったと判断します。仕事の出来と共通している部分は、自分や自分の所属している組織に対しては好意的な評価を下す反面、それ以外の人や会社に関しては否定的な評価を持つ点です。
自己奉仕バイアスは他人から自分に向けられた評価に対しても働きます。具体例としては、会社の人事評価が自分の予想よりも低かった場合、自己奉仕バイアスの強い人は「評価者は自分のことが嫌いだから低い評価をつけた」と思い込みます。また、上司から指導を受けた際にも、自分の行動に問題があるとは思えず、上司が個人的な感情で自分を失跡したと感じがちです。このような考え方を放置していると、改善すべき自分の問題に目を向けることができなくなるため、自分自身の成長に繋がりません。
会社の営業取引においても自己奉仕バイアスが強く働くと、取引が成功した場合には自分には能力があるのだと自分を過信してしまいます。自分に自信を持つことはビジネスシーンで大切なことですが、現状に満足してしまうと将来的な伸びしろを奪うことにもなりかねません。また、この状態で取引が失敗してしまうと、上司の指導や商品そのものを原因として捉えてしまいます。失敗が自分由来ではないと思い込むと成功に向けた工夫や努力をしにくくなるので、結果的に営業活動で良い結果を出せなくなります。
自己奉仕バイアスの存在は悪い印象ばかりが目立ちますが、上手く活用すれば何事にも自信をもって挑戦できます。自己奉仕バイアスには自分自身を高く評価する特徴がありますが、自分に自信を持つのは悪いことではありません。自分に自信が無いと苦手なことや未経験の分野に対して消極的な対応をとってしまいます。一方で自分に自信があれば、幅広い物事に挑戦できる気力も生まれます。そのため、自己奉仕バイアスは適度に保つことで、仕事だけでなくプライベートでも上手く物事を運ぶきっかけになる可能性もあります。
自己奉仕バイアスの強い人は自分に悪いことが起きると、原因は他人や環境にあると考えます。そのため、どのような場面においても自己認識が「他人に迷惑をかけられる自分」や「不遇な生い立ちのせいで不幸な自分」になります。その反面、相手に悪いことが起きると自然に「あなたにも原因があるんじゃないのか」と考えがちです。この認識のまま他人と接すると、自分の愚痴は言う割に他人の愚痴は聞きたくない嫌な人という印象に見られるため、周囲の人からは距離を取られる可能性も否定できません。
自分の失敗を他人や環境のせいにすると、周囲の人から信頼を失う恐れもあります。例えば、自己奉仕バイアスの強い人には、何かミスやトラブルが起きた際に、「いや」「でも」など、初めに言い訳をしようとする特徴が多く見られます。本人からすると悪い事が起きたのは、自分に否があるわけではないという理由を述べたいがために出てくる言葉です。しかし、事実がどうであっても、他人からするとこの言動は本人の責任逃れとして認識されます。このような言動を繰り返していると結果的には無責任な人と思われてしまうため、周囲からは信頼されなくなってしまいます。
自己奉仕バイアスが強いと自己評価が高いゆえに自分の失敗を認められず、失敗経験から学べる機会を逃してしまうリスクが発生します。自分の行動から来る失敗は誰にでもあることであり、誰もが自分に否があるとは思いたくないものです。しかし、失敗を経験し自分の行動を顧みることで得られる学びは沢山あります。自己奉仕バイアスを放置していると、失敗経験から得られる学びが無いため、自分の成長に繋がりません。そのため、自分の言動に心当たりがある場合は、一度冷静になり自分の行動を顧みる必要があります。
人は誰でも個人的な価値観や考え方を持っていて、主観的な視点から物事を判断する傾向があります。そのため、自己奉仕バイアスの克服をするためには、まず自分を客観的に見つめ直さなければなりません。例えば、自分の視点から見た物事は、他人から見るとどのように映るのか、他人の気持ちを汲み取るよう心掛けることが大切です。また、自分の行動や考え方が周囲の人からはどう見えているのか気を配ることで、口に出してはいけない言葉やしてはいけない行動が見えてきます。
自己奉仕バイアスは無意識に自分の中で働いているものなので、自分自身で自覚することは困難です。そのため、克服するには自分の中には偏った思い込みがあるかもしれないと意識する必要があります。自分の考え方は必ずしも正しいものではなく、間違っている可能性もあるという考えを常に念頭に置いておきましょう。このような考え方を持つことで、他人に対して否定的な考えを持ってしまいそうな時にも、自分の考え方は適切なものなのか考え治すきっかけを持つことができます。
自己奉仕バイアスは自分の努力だけで克服するのは困難なため、第三者に意見を求めることも大切です。自分の中だけで物事を考え結論を出してしまうと、必然的に自分に都合の良い物事の捉え方をしてしまいます。そこで、自分の意見だけでなく、第三者からの意見に耳を傾けると、自分だけでは気づかなかったことや見えなかった事実にも気づけます。様々な立場の視点からの意見を聞き入れれば、改めて自分の意見を考え直すきっかけにもなり、より公平な判断を下せる可能性が高まります。
自己奉仕バイアスが強い人は、自分の思い込みを肯定するために都合の良い情報ばかりを集めてしまう可能性があります。このような理由から、物事を正確に捉えるためにも、自分の目にしている情報を常に疑わなければなりません。また、自己奉仕バイアスが強いと自分に都合の良い人ばかりを周囲に集めたがりますが、上記の人が常に自分を良い影響を与えてくれるとは限りません。一自分とは違う意見を持つ人の言葉も、自己成長を促すヒントが隠されているかもしれません。そのため、自分に厳しい意見を持つ人の言葉も、しっかりと受け止めてみましょう。
自己奉仕バイアスは特定の人に限らず、誰でも持っているものです。そのため、自覚があっても必要以上に自分を責める必要はありません。しかし、自己奉仕バイアスがあまりに強いと、周囲の人だけでなく自分にとっても不利益に働く可能性が高まります。そのため、自己奉仕バイアスを自覚した時には克服するための努力が必要です。人事評価の際には「自分は物事を都合良く捉えてしまう一面がある」という認識を持つだけでも、公平に評価を検討できる助けになります。また、自己奉仕バイアスは自分に自信を持てるというメリットもあるため、適度に保つことも大切です。
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